農業土木学会論文集
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2002 巻, 217 号
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  • Hossein Dehghani Sanij, Mohammadreza Taherpour, 山本 太平
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 1-8
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    マイクロ灌漑システムにおいてエミッターの目詰まりは灌漑水の均一配水に悪影響を及ぼし, 作物の用水量の増加と灌漑水の水利用効率の低下を生ずる.ここでは選択された水質特性 (化学的), 潅漑システムの利用期間 (長期と短期) および潅漑システムにおける (i) エミッターの目詰まりと (ii) 配水の均一性について調べた.フィールド実験はイラン国の南東部に位置するラフサンジャンとジャハロム地域の11個所のマイクロ灌漑システムで行なわれた.ラフサンジャンでは, 目詰まりは潅漑水中の炭酸カルシウムによって引き起こされ硫酸カルシウムの影響は少なかった.一方, ジャハロム地域においては逆の傾向を示した.一般に目詰まりはジャハロム潅漑システムがラフサンジャンより大きかった潅漑水のpHはラフサンジャン潅漑システムがジャハロムより高かった.圃場においてエミッターの目詰まりの重要性を評価する指標として, エミッター流量の変動係数 (Wq1) はエミッター流量の均等係数 (Uc) や流出均等係数 (Eu) に比べてより感度が良好で信頼性が高いように感じられた.Euは長期の潅漑システムの利用においてEu<66%と低いが短期においては80%以上の高い値を示した.
  • 向後 雄二, 浅野 勇, 林田 洋一
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 9-18
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    不飽和土のせん断及び圧縮特性を表現可能な弾塑性モデルを提案した.不飽和土の弾塑性モデルの定式化においては、二つのサクション効果を考慮することが必要である。著者らはすでに不飽和土を対象とした弾塑性モデルを提案して来ている。しかし、これらのモデルは粘性土の不飽和力学挙動を表現するには適しているが、砂質及びシルト質の土のその挙動を表現するには十分でない。ここで記述するモデルは粘性土、砂質土及びシルト質土の不飽和力学挙動を表現できるように修正された。修正は土質によって形状の異なる状態面をモデル化することによって行われた。また、そのモデルは繰り返し塑性に立脚したモデルである。このモデルを用いて, シルト質土のDLクレー及び砂質土の人工混合土の室内せん断及び圧縮試験を解析した結果, 解析結果は実験結果と比較的良い一致を示した.
  • 雨除けトマト栽培施設の立地形態の側面から
    松本 康夫, 三宅 康成
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 19-24
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    中山間地域の農村振興を考えるにあたり, 付加価値の高い農産物を媒介として農村を活性化しようとする戦略がある.本論では, 雨除けトマト栽培を通して農村の活性化を図っている先進事例地区を対象に栽培施設 (雨除けハウス) の立地形態の側面から基盤条件を分析し, 今後の地域営農を支援する基盤要件を検討した.調査分析の結果, 雨除けハウスは散居形態にある個々の農家の近隣に立地し, 圃場整備後の整形区画で日照と通風に恵まれ農産物の搬出作業性に優れた短辺方向に建てられている.また, 水利条件が整い, 下層が礫質の排水のよい基盤条件にあることがわかった.水田の生産調整を契機として適切な作物の選択と普及活動に支えられ, 圃場整備によって作物生育の物理的, 生理的条件が整っただけではなく, 集約的な栽培管理が可能な集落形態にも支えられていることが明らかになった.今後, とくに雨除けハウスによる降雨流出の増加に対する排水路整備が重要である.
  • ケマル シェムス, 青山 咸康
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 25-33
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    フィルダムなど不飽和土の圧密がおこる土構造物の建設する場合には, 多くの問題がある。不飽和土内に存在する気体は閉塞された状態にあり, 間隙部分は気液混合め圧縮度と等価な圧縮度を持つ流体で満たされていると仮定できる。本論文ではビオの圧密理論を拡張した不飽和土に対する弾塑性有限要素解析結果を示した。
    このモデルを用いて, フィルダム建設時の間隙水圧挙動に対する飽和度の影響を検証した。観測データのあるフィルダムを解析の対象とし, 実測結果と解析結果とを比較した.これより不飽和性は建設時の間隙水圧の増加を減少させていること, さらに飽和モデルよりも実測値に近い結果を得ることが本モデルにより明らかになった.
  • 吉田 昭治
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 35-48
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    Lagrange座標系と公称歪による浸透水に関する連続式をもとに, 有効応力に関する線形一次圧密支配式を導いた.この圧密式では, 層厚が変化する圧密問題でも固定境界の下で解いた解が厳密解となる.この解析解がTerzaghiの理論解と一致するのは, Euler座標系によるTerzaghiの圧密式が誤って線形式として誘導され, さらにEuler座標系では誤った固定境界の下に解かれた結果, 本論の式を解くことに一致したことによること, また三笠の対数歪による圧密式の場合, Euler座標系なのに固定境界の下に解くという解法を間違ったためにデータ整理法などに様々な矛盾を生むことになったことなどを明らかにした.標準圧密試験データからカーブフィッティングにより圧密係数と体積圧縮係数を同時にセットで求める方法を提案し, 一次圧密はこの2つの土質パラメータにより規定されることを明確にした.
  • 東北地方早田川における事例
    渡辺 一哉, 大久保 博, 前川 勝朗
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 49-54
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    月ごとに計12回の調査を行い, 単位努力量あたり漁獲量=CPUE (Catch Per Unit Effort) を用いてヤマメ・イワナに対する釣りによる圧力について検討したCPUEは一時間あたりの採捕数および総全長 (=Σ (個体の全長)) として算定した.調査区間1.6kmでの水面積の比率は, 早瀬・平瀬・ステップ・淵の順に低くなっていた.ポイントの平均密度は, 平瀬が他に比べて2~3倍高く, 淵が最も低い値であった.12回の調査の平均CPUEは, 水温が15度以上になる夏期には低く, 春と秋に高くなる傾向を示した.平瀬ではCPUEは低く (25cm/h), 淵では高く (97cm/h) なった, 淵と早瀬は漁獲数・量ともに全体の約80%を占め, 平均型 (16~20cm) への圧力が高く, 平瀬・ステップは相対的に小型 (16cm以下) への圧力が高い傾向が見られた、河川形態毎にポイントの特徴や渓流魚に対する釣りによる圧力の特徴が明らかになり, 渓流域での釣りの圧力の軽減策を考える際の重要な知見を得ることができた.
  • 赤石川赤石第2頭首工の魚道を事例にして
    泉 完, 高屋 大介, 工藤 明, 東 信行
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 55-63
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    青森県の赤石川に設置されている赤石第2頭首工のアイスハーバー型魚道において魚類の隔壁通過経路と遊泳魚の切り欠き通過時の遊泳速度, および流速分布特性との関係について実証的に検討した.その結果,(1) 遊泳魚は切り欠き部の越流水脈の中をほぼ一様に遡上すること, 底生魚は吸盤を使って水流が接している切り欠き部の天端や側壁沿いを這うようにして遡上すること,(2) 遊泳魚は魚道水路の側壁部を選好し, 流速変動が小さな140cm/s前後の流速中を遊泳・遡上していること,(3) 潜孔部では, 静穏域である隔壁非越流部や潜孔側壁の背面から, 潜孔内の底面隅各部を選好し, 150cmls-200cm/s (流速変動値10cm/s-15cm/s) の流速の中を遊泳・遡上していくこと,(4) アユおよびウグイであると推測された遊泳魚の通過速度と体長の関係が示され, 体長ごとの遊泳速度は意外と速い190cm/s-250cm/s (3cm≤ 体長≤16cm) 程度であることなどが明らかにされた.
  • 沖縄県における赤土流出モデル化に関する研究
    大澤 和敏, 酒井 一人
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 65-70
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沖縄県では近年, 過度の赤土流出が問題となり, その予測法が求められている, 本研究では, 降雨データから浮遊土砂濃度の経時変化を表現できる浮遊土砂流出モデルの構築を目的とした.まず, 代表的な負荷量算定式であるLQ式では表現できない土砂流出特性を表現するために, LQ式に加えるべき機構について検討した.その結果, 各機構による改善効果が確認できた.次に, それらの改良点を取り入れた形で土砂流出過程を表現し, 降雨のみを入力データとする浮遊土砂流出モデルを構築した.降雨流出過程は流出成分を分離可能な貯留型モデルで表現され, 土砂流出過程は降雨による土粒子の分散機構や分散後の土粒子の貯留機構から構成されている.そのモデルを沖縄県における屋嘉下口川流域に適用した結果, 約2ヶ月の再現期間において浮遊土砂濃度の経時変化を精度良く再現することができた.
  • 吉田 昭治
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 71-80
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    粘性土の構造はpedの集合体からなる二階層構造をなすものとし, 一次圧密はped間のマクロ間隙の, 二次圧密はped内のミクロ間隙の圧密と仮定し, ped群からなる土骨格とpedはそれぞれ弾性体として, 萩しくped間有効応力概念を導入し, 公称歪とLagrange座標系による圧密支配方程式を導き, Laplace変換によりその解析解を求めた.解は, マクロとミクロ間隙それぞれの体積圧縮係数と圧密係数か圧密遅延時間の計4個の圧密定数で表される.この解から一次圧密の最終沈下量を100%とする一次と二次の圧密度が時間係数の関数として導かれた.標準圧密試験データにっいてカーブフィッティングにより載荷重ごとに4個の圧密定数を同定した.これによると圧密度理論曲線が時間係数で20から40位まで試験データとよく一致することが確認され, 圧密沈下の予測可能時間は飛躍的に拡大された.
  • 古賀 潔, 三浦 英晃, 佐々木 旭
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 81-87
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    突固めた火山灰質粘性土の間隙構造形成における空気の役割を明らかにするため, 大気圧下および真空下で突固めた供試体の間隙を軟X線立体造影法を中心に検よ討した結果, 以下のことがわかった.1) 真空下で突固めた供試体は大気圧下と比べて特に湿潤側で密度が高く, 飽和透水係数が小さかった.空気は突固めの際に充填を阻害する働きをしている.2) 毛管上昇飽和した大気圧下突固め供試体では膜状粗間隙が造影されたが, 十分飽和した供試体ではこれが見られず, 団塊を包む膜様の間隙が見られた.3) 真空下突固め供試体では膜状粗間隙は観察されなかった.このことから, 膜状粗間隙は封入された空気が原因で形成されるものと考えられる.
  • 米須地下ダム流域を例として
    今泉 眞之, 奥島 修二, 塩野 隆弘
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 89-100
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沖縄本島南部, 米須地下ダム流域のボーリング柱状図の記載から読み取った琉球石灰岩中の洞くつは海岸からの距離500m以内, 標高10m--50mの範囲に分布している.洞くっレベルから推定された古地下水面勾配は下位から, 1/20→1/40→1/60→1/70と上位ほど緩傾斜になる.推定された勾配は, 現在の海岸付近の地下水面勾配1/300-1/500に比較すると急傾斜すぎる.この原因は, 地形の傾動が継続して生じたことによると考えられる.傾動を補正した古海水面と海面変化曲線から推定した洞くつの形成時代は, 最下位レベルー45m, 9800年-8300年B.C.;-31m, 7600年B.C.;-15m, 5800年B.C.;-2m, 4300年B.C.;+4m, 2800年B.C.と推定された.海岸からの距離と地下水位振幅関係に適合する透水係数は0.0006m/sで, 潮位との位相遅れ時間に適合する透水係数は0.008m/sである.位相遅れ時間から求めた透水係数がおおきい理由は, 位相差は実際の地下水が流動しているのではなく, 圧力の伝播によっているため, 見掛けの透水係数が大きくなると考えられる.
  • 香川県及び大阪府のため池の空き容量と水田の雨水貯留可能量との比較から
    中西 憲雄, 加藤 敬, 小林 宏康, 中 達雄
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 101-107
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    我が国では, 古来よりため池による水田灌概が行われ, 受益面積が2ha以上のため池に限ってもその数は約69,000箇所に達する.ため池は, 灌慨用水源として食料の安定的生産に貢献しているだけでなく, 水田や畑地, あるいは宅地等の上流域に位置する場合が多いため, 雨水や集水域からの流出水を一時貯留して, 下流地域に対する洪水の低減を図る役割も担っていると考えられる.本報文では, 香川県及び大阪府を事例地区として, ため池が灌潮のための水利用の過程で, 空き容量が生ずることにより, 洪水防止機能評価の指標として雨水を貯留する可能性 (ポテンシャル) をマクロ的に評価した.この結果, 事例地区のため池において, 9月初めの雨水貯留可能量は, 通常の年においてそれぞれの府県の水田の有する貯留可能量の約2.1倍及び1.2倍に達することを明らかにした.
  • 九鬼 康彰, 高橋 強
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 109-117
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    これまで都市近郊での不耕作農地は農業的土地利用から都市的土地利用へ変化する過程における中間的存在とみなされてきた。本研究では神戸市西区を対象に, 1986年から2000年における不耕作後の土地利用変化を市街化区域, 市街化調整区域別に調べた.その結果, 不耕作農地は都市的用途へ転用されるだけでなく再び農地として耕作されるケースや, 不耕作農地のまま残されるケースもあることが分かった.
    このように不耕作後に利用先が分かれる要因として農家から農地までの距離や, 農地の道路への接続の有無が影響していることを明らかにした。また不耕作農地のまま残されるケースの解決には, 圃場整備等による基盤整備が必要であることを指摘した.
  • 森井 俊広
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 119-124
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ロックフィル構造物の通水性能を適切に評価するためには, 流速と動水こう配の非線形な関係を明確に記述する必要がある.著者は, すでに, 河川礫を用いた1次元透水試験にもとづき, 間隙の水理学的平均径を変数とする水頭損失式を提示した.この水頭損失式の実務性を調べるため, 室内水路を用いた15ケースの小型堤体実験を実施した.実験結果を一覧表でまとめるとともに, 逐次近似法を取り入れた非線形流れのFEM計算法を用いて, これらの実験結果を解析した.流量, 自由水面, 全水頭分布などについて, 実験値とFEM計算値との良好な対応がえられ, 提示した水頭損失式が有効に成り立つことを確認できた.今後の重要な課題として, 水頭損失式に含まれる間隙の水理学的平均径の適用範囲を広げていく必要があることを指摘した.
  • 常住 直人
    2002 年 2002 巻 217 号 p. 125-126
    発行日: 2002/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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