農業土木学会論文集
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2003 巻, 223 号
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  • 小林 宏康, 筒井 義冨, 小嶋 義次, 千賀 裕太郎
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 1-10
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業用水が有するといわれている景観機能に注目し, 水路景観の選好に及ぼす農業用水の影響等について評価するため, 見る角度, 水路材料, 水深, 柵, 立地条件という5つの属性で構成される水路景観モデルを構築した. 本モデルから標本写真を作成し, 様々な属性を有する被験者185名を対象に視覚評価実験を行った. この結果を被験者属性別にコンジョイント分析で解析し,(1) 水路景観の選好に影響を及ぼす最も重要な属性は水深であること,(2) 水路景観に対する被験者の選好は, 被験者に共通する選好傾向と, 年齢階層, 性, 居住地域, 職業という被験者属性別に異なる選好傾向が認められること,(3) 立地条件を同一とした場合, 水深が深くなると水路材料の水準にかかわらず水路景観の選好は向上し, 水深が浅くなると水路材料の水準が水路景観の選好を規定すること, 等を明らかにした.
  • 酒井 俊典, 竹馬 徹, 大城 泰久
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 11-18
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    上層, 下層の乾燥密度を変化させた, 2層砂地盤におけるアンカー引抜に伴う荷重と変位との関係, およびせん断帯の発達について, 模型実験および有限要素解析から検討を行った. 模型実験は, 地盤試料に豊浦砂を使用し, 密詰め, 中詰め, 緩詰めを組み合わせた2層地盤を対象に, 上下層の層厚をそれぞれ10cmとし, 直径10cmの鋼製アンカーを使用した実験を行った. 有限要素解析は, せん断帯・ひずみ軟化を考慮に入れた弾塑性有限要素解析を, 模型実験と対応させて行った. 模型実験および有限要素解析の結果, 最大引抜き荷重値, 最大引抜き荷重が発生するときの変位, 最大引抜き荷重発生以降の軟化の程度などは, 下層の乾燥密度の影響を大きく受けることが明らかとなった. また, せん断帯の発達する方向は, 地盤が上層であるか下層であるかには影響されず, 乾燥密度に依存した.
  • 佐々木 長市
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 19-27
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沖積土壌を用いた水田模型を試作し, 稲を植え, 施肥をし実験を行った. 作土・すき床層を閉鎖浸透, 心土層の地下水位より上部を開放浸透, 同水位より下部を閉鎖浸透とした. この条件下の降下浸透水の浸透型と物質動態の関係を究明した. この結果より, 降下浸透水中の硝酸・亜硝酸態窒素濃度は, 作土およびすき床層の閉鎖浸透層の値に比べ心土層上部の開放浸透部で高まるが, 同層下部の閉鎖浸透部では低下する傾向が認められた. 鉄およびマンガン濃度は, 閉鎖浸透層で濃度を高め, 開放浸透層でその濃度を低下させた. カルシウム等の塩基類は鉄の濃度の上昇の影響を受け, その濃度を高める傾向が認められた.
  • 神尾 彪, 海野 大善
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 29-38
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水稲田からのメタン発生量をより一層抑制するために, 水稲田に間断灌水区を設け, 立川水田では田植え後8日目から, 農場水田では11日目から, それぞれ間断灌水を行い, 慣行区との比較を行った. その結果, 次のことが明らかになった.
    1. 農場水田と立川水田における間断灌水区と慣行区のメタン発生量の比は, それぞれ約0.5であった.
    2. 農場水田と立川水田における慣行区と間断灌水区の水稲収量の比は, それぞれ1.1と1.0であった.
    従って, 円植え後, 間断灌水を行う水管理の方法は, 収量の低下を招くことなく, メタン発生量を約半分に抑制できる有効た方法であることがわかった.
  • 劉 霞, 天谷 孝夫, 赤江 剛夫, 西村 直正
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 39-46
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    寒冷乾燥地における凍結・融解に伴う水分移動の予測には, 凍土の不飽和透水係数を正しく測定することが必要であるが, 現地でしばしば発生する温度においていろいろな土壌に適用可能な測定法は, 現在のところ確立されていないそこで, 重力の代わりに遠心力を与え, ダルシー式より凍土の不飽和透水係数を測定する方法を考案し, 基礎的な検討を行った. 未凍土では遠心圧縮の影響のために回転速度が大きいほど得られた不飽和透水係数がいくぶん小さくなったが, 上昇吸引法による結果とほぼ同じ結果が得られた。凍土では回転速度の増大に伴う遠こ圧縮はなく, 不飽和透水係数への影響はなかったシルト質±し粘性土について凍土の不飽和透水係数を測定したところ, 10-9cm/sから10-8cm/sの値が得られたe以上のように, 遠心法によって凍土の不飽和透水係数の測定が可能であることを示した.
  • 安瀬地 一作, 木ノ瀬 紘一
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 47-55
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 河川だけでなく, 農業水利系においても治水や利水に加えて親水機能も議論されるようになり, 親水を意識した水路の形態が求められている. そこでは, 水路に水草を繁茂させたり粗石群を設けたりすることが考えられている. しかし, これらは水理学的に見れば抵抗を変化させたことになり, 水深や流速などを変化させることとなる. このような問題は治水, 利水を考慮しつつ植生を保全していく上で重要な問題である. 本研究では, レイノルズ方程式をもとに, さまざまな仮定を設けて, 植生を有する流れの新たな抵抗則を提案する. また, 植性の変形も片持ち梁の有限変形としてモデル化し, 流れと連成させて解くことにより, 植生が変形する場合の解析も行う.
  • Khaled HASSAN, 服部 九二雄, 緒方 英彦, 佐藤 周之
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 57-62
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, マスコンクリートの力学的特性に及ぼすフライアッシュとシンダーアッシュのポゾラン効果の違いを明確に評価しようとしたものである。両混和材の物理的特性は異なるが, 化学組成は類似している。フライアッシュによるセメント置換率は30%, シンダーアッシュによる細骨材置換率は10%である。フライアッシュ粒子の粉末度はマスコンクリートの強度発現に大いに関与しているが, 粗いシンダーアッシュは初期材齢では十分な効果を示さなかった。超音波伝播速度の測定結果より, フライアッシュはシンダーアッシュよりも強度発現に大きく寄与することがわかった。更に, フライアッシュの添加によって, マスコンクリートの中心部と外側の強度差がなくなり, 標準供試体強度との差も小さくなった。粉末X線回折と走査型電子顕微鏡によれば, フライアッシュとシンダーアッシュの化学組成が類似しているこ土とから, 両者の水和生成物はほぼ同じであった。マスコンクリートに両混和材を組み合わせて使えば, 強度発現が改善されることがわかった。早期強度を必要としなければ, シンダーアッシュはポゾラン材としての利用性が高いといえる。
  • 宮原 和己, 大井 節男, 中石 克也, 足立 泰久
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 63-69
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    凝集した懸濁液の毛細管流動において見られる異常粘性を明らかにするため, せん断応力によるフロック破壊と管壁近傍に存在する粘性の低い溶媒層でのスリップ現象の効果を含む粘度式を導出した. 導いた粘度式の有効性を実証するために, せん断応力の異なる様々な管径の毛細管粘度計を用いて, 凝集系モンモリロナイト懸濁液の見かけ粘度を測定した. 導出した粘度式に基づく理論予測と実験結果の一致から, 低塩濃度領域では, フロック破壊の効果により見かけ粘度が管径の増加につれて小さくなること, また, 高塩濃度領域では, スリップ現象の効果により粘度が管径の減少とともに小さくなることが明らかとなった. さらに, 溶媒層はフロック径の4割の厚さであることやフロック強度は塩濃度とともに増加することが明らかとなった.
  • エカイ沼流域での研究
    須戸 幹, 大久保 卓也, 國松 孝男
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 71-77
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    琵琶湖に隣接する内湖のエカイ沼流域に調査定点を設定し, 水田流域 (44ha) から流出する除草剤シメトリンとメフェナセットの排水路末端での濃度と流出率を検討した. 除草剤濃度は散布時期とその直後の降雨時に上昇し, 散布2ヶ月後以降はほとんど検出されなくなった. 1998年4~9月のシメトリンとメフェナセットの流出率は, それぞれ24.9, 10.2%であった. 2000年5~8月には, 排水の一部が流入するエカイ沼でシメトリンと除草剤モリネートの収支を明らかにし, エカイ沼における浄化効果を検討した. 流入水と流出水濃度の変動から, エカイ沼では散布や降雨時の高い濃度の流入水を滞留によって平滑化する効果が認められた. 散布後, 流入水濃度が減少すると流出水濃度が流入水よりも高い場合が多かった. 平均滞留時間が約65時間であった調査期間中のシメトリンとモリネートの物質収支を計算すると, 流入量と流出量はほぼ同じで, 除草剤の実質的な浄化効果はほとんど認められなかった.
  • 藤原 正幸, 福島 忠雄, 橘加 寿子
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 79-88
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    魚道内の流れは常流と射流が混在する複雑な自由水面流れであるため, 従来の研究は模型実験によるもの, がほとんどで, 数値モデルを適用した研究はごく限られたものであった. ここで紹介する数値モデルは, 基礎方程式とする浅水流方程式の移流項にローの近似リーマン解法を, 計算格子に四分木格子を採用しているのが特長である. 浅水流方程式は空間的には有限体積法に基づき離散化され, 時間方向には4次精度ルンゲ・クッタ法により積分される. 本モデルにより4種類のバーティカルスロット式魚道 (ダブルスロットタイプ: 1種類, シングルスロットタイプ: 3種類) のシミュレーションを行った. その結果, 最大流速は理論値とよく一致すること, 流量が変化しても, プール内の流速分布はほとんど変化しないこと, 遡上中の対象魚が休息することの出来る滞流域は, シングルスロットタイプの方がダブルスロットタイプよりも広く形成されることなどが示された.
  • 近藤 文義, J. Kenneth TORRANCE
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 89-97
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    レダクレイ泥水の沈降様式は, 含水比を500~6000%, 塩濃度を0.5~30g/Lの広範囲で変化させた場合, 鉱物学的および化学的要因の影響を受ける。最小の凝集状態から最大の凝集状態に移行するにつれて, 沈降様式は単粒子自由沈降, 凝集性自由沈降, 界面沈降, 圧密沈降へと変化する。一般に, 泥水の粒子濃度が高く, また塩濃度が高いほど凝集の程度がより強い沈降の様式へと変化する。照査対象となる試料 (Na飽和, 2μm以下の粒度59%, 主に低活性鉱物から構成されるレダクレイ試料で実験を行った含水比と塩濃度の範囲内で全ての沈降様式が観察されるもの) については, 粘土分含有量の増加, 高膨潤性スメクタイトの添加, Na以外のイオンの存在, 酸化に伴う1%以下の含有有機物の除去により, 沈降様式の違いを示す含水比と塩濃度の境界線は低塩濃度かつ高含水比 (凝集の強い側) へ移行した。一方, その境界線は, 粒状酸化鉄の添加, 粘土分含有量の減少, ピートソイルから抽出したフルポ酸とフミン酸からなる有機物の添加により高塩濃度かつ低含水比 (凝集の弱い側) へと移行した。特に, この有機物の添加による影響が最も顕著であった。
  • Maung Maung Naing, 佐藤 政良, 藤城 公久
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 99-105
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    下ミャンマーヤンゴン市近郊のNgamoeyeik灌概地区では伝統的に6月の播種から始まり11月の収穫に至る天水田水稲作が行われてきた。1995年の灌概事業完成により、12月から5月を栽培期間とする乾期水稲作が開始された。しかし、雨期作はしばしば浸水被害をうけ、乾期作は貯水池における貯水量の制限を受けてきた。この状況を改善するため、本研究ではヤンゴン市における76年間の長期雨量記録に基づき、本地域における水稲作期のあり方について提言を行った。本研究の結論は次のようにまとめられる。(1) 6月の末に代掻田植えを開始したいという農民の意向は、降雨による確実な用水確保のためであり、その遅れが浸水被害の可能性を高めている。(2) 5月末に代掻田植えを移動すると稲丈は7月のはじめに2倍以上になることから、浸水被害の可能性を低下させることが出来る。(3) このように雨期作を1ケ月早期化させることは、貯水池運用の仕方を変えることによって水資源管理の面からも実現可能である。
  • 中矢 哲郎, 木ノ瀬 紘一
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 107-116
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    側岸部に水没した植生群を有する開水路流れ場を対象に, 水理模型実験から基本的な流れ構造を把握した結果, 植生層上の流れは植生層と上層から成る鉛直二次元的な流れであることや, 植生帯境界で発生する大規模水平渦を伴う流れが支配的であることがわかった. この流れ場に対し, 浅水流の乱流モデルであるSDS & 2DHモデルに植生層, 表層の各層の抵抗力と乱れの生産項をモデル化して導入することで, 非水没型の植生だけでなく, 水没した植生や粗度を有する流れ場も計算できる新たな手法を提案した. 得られた計算結果は主流速の横断分布, 各層の平均流速, 乱流統計量, 大規模平面渦の形状などの実験結果をほぼ裏付けるものであった.
  • 小林 宏康, 筒井 義冨, 千賀 裕太郎
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 117-125
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業用水と水路が有する景観機能を定量的に評価するため, 水路の水深と材料の関係に注目した種々の視覚評価実験を行った.その結果, 次の諸点等が明らかになった.(1) 水路景観の観賞位置は, 水路から1m程度離れて水面を斜めから眺める地点や水路に架かった橋の上が適する.(2) 水路景観の美しさと水深の深さは密接に関わっており, 水路景観に美しさを与える水深の深さは水路材料の水準によって規定される.(3) コンクリート水路では75%水深, 土と草の水路では25~75%水深, 石積み水路では25%水深が水路景観に美しさを与える.
  • 安養寺 久男
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 127-132
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    スプリンクラー灌漑施設の設計においては, ローテーションブロックが基本的な単位となる. ローテーションブロックは, 現在, 2つの基準に基づいて設計されている. まず, 4つのスプリンクラーで囲まれる矩形内部の散水深の分布効率が基準値以上となるように, スプリンクラーが選択され, その配置間隔が決められる. 次いで, 管路に沿ったスプリンクラーの吐出流量の分布が基準値に納まるように, 散水支管と給水管が設計される. なお, 設計されたローテーションブロックの用水の利用効率を確認する必要がある. そのため, 本報文では, 管路に沿ったスプリンクラーの吐出流量の分布とローテーションブロックを構成する矩形内部の散水深の分布効率の表示方法の一つである変動係数の関係式を導いた. これまでに, 点滴灌漑について, エミッターの流量分布を変動係数で表し, 変動係数と用水の利用効率の関係式を導いているため, 設計されたローテーションブロックを構成する矩形内部の用水の利用効率を確認することができる.
  • 久米 崇, 天谷 孝夫, 三野 徹
    2003 年 2003 巻 223 号 p. 133-139
    発行日: 2003/02/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区河套灌区では, 土壌塩類化ならびに水不足という二つの大きな問題が発生している. そこで, 現地で行われている土壌塩類化対策の効果を調べるため, 1994年から沙壕渠試験場周辺に調査圃場を設け土壌改良を実施した. 土壌改良の主な内容は, 有機物のすき込みと秋季湛水灌概 (リ-チング) である. 本研究では, 調査圃場における土壌の物理性および化学性の経年変化を解析した. 解析の結果, 有機物のすき込みでは物理性に関して土壌改良の効果があまり現れなかった. しかし, ECは土壌表面および鉛直プロファイルにおいてその値は大幅に減少し, 秋季湛水灌概による土壌の化学性の改良効果は大きかった. 現地での土壌塩類化対策には, 現行の土壌改良方法が有効であることが確認された.
  • 2003 年 2003 巻 223 号 p. e1
    発行日: 2003年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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