本研究の目的は,公立大学図書館の図書館資料費に関して,格差の実態を検討することである。図書館資料の電子化と価格高騰が同時並行で進行するなかで,大学図書館の格差はどのように変容しているのだろうか。公立大学は各自治体が個別に運営しているため,全体から相互の格差を明らかにするという営みからは漏れてしまっている。本研究では,図書館資料費の大学間および大学階層間という2 つの視点から格差の推移を検討する。
分析には『日本の図書館』の個票データを用いた。図書費,雑誌費,EJ 費に関して,各費の図書館間,および大学階層間の格差を分析した。
主な知見は次のとおりである。第一に,図書費と雑誌費の大学間格差および大学階層間格差は,大学本体の格差と同程度である。第二に,EJ 費の大学間格差および大学階層間格差は,大学本体の格差よりも大きい。公立大学図書館の格差の実像をより明確にするため,今後いっそう詳細な研究が必要である。
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