農業水利が流域水循環に及ぼす影響を評価することは今目的な課題の一つであり, そのために流出モデルは不可欠である. そこで, 農業水利の影響を評価できるグリッド型流出モデルの開発を目指し, その基本構造について検討した. 本モデル (鬼怒・小貝モデル) は, 水平方向の流れ (地表流, 中間流, 地下水流, 河道流入, 河道流), 鉛直方向の流れ (降水, 蒸発散, 積雪・融雪, 浸入, 浸透), 人為的な流れ (各種用水の取水) から構成される. その結果, 河川流量は良好な再現性を示しているが, 地下水位の再現性には多くの課題が残った. その理由として降雨の扱いが不十分であること以外にも, グリッド型流出モデルが構造的に抱える問題も影響していることが示唆された.
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