農業土木学会論文集
Online ISSN : 1884-7234
Print ISSN : 0387-2335
ISSN-L : 0387-2335
2002 巻, 221 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 滋賀県横山地区における圃場水収支測定に基づく事例的研究
    坂田 賢, 堀野 治彦, 三野 徹
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 533-541
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    滋賀県蒲生町横山地区の大区画水田で, 1995-1999年に湛水土中直播栽培 (湛直), 耕起乾田直播栽培 (乾直) および移植栽培の水収支測定と1998, 2001年に聞き取り調査を行った. 灌慨普通期における水収支測定の結果, 移植栽培と湛直では生育ステージごとの水需要変化に類似性がみられ, 乾直は前二者と異なる傾向を示した. また, 中干し前後の減水深変化から, 湛直は移植と同様の水管理により栽培できると考えられる. したがって, 乾直は水需要の時系列変化や必要水量が移植と大きく異なるため, 導入してから定着するまでに乾直の方が時間を要すると考えられる. なお, 聞き取り調査から, 直播栽培は出芽に対する心理的な不安が大きいなど, ある程度の経営規模の下で直播栽培を組み込むことを前提としなければ直播栽培の利点を十分に発揮できないことがわかった.
  • 米須地下ダム流域を例として
    今泉 眞之, 奥島 修二, 塩野 隆弘, 竹内 睦雄, 小前 隆美
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 543-555
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沖縄本島南部の米須海岸付近において地下ダムの殻計・施工のために行われたボーリンク調査検層, 職伝導度 (EC) の鉛直分布の測定結果を総合的に解肝した観測孔のEC鉛直分布は塩水侵入のために場所時刻により様々に変化する.変伯の違いはらECの鉛直分布の分布形態でAからFの6タイフセ分類できるAは塩水侵入の生じていないタイプで内陸側に分布するもスーガー海岸湧水付近には部分的こAが分布するB, C, FはECが屈曲点を持ち, 不連続的に変化するタイプずカルスト帯1水層進化の初期段階の分轍流卓越層で生じている.Dは淡水から塩水まで漸移的に変化するタイフである、Eは地下氷面からある深度の屈曲点まで均質高BC部が分布するタイプである。D, Eは海岸付近に分布する。D, Eが分布する部分でよカルスト帯氷層に見られる数百m幅の汽水ゾーンがあるのでこのタイフ切ECの形態はカルス-ト帯水層特有の現象で'あると思われる全体としてみた米須海岸イーよカルスト帯水層進化の中期段階こあると考えられる.
  • 弓削 こずえ, 原口 智和, 中野 芳輔, 黒田 正治, 舟越 保
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 557-564
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    作物圃場における消費水量は作物蒸散量及び土壌面蒸発量に分離することができる. 部分灌概が行われている圃場では, 土壌面に湿潤面と乾燥面が形成されるため, 土壌面蒸発量は空間的に変化する. このような条件下においては, 圃場の各地点における土壌面蒸発量を求め, それを圃場全体で積算する方法が有効である. 土壌面蒸発量に最も影響する微気象要因は日射量であるが, 作物体が生育する圃場では土壌面に日向面と日陰面が分布するため日射環境は複雑なものになっている. このような圃場において日射環境を精度良く推定することは, 土壌面蒸発量の高い確度での推定に寄与する. ここでは, 複雑な日射環境を実用的かつ容易に推定するために, 集中定数型の2種類の作物立体モデルを用い, 畦状栽培された作物圃場を表現した. これらのモデルに正射影魚眼図法を導入し, 畦間土壌面に到達する日射量を直達放射成分と天空散乱放射成分に分離してそれぞれを算定した. 推定値は圃場において実測した畦間土壌面の日射量の空間分布傾向をほぼ再現していた.
  • ボリビア渓谷地域における土壌保全事業を事例として
    吾郷 秀雄, 中桐 貴生, 荻野 芳彦, 團 晴行
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 565-574
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    途上国への農村開発援助事業において, 最近注目される参加型開発手法は必ずしも有効ではなく, 事業効果の持続性が達成されていない例も多く見られる.筆者らは, 事業への農民参加に留まらず, 農民の自立を支援する開発プログラムをもつ新たな手法である「自立支援型開発手法」を提案した.ボリビアでの土壌保全事業では, 本手法により受益農民の事業への関心やオーナーシップ意識及び集落のマネージメント能力が向上した.本手法の特徴は, 従来の形式的な参加型開発手法の考え方を発展させ, 援助団体撤退後に農民が自立して農業を担えるように, 1) 農民の知識とオーナーシップ意識の向上を目的とした学習, 2) 地域開発を担う農民リーダーの養成, 3) 意志決定について援助団体から農民組織への計画的な移行, を必修条件として開発プログラムに組み込み, より具体的な手法としている点にある.
  • 石黒 宗秀, 濱邊 亜希子, 赤江 剛夫
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 575-580
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    湖沼富栄養化の一因と考えられている児島湖凌喋土を用いて, 消石灰および石膏による透水性の改良方法を検討した. 消石灰あるいは石膏を, 湊喋土と混合する方法, 表面散布する方法, 溶液状態で浸透させる方法の3種類の添加方法で, 飽和透水試験装置を用いて飽和透水係数を比較した. 石灰は, 古くから土質安定処理に用いられ, その安定処理により透水性は減少するとされているが, 実験により, 消石灰では, 混合法により, 比較的大きな飽和透水係数が維持されることを明らかにした. これは, 混合によりある程度不均質に試料中に分布した消石灰が化学反応を起こして構造を安定化させたため考えられる. 一方, 石膏は, 溶液浸透法による結果が消石灰の混合法による結果と同程度の透水性を示した. これは, 石膏の場合, Caが静電気力による吸着で凝集効果を及ぼしたためと考えられる.
  • Mohammed Abdullahi, 松井 宏之, 水谷 正一, 後藤 章
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 581-587
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ケニア中央に位置するティバ川流域では, 90年代に急激に農業水利が増加し, それに伴い数々の問題が生じている。そこで, 灌概が流域水循環に及ぼす影響を検討しうる分布型流出モデルの基礎構造について検討し, これを適用した。モデル化に当たっては, セルサイズを500mとし, 各セルおよびセル間における流出素過程, すなわち積雪・融雪, 樹幹遮断, 蒸発散, 表面流, 河道流, 中間流地下水流を勘案し, それぞれを差分法により解いた。その結果, 流域内の3流量観測点のうち2地点において, 開発したモデルは高い流況再現性を示し, その有用性が検証された。なお, 残る1地点に関しては実測流量に問題があるものと類推された。
  • 石川 奈緒, 藤井 克己, 颯田 尚哉
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 589-595
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    準濃厚なカオリナイト懸濁液の粘性率を測定し, 試料の温度と固相率の効果を検討した. コーン・プレート型粘度計を用いて, 固相率20・25・30・35%のカオリナイト懸濁液を15℃~40℃の5℃ きざみ6段階の温度に設定し, 90分間粘性率を測定した. 粘性率は測定経過とともに変化するので, 測定10秒後の初期粘性率ηiに着目し, 検討を行った.
    その結果, 固相率はInηiと線形関係にあり, また温度についてはlnηiと絶対温度の逆数が線形関係となっており, 液体の粘性と温度との関係を表す式として一般的に知られているAndradeの式に適合する関係を示すことが明らかとなった. これらの関係を取り入れて, 固相率と温度をパラメータとして初期粘性率を求める式を, 今回測定を行った準濃厚な範囲において新たに提案した. その際, 提案式には3つの定数を設定し, それらについては本研究の実験結果から回帰分析により求めた.
  • クマール アロック, 前田 滋哉, 河地 利彦
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 597-602
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    多目的最滴化理論と地理情報システムを使用して, ある流域における面源からの許容排出負荷量を各土地に最適に配分する手法を提案する。統一規格の格子で表現される土地管理単位 (LMU) から対象流域の末端部へと至る流路の長さの計算値および流域自浄係数の仮定値を用いて, 2目的線形計画モデルを定式化する。最適化における目的は, 全LMUからの排出負荷の総量の最大化と許容排出負荷量の各LMUへの均等配分の促進であり, 制約条件式は対象流域の末端部での排水基準, 異なる種類のLMU問での平均負荷量に関する式, および各LMUからの排出負荷量の下限値からなる。,提案したモデルを滋賀県における野洲川流域に含まれる小流域に適用することにより, 本モデルが小流域に存在する多様なLMUに対し, 全窒素排出負荷の最適配分値を決定する際に有効であろことを示す.
  • 鬼怒・小貝モデルの基本構造
    松井 宏之
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 603-611
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業水利が流域水循環に及ぼす影響を評価することは今目的な課題の一つであり, そのために流出モデルは不可欠である. そこで, 農業水利の影響を評価できるグリッド型流出モデルの開発を目指し, その基本構造について検討した. 本モデル (鬼怒・小貝モデル) は, 水平方向の流れ (地表流, 中間流, 地下水流, 河道流入, 河道流), 鉛直方向の流れ (降水, 蒸発散, 積雪・融雪, 浸入, 浸透), 人為的な流れ (各種用水の取水) から構成される. その結果, 河川流量は良好な再現性を示しているが, 地下水位の再現性には多くの課題が残った. その理由として降雨の扱いが不十分であること以外にも, グリッド型流出モデルが構造的に抱える問題も影響していることが示唆された.
  • 谷川 寅彦, 金木 亮一, 矢部 勝彦
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 613-620
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    この研究は傾斜地に立地する造成畑の土壌水分動態と水分消費特性を解明するために行われた.調査は傾斜畑の高位部と低位部において, 1992年秋季に長ダイコンとヒノナ植栽地, 1993年春季にカボチャとトウモロコシ植栽地を対象として行った.造成後数年経過時では, 同じ造成傾斜畑内でさえ物理・保水性は異なり, 当初, 地形的, 気象的要因により高位部で土壌の乾燥が進む傾向と予想されたが, 実際には必ずしも明確ではなかった.土壌水分消費は高位部で大きく水分消費割合は低位部で表層消費型の傾向が顕著となった.傾斜畑の土壌水分動態や水分消費特性は土壌特性や蒸発散の違い, ウネ間での降水の流出と貯留, 土層での水分移動等の傾斜地特性に依存したものと考えられる.
  • 青山 滋伸, 倉島 栄一, 加藤 徹, 向井田 善朗
    2002 年 2002 巻 221 号 p. 621-628
    発行日: 2002/10/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    融雪期の融雪の多くは積雪の表層で発生し, 表層融雪水は時間の遅れを伴いつつ地表面に至る.融雪洪水を予測するためには, 表層融雪水の積雪内における浸透機構を明らかにする必要がある.
    本研究では, 融雪水の地表面到達量および気象要素の観測を行い, 熱収支法によって推定された表層融雪量と実測された地表面到達量を比較した.その結果, 両者の時間変化に差が生じることが明らかなった.さらに, 極地方の積雪や氷河域を対象に用いられている浸透解析手法を適用し, 推定された表層融雪量を入力値として, 地表面到達量を推定したところ, 融雪のピーク以降では良好な再現性が得られた.その一方, 浸潤前線の形成にあずかる浸透量を無視したことによるロスは表層融雪量に対して平均で19%であった.
feedback
Top