日本図書館情報学会誌
Online ISSN : 2432-4027
Print ISSN : 1344-8668
ISSN-L : 1344-8668
62 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
論文
  • 水沼 友宏
    2016 年 62 巻 4 号 p. 221-241
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/08
    ジャーナル フリー

    2003 年の地方自治法の改正により,指定管理者制度に基づく公の施設の運営が可能になったが,公立図書館への同制度の導入については否定的な意見も見受けられる。だが,その実態を表す研究は極めて少ない。そこで本研究では,公立図書館における指定管理者制度の実態を明らかにする一環として,レファレンスサービスに焦点を当て,同制度を導入している図書館(以下,指定館)と導入していない図書館(以下,直営館)のサービス実施状況やレファレンス質問の受付件数の異同,及び制度導入後の質問受付件数の変化を明らかにした。結果,指定館は直営館より,利用者が自分で情報を調べられる環境作りや教育に積極的であること,逆に直営館は指定館より,利用者の質問に直接答えようとする傾向が強い可能性が示された。また,指定館の方が直営館に比べ質問受付件数が多く,制度導入後に質問受付件数が増加していることが分かった。

  • 赤山 みほ
    2016 年 62 巻 4 号 p. 242-254
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/08
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,地方公共団体が公立図書館に指定管理者制度を導入する際の選考プロセスの実態と課題を明らかにし,解決策を提示することである。文献調査では,制度成立の経緯,法的位置づけ,入札方法に問題があること,質問紙調査では,約半数の地方公共団体が,入札方法に公募型プロポーザル方式を用いていること等が明らかになった。これらから,公立図書館へ指定管理者制度を導入する際には,透明性と公平性の確保のため,指定管理者に関する情報公開条例を制定し,入札方法に競争的対話方式等を取り入れることが望ましいと結論づけた。

  • ─電子化時代の大学図書館資源に注目して─
    長谷川 哲也, 内田 良
    2016 年 62 巻 4 号 p. 255-267
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/08
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,公立大学図書館の図書館資料費に関して,格差の実態を検討することである。図書館資料の電子化と価格高騰が同時並行で進行するなかで,大学図書館の格差はどのように変容しているのだろうか。公立大学は各自治体が個別に運営しているため,全体から相互の格差を明らかにするという営みからは漏れてしまっている。本研究では,図書館資料費の大学間および大学階層間という2 つの視点から格差の推移を検討する。

    分析には『日本の図書館』の個票データを用いた。図書費,雑誌費,EJ 費に関して,各費の図書館間,および大学階層間の格差を分析した。

    主な知見は次のとおりである。第一に,図書費と雑誌費の大学間格差および大学階層間格差は,大学本体の格差と同程度である。第二に,EJ 費の大学間格差および大学階層間格差は,大学本体の格差よりも大きい。公立大学図書館の格差の実像をより明確にするため,今後いっそう詳細な研究が必要である。

研究ノート
  • 前田 知子
    2016 年 62 巻 4 号 p. 268-278
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/01/08
    ジャーナル フリー

    研究データのオープン化を求める動きが国際的に高まっているが,日本においては,研究データの整備体制等に関し,現在も課題が指摘されている。本稿では,その要因を明らかにすることにつなげるため,科学技術政策において最初に研究データが取り上げられた 1960 年度から2015 年度までを対象に,科学技術会議等によって作成された関連資料を調査し,研究データに対する施策の検討状況と実施状況を把握した。また,研究データ整備を施策化する困難さとその理由についても考察した。1970 年代前半迄はデータセンターの具体化方策の検討,1970 年代後半以降90 年代迄は数値データ/ファクト情報という枠組による施策の検討が実施されたが,関連施策が本格的に展開されるには至らなかった。 2000 年以降は研究情報基盤もしくは知的基盤という枠組の一部で記載される形となり,研究データに関しての包括的な方針や施策案は示されなくなった。

書評
feedback
Top