東京帝国大学文学部心理学研究室図書室にその管理者かつ利用者であった教授が与えていた研究補助機能を,図書館外の影響を考慮しつつ蔵書構成の側面から明らかにすることを本稿では目的とした。まずは図書室の蔵書に影響を与える要因として,財政制度や大学内の管理制度といった大学制度,世界および日本の心理学の研究動向,そして制度及び物理的な位置と教官の研究分野といった心理学研究室の変遷,この3つの要素を検討した。これを踏まえた上で3つの時期を対象に,出版国,分野ごとの量的な心理学の研究動向と,その時期に購入された研究室の図書とを比較し,研究室図書室の蔵書構成の特徴を分析した。その結果,心理学研究室図書室は,日本の心理学が強い影響を受けていたドイツの図書の収集を一貫して積極的に行ってはいたが,教官に対する研究補助機能は時がたつにつれなくなっていったと結論した。
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