日本乳酸菌学会誌
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21 巻, 2 号
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総説
  • 横田 篤
    2010 年 21 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    胆汁酸ストレスはプロバイオティクスとして投与された乳酸菌やビフィズス菌が体験する最も強力な消化管内ストレスであると言っても過言ではない。近年の機能ゲノム学的な解析により、これらの細菌の胆汁酸ストレス応答の全体像は、一段と明確になりつつある。本稿ではこれらの知見を概観し、それらの中でも特に重要となる細胞膜に対する胆汁酸の作用と細菌側の応答を中心に解説した。
  • 佐藤 まみ, 中山 二郎
    2010 年 21 巻 2 号 p. 95-106
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    近年の抗生物質濫用により、薬剤耐性菌が高頻度で出現し、広く社会で問題となっている。細菌が個体間でコミュニケーションを取り、菌密度を把握しながら種々の遺伝子発現を制御する機構はクオラムセンシング (以下、QS)と呼ばれており、近年、いくつかの病原性細菌の病原因子生産がQSにより制御されている事例が多く報告されている。QSの阻害は病原因子の生産のみを特異的に抑制すると考えられるため、新規薬剤開発のターゲットとして期待されている。本稿では、特にグラム陽性細菌のペプチドクォルモンを誘導因子とするQSについて、また、その阻害剤開発の現状と将来性について解説する。
  • 志田 寛
    2010 年 21 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    代表的なプロバイオティクスであるLactobacillus casei YIT 9029(乳酸菌シロタ株)は、生きて腸管内に到達し、腸内フローラの制御や代謝産物の産生を介して整腸効果を示すばかりでなく、宿主免疫系に働きかけて様々な保健効果を発揮する。特に、発癌リスク低減効果やNK活性回復効果を支持するデータが多くの動物試験や臨床試験で得られている。近年、アレルギー疾患の制御にプロバイオティクスを利用しようとする試みが様々な菌株を用いて行われており、L. casei YIT 9029は本分野の研究において先駆けとなったプロバイオティクス株のひとつである。本総説では、インターロイキン-12(interleukin-12; IL-12)産生誘導を介するTh1/Th2バランスの制御がプロバイオティクスによるアレルギー抑制機序のひとつであることを明確に示した研究例に加え、L. casei YIT 9029含有乳酸菌飲料の花粉症患者に対する臨床試験の成績について紹介する。
  • 岩淵 紀介, 清水(肖) 金忠
    2010 年 21 巻 2 号 p. 112-121
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    近年、先進諸国を中心にアレルギー疾患が急激に増加し、その原因の1つとして微生物との接触機会の減少を指摘する「衛生仮説」が提唱されている。「衛生仮説」と関連して、アレルギー疾患と腸内細菌との関連が示され、乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスによる抗アレルギー効果が研究されている。ヒト由来ビフィズス菌Bifidobacterium longum BB536については、これまで複数の臨床試験においてスギ花粉症に対する発症予防および症状抑制作用が認められている。ビフィズス菌による免疫調節作用としては、Th1/Th2バランスの改善や制御性T細胞の誘導などの機序が報告されている。またBB536は、花粉症臨床試験の中で花粉飛散に伴う腸内細菌叢の変動を抑制するなど、整腸作用を介した間接的な免疫調節作用も示唆されている。本稿では、BB536摂取による花粉症改善効果を中心にビフィズス菌による抗アレルギー作用及びその作用機序について紹介する。
解説
  • 清水 俊雄
    2010 年 21 巻 2 号 p. 122-129
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/04/01
    ジャーナル フリー
    健康表示の制度は、日本が世界に先駆けて、個別審査型の特定保健用食品を制度化した。海外でも、アメリカ合衆国が栄養健康表示教育法、ダイエタリーサプリメント法を制度化し、コーデックス委員会で健康表示の定義およびガイドラインを公表したのを受けて、欧州連合(EU)やアジア諸国などでも健康表示に関する制度を制定した。特に、EUは2007年に栄養・健康表示法を施行し、EFSAが健康表示の科学的評価を進めている。評価の判断基準として、(1)有効成分の同定・定量、(2)ヒト介入試験、(3)メカニズム解明が挙げられている。プロバイオティクスを中心に評価結果を解析した結果、菌のCharacterizationが十分でない、ヒト介入試験で有意差が認められない、被験者が病人であるなどの指摘がされ、特定保健用食品の審査の基準と類似性が高いと考えられる。
    中国、韓国も、ヒト介入試験を重視して、その結果を行政が評価して表示を許可する制度であり、今後これらの国と健康表示の制度をハーモナイズすることが望まれる。
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