日本乳酸菌学会誌
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21 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 山本 裕司
    2010 年 21 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/29
    ジャーナル フリー
    酸素は地球上の主要な環境因子の1つであり、環境中の酸素分圧を感知し速やかに応答することは、細菌の生存に必須である。これまで、細菌からは様々な酸素あるいは活性酸素感知システムが見いだされ、生物がどのようにこれらの分子を認識しているかという点において、興味深い知見を提供してきた。酸素に対する応答機構は、主として通性嫌気性菌や好気的な細菌を対象として行われてきたが、近年は嫌気的な環境に棲息する細菌も酸素に応答することが明らかとなりつつある。今回紹介する乳酸菌も、嫌気的な細菌と見なされてきたため、これまで酸素との関係は十分に検証されてこなかったが、独自の好気代謝系や抗酸化因子を持つことが最近報告されている。本稿では、はじめに細菌における酸素および活性酸素認識メカニズムについて概説した後、乳酸菌の酸素応答機構について、筆者らの研究を中心に紹介する。
  • Bénédicte Cesselin, Aurélie Derré-Bobillot ...
    2010 年 21 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/29
    ジャーナル フリー
    Lactic acid bacteria (LAB) species like L. lactis are traditionally considered as obligate fermentative bacteria because even in aerobiosis they use sugar degradation for substrate-level phosphorylation, i.e. ATP production. However, recent studies revealed that this bacterium and some other LAB are capable of activating a heme-dependent cytochrome oxidase (CydAB) and thus undergo a respiration metabolism. Nevertheless, respiratory chain activation is allowed only when cells have access to heme (and additionally menaquinone for some LAB) in the environment because they cannot synthesize these compounds. Respiration increases the biomass yield and extends the long term survival of stored cells. These benefits of respiration are explained in different ways: i) Respiratory chain activity consumes oxygen, limiting the formation of toxic reactive oxygen species. ii) Respiratory chain generates a pH gradient, which potentially increases ATP production via H+-ATPase activity. iii) Respiration metabolism decreases lactic acid production, limiting acid stress. However, LAB have to cope with heme toxicity. Although heme has clear metabolic benefits the intracellular pool of free heme must be stringently controlled to prevent damage to macromolecules like DNA. In L. lactis, a potential efflux pump system, consisting of an ATPase (YgfA) and a permease (YgfB), is specifically highly induced in response to exogenous heme. Interestingly, the ygfA and ygfB genes are in an operon with ygfC, a potential regulator of the TetR family. Our studies implicate the ygfCBA operon is involved in modulating the free heme level and is regulated by YgfC.
  • 吉川 博文
    2010 年 21 巻 1 号 p. 16-26
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/29
    ジャーナル フリー
    細胞がさまざまな環境の変化に対処しようとするストレス応答機構の解析は、ストレス下における多様な生物機能を見せてくれるだけではなく、通常条件下の細胞機能を解析する重要なツールとしても使われてきた。枯草菌は、グラム陽性細菌の代表的存在として長年解析されてきたが、ストレス応答機構として知られている4つのメカニズムに関し、我々が解析した結果について報告する。我々の解析の基盤にあるのは、メカニズムの多様性という視点、および機構同士のネットワークという視点である。多くの機構が解明されている大腸菌等との比較によって、生物の持つ多様な世界を知る手がかりになるであろう。また、ある一つの環境ストレスが及ぼす影響は単一のターゲットではないため、その影響は多岐にわたる。したがって応答するメカニズムもさまざまな機構が順次、あるいは同時並行的に働くはずである。こうした機構間のネットワークの解明が究極の目的である。本研究では、まだその入口に立った程度であるが、いくつかのネットワークが垣間見えたので紹介したい。
  • 岡田 信彦
    2010 年 21 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/29
    ジャーナル フリー
    細菌は、増殖の定常期状態やアミノ酸・糖などの栄養が枯渇した環境あるいは酸化的ストレスなどのストレス環境下では、緊縮応答 (stringent response) によってこれらの環境変化に適応し、生存を可能にする。緊縮応答時には、細胞内にguanosine-3,5-tetraphosphate(ppGpp)が蓄積し、これが種々の遺伝子の転写活性を調節する遺伝子発現 mediatorとして機能する。大腸菌において、ppGpp は RNA合成の抑制および定常期シグマ因子(RpoS)の細胞内蓄積を促進し、結果として細胞内の代謝やDNA合成を抑制する。大腸菌や Salmonellaでは、ppGpp は2つの遺伝子、relA および spoT にコードされる ppGpp 合成酵素により合成される。Salmonella のように宿主細胞内で増殖できる細胞内寄生細菌にとって、宿主細胞内環境は栄養分が制限されるだけでなく、生体防御反応による種々のストレスも加わり、生存に不利な環境条件であることから、緊縮応答は、細胞内環境に適応するために重要な応答機構として機能するものと予想される。本稿では、ネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)において、ppGpp により遺伝子発現調節される緊縮応答タンパク質をプロテオーム解析により網羅的に同定し、さらに、ppGppに発現制御される新規病原因子を同定したので紹介する。
  • 江口 陽子, 内海 龍太郎
    2010 年 21 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/29
    ジャーナル フリー
    本総説では、大腸菌の二成分情報伝達系 EvgS/EvgAとPhoQ/PhoPに着目し、これらの情報伝達ネットワークの分子機構についての最新の成果とその応用研究について述べる。すなわち, 1)EvgS/EvgA情報伝達系とPhoQ/PhoP情報伝達系を結ぶ細胞膜小タンパク質,B1500(SafA、sensor associating factor A)を介するネットワークの実例を紹介する。2)細菌情報伝達阻害剤の新規抗生物質開発研究成果と将来展望を示す。
  • 増田 健幸, 中田 雅也, 岡田 早苗, 保井 久子
    2010 年 21 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/29
    ジャーナル フリー
    すんき漬から分離された乳酸菌の中にIgE産生を抑制する菌株が多数存在した。その中の1菌株(Pediococcus pentosaceus Sn26株(Sn26))は、経口投与により血中の卵白アルブミン(OVA)特異的IgEを減少させ、 OVAで誘導されるアレルギー性下痢症を有意に抑制した。このメカニズムを解析するために誘導組織である腸管パイエル板細胞及び実効組織である腸管粘膜固有層リンパ細胞の免疫応答性を調べた。その結果、Sn26の経口投与は、パイエル板細胞の1型ヘルパーT細胞(Th1)型サイトカイン産生能を上昇させ、Th1/ 2型ヘルパーT細胞(Th2)バランスを改善させ、総IgE産生能を減少させた。さらに、腸管粘膜固有層リンパ細胞のTh2型サイトカイン産生能を減少させ、OVA特異的IgE産生能を低下させた。以上のことから、経口投与されたSn26は、パイエル板に取り込まれた後、Th1/Th2バランスの改善を介して腸管粘膜でのIgE産生を抑制し、下痢発症を抑制することが推測された。
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