農業土木学会論文集
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2003 巻, 224 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 基盤条件に注目して
    武山 絵美, 高橋 強, 九鬼 康彰
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 141-149
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    米の生産調整政策下における水田利用状況を明らかにするために, 農業経営体および農業集落の各基盤条件下における生産調整に係わる水田の利用状況を, 都道府県単位で分析した.その結果, 水田率, 経営規模等, 地域の伝統的な農法との関連性が深いと考えられる基盤条件によって, 生産調整に係わる水田の利用状況に違いが見られることが明らかになった.特に, 本論では, 生産調整政策上, 転作作物として奨励されている「労働粗放型作物」への水田転作が成立している地域において,(1) 水田率が高く,(2) 経営規模が大きく,(3) 圃場整備率が高いといった, 基盤条件の共通性が明らかになった.また, そのような基盤条件が存在しない地域において, 生産調整に係わる耕作放棄地が多く発生していることも明らかになった.
  • 荒井 昌枝, ケレン ラミ, 山本 太平, 井上 光弘
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 151-157
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 溶液中の電解質濃度が新潟スメクタイト質土壌または鳥取カオリナイト質土壌の透水係数および浸入速度に及ぼす影響を検討した.新潟スメクタイト質土壌の場合, 交換性ナトリウム率 (ESP) が0では粘土の凝集値以下の電解質濃度 (蒸留水) でリーチングした時に粘土が分散し, 透水係数が低下した.しかしESP 30でぽ粘土が膨潤したため凝集値以上の電解質濃度 (10molcm-3) で透水係数が低下した.鳥取カオリナイト質土壌の場合においても, ESP 0では蒸留水で透水係数が低下したしかし、非膨潤性の粘土鉱物のためESP 30では凝集値以下の電解質濃度 (5 molc m-3) で透水係数が低下した.浸入速度に及ぼすESPの影響は新潟スメクタイト質土壌よりも鳥取カオリナイト質土壌の方が小さかったこれは鳥取カオリナイト質土壌が新潟スメクタイト質土壌よりも安定した団粒構造を示すためと考えられる.また浸入速度の低下においてに雨滴の衝撃も影響を及ぼすことが確認された.
  • 岐阜県巣南地区を対象とした減水深の事例研究
    李 尚奉, 千家 正照, 伊藤 健吾, 林 博康
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 159-166
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では乾田直播 (乾直) 栽培の導入が減水深に及ぼす影響を明らかにするために, 乾直栽培が一部導入された地区内の乾直水田 (15筆) と湛水移植水田 (16筆) を対象に減水深の観測を行った.また, 減水深に影響を与えると思われる水管理などに関する7項目の要因について調査し, 減水深に影響を与える要因の分析を行った.その結果, 対象地区においては, 乾直水田が移植水田の3.5倍に相当する減水深の値を示した.さらに, 数量化1類を用いた分析から, 乾直水田での減水深は水田内の湛水深の管理や排水路水位によって強く影響される傾向が見られた.本研究では, 乾直栽培の導入によって減水深が増加する要因の一つとして, シロカキや畦塗りの省略によって降下浸透や畦畔浸透が増加したことによるものと推測した.
  • 三原 真智人, 陳 嫣, 駒村 正治
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 167-173
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では現地試験枠を用いたフィールドレベルでの観測を行い, 流亡土量および栄養塩類濃度を測定して, 森林伐採による裸地化に伴う土壌および栄養塩類の流出特性を調べた。また, 林地における保全要因を明らかにするため, 汎用土壌流亡式中の植物管理因子について検討した。観測の結果, 林地区で観測された流亡土量の範囲内においては, 林地区における栄養塩類の流出は裸地区を上回った。しかし, 裸地区では著しい流亡土量が栄養塩類の流出を増大させていた。林地において樹木の伐採を行った場合, 土壌流亡のみならず栄養塩類の流出を削減するためにも, 土壌保全対策が重要であることが明らかとなった。また, 汎用土壌流亡式中の植物管理因子をA0層および植被によるものに大別して検討した結果, 植被の保全効果はA0層の約1.5倍であることが実験より示された。
  • 増本 隆夫, 野添 学, 吉村 亜希子, 松田 周
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 175-184
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    中山間地域の耕作放棄が流出に及ぼす影響を総合的に評価するため, 耕作水田と耕作放棄水田からの流出および土壌調査で得られた実測データを基礎資料として, 中山間水田流出モデルを開発した.モデルは亀裂の消長, 水管理による落水口操作, 畦畔法面からの流入等の中山間水田の流出特性を考慮できる点が特徴である.ここでは洪水流出を解析対象とし, モデルパラメータはSP法により最適同定を行った.本モデルを47個の実測洪水流出データに適用し, 各流出で最適パラメータを求めた結果, 本モデルの流出再現性は良好であり, さらに水田の耕作状況, 気象, 水管理の変化が流出に及ぼす影響を最適パラメータの変化からうまく評価できることが明らかとなった.
  • 李 尚奉, 千家 正照, 伊藤 健吾, 林 博康
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 185-192
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    乾田直播 (乾直) 栽培の導入が水田用水量に与える影響を調べるために, 乾直が一部導入された地区内において移植水田と乾直水田一筆ずつを対象として3年間にわたって水収支調査を行った.その結果, 移植水田の初期用水量は営農組合の大規模営農体系から生じる代かき・田植え作業のタイムラグによって大きく変化し, 乾直水田の初期用水量は浸透強度に影響されることが明らかになった.一方, 乾直の普通期用水量 (平均: 41.4mm/d) は移植 (平均: 20.2mm) の約2倍の値を示した.これは, 代かきを行わない乾直水田では耕盤層が弱まり, 蒸発散浸透量が増加したことに起因している.また, 乾直水田の蒸発散浸透量が大きいことは, 湛水深の変動を大きくし降雨有効化率や栽培管理用水量を変化させる要因となっていた.
  • 長野 宇規, 堀野 治彦, 三野 徹, 木村 充
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 193-203
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    西アフリカのニジェール南西部において, 1998-2000年の3年間, 等高線畦畔による斜面ミレット農地保全の実証試験を行った.0.6haの試験圃場に間隔を変じて等高線畦畔を設置し, 水収支と作物生長を観測した.現地の砂質土壌は透水性が高く, 保水性は極めて低かった.表層の透水性はクラストにより低下した.畦畔には表面流出が集中したが, 直上部では過湿と栄養のリーチングのためミレットの生育が悪く, 増収効果は得られなかった.土壌表層の透水性は粘土含有量との相関が見られ, 侵食履歴のある斜面上方は透水性が低かった.透水性の高い地点は収穫量が降雨に大きく左右されたのに対し, 低い地点では安定していた.主な根域の水分量に差が出ず, 栄養のリーチングが生育制限要因になったと考えられる.この地域での畦畔の役割は, 表層の粗砂保全による斜面全体の透水性の改良であることが示唆された.
  • 荒井 昌枝, ケレン ラミ, 山本 太平, 井上 光弘
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 205-211
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, ソーダ質土壌の団粒安定性を評価するためにエタノール-水混合溶液を用いた湿式団粒分析法を提案した.供試土壌はClaysoil (ESP9.3, 22.1) およびSandy clay loam soil (ESP6.8, 21.8) を用いた.浸潤速度100または4mm h-1を用いて団粒の飽和処理を行った.エタノール濃度が低下すると, 団粒の安定性が低下した.これは誘電率の上昇に伴う電気拡散二重層の厚さの増大が原因である.粘土含量が高く, またESPが低いほど団粒の安定1生は高くなった.0.1およびlmolcL-1 NaCl-CaCl2混合溶液を用いても湿式団粒分析を行った.電解質濃度が低下すると, 団粒の安定性は低下した.電解質溶液を用いた結果より, エタノール溶液を用いた場合の団粒の安定性には粘土・エタノール分子の架橋構造が大きな影響を及ぼすことが確認された.
  • 田中 恒夫, 尾崎 益雄, 平野 徳彦, 黒田 正和
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 213-220
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    群馬県において, 畜産廃棄物は窒素負荷の主発生源である.現在, 畜産廃棄物由来の窒素負荷を低減するため, 排水処理プラントが建設されているが, その多くは活性汚泥法を採用している.しかしながら, 活性汚泥処理プロセスの窒素除去能は必ずしも十分とはいえない.2次処理水の全窒素濃度は有機物 (COD) 濃度に比較して高く, 排水基準の100mg/Lを超える場合が少なくない.その原因は, CODが窒素より分解処理されやすいため生じる, 脱窒反応に不可欠な電子供与体の不足と考えられる.本研究では, 畜産排水の2次処理水からの窒素除去を目的として, 電子供与体の供給が可能な生物・電気化学プロセスを提案し, その処理特性を実験的に検討した.電解反応装置は主に陽極ユニット, 陰極ユニットおよび生物活性炭層で構成される.陽極ユニットにはチタンメッシュ電極およびポリプロピレン担体を充填した.陰極材としては, 炭素フェルトを用いた.直流安定化電源を用いて電極ユニットに印加して電解を行った.電解反応槽における硝化および脱窒の速度は電流密度の増加に伴い大きくなった.また, 通電強度により脱アミノ, 硝化および脱窒の反応速度を制御できることがわかった.電流を2.0Aまで増加させたところ, 48時間の滞留時間で流出水の全窒素濃度は50mg/L以下まで減少し, 除去率は60%以上となった.生物・電気化学プロセスは, 畜産排水の2次処理水からの窒素除去に対して有効と考えられる.
  • 離島における地下水資源の保全と開発に関する研究
    籾井 和朗, 小路 順一, 中川 啓, 神野 健二
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 221-227
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    海岸域における海水侵入の現状をモニタリングし, モデリングにより評価することは, 海岸地下水の保全と管理の上で重要である.本研究では, 非混合アプローチに, 降雨による地下水涵養を考慮したタンクモデルを組み込んだ数値解析法により, 降雨前後における地下水と淡塩水境界面の動態を評価する方法について検討を加えた.離島海岸域における地下水位と鉛直塩分濃度分布の観測値に対して検討した結果, 潮汐や降雨の影響下にある地下水および帯水層内の海水の挙動評価に本解析法は有効であるといえる.本解析法の適用に際しては, 地表面の特性により雨水浸透特性が異なるため, 涵養タンクモデルに用いるパラメータを地下水位の上昇パターンに応じて適切に設定する必要がある.
  • 王 麗萍, 赤江 剛夫
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 229-235
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    TDRは現地の土壌水分量を測定する簡便で適切な方法として良く用いられている。中国内蒙古河套灌区土壌において凍結融解時のTDR測定を行った。TDR測定により凍土中の未凍結水分量を計算するため, 液状水を自由水と吸着水に分けるMaxwell-De Loorモデルや経験的αモデルを対象に, 本土壌に最も適合するモデルを検討したところ, Birchakモデルが最も良く適合することが分かった。吸着水と氷の誘電率が同じ値をとることから, 現地凍土のTDR測定結果に対しBirchakモデルを用いて未凍結水分量を計算した。計算された未凍結水分量は, 地温分布から推定される凍土中の水の状態と良く適合した。
  • 加藤 亮, 黒田 久雄, 中曽根 英雄
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 237-243
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    霞ヶ浦では, 水質浄化対策として窒素負荷の削減が課題となっている.本研究は, 霞ヶ浦の流域のひとつで農業・畜産が盛んな山田川流域を対象に, 窒素負荷の長期シミュレーションのための土地利用別水質タンクモデルを構築し, 窒素負荷削減対策シナリオの効果を定量的に比較することを目的とした.モデルの特徴は, 発生負荷に関するデータベースを作成した点と, 土壌中に蓄積される負荷と溶出する負荷の流出過程を表現した点にある.構築したモデルで, 対策案として考えられる土壌の洗脱, 緩効性肥料, 施肥削減, 緑肥作物, 畜産廃棄物削減についてシナリオを作成し, 各シナリオについて予測し結果を考察した.結論として, 流域管理に向けた窒素負荷削減対策案の各種シナリオの比較や定量的な効果の把握が可能であることを示した.
  • 飽和供試体の三軸圧縮特性
    木全 卓, 桑原 孝雄, 工藤 庸介, 藤重 真紗子
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 245-250
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    廃棄発泡プラスチック破砕片を軽量地盤材料として有効利用することを目的に, これを用いた軽量混合土を作製し, 圧密排水・非排水三軸圧縮試験によりその基本的な力学特性を検討した.軽量混合土は破砕片と砂質土とを等体積で混合したものとし, 比較のために砂質土のみの供試体も作製した.その結果, 有効応力で考える限り, この軽量混合土は土のみの場合よりも大きな強度特性を有することがわかった.また, 混合土は土よりも圧縮されやすく, 圧縮指数や初期剛性で約2.5~3倍の変形特性の差があることもわかった.従って, 実際にこの混合土を用いる場合には応力とひずみの双方から適用性を検討する必要があるが, この廃棄発泡プラスチック破砕片は軽量な地盤材料として十分に利用可能であることがわかった.
  • 原田 昌佳, 吉田 勲
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 251-259
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    鳥取県湖山池を対象に, 湖底付近が最も嫌気的な状態となる夏季において底質調査を実施し, 底質中の重金属 (Fe, Mn, Cu, Pb, Zn) および硫化物の濃度分布特性にっいて検討した.その結果, 各重金属ともに最深部を含む池北西部で高濃度を示すなど, 類似した分布であった.硫化物濃度は最深部周辺で局所的に高濃度を示すものの, 全体的に濃度は湖沼における全国平均値を大きく下回り, ヤマトシジミの硫化物耐性の観点からも極めて低い値であった.また, すべての底質調査項目を用いた主成分分析の結果, 底質の汚濁の程度と還元状態の強弱を表す指標が導かれた.さらに, クラスター分析により湖山池の底質は5っに分類することができた.
  • 丸山 利輔
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 261-273
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本報告は, 農業土木分野で行なわれた, 20挺紀における水文学研究の流れを概観したものである.農業土木学会は, 1929年に設立され, それ以降, 学会誌, 論文集の形で, 農業土木関係の研究成果を公表している.本報告は, これらの成果を主な資料として, 水文学を, 浸透・蒸発散・流出・地下水・水温・水質の6分鐸に分け, 各分野の研究の流れを研究者の名前をつけて整理したものである.とくに, 各分野の研究の消長を, その時代の政治経済的・農政の動向とその時代の他分野の科学技衛進展との関係において整理した.その結果, これら水文学の各分野は, その時代背景、科学技衛の発展に強く影響されながら発展してきたことがわかる.また, 水文学の各分野とも, 主な研究については簡単な説明をつけると共に, その相互の関係についても説明を加え, 今後の研究について展望した.
  • 常住 直人
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 275-283
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    刃形ラビリンス堰の流量係数式と越流流況境界となる越流水頭を示し, この流量係数式に基づき, 刃形ラビリンス堰の効果を (ラビリンス堰化によるメリットに関わる) 流量係数の大きさ,(デメリットに関わる) 単位幅での堰体体積当たり流量の低さから検討した.その結果, 溜池洪水吐の現地条件では, 端辺比0.0765, 縦横比2未満の近三角形高密度形状が有利になる可能性が高いこと, この場合の単位幅当たり流量の上限は約3.9~6.6m3/s/mになること (設計水頭0.8m以下, 越流水頭比0.3~0.5) が明らかとなった.堰体容積当たり単価の低減によってより高い越流水頭比での適用性が高まれば, この上限値は更に上がりうる.
  • 小林 久, 佐合 隆一, 呉地 正行, 岩淵 成紀
    2003 年 2003 巻 224 号 p. 285-286
    発行日: 2003/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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