農業土木学会論文集
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2002 巻, 222 号
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  • 五行川水際線地域計画を事例として
    松井 明, 佐藤 洋平
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 629-635
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では多自然型工法を行った河川を選定し, この工法によって河川本来の生態系に歪みが生じていないか, 生じているとすればどこに問題があるか, そしてどのようにしたら解決できるかを明らかにすることを目的とした. 多自然型工法を行った河川 (五行川, 茨城県) の多自然型護岸およびコンクリート護岸における物理的環境および水生昆虫の現存量を, 自然河川 (鬼怒川, 栃木県) のそれらをもとに評価した。その結果, 五行川において多自然型護岸の水生昆虫の現存量はコンクリート護岸と比較して, 個体数および種類数ともに顕著に小さかった.この原因としては, コンクリート護岸は多自然型護岸と比較して水深が顕著に小さいことから, 五行川のように流域のほとんどが平坦な沖積地である, いわゆる野川においては, 護岸の影響はほとんどなく, むしろ水深をできるだけ小さくすることが水生昆虫の現存量を大きくする上で有効であることが明らかになった.
  • ため池の洪水低減機能の評価
    加藤 敬, 佐藤 政良
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 637-644
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本報は, ため池がもっ洪水ピーク低減機能の評価を目的とし, 大阪府の松沢ため池 (集水面積1.13km2) を検討対象として, 貯水位と降水量の記録から, 洪水低減の実績を分析するとともに, 確率降雨を用いて洪水を再現し, 洪水低減機能およびそのため池下流部への効果を評価した.検討の結果は次の通りである.1) 10分間雨量で10mmを超える強雨による実績洪水4例に対して, 37~98%の洪水ピーク流量低減効果を発揮した, 2) 洪水低減割合の大きさは, 洪水発生前の空き容量の大きさ, 洪水流入パターンに強く影響を受けている, 3) 5~200年確率の降雨を用い, 満水状態を前提にため池貯水のシミュレーションを実施した結果, どのような降雨パターンに対しても, 37~43%の洪水ピーク低減効果を持つことが示された, 4) ため池下流に対しては, 洪水の溢水頻度を毎年1回以上から2年に1回程度に低下させる効果を持つ.
  • 加藤 敬, 佐藤 政良, 太田 高志
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 645-651
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ため池がもっ洪水ピーク低減機能は, 降雨のパターンによって大きく影響を受けるため, ため池が発揮する洪水低減機能の実際を評価するためには, 実降雨のパターンを分析する必要がある.本報では, 大阪府の松沢ため池 (集水面積1.13km2) における7年間の10分間雨量の記録を対象に, 統計学上の概念であるひずみ度を降雨パターンに適用して実降雨を分析し, 降雨パターンとため池の洪水調節機能の関係について検討した.検討の結果, 比較的大きな一雨降雨については, ほぼ中央山型の降雨分布と見なしてよいこと, 一方, 総雨量50mm以上の降雨のピーク付近を取り上げると, ピークより前に雨量が多い例が多いことを明らかにした.これに基づき, ため池の洪水シミュレーションを行い, 貯水池の水位低下管理が洪水ピーク低減効果の増強にとって有効であると判断した.
  • プローブの熱電対位置の相違が熱的性質の測定値に及ぼす影響
    遠藤 明
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 653-658
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ロッド方向に埋設した熱電対の配置位置が異なる条件 (ロヅドと取っ手の境界部, ロッド中央部, ロヅド先端部の3箇所) において, 炉乾燥~ 水分飽和状態の砂土, 砂質埴壌土および埴壌土の熱的性質を双極熱パルス法にて測定した。土壌の熱的性質測定には, ロッド長0.045m, ロヅド直径0.0025mの中空ステンレス製ロッドをロヅド間距離が0.01mになるよう配置した, サーモTDRプローブを適用した、温度変化1一経過時間tデータの形状は, サーモTDRプローブのロヅド部および取っ手部に配置した熱電対の埋設位置によって異なり, 各位置における最大温度と最大温度出現時刻においても熱電対の配置位置の相違により著しい変化を確認した.各位置において測定した温度変化一経過時間曲線データに対し, 非線型回帰法を適用して温度拡散係数κと体積熱容量ρcを算出し, κ にρcを乗じて熱伝導率λを算出した。砂土における体積含水率θ=0.1におけるκの測定値は, 熱電対配置位置の相違により最大で2.2×10-7m2・s-1であった.低体積含水率 (θ<0.07) のρcの測定値は, 最大で約0.6MJ・m-3・K-1の差を生じたが, θ>0.07においてはその差が小さくなる傾向にあった.また, 各熱電対位置におけるλの測定値は, すべての土性においてθの増加に伴いその差が大きくなる傾向にあった。特に, 砂土においては最大で約0.9W・m-1・K-1の大きな差が生じ, 砂質埴壌土では約0.5W・m-1・K-1の差異が認められた.本実験により, 熱電対の配置位置は熱的性質の測定値を決定するのに重大な影響を与えることを確認した.
  • プローブのロッド長および熱電対位置の相違が熱的性質の測定値に及ぼす影響
    遠藤 明
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 659-664
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    有限要素法を適用した計算機実験において, 各種土性のz=L/2 (熱電対をロヅド中央部に配置した条件) において測定した熱的性質の測定値を入力値とし, 数値計算より算出した温度変化一経過時間 (△T-t) 曲線から, 出力値としての熱的性質を求めることを目的に逆解析を行った. 4種類のロヅド長L (L=1.25cm.L=2.5cm.L=5.0cm.L=10.0cm) の条件とロッド長方向に設置した仮想熱電対の配置位置が異なる条件 (ロヅド方向zに対する位置,z=0 z=L/4, z=L/2, z=3L/4およびz=L) とにおいて双極熱パルス法を適用し, 仮想試料内の温度分布と△T-tを計算した。計算した△T-tデータに対して非線形回帰法を適用し, 体積熱容量と温度拡散係数を求め, 各位置zおよび各ロッド長Lにおいて測定したときの熱的性質の体積含水率依存性を評価した. 熱パルスを発生させた後の仮想試料内の温度変化は, ヒータープローブが有限長であることにより, ロヅド長Lが短いほどr=0 (rは放射座標距離) の鉛直方向の軸に対して円筒状に分布することなく卵型に分布する傾向にあった.△T-tの形状は各位置が各ロヅド長Lにおいて大きく異なったが, 最大温度変化△Tmは, 常にz=L/2において最大になることを確認した.また, ロヅド長Lが長くなるほど, 最適位置z=L/2における等熱的性質線が相対ロッド長L軸に対して平行に分布した.
  • 中野 拓治, 糸井 徳彰, 北尾 高嶺
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 665-674
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    嫌気ろ床接触ばっ気方式の農業集落排水施設から得られたデータから, 接触ばっ気槽の窒素除去性能について, 流入条件や設計・操作因子による影響を検討し, その浄化特性を考察した.接触ばっ気槽の窒素除去は, 槽内水の浮遊物質の除去と槽内物質等からの剥離・再溶出作用による影響を除くことにより, 1次除去反応によって浄化機構を説明できるものと考えられる.接触ばっ気槽で生成された硝酸態窒素の一部は槽内の嫌気性部でガス化され槽内では硝化・脱窒が同時並行で進行しているものと推察される.また, 接触ばっ気槽では, ろ床の一部で脱窒反応が生じているため, BOD/T-N比による窒素除去率への影響が現れなかったものと推察される.窒素除去速度について, 流入水T-N濃度, 水量負荷, DO濃度, 及び水温を説明変数とする重回帰式を導けた.接触ばっ気槽における窒素除去性能の安定を図るためには, 槽内の硝化反応とろ床への汚泥蓄積速度から, 流入負荷に応じた接触ばっ気槽の設計・操作条件を検討することが重要であると考えられる.
  • 越山 直子, 三沢 眞一, 豊田 勝
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 675-681
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    湖沼などの閉鎖性水域の水質保全には, 適切な水管理と水質形成機構の解明が必要である.本研究では水質タンクモデルを作成し, 亀田郷流域の鳥屋野潟の水質推定を試みた.この水質推定モデルは, 水質について濃度係数法を採用した複合タンクモデルと湖沼の水質モデルから成り, 農村地域における農業用水の水管理による影響についても考慮した.この水質推定モデルを用いて, 都市化が進行している農業地域における水循環の変化が潟の水質に与える影響についてシミュレーションを行った.この結果, 浄化用水の増加により, COD濃度を大幅に低下させることができることや, 農地面積の減少に伴って農業用水の取水量も減少した場合, 中干し期においてCOD濃度が特に上昇することが予測された.水田が比較的大きな割合を占める集水域をもつ湖沼では, このような水質推定モデルによって都市化に伴う水質への影響を予測できる.
  • 小林 範之, 村上 章, 菊池 喜昭, 吉武 美孝
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 683-690
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    港湾構造物のうち横桟橋の設計を行うにあたり, 基礎に施工する捨石層の横方向地盤反力係数をどのように設定すべきかが問題となる.そこで, 運輸省第三港湾建設局において沖積・洪積粘土層および砂層が互層を成す地盤を例にとり, 粘土層の一部を捨石層で置き換えた地盤を原地盤の近接箇所で作成し, 原地盤と置換地盤の両方について杭の水平方向載荷試験を行った.杭にそって計測した傾斜計データを微分あるいは積分することで, 変位と曲げモーメントの深度分布を与え, これを観測値として拡張カルマンフィルタと伝達マトリックス法とにより横方向地盤反力係数の逆解析を試みた.得られた値がN値などによる推定値と比較して概ね妥当な値であること, 捨石地盤と粘性土地盤とで得られる地盤反力係数を比較した場合, 同一の変位レベルでは後者の値が大きくなることを明らかにした.
  • 劉 元波, 西山 壮一, 金森 秀行, 深田 三夫
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 691-696
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    灌漑施設においては, 低コスト低エネルギ.が要求される.曲がり管内の流れは, 流水の遠心力のため, 曲がりの内側と外側では, 水頭差が生じる.曲がりの内側と外側をパイプで結べば, その回路に流れが生ずる.これがバイパス流である.市販エルボ管を用いて実験を行い, バイパス流の特性を論じた.本管の流量とバイパス回路の流量は比例するので, この流量を測定することによって, 容易に本管の流量を知ることができる.バイパス回路の流量は本管の流量の数十分の一であるので, 本管の流量の代わりに, バイパス流量を測れば, きわめて小さい容量の流量計ですみ, 本管の流量を直接測る場合に比べ, 低コストとなる.このような流量計の設計に必要な水理機構について, 解明を試みた.
    曲がり管の水理の特徴は遠心力特性曲線によって表され, この特性曲線を実験により間接的且つ包括的に求める方法を提示した.また, バイパス流量がこの遠心力特性曲線とバイパス回路の水理抵抗曲線との交点のX座標であることを述べ, バイパス流を伴う流量計の水理設計の道を開いた.また, バイパス流を伴う流量計を現場に設置した場合, 生ずる課題についてその解決法を論じた。その1つにブイルタの課題がある.フィルタの影響を遠心力特性曲線で数量的に評価する方法を論じ, 水理設計に組み込むことができることを述べた.
  • 芸予地震による愛媛県のため池被害を事例として
    小林 範之, 吉武 美孝, 勝仙 邦久, 岡林 千江子
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 697-703
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 多数のため池を対象とした簡便な地震危険度の評価方法を提案する.ため池被害調査と「ため池防災データベース」のデータを用い, ニューラルネットワークによってため池の危険度を学習・評価するものである.ため池関連の (1) ダム形式,(2) 堤高,(3) 堤頂長,(4) 天端幅,(5) 上流法面勾配,(6) 下流法面勾配,(7) 堤体材料,(8) 築造年代,(9) 改修歴,(10) 被災歴,(11) 地形,(12) 表層地盤,(13) 表層地盤の固さ,(14) 表層地盤の年代の14項目と対象地震による各ため池での最大加速度と震央距離の2項目を被災要因として, ため池地震危険度評価のシステムを構築した.提案手法を2001年芸予地震に適用した結果, 高い精度の再現性が得られた.
  • 島田 正志, 松本 直也, 栗栖 良太
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 705-711
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    特性直線.水撃解析法により, 1545, 3100本の管路等からなる2つの大規模パイプラインシステムを対象に, 定常流の本格的な解析を行った.パソコンを利用して, 既存の方法では, 2つのシステムを約30分, 6時間程度で求解できる.圧力に比較して流量が相対的に速やかに解に近づくという特性を利用して, 流量 (流速) からエネルギー損失を求め, グラフ理論の木 (Tree) の情報から, 節点水頭を計算, 収束特性の改善を図った結果, 約15分, 1時間で求解可能となる.
  • 森 洋, 田中 忠次
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 713-720
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    地震時の斜面安定問題を対象として, 慣用的に用いられてきた円弧すべり計算の妥当性を, 弾完全塑性体モデルを用いた準静的弾塑性有限要素解析と比較することで検討した.均質な単純斜面モデルにおける有限要素解析から得られる限界水平震度と最大せん断ひずみ分布は, 震度法による円弧すべり計算結果と一致した.一方, 盛土形状が複雑な斜面モデルでは震度法の適用は困難で, 応力の平衡条件のみを考慮した円弧すべり計算の限界を示した.しかし, 有限要素解析を活用すれば実地盤設計モデルに対しても効果的にすべり破壊面等の検索が可能となり, 設計上想定される円弧すべり面と比較的よく一致した.また, 震度法を再現させるために実施した遠心加速度場での傾斜模型実験で得られた限界水平震度とすべり破壊面は有限要素解析結果と一致する傾向にあり, 準静的耐震評価手法の有効性を示すことができた.
  • 有田 博之
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 721-726
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    筆者等は, 将来の再区画整理に適合的な圃場システムとして道路抜き工法型等高線区画を提案しているが, これは再区画整理に当たって区画を等高線方向へ拡大する点に大きな特徴がある.この圃場システムを適用するには, こ, れを特徴づけるいくつかの条件を対象圃場が満たす必要があるが, そうした条件を現段階で持っ圃場は少ない.このため, 同工法の適用対象は極めて少ないと考えられる傾向があり, 普及を妨げる原因ともなっている上本稿では, こうした適用上の制限を緩和する圃場形態として,「拡張型」の道路抜き工法型等高線区画を提案し, 広範な適用が可能であることを示した.また, 圃場形態の決定においては,(1) 区画を乗り越えるための時間,(2) 減歩,(3) 除草面積条件を総合的に検討すべきことを論じた.
  • 秋葉 正一, 栗谷川 裕造, 佐藤 弘史
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 727-735
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    一般にアスファルト舗装の表層および基層は品質の異なる混合物を用いて2層以上の層で構成されている.本論文は多層構成された舗装用混合物の理論構造設計に必要な各層の弾性係数を室内試験により合理的に求める目的で, 2次元弾性解析結果と曲げ試験結果を用いた一推定手法について述べたものである.この手法は有限帯板法による2次元弾性解析結果と曲げ試験の変位あるいはひずみの実測値から逆解析により各層の弾性係数を同時に推定するものである。まず, 弾性材料を用いた実験によりこの手法の整合性を確認した.つぎに, この推定手法を2層構成のアスファルト混合物供試体の層弾性係数推定に適用した.その結果, 低温状態では単層による推定結果と近似するが, 高温状態では単層による推定結果と必ずしも一致しないことが確認された.
  • 牧山 正男
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 737-742
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    直播栽培の中でも今後重要な役割を果たすと考えられる湛水土壌中散播に注目し, その手法での種子の埋没深に表面土壌硬度, 湛水深, 被覆種子の質量と大きさ, 並びに落下高さが及ぼす影響について, 室内実験を通じて検討した.その結果, 湛水条件下で種子が適切な埋没深を得られるのは, 代かき後の土層がまだ十分に沈下せず, 表面土壌が極めて軟弱なときのみであること, また被覆種子の質量や落下高さを増すことによって埋没深を増せるのも, 湛水下では表面土壌が軟弱なときに限られることが明らかになった.これらは湛水の抵抗が大きいためである.従って湛水土壌中散播で適正な種子の埋没深を得るためには, 代かき後で土壌が軟弱なうちに播種する必要がある.
  • 中矢 哲郎, 桐 博英, 丹治 肇, 藤井 秀人
    2002 年 2002 巻 222 号 p. 743-744
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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