近年, 日本企業を取り巻く厳しい環境から, 企業内専門図書館では, 親機関の情報ニーズに適時的確に応えることが求められている。本稿では, そのための一方策としてコア・コンピタンス経営に着目し, それを実践するための具体的な手法をアウトソーシングに求めた。そして, 親機関と専門図書館の双方に「戦略展開型アウトソーシング」が求められるという仮説を導き出し, 広告業界の大手二社である(株)電通と(株)博報堂の事例を通して仮説の検証を行った。その結果, 第一にコ・ソーシングの概念を尊重して, 親機関のニーズを満たし得る専門的な情報提供サービスの質を維持している点に「戦略展開型アウトソーシング」の側面を見出せる状況, 第二に専門図書館では, 企画・設計を含めた意思決定をクライアントが行い, 情報提供サービスの実施をアウトソーサーが行っている状況が明らかになった。最後に, クライアントの意思決定を担う人材とアウトソーサーの情報提供サービスを担う人材を確保するために, 組織的に情報専門職を育成する必要があることを指摘した。
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