日本図書館情報学会誌
Online ISSN : 2432-4027
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63 巻, 2 号
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論文
  • 杉江 典子
    2017 年 63 巻 2 号 p. 71-89
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/14
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,無線周波個体識別の技術を応用した観察法を用いて利用者の情報探索行動に関するデータを収集し,クラスタリングにより利用者を類型化すること,位置情報を用いた分析の利点を検討することである。2012 年に千代田区立千代田図書館において動線調査と質問紙調査を実施し,取得した209 人の位置情報を,1)訪問地点の範囲の広がりと集中,2)移動経路の類似度により分析した。その結果,1)資料を借りた利用者の多くが,短時間滞在し特定の書架で資料を探していること,資料を借りなかった利用者は,より多様な行動を取っていること,2)クラスタ1 には,借りる資料を探すために館内を巡る利用者が多いこと,クラスタ2 には資料を閲覧して過ごした利用者が多いこと等が明らかになった。さらにRFID を用いて得た位置情報は,目視の位置情報に比べ客観的で論拠として示しやすいこと,統計処理に適していることなどの利点が示された。

  • ─学校図書館を利用した授業における協働の分析─
    庭井 史絵
    2017 年 63 巻 2 号 p. 90-108
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/14
    ジャーナル フリー

    本研究は,司書教諭や学校司書が,学校図書館を利用した授業の中で,教員との役割分担を形成していくプロセスを明らかにすることを目的とする。指導的役割を果たしている司書教諭と学校司書に対する半構造化インタビューを行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した。その結果,役割分担に影響を与える要因と,役割分担が形成されるプロセスからなるモデルを生成することができた。司書教諭や学校司書は,教員からの依頼で授業に参加する際,まず≪自分の役割探し≫を行い,その後,生徒の様子を見て≪指導必要性の認識≫を持ったり,図書館と教科の≪指導領域の線引き≫をしたりしている。また,≪授業を支援する自信≫と≪立ち位置に対する迷い≫の両方を持っており,その気持ちの強さが≪教員との関係構築≫に影響を与えている。教員との相互作用の結果,≪自分なりの授業への関わり方≫を見出し,両者の役割分担が形成されていた。

研究ノート
  • 宮田 洋輔, 上田 修一, 若宮 俊, 石田 栄美, 倉田 敬子
    2017 年 63 巻 2 号 p. 109-118
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/14
    ジャーナル フリー

    現代における学会発表の位置づけを考察することを目的として,ウェブサイトに対する事例調査とメールによる質問紙調査を実施した。54 学会を対象とした事例調査からは,研究集会の定期開催,開催事務局への依存と前例を踏襲する傾向が分かった。質問紙調査では世界中の285 学会からの回答を分析した。その結果,1)自然科学・医学系ではポスター発表も採用,2)ほとんどで査読を実施,3)人文学・社会科学系では配布資料・口頭のみでの発表も認められていること,4)発表資料の電子形式での記録,提供はあまりなされていないこと,などが明らかになった。以上から,研究者のインフォーマルな交流の場としての研究集会という認識は大きく変化していないこと,学会発表は研究集会の一部と見なされていること,発表を研究成果として独立して蓄積し,広くアクセスできるようにする意識が弱いことが示唆された。

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