本研究の目的は,教師との役割分担にみられる学校司書の専門性を現す専門的行為の特徴を明らかにすることにある。そこで,中学校の調べ学習の授業を対象として学校司書の行為の特徴を教師の行為と対応させ微視的に分析した。第一に,ビデオデータを2 秒毎に静止画像に切り取り,学校司書と教師の行為の特徴を抽出し,KJ 法を用いて分類し,クロス集計の結果を数量的に分析した。第二に,マイクロ・エスノグラフィーの手法を用いて事例を微視的分析した。その結果,教師との役割分担における学校司書の専門的行為の特徴は,本を指差す行為にあること,また,閲覧スペースを歩き回る学校司書に特徴的な行為も,生徒の学習の様子と教師の生徒対応を把握し,教師と情報共有する調整行為の契機をもたらすというもう1 つの専門的行為の特徴を示していた。これらの生徒と本を結びつける専門的行為の特徴に学校司書の専門性の一端が現れている可能性が明らかとなった。
漢籍利用者の研究プロセスを明らかにし,複数の研究プロセスに共通する漢籍利用者のユースケースを記述することを目的として,漢籍を研究に利用している13 名の研究者を対象にインタビュー調査を行った。インタビュー記録を質的に分析して見出した30 件のユースケースを記述し,研究者ごとに研究プロセスを描くためのアクティビティ図を作成して,アクティビティ図の中にユースケースを位置づけた。ユースケースの記述に際してIFLA 図書館参照モデルをドメインモデルとして用いたが,一部モデルの修正を行った。2 名に対する追加インタビューから,本研究で見出したユースケースが別の漢籍利用者にも当てはまることを確認した。研究の結果,漢籍利用者のユースケースを明らかにし,研究プロセスを可視化することができたが,漢籍利用者の情報行動の特徴の一部はこれらに記述しきれないことを,本研究で採用した手法の限界として指摘した。
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