日本乳酸菌学会誌
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26 巻, 1 号
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総説
  • 外内 尚人
    2015 年 26 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2015/03/16
    公開日: 2016/03/29
    ジャーナル フリー
    酢酸菌は我々にとって非常に重要な微生物であり、食酢の製造に利用される。酢は酒から作られ、原料や気候など酒と同様に各地の文化を形成した。日本の酢は、4 世紀頃朝鮮から伝えられた。古代から肉食が禁じられた中で、魚介類や野菜を調味して食す、という独自の和食文化が発達した。酢は、その調味料の一つとして用いられた。時代とともに、「鱠(なます)」や「すし」といった代表的な料理も発展した。世界的にも、先史時代、古代文明において酢はそれぞれの地域に誕生し、中世ヨーロッパでは食品保存や消毒の目的でも多く使われた。アジアでも酢は重要であり、食欲増進と雑菌抑制に用いられる。ナタデココも酢酸菌を利用した発酵食品である。酢酸菌の生理的特徴は、膜上の酸化酵素による強力な酸化能と、空気や液面との接触を維持する菌膜形成である。この2つの特徴は、自然環境下での生存戦略に関わっている。有害な酢酸を生成して他の生物の生育を妨げ、その後に自身が耐性をつけて徐々に資化していく。自身の生育を犠牲にしてまでもその生存環境を形成する、シンプルで傍迷惑な戦略と考えられる。
  • 相川 知宏, 丸山 史人, 中川 一路
    2015 年 26 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2015/03/16
    公開日: 2016/03/29
    ジャーナル フリー
    CRISPR/Cas システムは真正細菌および古細菌に広く保存され、外来性遺伝子の一部を自身の染色体に取り込み記憶することで、同一の外来性遺伝子が再度侵入した場合には、これらを分解・排除する獲得免疫機構として機能する。最近では、獲得免疫機構としてだけでなく、細菌の毒性や病原性に関与していること、様々な環境下での細菌の生存や進化においても重要な役割を担っていることが明らかになりつつある。本総説においては近年の我々の研究成果を交え、最新の研究トピック、特に細菌の生存戦略におけるCRISPR/Cas システムの役割を概説する。また、優れたゲノム編集技術としてのCRISPR/Cas システムの適用例を簡単ではあるが紹介したい。
  • 井上 歩
    2015 年 26 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2015/03/16
    公開日: 2016/03/29
    ジャーナル フリー
    1993 年12 月29 日に発効した生物多様性条約の下に遺伝資源に対する加盟国の主権的権利が認められ、遺伝資源へのアクセスと利益配分(Access and Benefit-sharing;ABS)の基本原則である、①遺伝資源の提供国から「事前の情報に基づく同意(Prior Informed Consent:PIC)」を得ること、②遺伝資源の利用から生じる利益は「相互に合意する条件(Mutually Agreed Terms;MAT)」で分配することが規定された。さらに、2014 年10 月12 日には、ABS に関する名古屋議定書が発効した。この名古屋議定書は、ABS を確保するために、遺伝資源提供国と遺伝資源利用国の双方に義務を課した国際的な取り決めである。本稿では、ABS の基本及び留意点を紹介するとともに、名古屋議定書の特徴、名古屋議定書を巡る国内外の動向、名古屋議定書の課題を概観し、今後の展望について述べたい。
  • 孫 建強, 三浦 文, 清水 謙多郎, 門田 幸二
    2015 年 26 巻 1 号 p. 32-41
    発行日: 2015/03/16
    公開日: 2016/03/29
    ジャーナル フリー
    Bio-Linux は、多くの次世代シーケンサー(以下、NGS)解析用プログラムが予め組み込まれたLinux 環境の1 つである。Bio-Linux は、普段利用するホストOS(Windows やMacintosh)ではなく、仮想マシンを導入してゲストOS 上に構築するのが一般的である。連載第3 回は、ホストOS 内にゲストOS(Bio-Linux 8)が存在する感覚を掴めるように、スクリーンショットを例に仮想マシンの概念から説明する。ホスト- ゲスト間でのデータのやりとり(共有フォルダの設定)やBio-Linux 8 の基本的な使い方を述べ、Linux 環境下での乳酸菌ゲノムデータ取得を行う。また、チェックサム、ファイルの解凍と圧縮、コマンドマニュアル、リダイレクトとパイプなど、NGS 解析を効率的に行う上で有用なテクニックを述べる。公共データベース(DB)中の乳酸菌NGS データを概観し、日米欧三極のDB の特徴や注意点を述べるとともに、Lactobacillus casei 12A のトランスクリプトーム(RNA-seq)データ取得を行う。利用可能なハードディスク(HDD)容量の制約など、個々のユーザの置かれたPC 環境下でも、Linux コマンドを組み合わせることで高速かつ効率的に目的を達成することができる。ウェブサイト(R で)塩基配列解析(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq.html)中に本連載をまとめた項目(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq.html#about_book_JSLAB)が存在する。ウェブ資料や関連ウェブサイトなどのリンク先を効率的に活用してほしい。
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