日本乳酸菌学会誌
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24 巻, 2 号
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総説
  • 江本 英司
    2013 年 24 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    微生物の中でも、とりわけ乳酸菌は人類との付き合いが長く、これまでに人類は主として食品に乳酸菌を活用してきた。乳酸菌は糖を消費し乳酸を生成するが、乳酸と共に様々な香り成分を生み出している。これら香り成分はそれぞれに特有の香りを有しており、フレーバーの成分として有用である。本稿では、乳酸菌および乳酸菌が生み出す発酵食品や醸造食品とそれらの香りについて、またミルク系フレーバーを例にそれら香り成分を活用したフレーバー開発について紹介する。
  • 川﨑 信治*, 鈴木 一平, 新村 洋一
    2013 年 24 巻 2 号 p. 79-87
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    酸素(O2)は大気中に21%存在し、水に溶けて地中深部にまで浸透する。地球上の気液相は常に対流しており、自然界で完全な無酸素環境が維持される生態系は稀である。故に、地球上に生息する全ての生物は、反応性に富むO2 に適応・進化し、今日を生きていると考えられる。古くから嫌気性菌は「O2 存在下で生育できない」と解説されることが多い。しかし嫌気性菌のO2 適応機構に関する研究を通じて、嫌気性菌は「O2 存在下では生育しない」というポジティブな意志を持った生物である印象を強く得てきた。本総説ではクロストリジウム菌やビフィズス菌、乳酸菌など絶対嫌気性〜通性嫌気性に分類される細菌が様々なO2 濃度下で見せる生育挙動を紹介し、その解析結果から推定される自然界での姿を考察する。
ノート
  • 辻  聡, 梶川 揚申, 岡田 早苗, 佐藤 英一*
    2013 年 24 巻 2 号 p. 88-92
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    発酵生産系において、代謝経路の律速段階が全体の反応速度を決定してしまうことがしばしば問題として挙げられる。その中で、Lactobacillus plantarum の乳酸生成において、解糖系の律速段階であるピルビン酸の生成速度が問題となることが以前から指摘されていた。そこで、L. plantarum NCIMB 8826 株においてホスホエノールピルビン酸からピルビン酸生成反応の迂回経路の構築を試みた。L. plantarum NCIMB 8826 株では、TCA 回路の中間体であるリンゴ酸をリンゴ酸酵素(以下、ME)によりピルビン酸に変換することが可能である。そこで、本研究ではホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(以下、PEPCK)の発現強化により還元的TCA 回路への代謝流量の向上を試みた。また、本迂回経路へのME の影響はME 欠損株を用いて評価した。PEPCK 高発現株では、培養24 時間後の代謝産物の分析により、親株よりもコハク酸生成量が増加したことから、還元的TCA 回路への代謝流量の増加を確認した。また、ME 欠損PEPCK 高発現株がPEPCK 高発現株よりもコハク酸生成量が高かったことから、PEPCK 高発現株では、リンゴ酸がピルビン酸へ変換されることが示唆された。PEPCK 高発現株は親株よりも生育が向上した。L. plantarum NCIMB8826 株においてPEPCK の発現強化は、効率的な発酵生産につながる有効な手段になると期待される。
  • 松尾 洋輔, 梶川 揚申, 岡田 早苗, 佐藤 英一*
    2013 年 24 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
    Lactobacillus reuteri の腸管付着因子MapA はヒト腸管上皮細胞(Caco-2 細胞)上に存在する2 つの受容体様因子(Annexin A13[ANX A13]およびParalemmin [PALM])に対して結合性を示す。このことはL. reuteri が特定の分子を標的とした特異的結合を介して腸管に定着するのではなく、むしろ複数の因子に対して柔軟に結合することにより腸管上皮へ付着している可能性を示唆するものである。その結合の詳細を探るため、本研究ではMapA 分子中の受容体様因子に作用する結合ドメインについて検討した。MapA の3 つの領域(F1、F2、F3)を各々大腸菌で発現し、各領域のCaco-2 細胞に対する付着性を検討した結果、F2 のみがCaco-2 細胞と付着性を示した。また、F2 と結合する受容体様因子を再分離したところ、PALMと一致した。さらに、2つの受容体様因子の発現量をRNAiにより抑制したノックダウンCaco-2細胞に対するF2の付着性の比較からも、F2領域はPALMに対する結合性を有することが明らかになった。MapA のANX A13 に対する結合ドメインは不明であるが、PALM とは異なると推定する。
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