日本関節病学会誌
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39 巻, 4 号
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原著
  • —セメントレステーパードラウンドステムでの比較—
    西野 衆文, 三島 初, 吉沢 知宏, 山崎 正志
    2020 年 39 巻 4 号 p. 355-361
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 形状と表面加工が同一で長さが異なる2本のセメントレステーパードラウンドステム (Synergy SelectおよびSelect Ⅱ) を比較し, 15mmのステム長短縮が臨床およびX線学的成績に及ぼす影響を明らかにする。

    方法 : 100か月以上経過観察したSelect群41例45関節, Select Ⅱ群48例50関節を対象とした。患者背景に有意差はなかった。JOAスコアで機能評価を行い, 大腿部痛の有無を確認した。挿入したステムのサイズと挿入アライメントを調べた。最終観察時の生物学的固定性とステムの沈み込み, ステム周囲の骨反応とストレスシールディングの程度を評価した。

    結果 : JOAスコアは両群とも94点で術前より有意に改善した。大腿部痛はいずれもみられなかった。ステムサイズはSelect Ⅱ群で1サイズ有意に小さかった。アライメントは中間位挿入の割合がSelect群62%, Select Ⅱ群76%であった (有意差なし)。すべての症例でステムの固定性は安定しており再置換を要した症例はなく, 3mm以上の沈み込みもみられなかった。Spot weldsがステムの遠位部にみられ, 重度のストレスシールディングを呈する例もあったが有意差はなかった。Select Ⅱ群で軽度のストレスシールディングが多い傾向にあった。

    考察 : 15mmの短縮ではコンベンショナルステムの臨床およびX線学的成績を低下させなかった。また, 短縮によりストレスシールディングの程度を減らす可能性が示唆された。

  • —骨折線が存在するエリアに基づく分類—
    木島 泰明, 藤井 昌, 河野 哲也, 島田 洋一, 宮腰 尚久, 奥寺 良弥, 小西 奈津雄, 久保田 均, 山田 晋, 田澤 浩, 谷 ...
    2020 年 39 巻 4 号 p. 362-366
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : ステム周囲骨折は治療に難渋することが多いが, まとまった報告が少ない。今回我々は可及的に多くの症例の傾向と特徴を調査した。

    方法 : 対象は2006年3月から2018年3月までに受診した大腿骨ステム周囲骨折患者51名とし, バンクーバー分類での骨折タイプ, 先行手術の種類, 先行手術のステム固定様式, 先行手術からの経過時間, ステム周囲骨折への治療方法を調査した。

    結果 : バンクーバー分類Type Aが5.9%, Type B1が47%, Type B2が20%, Type B3が2.0%, Type Cが25%だった。先行手術のステム固定様式はセメントレスが76%, セメントが24%だった。先行手術からステム周囲骨折までの期間は平均8年7か月だったが, 1年以内の症例が24%と最も多かった。治療方法は骨接合術が53%に, 再置換術が39%に行われていた。ステムのゆるみがないと判断されたType B1に対しても33%で再置換術が施行されていた。ステムのゆるみがあると判断されたType B2およびB3はすべて再置換術が行われていた。

    考察 : 先行手術から1年以内にステム周囲骨折が多いことから人工股関節置換術後または人工骨頭置換術後すぐに骨粗鬆症治療や転倒予防措置などのステム周囲骨折の予防を行うべきである。また, ステム周囲骨折の治療方針について調査した結果, ステムの固定様式と骨折線の位置によって手術様式を決定できる可能性が示唆された。

  • 原田 豪人, 藤田 裕, 片岡 正尚, 冨永 智大, 奥谷 祐希, 室谷 好紀
    2020 年 39 巻 4 号 p. 367-370
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 変形性関節症性 (OA) 変化のない股関節に対するセメント人工股関節置換術 (THA) 後のカップ設置位置について大腿骨近位部骨折症例をもとに検討した。

    方法 : 2003年4月から2018年10月までに施行した初回THA743例934股のうち, 原疾患が大腿骨近位部骨折の新鮮骨折例または過去の骨折後偽関節や大腿骨頭壊死にて再手術を要した症例で, 両側股関節にOA変化がない18例を対象とした。男性5例, 女性13例, 手術時平均年齢は68.5歳 (51〜83歳) であった。術後1週の両股仰臥位正面X線像において両股関節の骨頭中心から涙痕間線までの垂直距離の患健差を計測し, 高位設置の程度として評価した。また骨頭中心と涙痕までの水平距離の患健差を計測し, 内方化の程度として評価した。

    結果 : 健側正常股関節と比較したカップの設置高位は平均8.0mm高位であった。患健差は5mm以内のものは6例33%で, 10mm以上のものは10例56%であった。内方化の程度は平均5.8mm内方であった。

    考察 : セメントカップ設置には臼底の軟部組織と軟骨および軟骨下骨を完全に除去し海綿骨を露出する必要がある。術前にOA変化がなくとも5〜10mm程度は健側正常股関節から推定する原臼位よりもカップ中心が高位となることが想定される。大腿骨近位部骨折症例のTHAに関する原臼位の基準は8mm高位で6mm内方であると考えられた。

  • 藤巻 洋, 中澤 明尋, 竹内 剛, 門脇 絢弘, 草山 喜洋, 井出 学, 金井 研三, 金 由梨, 松原 譲二, 稲葉 裕
    2020 年 39 巻 4 号 p. 371-378
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 大径骨頭 (径40mm以上) を用いた人工股関節全置換術 (THA) の中期成績を調査した。

    方法 : 調査対象は当科で大径骨頭を用いたTHAを施行し5年以上経過した全57股のうち, 術後5年未満で脱落した12股 (Cup脱転による再置換1股, 術後骨盤骨折1股を含む) を除いた45股 (手術時平均年齢72歳)。全例Stryker社インプラント (摺動面はTrident X3 polyethyleneとBiolox delta head) を使用し, Cup外径は52±2.5mm (全例50mm以上), 骨頭径は40mm (32股) または44mm (13股)。術前と最終調査時の日本整形外科学会股関節機能判定基準 (JOA score) を調査し, Roentgen Monographic Analysis (Roman) Ver. 1.70を用いて術後1年時および最終調査時の股関節正面単純X線像における骨頭中心の位置の差をsteady-state phaseにおけるpolyethylene線摩耗量として計測し, 定常線摩耗率を算出した。

    結果 : 術後観察期間は72±9.6か月であり, 調査対象45股の中に脱臼, 再置換はなかった。JOA scoreは術前52.3±15.2点, 最終調査時84.0±12.2点で有意に改善した (P<0.01)。Polyethylene定常線摩耗率は0.05±0.03mmであった。

    考察 : 径40mm以上の大径骨頭を用いたTHAでの中期での術後臨床成績は比較的良好でpolyethylene線摩耗率もごく小さな値であった。

  • 大澤 郁介, 関 泰輔, 竹上 靖彦, 草野 大樹
    2020 年 39 巻 4 号 p. 379-385
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 我々は骨頭変形や関節症進行により関節適合性が不良な寛骨臼形成不全例に対して転子間外反骨切り (ITVO) を併用した偏心性寛骨臼回転骨切り術 (ERAO) を施行してきた。今回, 50歳未満の寛骨臼形成不全症に対してITVOを併用したERAOの長期成績をERAO術単独例と比較検討を行った。

    対象および方法 : 1989年から2009年に寛骨臼形成不全症に対してITVO併用ERAOを施行した35例36関節 (前股関節症2例, 初期股関節症2例, 進行期股関節症28関節, 末期股関節症4関節) を対象とした。Control群は性別, 年齢, 術前病期をマッチングしたERAO単独施行した65例66関節 (ERAO群) とした。性別は全例女性で, 手術時平均年齢はERAO/ITVO群で41.1/41.9歳, 平均経過観察期間は16.5/16.2年であった。検討項目は術前および最終調査時の日本整形外科学会股関節機能判定基準 (JOA hip score), 合併症, 人工股関節全置換術 (THA) への移行およびJOA hip score<80をend pointとした生存率とした。

    結果 : 術前JOA hip scoreは両群で有意差を認めなかったが最終経過観察時はITVO/ERAO群で78.9±12.3/87.4±9.7で有意にITVO群が不良であった (P<0.01)。合併症はITVO群4例, ERAO群3例で有意差を認めなかった。THAをend pointとしたITVO/ERAO群の生存率は10年91.9/91.4%, 20年60.3/69.2%で有意差を認めなかった。JOA hip score<80をend pointとした生存率は10年56.9/82.8%, 20年42.9/72.7%で有意にITVO群が不良であった (P<0.01)。

    結論 : 股関節機能においてITVOを併用したERAOの長期成績は不良であり, 本術式の適応は若年の前, 初期股関節症に限定するべきである。

  • 岩田 憲, 真柴 賛, 嶌村 将志, 千田 鉄平, 山本 哲司, 三木 崇範
    2020 年 39 巻 4 号 p. 386-391
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折 (SIF) の原因は骨粗鬆症を基盤とする骨脆弱性が原因と考えられているが, その病態は明らかではない。本研究の目的は, SIFから急速破壊型股関節症 (RDC) へ進行しつつある大腿骨頭のマイクロダメージの蓄積を調査し, すでに我々が報告した末期変形性股関節症 (OA) と比較検討しその病態を明らかにすることである。

    方法 : 他の疾患が否定されSIFと診断され日常生活に支障をきたしたため人工股関節置換術 (THA) を施行した7例と, 発育性股関節形成不全 (DDH) によるOAのためTHAを施行した9例を対象とした。術前の腰椎前弯角, 腰仙角, 骨盤傾斜角, 術中に摘出した大腿骨頭軟骨下骨のマイクロダメージを調査し, SIFとOAで比較検討した。

    結果 : SIFの脊柱骨盤アライメントは有意に腰椎前弯が低下し骨盤後傾を認めていた。評価領域中の骨量であるBV/TVはSIFの方が有意に低値であったが, マイクロクラックの密度であるCr.DnはOAのほうが有意に高値であった。

    考察 : SIFは腰椎の後弯と骨盤の後傾により大腿骨頭の前方被覆が急激に失われ, 脆弱な大腿骨頭にマイクロダメージの蓄積が起こり発症すると推察された。一方, OAはマイクロダメージの蓄積はあるものの骨量が維持されているため骨折をきたしにくいと考えられた。

  • 清原 壮登, 濵井 敏, 村上 剛史, 水内 秀城, 川口 謙一, 中島 康晴, 岡崎 賢, 藤吉 大輔, 時枝 美貴, 宮里 幸, 藤田 ...
    2020 年 39 巻 4 号 p. 392-396
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 本研究ではBerg Balance Scale (BBS) を用いてTKA後のバランス機能評価を行い, その影響因子について検討を行った。

    方法 : 対象は当院で施行したprimary TKA 99膝 (平均年齢 : 74歳, 平均body mass index (BMI): 27.0Kg/m2)。年齢, 疾患, 性別, 他関節痛・下肢手術歴, 腰椎疾患, 心疾患の有無を調査し, 術後1年のhip-knee-ankle (HKA) 角を計測, 理学療法士が術後疼痛 (VAS), 可動域, 屈曲/伸展位等尺性筋力の患健比, BBSを測定した。

    結果 : 術後の屈曲可動域は125±9°, 伸展可動域は−2±4°, VASは7±17mm, 屈曲筋力患健比は105±47%, 伸展筋力患健比は95±39%, HKA角は0.7±3.5°, 術後BBSスコアは平均52±5であった。術後BBSスコアが45点未満の割合は11%であった。多変量解析では, 術後BBSスコアは年齢 (P<.01), 術後伸展可動域 (P<.01) が有意な影響因子であり, 高齢, 術後屈曲拘縮が負の因子であった。年齢, 屈曲拘縮で層別化したサブ解析では70歳以上, 屈曲拘縮10°以上で有意に術後BBSスコアが低下していた (P<.05)。

    考察 : 術後BBSスコアは52点と良好であったが11%の症例は転倒リスクが高い45点以下であった。術後膝伸展可動域は術後バランス機能に影響を与える重要な因子であり, 屈曲拘縮の残存に注意を要すると考えられた。

  • 上田 大輔, 安田 和則, 薮内 康史, 小野寺 純, 小野寺 伸, 八木 知徳, 近藤 英司
    2020 年 39 巻 4 号 p. 397-401
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 高位脛骨骨切り術 (以下HTO) に伴う腓骨短縮に関しては, 合併症や有痛性偽関節が問題となっている。我々は腓骨中央部に強斜位骨切りのみを加える術式を行っている。本論文の目的は, この術式の簡便性, 安全性, 骨癒合を評価することである。

    方法 : 逆V字型HTOに先立ち, 腓骨強斜位骨切り処置が行われた変形性膝関節症患者30人34膝を対象とした。腓骨骨切り術に要した時間, 出血量, 周術期合併症の有無を調査し, 単純X線写真にて骨癒合の時期について評価した。

    結果 : 要した時間は約5分。術後出血は全例で微量, 周術期合併症はなかった。腓骨の骨癒合は34膝中29膝 (85.3%) で得られ, 骨癒合の時期は平均6.1か月であった。術直後における腓骨骨切り部の離開距離と骨癒合時期との間には有意の相関を認めた (R=0.73, P<0.001)。

    考察 : 外側楔状閉鎖式HTOに伴う腓骨骨切り術には, 絶対的な安全性および簡便さが条件となる。本研究で, 腓骨強斜位骨切り術は簡便かつ極めて安全な術式であることが示唆された。一方, 腓骨の癒合率は過去の報告と比較すると高率で有用な術式と言えるが, さらなる改善を目指す必要がある。

  • 高川 修, 小林 直実, 雪澤 洋平, 大石 隆幸, 辻 雅樹, 稲葉 裕
    2020 年 39 巻 4 号 p. 402-409
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 両側同時人工膝関節全置換術は入院期間の短縮などのメリットがあるが, 予定通りにリハビリテーションが進まず, 予定されたクリニカルパスの入院期間内に退院できない症例も散見する。過去に入院期間に影響を与える術前因子の報告はなく, 今回検討を行った。

    方法 : 両側同時人工膝関節全置換術を施行した変形性膝関節症患者191例を対象とした。術前に調査した年齢, 性別, BMI, ASA class, Knee Society Score (KSS) functional score, Hb値, Alb値, 膝可動域, 膝立位X線像でのK-L grade, 独居かどうかを独立因子として調査した。術後3週間以内に自宅退院した群 (遵守群), 以後に自宅退院または転院した群 (後期群) の2群に分けた。早期退院に影響を与える因子を調査し, 予測するスコアリングシステムを構築した。

    結果 : 132例は遵守群, 59例は後期群であった。退院に影響する因子は多変量解析の結果, 年齢 (β=−0.086976; P<0.01), Hb値 (β=0.34; P<0.05) であった。スコアリングシステムとして, スコア=10−0.09×年齢−0.09×BMI−0.56×独居 (独居 : 1, 他 ; 0) +0.03×KSS stairs+0.34×Hb値−1.1×ASA classが算出された。C統計量は0.748 (95% confidence interval[CI], 0.672〜0.824), 感度66.6%, 特異度78.0%であった。

    結論 : 術前因子を使用することである程度予定した入院期間内に自宅退院が可能であるかを術前に予測することが可能である。

  • 山口 純, 安田 和則, 上田 大輔, 小野寺 純, 小野寺 伸, 薮内 康史, 八木 知徳, 近藤 英司, 岩崎 倫政, 丸毛 啓史, 斎 ...
    2020 年 39 巻 4 号 p. 410-418
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 関節鏡視下手術後骨壊死 (PAONK) は, 3型に分類される膝の骨壊死の稀な1型である。報告が少ないため, その原因および実態は十分に明らかではない。本研究の目的は, 当院において発生した10例のPAONKの鏡視下手術前後の病態を明らかにすることである。

    方法 : 2010〜2015年に当院で膝関節鏡視下手術を行った1,485膝の中の10膝 (0.67%) にPAONKが発生した。この10膝について関節鏡視下手術前後の臨床的および放射線医学的病態をretrospectiveに調査した。

    結果 : 10膝のすべてで, 内側半月 (MM) 後節の変性損傷 (後根5, 水平2, 放射状3) に対する鏡視下部分切除が行われていた。手術時年齢は57〜80歳 (平均67.5歳) であった。術後3か月以内に7例に, 術後4〜7か月の期間に3例に強い疼痛が出現し, MRIによって骨壊死と診断された。術前から全例に半月逸脱を認め (平均4.7mm), 診断時には有意に増加 (平均5.9mm) していた (P=0.0031)。

    考察 : 本研究は, PAONKの病因として半月板の逸脱が関与している可能性を示唆した。関節鏡手術を行う術者はPAONKに関する正しい知識をもって術前のICを行うべきであり, 特に逸脱を伴うMM損傷の切除手術後は細心の経過観察が必要である。

  • 原田 知, 濵井 敏, 塩本 喬平, 原 大介, 本村 悟朗, 池村 聡, 藤井 政徳, 川原 慎也, 中島 康晴
    2020 年 39 巻 4 号 p. 419-425
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : Cross-linked polyethylene (XLPE) を用いて施行した人工股関節置換術 (THA) において, 術後スポーツ参加の有無が摩耗に影響するか否かを検討したので報告する。

    方法 : 2000〜2006年に当院でXLPEを用いて施行した片側の初回セメントレスTHAにおいて, アンケート調査および摩耗計測を行った101例101股を対象とした。平均年齢60.4歳, 男性19例19股, 女性82例82股, 平均body mass index 23.6kg/m2, 平均観察期間10.3年, 機種 : Kyocera AMS (cup)/Aeonian (liner) 65股, Zimmer TM (cup)/Longevity (liner) 36股, 骨頭材質 : ジルコニア101股, 骨頭径 : 26mm 64股, 22mm 37股。単純X線画像で, 術後1年時を基準とし最終調査時の線摩耗量をPolyWare (Draftware Developers) を用い計測した。また, 摩耗に対する年齢, 性別, BMI, 経過観察期間, スポーツ参加などの影響を多変量解析した。

    結果 : 術後スポーツ参加率は35%であり, 内訳はlow impact 79%, high impact 17%であった。クリープ変形は平均0.15mm/年, 定常摩耗率は平均0.004mm/年であり, 術後スポーツ参加の有無で定常摩耗率に有意差を認めず, 多変量解析でもスポーツ参加の有無やその他の因子の影響を認めなかった。High impact群とlow-intermediate impact群に有意差を認めず, 最終調査時のfocal osteolysisの発生は0関節であった。

    考察 : THA後のスポーツ参加がXLPEの定常摩耗率へ影響するか否かを検討した報告は少ない。本研究では, スポーツ参加の有無, impactの程度にかかわらず, 術後平均10年におけるXLPEは極めて良好な耐摩耗性を示していた。

  • 桑沢 綾乃, 仁平 高太郎
    2020 年 39 巻 4 号 p. 426-435
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    目的 : 関節症の第3の治療としてplatelet rich plasma療法 (PRP療法) などの再生医療cell therapyが注目されている。当院では2018年8月から本邦で使用可能となった次世代PRPといわれるAutologous Protein Solution (APS) の使用を開始した。APSはPRPをさらに脱水生成させ抗炎症性サイトカインを高濃度に抽出し, 膝OAの約9割に生じている関節炎に有効とされるが, 本邦での臨床経過の報告はまだない。このAPS施行後6か月の臨床経過を検証し, 有効率や関節液貯留例の抗炎症作用効果を検証する。

    方法 : 2018年8月からAPS療法施行し, 6か月間経過観察可能であった106膝を対象とした。検討項目は施行前, 施行後1, 3, 6か月のKOOS, OMERACT-OARSIによるresponder率, 関節液貯留例の臨床評価, 有害事象として施行後急性期反応 (疼痛・腫脹) の有無とした。

    結果 : KOOSは施行前と比較し, KL分類の重症度にかかわらず施行後1, 3, 6か月ともに改善した。Responder率は60.4%であった。施行前に関節液が5mL以上貯留した35例中94%で関節液量が減少したが, KOOS-symptomの改善は貯留のない例より時間を要した。急性期反応は59.4%でみられた。

    結語 : APS療法の6か月の成績ではKL分類の重症度にかかわらずKOOSは改善した。APSは抗炎症性作用として関節炎の強い症例の関節液貯留量を減少させた。

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