JSL漢字学習研究会誌
Online ISSN : 2432-1974
Print ISSN : 1883-7964
9 巻
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
寄稿
  • 音声と表記を結びつける活動の試み
    加納 千恵子
    2017 年 9 巻 p. 1-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
    日本語の漢字は,字形・読み・意味・用法という4情報を併せ持つ表語文字であるために記憶の負担が大きく,特に非漢字圏の学習者にとってその習得が困難であるとされてきた。しかし,実は漢字圏学習者にとっても日本語の漢字語彙の習得はけっして易しいものではない。文化圏によってその学習上の困難点は異なるものの,日本語の漢字は,文字というより語彙として覚えるという学習方法がどちらの学習者にとっても必要であり,そのための効果的な方法として音声と表記を結びつける活動を提案し,新たな評価方法についても考える。
論文
  • 徳弘 康代
    2017 年 9 巻 p. 11-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
    日本語には同音語が多く存在する。さらに,それらの同音語に長音や濁音,促音,撥音が付くか付かないかによるだけの違いの類音語も多量に存在する。このような語は特に漢字語彙に多い。日本語教育における漢字教育では発音も注意が必要である。特に学習者に拍(モーラ)の意識が定着していない場合,モーラ音素(長音・促音・撥音)の持続時間が不安定で,類音語との区別がつきにくくなる傾向がある。本研究ではこのようなモーラ音素の有無による類音語を調査し,漢字語彙の発音練習の資料となる類音語の資料を作成した。これはモーラ音素が付くか付かないかによるだけの違いの類音語の組を一覧表にしたものである。調査には『EDR電子化辞書』の「日本語単語辞書」の普通名詞約124,000語を用いた。
  • 韓国の漢字検定試験について
    朴 善婤
    2017 年 9 巻 p. 21-27
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
     韓国語の語種について述べ,その中でも最も高い占有率を見せている漢字語の使用範囲について概観する。さらに,韓国語における漢字語の使用実態の事例を通して漢字語の使用を確認した。なお韓国では,教育政策として「教育漢字1800字」を定めており,中・高校で学習することになっている。これを反映し,韓国の様々な民団機関で実施されている漢字語に関する漢字関連の検定試験の内容や趣旨について,検討を行った。
  • 調査の手順と調査票の共有
    濱川 祐紀代
    2017 年 9 巻 p. 28-61
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,筆者が過去に実施した質問紙調査の調査票を提供し,読者と調査票を共有することを目的とするものである。本稿で共有する調査票は日本語・英語・インドネシア語・タイ語・ベトナム語・マレー語・ミャンマー語・ロシア語の7か国語が用意されており,様々な教育機関で活用されることを期待し,また妥当性を高めるための共同研究などが始まることも願っている。
  • 音韻的類似度を中心に
    魏 娜
    2017 年 9 巻 p. 62-68
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,日中漢字語彙の音韻的類似度について検討する。『日本語能力試験出題基準(改訂版)』(国際交流基金,2006)にある1級及び2級の2字漢字語彙(音読み語のみ)を抽出し,使用頻度で低頻度語,中頻度語,高頻度語に分けた。さらに高頻度語から110語を選び出し,中国語を母語とする日本語学習者を対象に,日中漢字語彙の音韻的類似度の調査を行った。本研究ではその結果を報告する。
  • タイ人高校3年生の調査結果について
    Chorladda Wimonwittaya
    2017 年 9 巻 p. 69-75
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
    バンコク市内のA国立高等学校において,2015年8月10日~15日までの6日間,初級レベルの日本語を学習しているタイ人高校生120名を対象として,漢字の部首の形態的難易度の調査を実施した。本論文では,その調査結果の中から高校3年生の結果に限定して報告し,非漢字圏学習者への漢字教育について検討する。
  • 加藤 登紀
    2017 年 9 巻 p. 76-81
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
     外国人技能実習制度の下で,日本には現在約5万人の外国人技能実習生(以下,実習生)が来日し就業している。これまで中国人実習生が過半数を占めていたが,昨今はベトナム人実習生が増加傾向にあり,それに伴い就業時に必要とされる漢字の学習が課題となっている。そこで,ベトナム人実習生がどのように漢字を理解し,漢字学習に対してどのような意識をもっているのかを知るために濱川(2016)の調査票を使用し調査を行った。
  • 所収漢字数500の教材の場合
    池田 幸弘
    2017 年 9 巻 p. 82-86
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では, 500字所収の複数(4種類)の漢字教材を比較した場合,500字のうち,何字ぐらいの漢字が共通して取り上げられているか調査を行った。その結果,355の漢字が4種の教材で共通して取り上げられていること,102の漢字が4種の教材のうち3種で共通して取り上げられていること,73の漢字が4種の教材のうち2種で共通して取り上げられていること,1種の教材のみで取り上げられている漢字が128あることがわかった。また、4種の教材で658の異なる漢字が取り上げられていた。この結果から,658の異なる漢字数における複数の教材で共通して取り上げられている漢字数という割合から見ると,その割合はそれほど高くないが,各教材の500字における他の教材と共通する漢字の数の割合という点から見ると,ある程度の共通性はあるのではないかということが示唆された。
  • 樋口 壮美
    2017 年 9 巻 p. 87-92
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
     日本や韓国には中国由来の漢字を使用した漢字語語彙があり,専門分野においても多く見られる。その漢字語語彙の体系的,効果的,かつ成人ならではの学習方法を考える。まず,韓国同様,音のみ中国由来の漢字語語彙を使用しているベトナムにある,東游日本語学校の単漢字の学習方法を考察する。そしてそこから韓国人日本語学習者の漢字学習にも応用できる点と本研究においてどのような分析,分類方法が適切であるのかを考える。
  • 関 麻由美
    2017 年 9 巻 p. 93-100
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
     教育における創造性の必要性が世界的に説かれている中,第二言語としての日本語教育における漢字教育では,創造性を意識した学習活動はなされているのだろうか。漢字学習における創造性を,学習した漢字を自分なりに再文脈化することであると定義し,筆者の実践する教室活動での学習者の作品を通して創造性を考える。また,市販教材や,当研究会で過去に発表された活動を創造性の観点から検討し,創造性の機能,効果を探る。
  • 試行錯誤で進めてきた中級学習者への漢字指導
    窪田 晃子
    2017 年 9 巻 p. 101-110
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
     本発表では、非漢字系学習者1)への漢字指導の実践報告として,非漢字系学生が半数以上を占める日本語学校での漢字指導,また授業で工夫したことなどの報告を行う。彼らにどう「漢字」や「漢字語彙」を教え,理解・定着へと導くかという教師側の課題と,学習者側が抱える問題を整理したことや,漢字の特性に注目した漢字指導から教師が試行錯誤しながら工夫した点や課題などを紹介し,漢字教育や学習への新たな試みとして共有したい。
ワークショップの記録
研究発表 要旨
  • 笹原 宏之
    2017 年 9 巻 p. 137
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
     国語審議会の権能を受け継ぐ文化審議会国語分科会の漢字小委員会から,間もなく「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」が公表される。「木」はハネてはいけない,「令」は下部を「マ」で書いたらバツだといった意識と評価は,主に硬筆の一般化や情報化の進展に伴って強化されたものである。漢字の書き取りテストにおける教員による字形の細部への神経質なまでの正誤判定と評価基準のぶれ,窓口など各種業務における本人確認の際の姓名の同定上のトラブルなど,社会生活における日本語の漢字の字形に関する無用な摩擦が随所で起きている。漢字の表語性という本質に基づき,漢字政策の方針を明確化しようとするこの指針によって,こうした混乱が解消されることが期待される。ここでは,その性質と具体例を紹介し,漢字使用圏(繁体字圏,簡体字圏),非漢字圏の学習者に対する日本語教育への応用についてどうするのがよいかも,ともに考えたい。
  • 漢字で何をするのが難しいのか
    濱川 祐紀代
    2017 年 9 巻 p. 138
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/02/22
    ジャーナル オープンアクセス
     近年,JF日本語教育スタンダードなどのように,何をどこでどのように用いるのかといった運用場面を念頭におき,日本語を使って何ができるようになるのかといった目標(Can-do)を掲げたうえで,日本語を指導することが増えてきている。しかし,漢字に関する目標(Can-do)は開発が遅れており,そもそも「漢字を使って何をすることが易しいのか,漢字を使って何をすることが難しいのか(=漢字のレベル観)」といった切り口から分析している研究者はほとんどいない。そこで,第64回研究会においてワークショップを行い,研究会参加者の皆さんと漢字のレベル観について考え,レベルごとに目標記述文を検討した。
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