図書館概念を再検討することを目的として,ソフトシステム方法論における人間活動システムという視点を取り上げた。この視点から,現在通用している様々な図書館タイプに関する定義を分析することによって,図書館は変換過程,すなわち,「資料・情報を固有の利用者集団に提供する活動」を共有することを確認した。人間活動システムとしての図書館が,何らかの所有者のもとで一定の目的を持つこと,および上述の変換過程を共有することに注目して図書館の基本定義を作成した。さらに,基本定義を基礎として図書館概念を再検討するための枠組みとして,ロジスティクスという観点を提示した。すなわち,図書館の活動は「所有者が設定した役割に沿って,資料・情報を固有の利用者に届けるためにその移動と保管を実行,管理すること」という見方である。しかし,現在のロジスティクス概念はビジネスなどの活動を対象としており,また情報を直接には対象としていない点からも図書館に適用するには十分ではない。今後,ロジスティクス概念を検討して,情報に関するロジスティクス概念を開発する必要がある。
抄録全体を表示