日本乳酸菌学会誌
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22 巻, 2 号
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総説
  • 遠藤 明仁
    2011 年 22 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    日本には各地域に古くから伝わる伝統的な醸造・発酵食品が数多く存在する。それらの食品には多種の乳酸菌がカビや酵母とともに生息し、腐敗微生物の生育抑制やフレーバー形成などの面で発酵に寄与していることが知られている。しかしながら、昨今の醸造・発酵食品中の乳酸菌に関する研究は、共存するカビや酵母の研究に比べると非常に限られているように見受けられる。本総説では日本の伝統的醸造・発酵食品の中でも焼酎、日本酒および長野県木曽地方の伝統的無塩漬物であるすんきに生息する乳酸菌の多様性について、著者のこれまでの結果を交えて概説する。また、著者の最近の研究課題であるフルクトフィリック乳酸菌について、発酵食品からの報告例を紹介する。
  • 三浦 孝之, 阿久 澤良造
    2011 年 22 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    ナチュラルチーズの種類は1000 以上とされるが、製造に必要な原材料は乳、凝乳剤、乳酸菌等の微生物および塩のみである。とくに乳酸菌はナチュラルチーズ製造時に重要な働きを示すだけでなく、製品の品質に及ぼす影響が大きい。Lactococcus 属、Leuconostoc 属を主体とした乳酸菌スターターは製造工程において原料乳のpH 低下および良好な凝乳反応を促し、乳酸菌由来のタンパク質分解酵素はチーズのテクスチャーや風味に多大な影響を示す。さらに乳タンパク質の分解産物であるアミノ酸はアミノ基転移酵素(AT 酵素)による異化作用を受け、セミハード・ハードタイプチーズの特徴的な芳香成分生成に関わる。Lactococcus 属のAT 酵素は良く研究されており、分子量38-43.5 kDa のサブユニットが2-4 量体を形成している。 またLactobacillus 属のLb. paracasei subsp. paracasei からもAT 酵素活性が示され、これらの酵素および菌株がチーズの品質に及ぼす影響について研究が進められている。
研究報告
  • 橋口 健司, 長田 裕子, 吉田 睦子, 室伏 陽, 北澤 春樹
    2011 年 22 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    Lactobacillus plantarum No.14 株(LP14)が生産する菌体外多糖(Extracellular polysaccharides:EPS)について化学的性状解析を行った。EPS を分離後、イオン交換クロマトグラフィーにより分画した結果、1 種類の中性EPS(neutral EPS:NPS)と2 種類の酸性EPS(weak acidic EPS:W-APS、strongly acidic EPS:S-APS)が存在し、さらにゲル濾過クロマトグラフィーにより分画した結果、NPS も2 種類(high molecular weight neutral EPS:H-NPS、low molecular weight neutral EPS:L-NPS)存在することが明らかとなった。官能基解析の結果、W-APS はカルボキシル基0.76%、S-APS は硫酸基7.94%を含んでいた。4 種類のEPS の糖組成を解析したところ、H-NPS はガラクトース(Gal):グルコース(Glc):ラムノース(Rha)=0.62:1.00:0.27、L-NPS はマンノース(Man):Glc=0.92:1.00、W-APS はGal:Man:Glc=0.41:6.74:1.00、S-APS はGal:Man:Glc=0.20:0.08:1.00 であり、4 種類全てのEPS で糖組成が異なった。ヒトモデルとして期待されるブタ腸管リンパ球に対する幼若化活性を指標とした免疫賦活能を検討した結果、全てのEPS がパイエル板および腸間膜リンパ節において有意な活性を示した。以上の結果から、LP14 が生産するEPS には2 種類ずつのNPS とAPS が存在し、それぞれの糖組成や官能基が異なっているにもかかわらず、全てのEPS が免疫賦活能を有することから、新たな生理活性に関する情報が得られる可能性が期待された。
  • 畠山 誉史, 田中 尚人, 佐藤 英一, 内村 泰, 岡田 早苗
    2011 年 22 巻 2 号 p. 106-111
    発行日: 2011/07/01
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル フリー
    我々の身の回りの環境からは多くの変異原物質が発見され、我々は日々遺伝子変異の危険性に曝されている。このことから抗変異原性を持つものの重要性が高まり、乳酸菌にもその可能性が期待されている。乳酸菌の保健機能の一つである抗変異原性のメカニズム解明を目指して、本研究では乳酸菌の変異原物質吸着部位を検証した。供試菌株は植物質発酵食品から分離されたLactobacillus plantarum SNJ81, Lb. fermentum SNA41, Lb. parabuchneri SNC91, Lb. delbrueckii subsp. delbrueckii SNK64, Leuconostoc mesenteroides subsp. mesenteroides 10D-2 を用いた。使用した変異原物質はヘテロサイクリックアミンの中からPhIP, MeIQx, MeIQ, Trp-P-1 を用いた。PhIP, MeIQx, MeIQ においては細胞壁画分が最も高い吸着活性を示した。このことからこれらの変異原物質の吸着には細胞壁が重要であることが明らかとなった。Trp-P-1 においてはペプチドグリカン画分でも高い吸着活性を示し、リゾチームによってペプチドグリカンを破壊すると吸着活性はほとんど無くなった。このことからTrp-P-1 の吸着には細胞壁中のペプチドグリカンが重要であることが明らかとなった。乳酸菌の細胞壁成分のうち、吸着に関与する成分は変異原物質の種類によって異なることを明らかにした。
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