日本乳酸菌学会誌
Online ISSN : 2186-5833
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26 巻, 2 号
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総説
  • 森永 康, 平山 悟, 古川 壮一
    2015 年 26 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2015/06/29
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー
    伝統発酵食品福山酢は、その発酵過程に、麹菌、酵母、乳酸菌、酢酸菌が関与し、糖化、嫌気的アルコール発酵と好気的酢酸発酵が自然に進行する。それは東アジアで生まれた最も原始的な発酵様式であり、自然環境で起こっている炭水化物代謝を模したとも言えるものである。我々は、福山酢の製造工程から分離した乳酸菌と酵母及び酢酸菌の異種間相互作用を研究することを目的として、共培養系でのバイオフィルム形成について検討してきた。その結果、乳酸菌と酵母が共存すると細胞同士の接着により両細胞が組み込まれた特異な複合バイオフィルムが培養容器底部の固液界面に形成されることや、乳酸菌と酢酸菌が共存すると培養液の気液界面に形成される酢酸菌のバイオフィルム(ペリクル)が顕著に増加することを見出した。さらに詳細に相互作用を調べてみると、これら3種の発酵微生物の共存系は、それぞれの菌が機能分担することで、栄養欠乏や酸化ストレス、外敵侵入などのさまざまな生存リスクに対応可能なきわめて巧妙な共生系であることが分かってきた。本稿では、こうした伝統発酵に見出した発酵微生物の共生系の特徴について、我々の成果を中心に紹介し、そこからうかがい知ることができる発酵微生物の進化についても論じてみたい。
  • 佐々木 泰子
    2015 年 26 巻 2 号 p. 109-117
    発行日: 2015/06/29
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー
    ヨーグルト発酵のスターターとして長い歴史を持つLactobacillus bulgaricus Streptococcus thermophilus は、代謝物質の交換をすることで単菌よりも著しく発酵が速くなる共生関係にある。ミルクという栄養豊富な培地で長期間共生してきたために、乳糖資化に特化し、アミノ酸合成遺伝子の不活化や代謝経路の共有等が生じた結果、ゲノムが縮小するという進化を起こしている。ここでは、ゲノム解読やポストゲノム研究から明らかになった共生に関する知見について紹介する。両菌は「あたかも1つの菌」のように振る舞うことでより速い発酵を可能にしてきたが、その共生因子として「ミルク中の溶存酸素消費」はこれまで注目されてこなかった。我々はS. thermophilus のNADH oxidase が主に溶存酸素消費を担っており、ヨーグルト発酵に普遍的で重要な共生因子であることを見出したので、それについても紹介する。
  • 惠美須屋 廣昭
    2015 年 26 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2015/06/29
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー
    味噌、醤油、漬物や酒造りなどの発酵食品の製造において、乳酸菌は乳酸を生産してpH を下げて、他の微生物の繁殖を抑制するという重要な働きを行っている。また、酢酸菌を用いて生産する食酢に抗菌活性があることはよく知られている。環境中のpH を下げることで雑菌汚染を防ぐという抗菌作用は乳酸と酢酸に共通するものであるが、酢酸は細胞内に浸透するという特性があり、それゆえに乳酸に比べてより高い抗菌活性を有している。酢酸菌が生産する酢酸は、酢酸菌自らにとってもストレスになるのだが、酢酸菌は高濃度の酢酸共存下でも生育が可能であり、酢酸菌に特有の耐性機構が幾つか明らかになってきている。すなわち、①酢酸を細胞内へ流入しにくくする、②細胞内の酢酸を効率よく消費する、③細胞内の酢酸を細胞外に排出する、④細胞内の環境変化への対応機構をもっている、である。これらの現在確認されている酢酸菌の持つ酢酸耐性機構について概説する。
  • 孫 建強, 湯 敏, 清水 謙多郎, 門田 幸二
    2015 年 26 巻 2 号 p. 124-132
    発行日: 2015/06/29
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー
    次世代シーケンサー(以下、NGS)データの解析は、大まかに①データ取得、②クオリティコントロール(以下、QC)、③アセンブルやマッピング、④数値解析の4 つのステップに分けられる。連載第4 回は、Bio-Linux にプレインストールされているFastQC(ver. 0.10.1)プログラムを用いたQC の実行および解釈の基本を述べる。また、FASTX-toolkit(ver. 0.0.14)で提供されているアダプター配列除去プログラムであるfastx_clipper の挙動を例に、Linux コマンドを駆使した動作確認の重要性を述べる。多様なインストール手段に対応すべく、apt-get, pip, cpan コマンドを利用したプログラムのインストール(FastQC ver.0.11.3、nkf ver. 2.1.3、cutadapt ver. 1.8.1、HTSeq ver. 0.6.1、FaQCs ver. 1.34)やパスなどの各種設定についても述べる。ウェブサイト(R で)塩基配列解析(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_ seq.html)中に本連載をまとめた項目(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq.html#about_ book_JSLAB)が存在する。ウェブ資料(以下、W)や関連ウェブサイトなどのリンク先を効率的に活用してほしい。
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