農業土木学会論文集
Online ISSN : 1884-7234
Print ISSN : 0387-2335
ISSN-L : 0387-2335
最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 小林 晃, 丹羽 亮太, 柳本 智也, 山本 清仁, 青山 咸康
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 231-238
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    コンクリートの構造物に対する非破壊検査技術の開発は種々検討されているが, 士構造物の非破壊検査はあまり行われていない. しかし, ため池堤体のような土構造物において漏水などが問題となる場合, その経路の把握は, 維持補修計画において重要である. 本論では, 地質調査で最もよく行われている弾性波探査手法を援用して, ため池堤体内の水分状況を推定する簡便な手法について検討する. 理論はコンクリート構造物で用いられている打音法を参考にして, 反射面の位置を周波数分析から推定することを試みる. また, 音響インピーダンスの違いが波のパワーの大きさとなって現れることを利用して, その反射面位置に最大パワーで正規化した評価値をプロットすることにより, 内部の水分状況を推定する. その結果と電気探査結果と合わせると, 水分状況を合理的に推定できることを示す.
  • 森 洋, 小川 好
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 239-246
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    粒状体個別要素法 (D.E.M.) を用いた液状化解析プログラムを開発し, 1995年の兵庫県南部地震で被災した盛土堤防と, 現在, 東京都や大阪府で管理している都市型の河川堤防 (特殊堤防) に適応させた. 実被割で観測された天端沈下量は, DEM解析結果と比較し得る値となった. 主に, 鋼管杭等を伴う地盤改良工法による堤外地側耐震対策を採用している特殊堤防の天端沈下量と液状化発生領域は, 未対策堤防に比べて小さく抑えられることが分かった. また, 堤内地側に地盤改良を施した場合の耐震対策効果も検討しており, 本解析プログラムは耐震対策工法に対しても十分評価できる可能性のある解析手法であることを示した.
  • 新潟県上越市大島地区を事例として
    有田 博之, 大黒 俊哉
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 247-254
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    わが国の農地政策は, 短期的には米の構造的過剰を抱えながらも, 長期的な食料需給の不安定性に対応しなければならない.こうした困難の解決策として, 筆者等は耕作放棄田を粗放管理することによつて何時でも利用可能な状態で維持する方法を提案している.本論では木本が侵入した耕作放棄田の利用可能性を経済的視点から評価するため, 伐木試験による事例調査を実施し, これらに基づいて復田コストと放棄年数の関係の変化をモデル化した.結果, 以下の点を明らかにした.(1) 復田コストは, 木本の侵入圃場の方が草本のみの圃場を, 乾性圃場が湿性圃場を上回る.(2) 復田総費用は, 数十年間の長期の放置後に復田する方法と, 毎年の粗放管理によって利用可能な状態を維持管理し続ける方法の間に大きな差はない.
  • 新潟県上越市大島地区の調査に基づく検討
    有田 博之, 大黒 俊哉
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 255-260
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    わが国の農地政策においては, 短期的には米の構造的過剰を抱えながらも, 長期的な食料需給の不安定性に対応しなければならない.これに対する解決策として, 筆者等は農地をいつでも利用可能な状態で粗放的管理する方法を提案している.本論ではこうした観点から, 耕作放棄田への木本侵入の実態調査に基づき, 木本の大型化を防止しながら粗放的に管理する方法の提案を試みた.侵入した木本には以下のような特性が認められた.(1) 先駆型の樹種である.(2) 樹種は, 乾性圃場と湿性圃場とで大きく異なる.(3) 木本の個体数・体積は, 乾性圃場が上回る傾向がある.これらをもとに, 木本を排除しながら簡易に耕作放棄田を管理する方法を検討した結果, 毎年の休閑耕等による攪乱の継続が効果的な方法と考えられた.
  • 長束 勇, 渡嘉敷 勝, 森 充広, 石神 暁郎
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 261-267
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    既設コンクリート躯体を活用して水路を更新しようとする場合, 目地部における効果的な漏水防止補修技術が必要となる. 筆者らは, 合成ゴムの有する高弾性に着目し, 目地材の断面形状を工夫することにより, 目地機能の安定性. 持続性, 目地補修の省力化が可能な工法開発を進めている. 多様な断面形状の目地材について目地挿入完了時および最大圧縮変形時の応力状態をFEM解析により調べたところ, 適切な空隙量を有する中空リム構造とすれば, 目地が伸縮しても目地材の水路側表面には引張応力が発生しないことが判明した. 一般にゴムが引張された状態では大気中のオゾンによる劣化を受けるが, オゾンにさらされる目地の水路側表面は常に圧縮応力状態に維持されることから, 高耐久性が期待できると考えられる.
  • 阿部 公平, 兵頭 正浩, 佐藤 利夫, 野中 資博
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 269-275
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    リン吸着コンクリートは, 汚濁水域中のリン除去を目的として開発された水質浄化資材である. 本研究では, 汚濁水域中に浸漬した本資材の循環利用方法の一つを確立することを目的とした. 実河川中に通常のコンクリート, リン吸着コンクリート, 天然ゼオライトを複合化したリン吸着コンクリートを一定期間浸漬後, 植生基盤材としての再利用方法と緑農資材としての再資源化方法について検証した. 実河川水中に各種供試体を浸漬した結果, リン吸着コンクリートに付着する生物膜量は増加することを確認した. 河川から引き上げたコンクリートの植生基盤材および緑農資材としての利用性を検証した結果, リン吸着コンクリートは植物に対して生長促進効果を有することが明らかとなった. さらに, 天然ゼオライトを複合化した場合では, 陽イオン交換能によって植物の生長促進効果を高めることが明らかとなった.
  • 仲村渠 将, 吉永 安俊, 酒井 一人, 秋吉 康弘, 大澤 和敏
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 277-283
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    沈砂池における浮遊土砂流出, 沈砂池による浮遊土砂流出防止対策の課題点および沈砂池の浮遊土砂流出防止効果の簡易的評価について検討するため, 実際の沈砂池で降雨時の現地観測を行った. 沈砂池における複数の降雨イベントでの土砂収支計算結果より, 75μm以上の粗粒分はほとんどが捕捉され, 75μm以下の細粒分の一部が沈砂池から流出することが明らかになった. また沈砂池の浮遊土砂捕捉率が貯水の入れ替え率を表す出水時回転率を用いて簡易的に定量評価された.
  • 張 琴, 前田 滋哉, 河地 利彦
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 285-292
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    灌漑システムに複数存在する水田ブロックに対し, 河川より取水された水を灌漑用水として配分する最適化モデルを提案する. 水理・水文学的パラメータの確率的変動および水管理目的のあいまいさに起因する不確実性に対処するため, ファジィ線形計画法による定式化を行う. これまでの研究で考慮してきた2つの目的, すなわち河川取水量の最小化と米の総収量の最大化に加え, 本研究では新たに, 各水田ブロックで水不足に陥るリスクの最小化も管理目的としてモデル内で考慮し, 局地的な利益も追求する. これらの互いに競合する目的の達成度のあいまいさを数学的に記述するため, ファジィ集合と対応する適切なメンバシップ関数を定義する. ファジィ決定として最小オペレータを採用し, 上記3種類の目的間の調和のとれた解を導く. 仮想灌漑地区にモデルを適用し, 灌漑用水の配分において用水量不足のリスクを新たに考慮することの有効性を明らかにする.
  • 藤田 信夫, 毛利 栄征, 鈴木 尚登
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 293-303
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    継手構造管路では, 管路内の各継手が伸縮・屈曲することにより, 軟弱地盤地帯における不同沈下や地震時の地盤ひずみなどを吸収し, 管路の安全性を高めている. このとき継手の伸縮余裕については, 初期屈曲を考慮した値で耐震設計を行い安全性が照査されているが, 実際の地震動によって各継手が受ける伸縮・屈曲変化を実地に調査した事例は非常に少ない.
    本論では, 継手の伸縮余裕を評価することを目的として, 幹線系パイプラインの被災記録を分析するとともに, 模型管路による加振実験を実施した. その結果, 地震動による継手伸縮変化はバラツキを有するが地震後においてもその平均値は偏移しないこと, 継手間隔の初期不整や屈曲による影響は小さいこと, 直線部と比べて異形管や構造物ぎわで特に変化が大きく構造上の弱点となることを確認した. また模型管路による加振実験からも実管路の継手挙動と合致する傾向を得た.
  • 原口 智和, 加藤 治, 田中 明
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 305-311
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    廃材の炭化物の水質浄化能力に関する実験を行った. 循環型カラム通水装置に粒径の異なる2種類の木炭, および松葉炭の計3種類の炭化物をそれぞれカラムに充填し, 硝酸カリウム水溶液および懸濁水を大間隙が飽和に保たれるよう通水させた. 電気伝導度およびpHの時間的変化量は, 硝酸カリウム水溶液の実験より懸濁水の実験のほうが小さかった. リン成分については, 硝酸カリウム水溶液の実験において木炭より松葉炭でリン酸態リンおよび全リンの濃度増加が著しく大きくなり, 懸濁水の実験ではそれらの濃度は減少 (木炭) または一定 (松葉炭) となった. 無機態窒素に関しては, 松葉炭は木炭よりも濃度減少が大きく, とりわけ硝酸態窒素の除去に効果があることが示された. また, 懸濁水を通水した場合, 溶解物質の全濃度が高いこと, ならびに炭化物表面への浮遊物付着のため, 溶解性成分の溶出速度が低下することが示唆された.
  • 吉永 安俊, 酒井 一人, 仲村渠 将, 大澤 和敏, 塩野 隆弘
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 313-318
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は, ススキ束を用いたうね間部分マルチの土砂流出防止効果を明らかにしたものである. ススキ東を用いたうね間部分マルチとは, ススキを長さ1m程度, 直径15-20cmに束ね, うね間の末端に置く方法である. 本研究では, 長さ15m, 隣り合ううね頂部の距離1mのうね間を2本用い, 一方をマルチうね間, 他方を裸地うね間として, 両うね間からの流出土砂量を測定し, それらを比較することで, ススキ束マルチの土砂流出防止効果を求めた. その結果, ススキ束マルチの土砂流出防止効果は46%に達することが確認された. また, 流出土砂をフルイ分けし, ススキ束マルチの流出防止効果を粒径別に求めると, 沿岸海域汚染の原因となる粒径0.1mm未満の微細土粒子に対して30%, 1mm以上の粗砂に対して94%が得られた.
  • 佐久間 泰一, 石井 敦
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 319-328
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    千葉県鴨川市で行われている都市住民や地元農民らによる棚田の保全支援の取り組みの諸形態について, その実態を明らかにし, 問題点について検討した. 鴨川市では, 大山千枚田の他, 棚田特区や鴨川自然王国においてオーナー制度やトラスト制度が実施され, 棚田支援の取り組みがなされている. いずれも大都市近郊であるため都市からの保全支援希望者は多数あるが, 彼らの農作業を指導する指導員が十分確保できないため, オーナー制度やトラスト制度の規模は棚田全体の一部にとどまっている. 自然王国では常勤の職員を雇用し棚田を保全管理するため毎年個人の私財が投入されている. 他の地区では地元農民らを指導員として非常勤で雇用しており, 支援体制が金銭的にバランスしているが, 今後, 中長期的にこうした指導員を確保できるかが問題である.
  • 大池とシダノシタ池の比較から
    藤原 正幸, 垣原 登志子, 冨岡 和博, 福島 忠雄
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 329-336
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    松山市北梅本地区にある大池は, 同地区にある同規模のシダノシタ池より, リンの流入負荷量が少ないにもかかわらず, 富栄養化している. 調査の結果, その要因として以下のことが明らかとなった. 制限栄養塩であるリンに着目して考察すると, 物理的環境 (滞留時間, 平均水深) と沈降・溶出毅の違いがこれらの池の栄叢の差異を引き起こしている. 大池はシダノシタ池に比べ水深が浅いため, 鉛直混合しやすい. そのため, 底泥から溶出したリンが容易に上層に運ばれ, それを利用して植物プランクトンが増殖する. さらに, 大池は底樋取水のため, 灌概が始まると成層が弱められる. このことがさらに富栄養化を進行させている一因に挙げられる.
  • 中村 真人, 柚山 義人, 山岡 賢, 藤川 智紀
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 337-343
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    メタン発酵プラントにおける運転状況の現状把握を行うために, 運転記録や原料, 生成物等の成分分析結果からメタン発酵過程, 消化液固液分離過程での重量, 炭素, 窒素, リン, カリウムの収支を求めた. また, 生成される消化液及び消化液を固液分離した液分である脱水ろ液の肥料特性について考察した. その結果, メタンとして取り出せた炭素は投入された原料に含まれる炭素の9.8%にとどまつていた. 原因は発酵不適合物である敷料のオガクズが多量に混合したふん尿を原料としているためであり, メタンの生成効率を高めるためには, プラントと畜産農家が一体となつて取り組む必要があることが示唆された. 消化液, 脱水ろ液は, アンモニア態窒素とカリウムを多く含み, 速効性のNK肥料であると判断された. また, 脱水ろ液は浮遊物質が取り除かれ, 取扱性が向上している.
  • 泉 完, 矢田谷 健一
    2007 年 2007 巻 249 号 p. 345-346
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
feedback
Top