都市型用水として金沢用水, 農村型用水として七ヶ用水を対象に, 両用水の地域用水機能とその用水に関係する人々の属性との関係を分析した.分析対象は,「現在利用している用水」「用水の役割」「用水の改善点」全体と, この問題の質問項目をグループ化したものと属性との関係である.現在の用水利用は, 農業雑用水, 生活雑用水, 親水系用水, 上水系用水の4グループ,「用水の役割」と「用水で改善点」は生活系用水, 環境系用水, 親水系用水の3グループに分けた.さらに, 現在活用している「雪捨場」「散歩」「夕涼み」の3機能と属性についても検討した.属性として取り上げたのは, 住民の性別, 年齢, 居住年数, 農業収入割合, 年収, 水路からの距離, 維持管理回数の7項目である.分析結果は, 有意水準5%で有意と認められる項目について, 上述の課題ごと, グループごと, 機能ごとに個別に考察を加えた.次に, 金沢用水, 七ヶ用水ごとに, 属性に対する回帰係数を正と負に分けて検討した.その結果, 金沢用水の場合は, 維持管理回数, 水路からの距離, 年齢が有意な場合は, 例外なく維持管理回数の多い人, 高齢者, 水路に近い人が地域用水機能をより強く意識していること, また, その他の項目有意な場合は, 機能の種類によつて価値の評価が分かれることが示された.七ヶ用水の場合は, 全ての属性について明確に評価がに分かれ, 例外なく男性, 高齢者, 居住年数の長い人, 非農家, 年収の高い人, 水路に近い人, 維持管理回数の少ない人が, はつきりと地域用水機能を評価し, あるいは高い関心を持つていることを示した.また, 評価・関心に関係する属性としては, 農業収入割合, 年齢, 居住年数, 性別の順序であった.
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