本研究では, 圃場整備事業による経営規模の拡大とそれを通じた労働生産性の向上が, 規模階層ごとに発現形態を異にしながら, 大部分の農家, 営農組織において効果として現れていることを明らかにした。すなわち, 3ha以上の大規模層では, 事業後の経営規模拡大率が大きく, 規模の経済性によって労働時間低減の度合いも高いが, Iha未満の小規模層は, 事業を契機に規模を縮小しながら, なおかつ程度は大規模層に劣るものの, 労働生産性向上を図っている。したがって, 事後的事業効果の検証には, 経営規模別の調査が不可欠といえる。
また, 経営規模以外に, いくつかの効果影響要因が明らかになった。その要因とは, 事業実施地域による差, 専業農家であること, 大規模農家にあっては65歳未満であること, 地形傾斜1/100未満の平坦部における事業地区であること, さらには水路のパイプライン化を図っていることである。
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