日本関節病学会誌
Online ISSN : 1884-9067
Print ISSN : 1883-2873
ISSN-L : 1883-2873
41 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 大澤 郁介, 関 泰輔, 竹上 靖彦, 加藤 大策, 竹本 元大
    2022 年 41 巻 4 号 p. 275-279
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    目的:圧潰をきたした大腿骨頭壊死が自然経過において圧潰停止し,長期的に手術治療を回避できることは少なくない。我々は骨頭後方の壊死領域の範囲が大腿骨頭壊死の圧潰停止に関与すると仮説し,後方壊死領域と圧潰停止の関係性について調査した。

    対象および方法:2010年から2016年までに当院に初回受診した片側症状かつ圧潰が3mm以内(Stage 3A)の大腿骨頭壊死77例を対象とした。性別は男性37例,女性40例で平均年齢は45.1歳,平均観察期間は48.7か月,Type分類(B/C1/C2)は3/35/39であった。調査項目は圧潰停止の有無,骨頭後方壊死領域とした。圧潰停止は初診から2年時点で3mm以内の圧潰にとどまった場合に圧潰停止と定義した。骨頭後方壊死領域はMRI横断面で骨頭後方1/3レベルの冠状断T1 MRIにおける荷重面おける壊死領域の割合を評価した。ROC曲線を用いて圧潰停止が得られる後方壊死領域のcut off値を割り出し,cut off値より圧潰進行(>3mm)および人工股関節全置換術をendpointとした生存率を評価した。

    結果:圧潰停止は31例(40%)に認めた。後方壊死域は圧潰停止例43.1±31.8%に対して圧潰進行例95.6±19.1%で有意差を認めた(P<0.01)。ROC曲線のAUCは0.946でcut off値は後方壊死領域68%(感度96%,特異度92%)であった。圧潰進行および人工股関節全置換術をendpointとした4年生存率は後方壊死領域>68%では6.9%および33%に対し,後方壊死領域<68%では96%および93%でいずれも有意差を認めた(P<0.01およびP<0.01)。

    結論:一旦圧潰をきたした大腿骨頭壊死においても後方壊死領域が2/3以下の症例は高い確率で自然経過による圧潰停止が期待でき,保存的治療を行うか判断する際の有効な指標となる。

  • 薮内 康史, 安田 和則, 小野寺 純, 上田 大輔, 八木 知徳, 近藤 英司, 甲斐原 拓真, 山口 純, 岩崎 倫政
    2022 年 41 巻 4 号 p. 280-286
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    目的:逆V字型高位脛骨骨切り術(iVHTO)術後の骨癒合の進行形態と骨癒合完成時期を明らかにすること。

    方法:症例はiVHTOを行った内側型膝OAの107膝(92例,平均61歳)である。単純X線写真およびCTを用いて骨癒合の進行形態を分類し,骨癒合完成時期を判定した。

    結果:107膝中103膝(96.3%)で骨癒合が得られ,骨癒合完成時期は平均3.1か月であった。4例(3.7%)では追加手術を行った。骨切り面における骨癒合の進行形態は,①矯正ヒンジ部および外側接触面を新生骨梁が貫通して骨癒合する骨梁新生(T)型(76.6%),②外側接触面に狭い骨透亮線が発生するが,皮質骨周囲に新生した仮骨によって骨癒合する仮骨形成(C)型(14.0%),③術後5~12週時に脛骨後方に骨融解像と仮骨新生が出現する骨融解(O)型(9.3%)の3型に分類できた。骨癒合完成時期は,T型で2.7か月,C型で3.8か月,O型の6膝で5.2か月であり,3型間に有意差を認めた(P<0.001)。

    考察:本研究は,iVHTOが良好な骨癒合が得られる術式であることを示した。また骨癒合の進行形態がT型,C型,O型の3型に分類できた。T型とC型は正常な骨癒合進行形態と考えられ,骨癒合時期は2.9か月と良好であった。特にT型の存在はiVHTOにおける骨切り面の高い密着性と固定性を示唆した。

  • 久保 充彦, 前田 勉, 熊谷 康佑, 天野 泰孝, 川崎 拓, 今井 晋二
    2022 年 41 巻 4 号 p. 287-292
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,当院での人工膝関節再置換術(re-TKA)の手術方針を紹介し,成績を報告することである。

    方法:症例は25例(25膝)で,経過観察期間は平均73カ月(12~218カ月)であった。

     我々の手術方針での工夫はステムをすべてのインプラントに追加し,mega-prosthesisでは早期の強固な固定を期待し,また感染例では抗菌薬の徐放を期待してセメント固定としているが,それ以外の症例ではステムはセメントレスとするhybrid stem fixationとしている点である。

     以上の症例で,実際に使用したインプラント・骨欠損への対応を調査し,臨床・画像評価を行い,Kaplan-Meier法による生存率を求めた。

    結果:感染のため再手術を行った症例が3例あった。10年生存率はend-pointをすべての理由による再手術とすると64.1%,再々置換術とすると64.1%,感染以外の原因による再手術とすると100%であった。

    考察:我々が行ったre-TKAでは感染以外にゆるみや不安定性による再々置換はなく,手術方針は適切であったと考えられる。ただ感染が25例中3例12%に生じており,今後対策が必要である。

  • ―残存する疼痛と身体機能障害,疼痛関連症状とQOLの関係―
    島原 範芳, 中野 正規, 内山 裕貴, 上甲 雄太郎, 西岡 直哉, 西岡 沙央理, 佐藤 信治, 赤松 和紀, 藤田 慎一朗, 平 和晃 ...
    2022 年 41 巻 4 号 p. 293-300
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)診療の進歩により寛解が現実的な治療目標になった。しかし,その一方で,ロコモティブシンドローム(ロコモ)のリスクが指摘され,残存する疼痛による機能障害の潜在的進行が懸念される。本研究では外来通院加療中の在宅RA患者のロコモ度と疼痛と関連症状,生活の質(QOL)との関係について検討した。

    方法:対象は女性RA患者68名(平均年齢65.7±14.0歳)で,ロコモ度判定「ロコモ25」によりロコモなし,ロコモⅠ,Ⅱ,Ⅲの4群に分類した。評価項目は,疾患活動性(SDAI),疼痛強度(VAS),機能障害(PDAS,HAQ),心理情動(PCS,HADS),疼痛認知(TSK,PSEQ),QOL(EQ-5D)とした。

    結果:対象の77.9%がロコモであった。さらに,ロコモなし群に比べロコモⅠ群,Ⅱ群,Ⅲ群でSDAI,VAS,PDAS,HAQ,PCS,HADSが高値,TSK,PSEQ,EQ-5Dは低値であった。以上より,ロコモ25の合計点数と機能障害や心理情動面や疼痛認知の問題,QOLとの関係が示された。

    考察:地域在住RA患者の中には重篤なロコモを合併する患者が存在し,合併により機能障害や心理情動的問題,疼痛認知が変化しQOLが低下する傾向を示した。よって,RA診療においては,残存する疼痛の管理とロコモ改善による身体機能・ADLとQOLの維持改善の視点が必要と考える。

症例報告
feedback
Top