1993年に国が学校図書館の整備に着手する以前から,一部の市教育委員会では小・中学校図書館の整備を進めてきた。本稿の目的は,それらの市教育委員会における学校図書館の整備推進の要因を明らかにすることである。学校図書館の整備の3条件(蔵書のデータベース化,学校司書の配置,学校間での相互貸借)を満たし,継続して実践報告を発表している岡山,西宮,市川,さいたまの4市を選択し,文献調査と元・現指導主事等への聞き取り調査を行った。その結果,次の4つの要因が明らかになった。(1)教育委員会が学校図書館を重視する教育観を持ち,学校図書館の活用方針を示している。(2)教諭から校長や教育長になった推進者が積極的に活動して教育行政にかかわり,意欲ある指導主事が取り組みを継続している。(3)教育委員会内外で柔軟な連携が行われている。(4)市内外に向けて成果を発表し評価を得ている。このうち,(1)と(2)が主要な要因で,両者の間には密接な関係がある。
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