農業土木学会論文集
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2000 巻, 209 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 原口 暢朗
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 599-611,a1
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水田の耕盤層において, 乾燥密度など5種類の土壌物理性の分布のサンプル断面積依存性を実験的に検討した。その結果, 体積含水率, 乾燥密度含水比及び飽和から4.9kpa以上の吸引圧までの脱水率の分布のサンプル断面積依存性は相対的に小さかった.この結果は4.9kpa以上の吸引圧の区間における脱水率の分布のサンプル断面積依存性が相対的に小さかったことから説明され, これらの土壌物理性の分布は断面積約7cm2のサンプルで把握可能であった.また, 飽和透水係数及び飽和から4.9kpa以下の吸引圧までの脱水率の分布のサンプル断面積依存性は相対的に大きかった.この結果は, 4.9kpa以下の吸引圧の区間における脱水率の分布のサンプル断面積依存性と対応しており, これらの物理性の分布は少なくとも面積41.2cm2のサンプルで把握すべきことがわかった.
  • 原口 暢朗
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 613-623,a1
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    飽和透水係数など6項目の土壌物理性の確率分布を考察するための間隙構造モデルの妥当性を, 水田の耕盤層における土壌物理性の測定値を用いて検討した.すなわち, 土壌物理性の測定値の一部からモデルのパラメータを推定し, 推定されたパラメータから計算された土壌物理性の期待値と測定値から求められたそれらとを比較した.その結果, 吸引圧hh/2からhh/2までの脱水率, 飽和から吸引圧hまでの脱水率, 吸引圧hにおける体積含水率, 乾燥密度において両者はほぼ一致したが, 飽和透水係数において両者は一致しなかった.飽和透水係数における両者の不一致は, 他の物理性において両者がほぼ一致したことに影響しないと考察されたことから, モデルは概ね妥当であると判断された.
  • 野中 資博, 高田 龍一, 佐藤 利夫, 山本 広基
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 625-631,a1
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, 水中環境下における生物易付着性能をもつコンクリートの開発とその利用を目的としたものである.このために, 混和材としてゼオライトおよび鉄分を含有したゼオライト (Fe含有ゼオライト) を混入し, 生物付着性能に及ぼす効果を実験的に明らかにし, さらにフライアッシュ (FA) とクリンカーアッシュ (CL) を用いた藻礁モルタルブロックにこれらを混入し, その効果を検証した.実験結果から, 他の混和材と比較してゼオライトによる明らかな生物易付着性能が認められるとともに, 鉄分 (Fe) の混入によりその効果が促進されることが明らかとなった.また, 藻礁モルタルブロックの生物付着試験では, モルタルにFeとゼオライトを同時に混入すればFAとCLのみのモルタルの場合より生物易付着性が高まることが分かった.
  • ボーエン比法の適用
    原口 智和, 中野 芳輔, 黒田 正治, 廣田 修
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 633-639,a1
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, わが国では施設畑の面積の増加が著しい.その約8割がビニールハウスであり, 夏期の間は側面開放状態で使用されることが多い.農業用水計画において, これらのハウスでの消費水量を正確に算定することが重要である.しかし, 確たる算定手法がまだ確立されていない, そこで, 側面開放状態のビニールハウスにおいて蒸発環境因子を測定し, その中における蒸発散量の算定を行った.微気象環境測定の結果, ハウス内風速と野外風速との間の回帰係数および相関係数は, 作物生育ステージによつて変化した.また, 多点式温湿度測定装置を用いた気温と湿度の空間分布測定の結果, 生育ステージが進み, 壁面と作物頂との間隔が狭くなったビニールハウス内では, 蒸発環境は野外からの移流の影響をほとんど受けないことが示された.そのような空間においては, ボーエン比法により蒸発散量の算定が可能であることを示した.
  • 渡邊 裕純, 高木 和広
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 641-648,a1
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    田面水及び水田土壌表層における農薬動態予測モデル (PCPF-1) が開発され, モデルの評価及び農薬流出管理への応用が検討された.酸アミド系除草剤, プレチラクロールのPCPF-1モデルによる農薬挙動のシミュレーションにおいて, 田面水での農薬濃度変化は圃陽実験での実測値を高い精度で予測が可能となった.モデルシミュレーションによる農薬流出制御のための管理手法の設定への応用として, 水管理による表面排水及びシロカキ等の管理による浸透量の違いによる農薬流亡ポテンシャルを比較した.シミュレーションの結果より農薬流出制御のための適正な止水管理と農薬の地下への浸透流亡を制御するための十分なシロカキは水田農業の環境負荷低減のため重要な最適管理策である.
  • 西村 眞一, 清水 英良
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 649-654,a1
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    フィルダムの堤体あるいは基礎で生じる漏水の原因の一つとして考えられる水理破砕は, 何らかの原因で生じた亀裂が水圧により押し広げられて発生すると考えられる.亀裂の発生原因としては乾燥・地震等の他, 限界を超えた載荷による破壊が挙げられる.圧縮の条件下の破壊は剪断破壊が主に考えられるが, 鉛直方向の圧縮により水平方向に伸びが生じ鉛直方向の亀裂が発生する場合も考えられる.金属等の材料において, この現象は材料の性質が延性から脆性へと性質が変化するにしたがい明確になる.岩においても, 一軸圧縮試験時に供試体の上下端面の摩擦を極力除くと縦方向の亀裂が生じることが知られている.そこで本研究では実際の農業用ダムの基礎地盤から採取した不撹乱試料に対し三軸圧縮試験を行い, 伸びによる縦亀裂の発生の有無について3種類の条件下で検討を行った.その結果, 供試体と三軸圧縮試験機のペデスタルとの摩擦を極力小さくすることにより, 鉛直方向の圧縮により縦亀裂が生じる場合があること, また縦亀裂は生じても, 強度的には縦亀裂を生じないものと同様な傾向を示す場合があることが分かった.さらに, 不撹乱土の上下端面に撹乱土の層を用いて行った試験では, かなり早期に縦亀裂が発生することが確認された.これは, 実際にフィルダムを造る場合, 基礎地盤上に撹乱土を築堤する際に鉛直亀裂が発生する可能性を示唆している.
  • 魏 江生, 山本 太平, 井上 光弘, 坂口 巌
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 655-664,a2
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1997年と1999年に鳥取大学乾燥地研究センターの大型ガラス室内の斜面実験区を用い, 7~8月に毛鳥素砂漠の降雨条件を想定して, 斜面区の植生実験を行った.砂斜面には方位 (南, 北), 勾配 (20°, 30°), 位置 (上, 中, 下) の地形的要因を設定した.(1) ~ (4) の結果が得られた.(1) 斜面方位に関しては, 南斜面は受ける日射が多く, 蒸発散量が増え, 土壌水分が減少し, 水ストレスを高め, 植物生育が劣勢になった.逆に北斜面に対しては, 受ける日射量が少なく, 水分条件が良く, 水ストレスが低く, 植物生育が優勢になった.(2) 斜面位置に関しては, 灌水後斜面下方への水移動により, 下部の水分条件がよくなり, 植物生育が良好になった.(3) 斜面勾配に関しては, 勾配が増えてくると, 斜面上において重力の影響で常に植物体が斜面下方に引っ張られる.つまり, この重カストレスが植物生育に負の影響を及ぼすと推定された.(4) 本研究結果の毛烏素砂漠への適用課題について, 気象, 土壌, フィールドサイズ, 植物種に関し概説した.
  • 丹治 肇, 竹村 武士, 蘭 嘉宜
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 665-673,a2
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水環境整備事業の単位当たり費用を, 管理者アンケートのデータを用いて分析した。面積・規模等と費用の限度額との関係を示す代表値の抽出では, 分布が小さい方に偏り, 大きな値に異常値が含まれやすく, 目視と箱ひげ図の上ひげ値を併用が有効である.整備費用の限度額を, a面積当たり事業費, トイレ, 駐車場整備費, 維持管理費, b施設数当たりトイレ, 駐車場整備費, c.全事業費当たり維持管理費, トイレ, 駐車場整備費で示した.
  • 郡山 益実, 瀬口 昌洋, 加藤 治
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 675-683,a2
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沿岸域や河口域に発達した干潟域における底泥の巻き上げ現象は, 内湾の水質環境や生態系に多大な影響を及ぼす.本研究は, 波と流れの共存場における干潟域底泥の巻き上げ機構について実験的及び解析的に検討, 考察したものである.共存場において底泥は, 鉛直成分に比べて水平成分の卓越した波動運動をした.このような底泥の運動は, 底泥表層の破壊さらには巻き上げ過程と密接に関連した.また巻き上げ率の時間的変化は, 底泥の巻き上げ過程を反映し, 大きく3区間に区分された.一方, 底泥内の最大剪断応力の鉛直分布は, 粘性流体多層モデルを用いて解析された.そして, 最大剪断応力や底面剪断応力さらには底泥の降伏値と巻き上げ特性との間の関連性が明らかにされた.
  • 底面融雪の研究 (3)
    倉島 栄一, 加藤 徹
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 685-692,a2
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    底面融雪の影響を河川流出機構の考究や利水計画のうえで反映させることは重要であると思われる.しかし底面融雪量の連続観測は長期にわたって表層融雪が起こらない厳寒地においてのみ可能であり, 根雪期間にわたる底面融雪量の推定例も, きわめて少ない.そのため, わが国に広く分布する積雪地域における底面融雪の実態は不明であると言っても良い.これを解明するために, 最近の4年間において明瞭な根雪期間を有する北海道から東海地方にかけての11地点を検討対象地点として選び, 各地点における底面融雪量を推定するとともに地点間の比較を行った.
  • 高山 昌照, 東 孝寛, 肥山 浩樹, 金山 素平, 濱田 龍寿, 永田 和成
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 693-700,a2
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    自然堆積状態にある有明粘土は正規圧密粘土である。本文においては, この不攪乱有明粘土試料の静止土圧係数K0および圧縮指数と膨張指数について検討するために, 側方応力測定をともなう一次元圧密試験と三軸等方圧密試験を行った.その結果, 有明粘土の正規圧密過程にあるK0値は, 圧密圧力が圧密降伏応力 (=有効上載圧力) に等しい応力下において最小値 (0.2~0.5) を示し, 圧密圧力が圧密降伏応力の4~6倍以上においてはほぼ一定 (0.45~0.65) になること, 除荷過程における静止土圧係数は過圧密比のm乗に比例し, べき数mの値は0.46~0.53であり, 塑性指数によらずほぼ一定であることが分かった.また, 等方圧密試験から決定した圧縮指数と一次元圧密試験結果を体積比一平均主応力関係で整理して求めた圧縮指数とはほぼ一致した.
  • 秋吉 康弘, 松井 十三生, 稲垣 仁根, 中園 健文
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 701-706,a2
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    急傾斜地に位置する急流工は, 水路内の微妙な不陸が原因となり, 水流の飛散による水面変動が生じる.また, 側壁が屈曲する場合, 高速流が屈曲部に衝突して衝撃波が発生し, 溢水の危険性などが生じ, 平地と異なった水理現象が見られる.よって, 急傾斜地での用排水路や急流工などの施設は, 計画及び施工が非常に困難である.また, 工事費等にも多大の経費が必要となる.そこで, 矩形水路断面の側壁を円弧状構造とし, 上流水路を流下する高速流が下流水路但手壁に衝突して飛び出す上向きのエネルギーをらせん流の回転エネルギーに変換して, 流水を制御する新しい急流工構造 (らせん流方式急流工) を開発したので, この構造について報告する.また, このらせん流方式急流工を組合せた工事費は, 従来の工法に比べて非常に安価である.
  • 有田 博之, 友正 達美, 河原 秀聡
    2000 年 2000 巻 209 号 p. 707-715,a3
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今日のわが国における農地政策は、短期的には農産物の構造的過剰を抱えながら、長期的な食糧需給の不安定要素に応えなければならない点に基本的困難がある。一方、わが国の今日の農地資源は、絶対量が少ない上に一部農地で耕作放棄が進むなど、既に極めて脆弱な状況にあるため、達成すべき自給率目標と農地資源の保全は別途の問題として論じ、必要な対策を緊急に講じる必要がある。農地政策の根幹は農地資源総体の保全にあるため、農地資源の利用に関わる自給率に比べて問題の深刻さはより大きいのである。本論では、こうした課題に対する解決方法として、粗放管理によって農地資源を保全することを提案し、これに関わる基礎的概念を整理した。
  • 2000 年 2000 巻 209 号 p. e1
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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