農業土木学会論文集
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2005 巻, 236 号
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  • フィルダム基礎岩盤の水理破砕規準
    塚田 泰博, 小林 晃, 木山 正一, 青山 咸康
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 79-92
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 岩盤の材料定数・湛水深・湛水速度が水理破砕に及ぼす影響を定量的に評価し, フィルダム基礎岩盤の水理破砕規準を提案することにある.その評価手法としてカムクレイモデルを用いた応力~浸透連成有限変形解析を適用した.本論文では, 水理破砕規準を提案する前に本手法の妥当性を検証するため, 岩石および粘性土材料における3種類の室内水理破砕試験をシミュレートした.その結果, 材料の引張強度とカムクレイモデルの降伏曲面を破壊規準として用いることにより, 注入孔表面もしくはノッチ/スリット先端からの破砕開始と水理破砕時の注入圧を評価できることが分かった.また, 岩のカムクレイモデルのパラメータ, 特に圧縮および膨潤指数・降伏応力の決定法について考察した.
  • フィルダム基礎岩盤の水理破砕規準
    塚田 泰博, 小林 晃, 木山 正一, 青山 咸康
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 93-101
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文では, 基礎岩盤の材料特性を考慮して湛水深・湛水速度が水理破砕に及ぼす影響を定量的に評価し, フィルダム基礎岩盤の水理破砕規準を提案する.このため, 本論文の姉妹論文中で妥当性を検証した有限変形解析を用い, 297種類の岩盤において実測された材料特性を考慮して一本の亀裂先端からの湛水による破砕進展をシミュレートした.その結果, 鰍元パラメータ水理破砕日紛甚水圧と土被り圧の比 (γwhc0)・湛水速度と透水係数の比 (va/k)・限界状態パラメータ (M) を用いたチャートとして水理破砕規準を提案した・規準をティートンダムの決壊事例に適用することにより, 規準の有効性を検討した.さらに, 規準に一般的な状況への適用性をもたせるため, 岩盤等級から推測される力学特性を用いて規準の拡張を検討した.
  • 藤見 俊夫
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 103-111
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    公共事業を円滑に推進するための住民と行政とのコミュニケーションをパブリック・コミュニケーションと呼ぶ. そこでは, 計画評価を歪めている誤った計画認識が解消されるべきである.それらを特定するには, 住民が各個人の計画認識に基づいて計画を評価するパラメトリックなモデルを構築する必要がある. パラメトリックなモデルで個人の評価構造を表現する際, パラメータの値は各個人で共通していなければならない.しかし, 自然環境を大きく変容させるような公共事業では, 環境保護を重視する住民とそれ以外の住民とで, 同じ計画認識の計画評価に及ぼす影響が大きく異なる可能性がある.本稿では, 沖縄市の泡瀬地区埋立事業を対象に, 環境意識の高さによって地域住民を2つのグループに分け, それらの間で計画認識に基づく評価構造が根本的に異なるかを統計的に検証した. その結果, 個別の計画認識が計画評価に及ぼす影響はグループ間でそれほど大きく異ならないものの, それらを総合して判断すれば評価構造は異なることなることが明らかになった.
  • 松井 宏之, 水谷 正一
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 113-120
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    水管理従事者に対するアンケート調査に基づき, 関東地方における水利団体の水利条件の把握, 耐渇水性の類型化を行い, 次のことを明らかにした.1) 約8割の水利団体がシロカキ・田植え期に水利用が厳しいと考えている.2) パイプラインの導入は, 受益地区内の上下流間の格差を緩和する方向に働く.3) 渇水対応を行う際には地区全体での公平性が重視される.4) 水利団体によっては渇水による影響の程度が1未満の実数を指数に持つ不足率の累乗で表される可能性がある.5) 多くの水利団体の耐渇水性は灌概期を通じて一定ではなく, 期別に変化している.6) 関東地方における県別の耐渇水性は, 上流県である栃木, 群馬が高く, 利根川以南に位置する埼玉, 千葉で低くなる傾向がある.
  • Waleed Abouel HASSAN, 北村 義信, Habtu SOLOMON, Mohamed MELEHA, 長谷川 紘一
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 121-129
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ナイルデルタでは, 農地の塩害制御のため暗渠排水の整備が急速に進展しているが, 施工後も水稲栽培は盛んに行われている.本研究は暗渠排水が水稲栽培と土壌塩類濃度に及ぼす影響を明らかにするために, 水稲の新短期品種2品種を対象に実施した.実験は2002年夏に, 暗渠排水を有する試験地と持たない試験地の2箇所で行った.用水量削減の面では, 暗渠排水未整備圃場 (未整備圃場) の方が暗渠排水整備圃場 (整備圃場) よりも有利であった.未整備圃場, 整備圃場とも湛水深が深くなるほど, 用水量は増加した.水利用効率については, 未整備圃場の方が整備圃場よりも高く, 湛水深0cmのときに最高となった.湛水深が高くなるにつれて, 両品種とも収量は増加した.整備圃場では土壌塩類が減少し, 化学特性が改善した.水稲の導入と湛水深の増加は土壌の化学特性改善に効果があることが確認された.
  • 石黒 宗秀, 藤井 知和, 赤江 剛夫
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 131-137
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    界面活性剤は, 洗剤・シャンプー・肥料や農薬の添加剤として利用され, 多量に環境中へ放出されている.そのため, 土壌環境中への影響も懸念される.ここでは, アニオン界面活性剤溶液濃度の相違が土壌への水浸潤に及ぼす影響を明らかにするため, 種々濃度のドデシル硫酸ナトリウム溶液 (SDS) を乾燥試料カラムに毛管浸潤させ, その浸潤前線の変化を測定した.毛管上昇式を提案し, 計算毛管上昇曲線を用いてSDS溶液の影響を明確にした.親水性無機試料のガラスビーズ, 砂では, SDS濃度増加に伴い, 溶液の表面張力低下のため浸潤が遅くなった.疎水性有機試料のポリエチレン粒子, ピートでは, SDS濃度増加に伴い, 主に前進接触角減少のため浸潤が速くなった.腐葉土では, SDS濃度増加に伴い浸潤が遅くなった.これは, 高濃度になると膨潤性が増し, 透水性が低下したためと推測された.
  • ハード面整備に関わる規模の経済性について
    松島 修市
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 139-147
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    灌漑システムの構築において, 開発規模の拡大とともに開発効率が向上することは, 開発現場ではよく認められる事実である.本稿は, これまで詳しく触れられなかったこの灌漑開発ハード面におけるスケールメリット (規模の経済) について, プロジェクト実績などを参考にしてより合理的な観点から論証することを目指している.
    本稿では, 灌漑開発ハード面のスケールメリットを (1) 水源面,(2) 施設設計面, 及び (3) 施工面の3種に分類し, それぞれにおいて規模の経済が成立することを示した.また, 自然環境面で大きな差異がなければ, 違う地域での灌漑開発スキームどうしの間でも, 規模が大きいほど有利となるスケールメリットが成立することも確認した.
  • 加藤 貴久, 足立 泰久
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 149-153
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沈降法によって求められる土壌の粒径分布に対するコロイド画分のフロック形成の寄与を検討するために, フロック形成による粒子の密度補正を考慮した解析法と, 粒子の密度を一定として解析する従来の方法との比較を試みた. 密度補正を考慮した解析に当たっては, 土壌フロックの沈降速度を粒径の関数として測定し, ストークスの法則を適用してフロックの密度を粒径の関数 (フロック密度関数) として予め求めておき, 次にこの関係をピペット法のデータ処理に組み込んだ. 実験には, 農地からの海洋流出が問題となっている沖縄の赤土 (サトウキビ畑より採取) を用いて行い, フロック形成の影響が明瞭に現れるように試料をCaCl2溶液処理 (凝集処理) およびヘキサメタりん酸処理 (分散処理) したものを用いた. 沈降法によって求められた粒径分布を, 顕微鏡写真から直接求められたものと比較した. 実験の結果, 凝集および分散処理を施した双方の試料において, 一定のフロック密度関数の存在が確認された. また, 凝集処理を施した試料ではフロック密度関数を組み込んで求めた粒径分布と顕微鏡写真から求めた粒径分布が一致し, 新たに提案する解析法の有効性が確認された. 一方, 分散処理を施した試料は粒度組成10μm以下の微小成分について沈降法と顕微鏡写真の粒径分布には差異が生じていることが見出された. この理由は, 赤土のコロイド画分の特徴的な分散形態によるものと解釈された.
  • ラシュワン モハメドアボエルーハマド, 甲本 達也, 朴 鐘華, 日野 剛徳
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 155-162
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    室内実験結果より土の諸性質を評価する場合, データの数に制限を受けたり, 試料が乱れを受けて値がばらつくなどの問題に直面することがよくあり, 原位置で直接データを得る原位置試験法の有効利用法の確立が強く望まれる。
    電気式コーン貫入試験法は基礎の設計や液状化解析, 地盤調査等に最も幅広く利用されている原位置試験法である. 本論文は, 有明粘土地盤の6地点において実施された電気式コーン貫入試験結果を用いて地盤の原位置における物理的性質としての土の密度ρtや力学的性質としての非排水せん断強さsuの推定への適用性について論じたものである. 半解析的に導いたρt予測式は実測値とよい一致を示した.suを推定するために用いられる電気式コーン係数Nktはコーン表面の粗度や粘土の鋭敏比Stの関数となるが, 鋭敏性の高い粘土の場合Nkt=11を用いると電気式コーン貫入試験結果からsuを推定できることが明らかとなった.
  • 小林 晃, 井上 敬資, 青山 咸康
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 163-169
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    多くの山岳土木工事やその環境影響評価では, 地山の透水係数分布の把握が重要である. しかし, 昨今の公共工事の経費削減傾向のため, 十分な調査費用が得られない場合も多い. そこで, 透水係数以外のデータを補助情報として用いることが有効となる. 本論では, 地盤統計学のindicator simulationにおいて2つ以上の補助情報を用いた場合に, 細かく区分別けすることにより区分毎の差を明確にする手法を提案する. そして, まずモデル試験においてその有効性を確認し, 次に実際に得られたデータを用いてその有効性について検討した. その結果, モデル試験では提案手法の有効性が証明されたが, 実際のデータを用いた場合, 単独の補助情報でまずindicator simulationを行い, 精度の高いものを抽出して, その組み合わせに本手法を適用することにより, 精度が向上することが分かった.
  • 北海道てしおがわ土地改良区の事例を中心として
    國光 洋二
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 171-177
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農業水利施設の保全のため, その管理主体である土地改良区の組織再編を通じた運営基盤強化が政策的課題である. 本稿では, 土地改良区再編の効果とその発現要因を解明するため, 北海道てしおがわ土地改良区を事例として財務分析及びアンケート調査による分析を試みた. 分析の結果, 土地改良区再編は, 理事・総代からなる土地改良区組織のリストラクチャリングを通じて経済的効果を発現させることに加え, 維持管理技術の世代間継承が容易な事務局組織の実現や役員への義務的な就任機会の低下による負担軽減等の非金銭的な効果をもたらすことが明らかとなった. 効果発現の鍵となるのは, 維持管理方式における変化の有無, 旧改良区間の財務的格差の処理, 土地改良区と組合員との情報伝達経路の状況であることが示唆された.
  • 吉田 貢士, 島田 正志, 田中 忠次
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 179-184
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    不等流性が強い複断面形状や粗度分布のある水路において, 断面分割法により水理計算を行う際には, 分割断面境界に作用する見かけのセン断力と同様に, 移流に伴う運動量輸送を考慮する必要がある. 本研究では, 分割断面間での移流を考慮することにより各断面での連続式. 運動方程式を用いた新たな水面形計算法を提案し, 低下背水条件の複断面不等流を対象とした水路実験により検証を行つた. その結果, 断面分割法により水路抵抗を予測する際, 等流に近い流れにおいては流速差起因の乱流混合による抵抗増加を考慮すれば十分であるが, 不等流性が強くなるにつれて移流による運動量輸送を考慮する必要性が示された.
  • 愛媛県を事例として
    武山 絵美
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 185-191
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    愛媛県を対象とした市町村単位での統計的分析より, 米の生産調整に係わる耕作放棄多発地域に共通する農業地域特性とその背後にある労働力条件及び基盤条件を明らかにした. その結果, 耕作放棄地多発地域は, 都市的地域や山間農業地域に多く, 水田率が20~60%という特徴があり, 水田転作に必要な労働力条件及び基盤条件が整わないために耕作放棄地が多く発生していることがわかった. また, これらの地域では1戸あたり生産調整割当面積が8~15aと小さい. 小規模な生産調整面積の割り当ては, 区画の分割や区画全体の休耕を経て耕作放棄地の発生に結びつく危険性が高いことから, 地域性を無視した一律的な生産調整による弊害が指摘された.
  • 安濃ダムを事例として
    浪平 篤, 小林 宏康, 高木 強治, 後藤 眞宏
    2005 年 2005 巻 236 号 p. 193-200
    発行日: 2005/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 社会経済情勢の変化により, 農業水利施設の維持管理組織である土地改良区等の体制が脆弱化しつつある. そこで本研究では, 安濃ダムを事例に, 維持管理体制が低下した場合等を想定した洪水放流操作の違いが, 農業用ダムの多面的機能の一つとして着目されている洪水緩和機能に及ぼす影響を解析した. そして, 洪水吐ゲートを全開状態で洪水に対応する等, 洪水放流施設の操作を行わなかった場合, ピーク流入量とピーク放流量の差が減少し, 下流地域の溢水被害の可能性が増大することを定量的に示した.この結果は, 維持管理体制の低下が洪水吐ゲートを有する農業用ダムの洪水緩和機能の低下に繋がることを示唆している.
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