農業土木学会論文集
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2002 巻, 219 号
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  • 小野寺 忠夫, 鶴田 正明, 長利 洋
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 295-302
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水田における均平度の悪化は除草剤や肥料の効果が不均一になるうえ, 移植時の苗の水没や直播栽培における苗立ち率の低下など生育, 収量にも少なからず影響を与える.
    そこで, 大区画水田における安定的な作物生産のため, 営農段階で使用することを目的に近年開発されたトラクタ装着型のレーザ均平機を用いて現地実証試験を行った.その結果, 1) レーザ均平機による田面均平作業の均平精度は高いものの, 耕盤均平作業の精度は劣る, 2) 田面均平の高い精度は持続しないことが多い, 3) オペレータにより作業能率は異なる, などの実態が明らかになった.また, 熟練オペレータの作業工程を参考にして, 4) レーザ均平機の特徴を生かした作業工程を提案した.
  • 塩沢 昌, 多田 敦, 楊 継富, 佐久間 泰一
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 303-311
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    代かき用水量は単位時間の水田用水量では格段に大きく, これを規定する要因を検討する必要がある. 本研究では, 下層土が泥炭で比較的透水性の高い低平地水田を調査圃場として, 代かき灌慨時の圃場の湛水過程を観察するとともに, 灌漑前の土壌水分とインテークレートを調べ, 用水量の構成要素を分析した. その結果, 湛水面積が積算流入量に比例して拡大したことから, この水田では浸透損失は重要ではなく, 水足の進行と代かき用水量を決めるのは湛水深と灌漑前の土層の湛水に対する水分不足量の和であり, 圃場のこの基本性格を決めているのは, 耕盤や心土の透水性ではなく, 1m以深に存在する粘土層であると考察した. 一般に低平地水田では, 周囲が湛水のない孤立した水田でない限り, 大区画水田であっても取水時間が制限要因でなければ, 代かき湛水が圃場長辺長の制限要因にはならないと言える.
  • 小島 紀徳, 石田 丈介, 濱野 裕之, 田原 聖隆
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 313-319
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    乾燥地での植林にあたっては土壌中の水移動を制御し, 蒸発, 流失量を極力削減し, その分を樹木からの蒸散に変えることが必要である.そのために保水材を土壌に混合して透水性, 保水性を改善することが提案されている.本研究では豊浦砂に高分子保水材 (SAP), ボーキサイト, ピートをそれぞれ一定割合で混合し定量的に透水性, 保水性の挙動変化を把握した.また, 各保水材の最適な利用法についても考察した.
    その結果, どの保水材を混合しても, 混合率の増加に伴い透水性は減少し, 保水性は増加する傾向が定量的に明らかになった. ピートを混合すると4.2>pF>1.8で大きな保水性の向上が確認された.焼成ボーキサイトでは, pF>4.2での体積含水率が大幅に増加し, 特に乾燥地において有効である可能性が示唆された.
  • ライフサイクル分析の考え方を援用した稲わらリサイクル計画の事例的分析
    小林 久, 山田 靖子
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 321-327
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    稲わらのリサイクルシナリオ (燃料ガス化, メタノール化, 発電, コンポスト化, 廃棄) を対象に, ライフサイクル分析の考え方を援用して, エネルギー収支, CO2排出量を試算した.水田1ha当りの稲わらを原料とした燃料ガス化, メタノール化, 発電の各エネルギー生産シナリオの‘純エネルギー生産量’は, それぞれ455 GJ, 15.4 GJ, 4.5 GJとなった.肥料投入を含む各シナリオのエネルギー収支は燃料ガス化とメタノール化がそれぞれ40.2 GJ/ha, 10.1 GJ/haの生産, 発電, コンポスト化, 廃棄がそれぞれ0.8 GJ/ha, 6.1 GJ/ha, 53 GJ/haの消費と試算された.生産されるエネルギーの消費までを含めたCO2排出量はメタノール化が最も小さく (11,614kg-CO2/ha), エネルギー化はいずれもコンポスト化, 廃棄より小さかった。これらの結果は農業副産物リサイクルの計画・評価において, 多面的視点が必要なことを示していると考えられた.
  • 石井 敦, 岡本 雅美
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 329-335
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    わが国の稲作農業を今後の国際競争に耐えるものにするためには, 農地の「利用集積」を行って「担い手農家」の経営規模を数10ha以上にし, 利用集積された水田を集団化して数ha以上の巨大区画にする圃場整備事業が必要と考えられる.そこで, 利用集積に同意した貸手農家の換地を集団化して巨大区画を創出した圃場整備事業の実施例を集めて調査し, 集団化のメカニズムを検討した.その結果,(1) 自作農家が多数残っている地区等では巨大区画は集落から遠い等の不利な条件の場所に配置され,(2) 貸手農家はこうした不利な場所への換地は基本的には受け入れないものの,(3) 所有規模がきわめて零細な貸手農家等はこうした換地を受け入れる場合があること, また,(4) 巨大区画の創出を要件とした補助金や小作料の増額はこうした集団化を促進すること等が明らかになった.
  • Khaled HASSAN, 服部 九二雄, 緒方 英彦, 林 昭富
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 337-344
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 無機系混和材としてのフライアッシュ及びシンダーアッシュとを一緒に使用したときの水和・ポゾラン反応の特性を評価した.マッシブなコンクリートおよびセメントペーストの力学的特性変化に関与する混和材の違いを明確にするため, 粉末X線回折 (XRD) 及び走査型電子顕微鏡 (SEM) を利用してフライア・ソシュとシンダーアヅシュの微細構造とポゾラン反応を調べた。粉末X線回折の結果から, ペーストは基本的には, カルシウムシリケートゲル (C-S-H) で構成されていることがわかった。これはSEMによる観察からも確認され, そのマトリヅクスは密であり, 結晶質というよりもより非晶質であることが明らかとなった。シンダーアヅシュはフライアヅシュと同じポゾラン反応を示し, 水酸化カルシウム (CH) の水和物はフライアヅシュのようにシンダーアヅシュを包むだけでなく, シンダーアッシュ中の微細な孔に浸入していることが観察された。このことは, シンダーアヅシュがフライアッシュと類似の化学成分であるため, より多くのC.S-Hゲルを生成させ, コンクリートの強度発現に寄与することを意味している.SEMによる観察の結果・セメントとフライアッシュが同量のペーストよりも, コンクリートの方が均質で, 強度への寄与が高く, セメントペーストのみのものと比較すると, フライアッシュとシンダーアッシュ中の細粒分がペーストと骨材の間の微細構造を改良する機能を果たすことがわかった。
  • GIS (地理情報システム) を活用した福岡県黒木町黒木・豊岡地区における検討
    柳澤 孝裕, 中野 芳輔, 東 奈穂子, 真玉 明子
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 345-356
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    福岡県黒木町で圃場整備の意向がある地区を対象に地理情報解析ツールとして一般化しつつあるGIS地理情報システムと客観的評価のできる数量化III類を用い, 土地分級評価と農地を対象にした土地利用の方向性にっいて考察を加えた.
    まず, 比較的既存資料の収集が容易なデータとして, 土壌生産力等8因子に絞り, 水田, 畑, 果樹園, 茶畑それぞれの農地一筆毎の自然条件, 社会条件を分類し, 数量化III類を用いで性格の異なる農地のグループ化を客観的に行った.グループは自然回帰エリア, 都市化推進エリア, 圃場整備推進エリア等にまとめることができた.グループ化検討においては, カテゴリーが単純なほど明確なグループができると言える.最終的には水田, 畑, 果樹園, 茶畑を総合的に評価し, 農地利用の方向性を示した.市町村が優良農地の保全や基盤整備の検討を行う際には, 比較的単純で客観的な手法と言える.
  • 赤江 剛夫, 後藤 光喜, 石黒 宗秀
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 357-364
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農地土壌の濁水発生防止は, 農地整備事業の実施に当たり極めて重要な問題である.本論文では, 農地土壌の分散性を規定する支配的な基礎的物理化学特性を明らかにするため, 中国四国地方の代表的な土壌型の農地土壌の粘土分散率を評価して基礎的特性との関係を検討した.その結果, 比表面積と陽イオン交換容量と粘土分散率の相関が高いことを見いだし, その原因を分散凝集理論に基づく表面電位の変化, および沈降に対する安定性の観点から考察した.表面電位の計算では, 塩・電位差滴定法により求めた永久荷電量を面荷電とした.また, 比表面積が大きく粒径の小さい土壌ほど沈降に対する動的安定性が高いことが推定された.農地土壌に石膏を添加すると凝集が促進され, 粘土分散率が低下したが, 石膏添加が表面の荷電特性にどのような影響を与えるかを検討した.石膏添加による凝集効果が大きい土壌では, 面電位の変化量およびpHで決まる粒子端電位の変化が大きいことが認められた.
  • 宗村 広昭, 増田 未生, 後藤 章, 水谷 正一
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 365-373
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    豊富で良質な地下水を有する那須野ヶ原において近年, 浅層地下水のNO3-N汚染が徐々に進行している, 本研究では保全策を講じる第一歩として, 地下水水質の現状把握及び変動傾向の把握, NO3-Nの濃度変化を引き起こす負荷流入メカニズムの解明, 年間窒素収支の推定を目的に研究を進めてきた.長期にわたる観測結果から, NO3-N濃度が夏季になると上昇し, 冬季になると低下するパターンを繰り返すことや, 降雨浸透がNO3-N濃度を上昇させる傾向にあることを明らかにした.またそれは, 土壌内に大量に貯留された汚濁負荷が降雨浸透と共に地下水帯へ流入することによって引き起こされることを解明した.さらに, 汚濁源ごとにダイヤグラムを作成し年間窒素収支を推定することによって, 地下水窒素汚染の主原因が畜産糞尿であることを定量的に把握した.本地域においては, 伏流水の存在が地下水水質を比較的低濃度に抑えるための大きな役割を果たしていると推察された.
  • 石井 敦, 岡本 雅美
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 375-381
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農地の「利用集積」により経営規模を数10ha以上にした「担い手農家」の耕作地を集団化して数ha以上の巨大区画水田を創出する集団化方法として, 利用集積された水田の耕作権のみを集団化する方法 (耕作地調整) がある.こうした方法で巨大区画水田を創出した圃場整備事業実施地区を調査し, 耕作地調整のメカニズムを検討した.その結果, 巨大区画内に換地を残した自作希望農家らと担い手農家の耕作地調整により, 担い手農家の耕作地を集団化して巨大区画を創出しうること, 自作希望農家らが耕作地調整に応じる動機付けとして耕作地調整による耕作地条件の優良化や彼らの離農志向等があること, 圃場整備事業の面工事開始前に耕作地調整による耕作地集団化を計画することで巨大区画の過剰な圃場施設整備を避けられる可能性があること等が明らかになった.
  • 農業用ため池の浸透破壊に関する実験的研究
    堀 俊和, 毛利 栄征, 松島 健一, 青山 咸康
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 383-392
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業用ため池は全国に約25万カ所点在し, 農業用のみならず地域の貴重な水資源として定着している.しかし老朽化が進んだため池では, 豪雨時等の貯水位上昇時にハイドロリヅクフラクチャリングが原因と見られる浸透破壊を発生する事例が多く見られる.本研究では, 室内試験により粘性土供試体内部に水圧を負荷してハイドロリヅクフラクチャリングを再現し, 亀裂の進展を観察することによって, 破壊メカニズムの検討を行った.供試体内部で発生, 進展する亀裂を軟X線によって観察した結果, 破壊が「亀裂の進展」と「亀裂面から供試体への浸透と亀裂幅の拡大」を繰り返す断続的な現象であることが分かった.亀裂の進展方向は最小主応力面に平行であり, ハイドロリヅクフラクチャリングが引張破壊であることが分かった.また最小主応力方向の変位は亀裂の進展開始まで非常に小さく, 亀裂進展開始と同時に急増することが分かった.
  • Hisidore AZO, 青山 咸康, 木山 正一
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 393-398
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    消石灰および消石灰と活性炭を添加した浄水場汚泥二種類に関する地盤工学的特性を考察する室内試験を行う.両汚泥は高含水比で試験され, 非排水せん断強度, 間隙水圧係数および変形強度係数の含水比依存性を分析する.その結果, 消石灰と活性炭を添加された汚泥は, 消石灰処理汚泥に比べて高い圧縮性と高塑性を示した高含水比にあっても, 汚泥は破壊時に粘着性を有する知見が得られた.消石灰添加汚泥では, 割線弾性係数と含水比の間に線形関係が観測された一方の消石灰と活性炭を添加された汚泥の同関係においては, 割線弾性係数は含水比93%で最大値をとり, より高含水比で減少する以上の試験結果から, 相対的に安価な汚泥は地盤材料としての必要な工学特性を有していると結論づけられる.
  • 伊藤 健吾, 千家 正照, 岩間 憲治, 橋本 岩夫
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 399-405
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ビニールハウスにおけるトマトのロックウール栽培を対象に, 蒸発位推定に必要なハウス内気象データをハウス外データから推定する方法について, 実測と設計計画基準に示された方法を比較して検討した. 気温の推定において, 計画基準の推定方法ではやや過大評価する傾向を示した. 一方, 湿度の推定では, 非暖房期はハウス内外の飽差が等しい値を示したが, 暖房期ではそのような傾向は認められなかった. 一方, ハウス内外の水蒸気圧には, 暖房の有無を問わず強い相関関係が認められたことから, 本調査圃場におけるハウス内湿度の推定は飽差よりも水蒸気圧を用いたほうがよいと考えられる. 日射の透過率は, ハウスの鉄骨密度, 被覆資材の種類や状態などによっても変化するが, 本圃場では66%となった.ハウス外気象データからハウス内気象を推定し, ハウス内蒸発位を求めたところ, 小型パン水面蒸発量と高い相関関係にあった.また, 測定期間における平均日消費水量は2.50 (mm/d), その期別最大値は7月の3.54 (mm/d) となった.実測による消費水量と蒸発位の比から本調査圃場におけるロックウール栽培トマトの作物係数を算出した結果, 計画基準に示されている露地栽培トマトに比べ小さい値を示した.
    ハウス内では日照条件にバラツキがあるため, 場所によって消費水量が異なる.本圃場では灌水の9%が余剰水となって排水されたが, 灌水は最も消費水量の多い地点に合わせて行うため, ある程度の余剰水の発生は不可避である.余剰水が最小となる灌水を行った場合の灌水量に対する消費水量の割合を試算すると, 本調査圃場では95%となった.
  • 酒井 俊典, 佐野 太郎
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 407-414
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 地盤の埋め戻しがアンカー引抜き抵抗力に及ぼす影響について検討を行った.埋め戻し地盤はモールド中央に厚さ1mmの鋼鉄製円筒を設置し, 円筒外部を密詰めで作製した後, 円筒内部を緩詰めで作製し, その後, 円筒をゆっくりと引抜き, これを実験地盤とした.試料には豊浦標準砂を用いた.アンカーは直径 (D) 5cmの円形アンカーを使用し, 埋め戻し範囲の直径は5crn, 6cm, 7cmの3種類とした.また, 本研究は浅いアンカーを対象としているため, 地盤高さ (h) はh/D=2となる10cmのみとした.実験の結果, 埋め戻し範囲5cmと6cmにおける剪断帯は, 埋め戻し境界から外側には発達せず, 埋め戻し境界に沿って発達し, ズレが確認できた.一方, 埋め戻し範囲7cmでの剪断帯は埋め戻し境界まで達しなかった.ピーク荷重値は, 埋め戻し範囲がアンカー直径と等しい場合において最も高く, 埋め戻し範囲が広がるにつれ低下した.その原因を実験および有限要素解析から検討を行った結果, 埋め戻し境界に沿って発達するズレ (剪断帯) による摩擦抵抗が影響しているものと考えられた.
  • 西村 眞一, 李 尚奉, 伊藤 健吾, 千家 正照
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 415-420
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    降雨により一時的に急増した河川流量は, 下流側にダムがなければ貯留されることがないため, 受益地での需要量以外は使用されずに下流へ放流される. この使用されない水 (余剰水) は渇水年であってもある程度生じており, その利用は渇水対策として有効と思われる.余剰水を頭首工の上流側に設置した調整池に貯水し, 河川自流量では用水が不足している場合に放流することにより, より効率的な用水の運用が可能となる. この場合, 調整池の容量がダムに比べかなり小さいものであっても, 短期間に貯水と放流を繰り返すことによって, 調整池の効果を高められると考えられる. そこで, 本研究では水不足傾向にある用水系を対象として余剰水の算定を行うとともに, 余剰水を有効化する調整池の運用方法の効果をシミュレーションにより検討した.
  • 水田ほ場整備地区における生物保全地の設置間隔に関連して
    若杉 晃介, 長田 光世, 水谷 正一, 福村 一成
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 421-426
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 農村地域における生物多様性の低下が指摘されており, 原因の一つとしてほ場整備による湿生動物の生息地破壊等があげられている.その改善策として, ほ場整備に際して, 整備区域内に生態系保全地を設ける事例が増えつつあるが, その設置間隔等は明らかになっていない.本研究は, ほ場の湿潤な場所に生息する動物の保全地を設置する場合を想定し, 保全地の最短設置間隔の指標の一つとして, 移動能力が低いとされている湿生動物のアジアイトトンボについて移動距離を調べた.調査は栃木県宇都宮市の一般的な平地水田地帯で, 標識再捕獲法を用いて2000年8月から9月に行った.その結果, アジアイトトンボの移動距離は1.1~1.2kmであること, 出現場所は湛水休耕田の存在に大きく影響を受けていることが分かった.
  • 滋賀県湖北地域を事例に
    野口 寧代, 堀野 治彦, 三野 徹
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 427-435
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村には集落内水路と水田用排水路が存在する.そのうち, 水田用排水路の管理労力を農家だけでは賄いきれず, 今後誰が管理主体となるかという問題が顕在化しつつある.琵琶湖に面する滋賀県高月町を対象に, 農業用排水路の掃除を通して用排水と用排水路の所有・利用・管理関係をみることで主に次の結論を得た.(1) 集落間を流れる農業用排水は上流集落では生活用水, 下流集落では生活用水と灌漑用水として利用されていた.利用の面に関していえば, 生活用水などの地域用水は灌漑用水に内包されていた.(2) 用排水と用排水路の所有や管理の主体は, 用排水を生活用水としてのみ利用する集落ではなく, 灌漑用水として利用する権利をもつ集落だった.(3) カワホリという管理には, 所有権の認知・周知という意味合いがあったと考えられ, 現在のカワ掃除にも少なからず残っている.
  • 若杉 晃介, 水谷 正一, 福村 一成
    2002 年 2002 巻 219 号 p. 437-438
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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