農業土木学会論文集
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1998 巻, 194 号
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  • 森 保文, 坪谷 太郎, 新村 卓也, 藤沼 康実
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 197-202,a1
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    稲わら, 炭および無肥料区の浄化効果を調べるために, 水田における排出負荷量を測定した. 排水が稲わら, 炭あるいは無肥料区を通るように, これらの処理を排水口の前に設置した.
    わらについては浄化効果は認められなかった.
    炭は施肥直後のNH4-Nを吸着して, 窒素濃度を平均化した. ただし, 全潅漑期では浄化の効果はなかった. 窒素とリンについては無肥料区による排出負荷の削減が見られた. CODには大きな影響はなかった.
    水質浄化に使用する無肥料区を環境保全水田として利用することを提案した.
  • 施設園芸ハウスの耐風性向上に関する研究
    篠 和夫, 尹 龍吉, 松本 伸介
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 203-212,a1
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    施設園芸ハウス独立基礎の引抜き抵抗力向上を目的として, 従来の円柱形杭に替わるものとしてアンカーを用いた場合の引抜き抵抗力に関する実験を行った. さらに, アンカー床板の設計や引抜き抵抗力発現のメカニズムの解明に必要となる床板に作用する荷重を特定するため, アンカー床板に作用する土圧を測定し, アンカーが抜け上がる時の砂表面の変化について検討を行った. また, アンカーと杭の引抜き抵抗力についても比較検討を行った.
    アンカー床板の直径 (B) を120mmとし, 根入れ長 (L) との比L/B=1, 2及び3の3種類について, おのおの砂の締固め程度を中詰めと密詰めに変化させて実験した.
    これらから得られた結果を要約すると, 次のとおりである.
    アンカーの限界引抜き抵抗力は根入れ比が大きくなるとともに二次関数的に増加し, 降伏引抜き抵抗力は根入れ比に対して比例的であった. 土圧は, 土圧計の位置, 根入れ比及び地盤密度により差があった.すなわち, アンカー中心点から遠ざかるにつれ土圧は増加した. また, 中詰めの場合の土圧は, 時間の経過につれて根入れ比ごとに変化の傾向が異なった. 一方, 密詰めの場合, 土圧計の位置に関わらず, アンカーが抜け上がる直前まで時間の経過につれ土圧は増加した. 砂表面と破壊包絡線の交点は, L/B=1, 2及び3について, 中詰めの場合は, アンカー中心からの距離約15, 21及び27cm付近にあり, 密詰めの場合は約16, 22及び37cm付近にあったアンカーの限界引抜き抵抗力は, 中詰めの場合, 杭径43, 66及び83mmのそれに比べて, 約6, 5及び4倍程度大きくなった.
  • Farmanullah KHAN, 佐藤 晃一, 高瀬 恵次
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 213-219,a1
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 長さ115cm, 幅14cm, 土層厚7cmのプリュームを用いて, リル生成時の限界流量と斜面勾配および土粒子粒径の関係を明らかにした. 実験は, 定常・等流条件下で斜面勾配を変化させて行った. 供試土には10種類の砂質土を用いた. 限界流量と斜面勾配および土粒子粒径の関係から, qc=a (sin θ) m (ここで, qc: リル生成時の限界流量, θ: 斜面勾配, m: ベキ数, a: 土壌の種類に依存するパラメータ) で表される経験式を導いた. この式において, すべての土壌に対してベキ数鑓がほぼ一定でおよそ-3/4となることから, リル生成時の限界流量に対する斜面勾配の影響は土粒子粒径に依存しないことが明らかとなった. また, リル生成時の流れに対してマニング則の実用的適用の可能性が示唆された. 一方, 平均粒径を代表粒径として用いることによって, パラメータaに対する土粒子粒径の影響がよく表現できることを示した. この経験式は, 砂質土壌のリル生成時の限界流量予測に適用が可能で, 物理的侵食モデルの展開に寄与するものと考えられる.
  • 加治佐 隆光
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 221-228,a1
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論の目的は, 地中水の直接流出成分がマニング則になるであろう条件を理論的に模索することである. この目的に関連して, われわれは均一な透水性の地中においてもマニング則が生じる条件があると期待した. マニング則に対応する指標pは0.6である.
    まず最初に, 流域下流端においては, 不透水層の勾配に関わらず, このpは0~1の範囲内にあることが確かめられた. 次に, 均一な透水層中の地中流の数値シミュレーションによって, 降雨後のpが0.6に近い表面流のような地中流の直接成分が分離された. この直接成分の長さは50mの長さの流域の下流端からほぼ10mであって, 時間の経過とともに狭くなっていた. しかし一方, マニング則を適用できる実際の造成階段畑に関しては, この流域の透水性は均一でなく, 地表に向けて大きくなっている可能性があるという結果に至った.
  • 三原 真智人, 岡澤 宏
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 229-236,a1
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    底泥における侵食特性とそれに伴う窒素やリンなどの富栄養化成分の流出について扱った. 同心軸回転侵食装置を用いて, 侵食の評価のため浮遊物質を測定した. さらに実験後, 懸濁水状態およびうわ水状態における全窒素および全リンを測定した. ただし, うわ水は懸濁水を遠心分離で懸濁物質を除去して得た.
    埼玉県中川流域の古隅田川最下流および備前前堀川最下流において, 実験に供した底泥を採取した. 深さ別に各底泥の土壌の物理性を調べた結果, おのおの少なくとも75cm深さまで底泥が堆積していた.
    本研究の結果より, 底泥の侵食が富栄養化成分の流出に大きな影響を与えていると判断できた. 懸濁水に含まれる全窒素および全リンがうわ水に含まれるものを大きく上回り, 底泥の侵食過程では懸濁態での富栄養化成分の流出が大きいと判断できた.
  • 茎内流測定法の潅漑管理への適用 (I)
    竹内 真一, 安田 繁, 河原田 禮次郎, 矢野 友久
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 237-245,a1
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今日の水事情を考慮すると, 点滴潅漑等のシステムのみならず水管理においても節水に重点をおく必要がある. 茎内流測定法であるヒートパルス法により算定したハウス内ピーマンの蒸散量を指標として, 潅漑時期および水量を同時に決定する方法を提示し, 本方法の節水潅漑に対する有効性について検討した. この方法は, 高水分条件下の蒸散量に対して, ピーマンの蒸散量が80%に減少した日に潅漑を行うものである. 栽培実験の結果, 本方法は通常の露地畑で行われる間断潅漑と大差なく, 収量に悪影響を及ぼすことなく節水になることが示された. またTDR法を用いた土壌水分の測定結果とライシメータから求めた蒸発散の分離評価の結果をもとに土壌水分減少法により蒸散量を算定し, ヒートパルス法による実測値とおおむね一致する結果を得た.
  • リサイクル型農業の環境負荷に関する考察
    小林 久
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 247-253
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    高投入型農業と地域資源リサイクル型農業の環境負荷の総合的な検討を試みるために, エネルギー消費とCO2排出を環境負荷項目として, 農業における窒素投入のライフサイクル分析を行った。分析範囲は, 製造, 輸送, 廃棄段階を含む肥料投入までの部分で, 分析により窒素単位量当たりの各段階のエネルギー消費・CO2排出量を明らかにした。
    さらに, 地域資源リサイクル型農業に対応する循環型シナリオとして畜産~農産連鎖モデルを作成し, これと高投入型農業に該当する化学肥料依存型シナリオとのライフサイクル分析による比較を行った。その結果, CO2排出量は循環型の方が3,373~4,183kg/ha少ないと試算されたが, エネルギー消費は適用するコンポスト化技術の違いによって, 循環型の方が大きな環境負荷を生じる場合のあることが推定された。
  • 甲本 達也, 朴 鐘華
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 255-259,a2
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土の力学的性質のひとつである不撹乱粘土の圧縮指数Ccは, 土の種類土の状態および骨組構造を表す3個のファクターの関数で表されなければならない.
    いま, 3個のファクターの指標として, 塑性指数Ip, 液性指数ILおよび鋭敏比Stを選び, IpおよびILCcへの寄与効果を両者の積 (Ip×IL=w0-wp) で表すと, Ccは次式の関数形で与えられる.
    Cc=F {(w0-wp), St}
    ただし, w0およびwpはそれぞれ初期含水比および塑性限界時の含水比.
    不撹乱粘土試料に対して上式を適用したところ, 次式が得られた.
    Cc/St0.22=0.009 (w0-wp) +0.101 (相関係数r=0.911)
    Cc式と既存の練返し粘土の圧縮指数Cc'式との比, Cc/Cc'は, Cc'>0.4の範囲では, Cc/Cc'=1.25St0.22で与えられた.
  • Farmanullah KHAN, 佐藤 晃一, 高瀬 恵次
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 261-267,a2
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 幅1m, 長さ10mの人工降雨装置を持つ2連のライシメータを用い, 勾配を変化させて不等流条件下でのリル生成メカニズムについての実験を行った. その結果, リルの生成過程は以下の3つの段階一水みちへの集中を伴う面状侵食, 微小リル侵食およびそのリルの発達-からなることが明らかとなった・本論文ではこのリルの発達が始まる斜面上端からの距離をリル生成の限界距離と定義してこれを測定し, また, その地点での地表面流量を限界流量と定義して計算により求めた. そして, 限界距離は降雨強度と勾配に依存するが, 限界流量はそれぞれの勾配に対して一定であることを明らかにした. 次に, 表面流が薄層流の流れであると仮定して限界流速を求めた結果, 土壌特性が一定であれば限界流量はいずれの勾配においても同じであると考えられることを指摘した.
  • 朱 敦堯, 中野 政詩, 宮崎 毅
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 269-276,a2
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土壌物理性が違うの二つ試料, 砂とYolo粘土を用いて, 斜面における水移動の数値シミュレーションを行った。第一, 湛水開始時間の数値解と準解析解を比較した。湛水開始時間は, 降雨強度の増加とともに指数関数的減少する。土の浸潤能は, 傾斜角に大きく依存し, 特に傾斜角30°になると, 斜面と平面の浸潤能が著しい相違である。
    第二は, 土壌物理性と斜面水流の関係を調べた。砂の場合には, 斜面と平行のフラックス成分は斜面水流に大きい影響を与る。湛水開始の際, 砂の場合は, 浸潤前線の後方で飽和層と不飽和層を明確に区別できた, しかし, この砂の特徴は, Yolo粘土で見つけなかった。第三には, 傾斜角と降雨強度はフラックスの大きさ及び屈折を決定する最も重要な二つ要因であることが分かった。土の表面での最大屈折角は, 傾斜角によって直線に増加し, ただし, 降雨強度が大きいと, 最大屈折角は小さくなる。
  • 吉田 昭治
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 277-282
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    自由水面をもつような飽和-不飽和浸透流の相似則について, 筆者が1966年に不飽和流線網の幾何学的相似性に着目して, 原型と模型において流れが相似になるには, 幾何学的に相似な対応点において比透水係数Kr (P) (Pは負圧水頭) が両者で互いに等しいことが必要であることを理論的に提示した.
    本研究では, この相似に必要な条件はKr (P) =Kr'(λP) (λは2系の幾何学的縮尺率, Kr'はλ倍の系の比透水係数) によって満たされることを理論的に示し, かつこれを有限要素法による数値実験によって確かめた.
  • 藤原 正幸, 藤原 建紀, 大橋 行三
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 283-292,a2
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    診断モデルを用いて紀伊水道における1996年8月の残差流の実態を明らかにした.計算結果は, 紀伊水道内の2測線で得られたADCPのデータによりその再現性を検証した, 表層 (30m以浅) では大阪湾より南下してきた流れが北緯34度付近に存在する反時計回りの渦により西に曲げられ四国沿いを南下し, 阿南市沖で今度は流向を東に変え最終的に紀伊半島に沿って太平洋に流出する, 全体としては南下流が卓越している。底層 (50m以深) は全体として北上流が卓越している.
    運動方程式の各項のバランスを計算すると, 海峡部付近では潮汐応力と圧力勾配力が釣り合っている.他の海域で潮汐応力は小さく, 圧力勾配力とコリオリカがバランスしている, このことから紀伊水道における残差流は地衡流的であると考えられる.
  • 武藤 由子, 渡辺 晋生, 石崎 武志, 溝口 勝
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 293-299
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    凍上は、土が凍る際にアイスレンズと呼ばれる氷の塊が析出することによって起こる現象である。よって凍上は、アイスレンズの成長面への水と熱の移動を伴う凝固現象であるともいえる、しかし、土壌の持つ複雑さのためにその形成機構は明らかでない、そこで本研究では、凍結速度と温度勾配を独立に制御できる装置を用いて.ガラスビーズと水を混合した2種類の系 (多粒子系と独立粒子系) を凍らせ、その様子を顕微鏡を介して観察した。その結果、土壌中に形成されるアイスレンズと同様のアイスレンズがガラスピーズ試料中にも人工的に形成できることが確認された。このとき生じるアイスレンズの形成は凍結速度の影響を受け、凍結による独立した粒子の取り込み/排除の現象と関連していることがわかった.
  • 畑地帯を事例として
    小泉 健, 安部 征雄, 吉田 弘明
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 301-309
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    (財) 農林水産長期金融協会が公表した地域活力度を用い、更にはそれを拡張した分析により、農業農村整備事業の意義及び課題を畑地帯を事例に研究した。これにより、事業効果をみる方法として地域活力度の主成分の一つである農業活力は有効であること。特に、かんがい施設の整備や区画整理は一定の効果があること。しかしながら、各種の工事を計画的、総合的に実施しないと事業効果の発現には一定の限界があること、経済活力や社会経済条件を踏まえた土地利用計画の明確化に基づく計画的な整備が重要であることなどが判明した。
  • 裸地地温の日変化と土壌水分量の関係 (I)
    片岡 恭子, 塩沢 昌, 多田 敦
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 311-320,a3
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    裸地地温の日変化に土壌水分状態が与える影響を調べたところ, 夏の裸地で土壌水分が乾くと乾燥層が現われ, 乾燥層のために表面温度の日振幅が増加したが, 下層の湿潤層の温度の日振幅は湿った土壌とほとんど同じであった。その理由が乾燥層の熱伝導率が小さいこと, 乾燥層が蒸発を抑えること, さらに蒸発潜熱のシンクが表面から乾燥層下部に移るためであることを確認した.
  • 京都府, 滋賀県, 奈良県内の複数のため池を事例として
    長坂 貞郎, 堀野 治彦, 渡辺 紹裕, 丸山 利輔
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 321-327,a3
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    京都府京田辺市にある7つの農業用ため池において水質調査を行った. ため池は集水域の土地利用によって次の3つに分類できる.(1) 山林型: 集水域がすべて山林であるため池,(2) 農地型: 集水域に農地を含むため池,(3) 市街地型: 市街地排水が流入するため池.
    T-N, T-P, CODの平均濃度は, 山林型, 農地型では低濃度であった. 山林型では, 濃度変化は小さかった. 農地型では, 潅漑期初期に顕著な濃度変化がみられた. 無機態窒素および無機態リンの濃度は, 非潅漑期と比較して潅漑期に高い値を示した.
    主成分分析を用いて, ため池の水質特性を抽出した. 用いたデータは, 京都府, 滋賀県, 奈良県の47のため池における5水質項目 (pH, EC, T-N, T-P, COD) である. 山林型, 農地型および一部の市街地型のため池において, 有機物量と蒸発残留物量は正の相関があった. 正の相関関係のない池は, 貯水容量に対する受益地面積の割合が高い傾向があった.
  • 國松 孝男, 須戸 幹, 川地 武, 夢 栄, 中村 久郎
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 329-336,a3
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業集落排水処理施設の高度処理水を, 経済的・安定的にさらに高度に浄化することを目的とした処理水の水田潅漑再利用システムの浄化効率と2次汚染の有無を実証するために, 滋賀県大津市桐生処理施設の処理水と地域の水田を実験圃場として7年間にわたって, 処理水, 地下浸透水と降雨の水質と水量, 土壌と水稲の有害金属濃度および水稲の生育と収量に与える影響を調査し, 次のような結果を得た.(1) 処理水の7年間の平均水質は, T-N 14.4 (NH4-N2.04, NO3-N9.25), T-P1.86, K+8.1mg/lであった。(2) 浸透水のT-N濃度は用水区 (7年平均), 処理水無希釈潅漑区 (7年後) それぞれ0.49, 0.52mg/l, T-Pは0.038, 0.029mg/lで, 窒素は処理水区の方がやや高かったが, 経年的な上昇傾向は認められなかった.(3) 処理水潅漑によって水田に負荷されたT-N, T-Pはそれぞれ61.8, 7.89kg/ha・y, 対照区と比較した増加浸透流出量はそれぞれ2.0, 0.22kg/ha・yで, 窒素・リンの浄化率はいずれも97%と計算された.(4) 浸透水, 表層土壌および稲の茎葉と玄米のCd, Hg, Cu, Zn, Pb, Asの濃度には, 処理水区と用水区の間に有意の差は認められず, 7年間に上昇する傾向も認められなかった.(5) 処理水の潅漑水量は172~849mm/y, 平均415mm/yで, 降雨量が多くなると少なくなる傾向があった.(6) 処理水を潅漑した場合, 稲の生育はやや窒素過剰の傾向を示したが, 7年間の平均収量は処理水区, 用水区それぞれ5,950, 5,770kg/haで, 処理水潅漑による水稲の減収は認められなかった.以上の実験によって, 農業集落排水処理施設の高度処理水は, 無希釈でも水稲の玄米収量に悪影響を与えることなく, 水田に潅漑用水として再利用することが可能で, それによって地下水・土壌・稲が有害金属類や硝酸塩で2次汚染されることもなく, さらに高度に浄化されることを示した.
  • 西山 壮一, 河野 広, 王 長君
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 337-344,a3
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    南部九州地域における営農用水量は, この地域の気候条件や作付状況を反映して特徴的な展開をしていることが実態調査で明らかにされた. この報文において, 営農用水量とは多目的用水量の他, 収穫物洗浄用水, 機械・施設に対する水利用などをも含んでいる. 調査結果の概要は, 下記のとおりである.
    1. 営農用水は, 野菜など多くの作物に利用されているが, 量的には茶, ダイコン, サトイモ, 施設園芸作物など一部の作物に限定されている.
    2. 営農用水量は茶の霜害防止, 施設園芸の水分補給用水など, 用水量の大きい作物の作付面積割合を反映して地区による差異が大きい.
    3. 単位面積当たりの用水量は茶が最大であった.主に霜害防止用水量である. 一方, 施設園芸では利用目的がほぼ土壌水分補給に限定されている.その他では, 多種多様な営農用水が展開しているが, それらの用水量は小さい.
    4. 土壌水分補給, 播種定植用水などの土壌水分管理のための用水量は利用頻度, 用水量並びに利用面積などすべての点で最も必要性が高いといえる.
    5. 潅漑器具としては中間圧型スプリンクラ, レインガン, 定置パイプ, 潅水チューブ, 給水栓, 動力噴霧機などが用いられている. それらの中で中間圧型スプリンクラは土壌水分補給の他, 多目的に最も多く適用されている.
  • 奥山 武彦, 奥島 修二, 中里 裕臣, 今泉 眞之, 竹内 睦雄
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 345-353,a4
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    基準点で作成した補正データを使って測位精度を高めるディファレンシャルGPS (DGPS) の精度について現地試験による評価を行った。樹木の下ではGPSの受信状態が悪くなり, 精度の低下, 測位が不可能な時間帯が生じた。8個所の三角点でDGPSによる測位を行った結果, 三角点の座標値と測位結果との差は平面位置でα5m, 標高で1.6m以下であった。およそ3分間以上の測定値の平均をとると変動が半分以下に低減した。補正データの作成に使う基準点の平面位置と標高の値を作為的に変えると, 測位結果の平面位置, 標高に同じ量の変化が生じた。このことから, 基準点の位置精度は測位点の基準点に対する相対的位置を求める時には影響がないが, 座標系に基づく位置を求めるためには正確な基準点座標を使用する必要があることがわかった。DGPSは運用が容易であり, 野外調査のマヅピングなどに適した精度をもつ測位方法である。
  • 三輪 弌, 辻 聡太, 山本 恵, 菅原 美和
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 355-360
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    路線の地形勾配が急な水路では, 水路勾配を緩くとるために随所に落差工や急流工を配置する. 落差工直下流に静水池などが設けられ, 落差によって生じる水流のエネルギーを減勢するが, 下流開水路に激しい水面動揺が発生してしまう場合も多い. 岩手県胆沢平野地区の改修された開水路もその一例であり, 水面動揺の実態を明らかにするための現地調査を実施した. 施設最大流量16m3/sが流下する場合には, 平均水深1.7mに対して0.5mもの波高をもつ波が下流に伝播するように激しい水面動揺が発生する. 水路を流下する流量が減少すると, 水面動揺幅は縮小する. また, ほぼ1/2の水路幅・水深をもつ水路での比較調査でも, 急流工下流開水路において激しい水面変動が生じていた. 変動幅も1/2程度であるため, 大きな問題にはなっていなかったが, 類似の現象が発生していることが分かった.
  • 宮本 輝仁, 安中 武幸
    1998 年 1998 巻 194 号 p. 361-362,a4
    発行日: 1998/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    関東ローム表土の体積含水率(θ)と比誘電率(ε)の関係を広い水分範囲で測定した. 得られた実測値は, Toppの式に比べて同じ体積含水率でも低い比誘電率を示した./()に着目すると,θ=0.37がθ-(ε) 関係の折れ点となっているという結果を得た. 供試土の水分特性から,θ=0.37は団粒内間隙と団粒間間隙による保水の境界含水率に対応することが推察された.また, フィッティングパラメータを含まず, 土壌の物性値のみでθ-ε 関係を推定するモデルである混合誘電率モデルを適用したところ,θ=0.37の水分領域で実測値によく適合するが, それ以上の水分領域では適合しないことがわかった.
  • 1998 年 1998 巻 194 号 p. e1
    発行日: 1998年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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