日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
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ポスター発表 II
  • 辰田 真理子, 小田 浩一
    セッションID: PII-41
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    【目的】 視覚を使わずに歩く歩行者には、視覚的な地図は利用が困難である。触地図は 制作コストと読み取りの困難、複製や流通の困難などの欠点があり、インター ネット時代の現代では、言語ルートマップの利用や需要が増えていくと考えら れる。その場合、視覚障害の歩行者には、どのようなランドマークを使い、ど のようにルートマップを作ればがより有用であるかを、2006年度合同会議のた めに西荻窪から会場である東京女子大学までの言語ルートマップを作成する課 程を通して検討する。 【方法】 目的とするルートについて、複数の一般晴眼者に言語ルートマップを作成させ た。同様に、複数の歩行訓練士に同一のルートを歩かせ、視覚を使わずに歩い た場合と、視覚も使いながら歩く(含むロービジョン)場合で、どのようなラ ンドマークを使い、ルートを説明するか記録した。得られたランドマークと説 明方法について比較し、歩行訓練士間、一般の晴眼者で共通するものとしない もの、視覚を使う場合と使わない場合で共通なものと特殊なものに分類した。 得られたランドマークを用いて複数の言語ルートマップを作成し、人工的に視 機能を低下した晴眼の被験者にルートマップを利用して歩かせ、ランドマーク や説明方法を比較した。 【結果と考察】 歩行訓練士の場合、建物のような一般的なランドマークよりも道の形状をラン ドマークとして説明していた。視覚を使わない匂いや音のランドマークもいく つか見られた。白線、ガードレールのロービジョンのためのランドマークの表 現や、 交通量、車の走る方向といった危険性のある箇所についての言及がなされてい た。 視覚障害のある歩行者に対して有効なランドマークは、晴眼の歩行者とは異な ること、ロービジョンと全盲の場合で異なる場合があることが分かり、ユニ バーサルな言語ルートマップを作成するための工夫についての知見が得られ た。
  • 道面 由利香, 小林 章
    セッションID: PII-44
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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     ロービジョン者の歩行訓練には視機能の状態を知ることがとても重要である。しかしながらその重要な視機能情報を入手することにはしばしば困難を伴う。
     視機能の代表的な測度として、視力、視野、コントラスト感度が挙げられる。先行研究から「それぞれの測度が歩行パフォーマンスに与える影響は単独では視力との相関は低く、視野、コントラスト感度との相関が高い」ことが報告されている。実際、このことはシミュレーション体験や訓練の場面でも容易に体感することができる。すなわち、ロービジョン者の歩行においては特に視野とコントラスト感度の情報が重要であると言える。
     この重要な測度のうち、視野の情報は医療機関に問い合わせてもらうなどして入手の可能性があるが、コントラスト感度ついては医療機関においてもあまり測定されることは無いのではないだろうか?
     歩行における大きな課題として、障害物の発見、段差の発見などが挙げられるが、そのうち段差、特に一段の下り段差の発見にはコントラスト感度が大きく効いてくる。同じ段差でも階段は近づくと階段部分の大きさが変わってくるという視覚情報の総合判断や、足音や反響音などの聴覚情報が発見のてがかりとなってくるが、一段の下り段差にはそれがないので純粋に視機能に依存してしまい、近づいてもそれとわからないことが多い。もしこの段差を発見できる視機能であれば白杖を持つ場合でもその使い方は大きく変わってくる。
     そこで、大きな歩行課題である段差発見、特に一段の下り段差に注目して、この段差が発見できるコントラスト感度に関連する視機能を大まかにでも判断できるチャートの作成を試みた。
  • Post Guide Dog Mobility
    多和田 悟, 森 英雄
    セッションID: PII-47
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    視覚に障害を受けると移動方法はその人の能力と必要に応じて変化する。ほとんどの人は最初は手引きで自分で情報の分析が出来るようになるまでは、情報を与えられながら歩く。必要に応じて単独で白杖を使って情報を収集しながら歩くようになる。白杖より速度、歩行範囲を広げようとする人達、または盲導犬の能力に依存しなければ歩行できない人達には盲導犬が選択肢としてある。手引き、白杖、盲導犬それぞれに求められる能力が違う。 単独で歩行してきた人達にとって年齢、環境によってそれが出来なくなった時、自立も同時に失う。高度な能力を要求されること無く目的地に安全に到着できる歩行補助具として“盲導犬ロボット”が開発された。それの実用化を目指した形で“次世代インテリジェント車椅子”が開発された。この歩行補助具を視覚障碍者の歩行の選択肢とするために専門家による処方、歩行指導がなされなければならない。今までの歩行補助具では対応できなかった人達の歩行の可能性を期待して次世代インテリジェント車椅子の現状を報告し紹介する。
  • 佐藤 哲司, 関 喜一
    セッションID: PII-50
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    【目的】
     歩行訓練初心者にとって、実環境での歩行における危険や恐怖心の軽減のために、仮想環境でのシミュレーション訓練を併用することは有効であると考えられる。筆者らは、3Dサウンドによる仮想音響環境を用いて、音源定位や障害物知覚などの「聴覚空間認知」の技能の獲得、および聴覚空間認知に基づき歩行する技能の修得を支援するための訓練システムを開発し、昨年の大会で報告した。今回は本システムの訓練効果の検証実験を実施したので結果を報告する。
    【対象と方法】
     実験においては、統制群、歩行訓練群、3D聴覚空間認知システム訓練群の3群において、訓練前後におけるSPR(Stress Pulse Ratio)を用いた、ストレス軽減効果の比較分析を行った。また、同様に、それぞれの群において、訓練前後において、DGPS(Differencial Global Positioning System)を用いた、歩行軌跡に関する量的分析の比較分析を行い、車の音を利用した直線歩行技能の上達の度合についても検証した。また、主観的歩行技能・歩行不安評価尺度についても、各群ごとに、訓練前後にその値を比較分析した。
    【結果】
     SPRについては、統制群と3D訓練群&歩行訓練群の間に有意な差が現れた。歩行軌跡については、統制群&歩行訓練群と3D訓練群の間に有意な差が現れた。主観的歩行技能・歩行不安評価尺度については、3D訓練群、歩行訓練群の両方において訓練前後で有意な差が現れた。
    【結論】
     3Dサウンド技術を用いた聴覚空間認知訓練システムを用いて訓練を行うことによって、ストレスが軽減し、歩行技能が上達するということが明らかになった。また、主観的な評価である、歩行技能・不安評価においても、有効性があることが明らかになった。
     なお、本研究の一部は、厚生労働科学研究費補助金「3Dサウンドを利用した視覚障害者のための聴覚空間認知訓練システム(H15-感覚器-006)」の助成を受けた。
  • 守山 正樹, 永幡 幸司, 山田 信也, 高橋 広
    セッションID: PII-53
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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     【目的】生活を通した健康づくりは、障がいの有無に関わらず重要事である。しかし現行の調査や教育の方法には、目で見て確認する過程が含まれることが多く、視覚障がい者の使用は困難である。障がいの有無に関わらず、生活から健康を振り返ることができる方法の開発を試みた。
     【方法】以前開発した二次元イメーシ゛展開法(食や生活のキーワート゛を記したラヘ゛ルを二次元的に展開してマッフ゜を作成し、その過程を通して当事者が自己の生活を振り返る)を出発点に、触覚によって作業できる方法を目指した。「道具や設備に手で触れたとき、日常的に経験しているものならば、瞬時に意味が理解できる」とするHaptic Glanceの考え方を参考にした。「食事」というキーワート゛を見て「食事する行為」を想起するのではなく、特定の手がかり(たとえば箸)を触れることでその行為を想起できるのであれば、同様の触覚的手がかり(ミニオフ゛シ゛ェ)によりキーワート゛を系統的に置き換えることができよう。
     【結果】小倉と長崎で行われた視覚障がい者を囲むワークショッフ゜(WS)で触覚法を試行した。両WSの参加者154名の内訳は、晴眼者91名、Low Vision者34名、全盲者29名であった。触覚法により独力でマッフ゜を完成できた割合は、晴眼者98.9_%_、Low Vision者100_%_、全盲者82.8_%_であった。また全盲者の13.8%は周囲からの援助を得てマッフ゜を完成させることができ、マッフ゜を作れなかった全盲者は1名(3.4%)であった。マッフ゜作成後の交流を通して、視覚障がいの有無に関わらず、参加者は自己の生活について語り、健康への洞察を深めることが示された。
     【考察】生活を想起できる多様なミニオフ゛シ゛ェを開発することで、より具体的な生活の局面に適合した参加的な教育・調査方法になると期待される。
  • 秋山 仁, 村山 慎二郎, 青木 恭太, 八藤後 猛, 四之宮 佑馬, 小林 好彦, 梶原 清隆
    セッションID: PII-56
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    【目的】ロービジョンの環境における読書環境改善に関する取り組みを行ったので報告する。特にユーザ毎の表示環境に注目し、基礎調査、機器開発等を行った。
    【色覚障害の状況】日本人男性の5%、日本人女性の0.4%が色覚障害を持ち、一般に出現率は緑、赤、青の順であるとされる。今回、パネルD15、SSP_II_を使用して国立塩原視力障害センター入所者職員(中途視覚障害者)35名を対象に色覚検査を実施した。2つとも異常なしと判定できるのは2名のみで、青黄異常の被験者が最も多かった。
    【色覚障害者対応拡大読書器の開発】調査結果をもとに、(財)テクノエイド協会の助成を受け、(株)インフォメーションヒーローズ、宇都宮大学、日本大学工学部、国際医療福祉大学、国立塩原視力障害センターの共同研究成果として色覚障害者に対応した拡大読書器を開発した。この拡大読書器では、光学処理に加えてデジタル画像処理を行って各種機能を実現している。従来製品との違いは、色強調、マスク濃淡調整、色反転(赤、青、緑)などである。試作器の評価において、印影の色の識別ができなかったユーザが色強調によって識別することができたとの事例があり、読書環境改善が期待できる。
    【マルチメディアDAISYの再生環境の提案】厚生労働科学研究(感覚器)の一環でマルチメディアDAISYに関する研究を行っている。一般にロービジョンのユーザの表示環境は黒背景に白文字が最適と言われてきた。これは高いコントラスト比に起因するものと考える。聞き取り調査の結果、他の色の組み合わせを好むユーザが存在することがわかった。マルチメディアDAISYの再生環境はCSS(カスケーディングスタイルシート)で定義づけることができる。ユーザの色覚障害の状態を把握した上でCSSをセッティング出来ればより効率よく読書環境を改善できると考えている。
  • 工藤 正隆, 青木 成美
    セッションID: PII-59
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    (目的)
     本研究は、日本全国の盲学校(66校)のホームページを中心に見やすさについて調査をし、画面表示の現状と問題点を把握する。
    (方法)
     全国の盲学校(71校中66校)のホームページのトップページを調査対象とした。『高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス』(JIS X8341) に準拠したチェックリストを作成し、評価した。評価項目は「コントラスト」「フォントサイズ」の三点である。
    (結果)
     「背景と学校名のコントラスト」では、半数以上の学校がJIS規格を満たしていないことがわかった。また、「背景とハイパーリンクとコントラスト」、「学校名とハイパーリンクのコントラスト」は、いずれの項目においても規格を下回る結果となり、見やすい環境が十分に整えられていないことが分かった。
     フォントに関しては13ポイントの基準を満たしていないものはホームページでは26.9%であった。そのうち、HTMLの基準値とされる12ポイントに満たないホームページは9%存在した。
    (考察)
     Webに関するJIS規格は2004年に示されたが、あまり知られていない。また、法的な拘束力がないため、一般にはなかなか浸透していないのが現状である。今後は、ウェブページの作成者・管理者がJIS規格等の知識を得て、専門性を高めていく必要があるといえる。学校関係者に対しても研修、実践活動を行い、学校ホームページに関する意識や専門性を高めていかなければならないと考える。
     盲学校のホームページは、地域の視覚障害教育の中心として、いろいろな人が情報を得るために閲覧する。また、学校の情報を地域に知らせる役割もあり、その役割は非常に重要である。従って、誰もが見やすいホームページ作りが必要となっている。
  • 山本 百合子, 佐渡 一成
    セッションID: PII-62
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    目的:「どこが、どのように見えているのかについて直感的にわかりやすい表現は見当たらない。そこで患者さんにも直感的に理解しやすいように見え方のシ ミュレートを試みる。今回は、第一段階とし て視野検査で得られた結果(一点を固視した状態での見え方)をシミュレートした。 対象・方法:対象は正常視野、半盲、求心性視野狭窄2例の4例8眼である。「視野の中心部と周辺部の感度差(視野の島)」「色彩(錐体細胞の分布)」な ど、これまでに知られている見え方の特徴を Adobe PhotoshopCSを用いて表現した。まず、視野の見え辛さを想定した0%?100%のマップを制作する。一般のデジタルカメラで撮影された画像 に、適合する大きさのマップをレイヤーとして重ね る。このマップに合わせて画像を劣化させ、物の見え辛さをシミュレートする。更にこれを左右両眼につい て行い、2枚の画像を重ねあわせ、両眼での見え方を客観化する。 結果:黄斑部に一致する中心部の解像度は高く色彩も鮮やかであるが、周辺部では解像度が低く、グレートーンの世界となる。半盲は正常視野の半分が消えて いる状態であった。視野狭窄の2例(身障手帳 2級)は、?/4の広さによって外界の情報量に大きな差があると推察される結果であった。 考察:視覚障害者の見え方だけでなく正常の見え方を想像することは容易ではない。しかし、シミュレーション画像があると障害者自身や家族が「見え方」を 想像、理解する際の手助けになる。今回、 表現した「見え方」は「一点を固視した状態での見え方」であり、我々が通常感じている「固視点を瞬時に広範囲に 自由に動かしたときに感じている見え方」とは相違がある。今後 はさらにシミュレーションの精度を高め、より説得力のあるシミュレーションを目指したい。
  • 永井 伸幸
    セッションID: PII-65
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    目的
    筆者は以前、弱視者が主観的に選択する文字サイズと客観的評価から推定される適した文字サイズの違いについて研究を行った。その結果、主観的に選択された文字サイズが、客観的評価の結果と比べて大きくなる傾向にあった1)。しかし、その後、臨界文字サイズに近い文字サイズを選ぶ者もみられたため、さらに詳細な検討を進めることとした。そこでまず、この研究を更に推進するにあたり、文字サイズの主観的選択方法について検討した。
    方法
    被験者:以前の研究にも参加した弱視者2名であった。手続き:被験者の眼前30 cmに設置されたCRTディスプレイ上に、1行10文字3行の文章(文の一部を含む)を提示した。文字サイズは、前回の研究で把握した好みの文字サイズの5倍以上(80ポイント前後)あるいは1/2以下(7ポイント前後)の大きさで提示された。被験者はキーボードの上下カーソルキーあるいは画面上の上下ボタンをマウスでクリックすることで、文字サイズを自分が読みやすいと思う文字サイズに調整した。
    結果
    1名の被験者は、前回の研究とほぼ同じ文字サイズ(約1.0logMAR)を選択したが、もう1名は、約1.0logMARから約1.4logMARへと選択文字サイズが大きくなった。この結果は、同一の目的のための測定でも方法によって被験者内にも差異が生じるおそれがあることを意味している。このことについては、さらに分析を進めたい。また、両被験者とも、選択する文字サイズに一定の範囲があることが示された。
    1)Nagai, N(2005)Difference of reading performance in subject selected condition and in reading chart, VISION2005 International Conference on Low Vision abstract CD.
  • 田中 千尋, 小田 浩一, 長田 佳久
    セッションID: PII-68
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】触覚の文字認知と視覚の文字認知は類似しているとするLoomisら(1990)の一連の研究によると、触覚の文字認知は視覚の文字認知と比較して低解像度であるとされている。しかし、解像度の違いだけでは触覚の文字認知を説明することはできなかった。そこで触覚の文字認知におけるその他の要因は一体何なのであろうか。小田ら(2003)の研究ではその他の要因として傾きの不確実性について言及されている。本研究では浮き上がり文字を用いて、触覚の文字認知における傾きの不確実性の要因を検証した。 【方法】一辺2cmに作成された浮き上がり文字、視覚刺激はそのサイズを触認知した場合に合わせて解像度を低下させた。また、触覚の傾きの不確実性を再現するために視覚刺激には0度の正立文字の他、左右に5,10,15度に傾けた合計7種類のものを用意した。各刺激で用いられた文字は、傾きの違いの影響を受けにくくしたフォント「ForeFinger-M」(小田、2003)と細ゴシックの2種のフォントで、触読の容易な文字「ニノヘリレロ」と混同の多い文字「シソツナメン」の12文字を各課題で用いた。視覚も触覚も正常の被験者4名に、触覚刺激はアイマスクをして1文字ずつ触って文字を読み上げさせ、視覚刺激については1文字ずつ呈示された文字を同定させた。 【結果】視覚刺激についても、触覚刺激についても、ForeFinger-Mの正答率は細ゴシックの正答率より有意に高かった(それぞれ、視覚90.5と84.5%、触覚94.2と90.4%)。また、容易な文字群の正答率は困難な文字群より有意に正答率が高かった(それぞれ視覚94.1と86.9%、触覚98.3と90.9%)。文字ごとの正答率を視覚と触覚で比較すると両者には0.6の比較的高い相関が得られた。 【考察】両モダリティ間の正答率の比較的高い相関から、先行研究同様に視覚と触覚の文字認知には類似性が観察され、触覚の文字認知は視覚の文字認知と比較して低解像度であることが支持された。また、ForeFinger-Mと困難な文字群の正答率の高さから、触覚の文字認知では傾きの不確実性も要因となっていることが示唆された。
  • 昆 美保, 阿部 麻里子, 町田 繁樹, 藤原 貴光, 黒坂 大次郎
    セッションID: PII-71
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】加齢黄斑変性症(AMD)に対する光線力学療法(PDT)後での読書能力と関連した術前因子を検討する。 【対象と方法】対象は、平成17年12月から翌年5月までに岩手医科大学眼科を受診しPDTを行なったAMD27例27眼で、平均年齢は72.4歳 ± 8.6歳であった。読書能力はMNREAD-Jチャートを用いて評価した。これで得られた臨界文字サイズ(読書時に最も効率良く読むことができる最小の文字サイズ)が、治療後1ヶ月目に1段階以上改善したものをA群(n=15)、不変もしくは低下したものをB群(n=12)とした。PDT直前の遠見および近見のlog MAR視力、微小視野計(MP-1)で評価した患者の固視点のずれの程度ならびに固視の安定性を2群間で比較検討した。 【結果】治療前の遠見log MAR視力は、A群で0.7 ± 0.28 log MAR、B群で0.7 ± 0.43 log MARであった。近見log MAR視力は、A群で0.79 ± 0.24 log MAR、B群で0.86 ± 0.47 log MARであり、術前の視力に関して両群間では有意差は認められなかった。術前の固視点のずれの程度は、A群で1.73 ± 1.16°であるのに対し、B群では3.66 ± 2.27°であり、B群の固視点がA群に比較して有意に中心窩からずれていた(P<0.05)。固視の安定性は、A群で88.2 ± 23.02%、B群で75.3 ± 30.93%であり、両群に有意差はみられなかった。 【結論】AMDに対するPDT後の臨界文字サイズの改善には、治療前の固視のずれの程度が関与している可能性がある。従って、術前の固視のずれの少ない症例では、PDTによって読書能力の改善を期待できると思われた。
ポスター発表 III
  • 安山 周平
    セッションID: PIII-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
     東北地域では視覚障害者更生施設をはじめとした施設のような、視覚障害者の自立支援に関わる施設やサービス、ネットワークが不足しており、各県、各地域においてその内容や量に大きな差がみられる。視覚障害者更生施設を卒業して自宅に戻ったとしても、受けられるサービスがほとんどない地域も多い。 財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターでは、地域でのサービスの活性化と向上を目的とし、平成17年9月に岩手県、同11月に山形県、平成18年6月に再び山形県において各開催地域で生活する視覚障害者を対象に1ヶ月間という期間を設けて、指導員が自宅あるいは居住施設を訪問して訓練を行う「視覚障害リハビリテーション地域生活サポートサービス」を開催した。 訓練の内容は白杖歩行、点字、音声ソフトを使用したパソコン、掃除や洗濯といった日常生活で、利用者との話し合いによりその訓練内容、回数を決定した。1回の訓練時間は2時間程で、その費用は障害者自立支援法の適用を考慮して1,000円とした。このサービスを利用した方は、平成17年11月の岩手県では5名、同11月の山形県では12名、平成18年6月の山形県では8名であった。今回は、その詳細と効果について報告し、今後の課題を考察したい。
  • 尾形 真樹
    セッションID: PIII-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    目的:NPO東京ライトハウスが2005年4月24日から2006年6月17日の期間に実施した「見えにくさの相談会」(以下,相談会)の経験を基に,来談者の傾向・相談内容,相談会での対応をまとめる.地域で単発的に行う相談会開催に際し,スタッフに求められる専門性と対応の特徴,相談会を周知させる効果的宣伝媒体について検討する.

    方法:相談会は期間内に8回実施した.会場は6回が杉並NPO・ボランティア活動推進センター,2回が日本点字図書館であった.開催場所発行の情報誌(印刷物,テープ)とホームページで告知し,見えにくさに関する相談事項を有する者やその支援者を募った.スタッフは3~7名で,移動と読書の相談が可能な者を必ず含めた.相談時間には特に制限を設けなかった.

    結果:来談者数は延べ32名(最少0名,最多10名)で,日本点字図書館での開催時に来談者が多かった.平均年齢は53.8±17.6歳,平均視力は0.24±0.27だった.相談会の情報入手経路は,96.9%が開催所発行の情報誌であった.疾患は,網膜色素変性症(34.4%),緑内障)18.8%),加齢黄斑変性(9.4%)の順に多く,相談内容は,読み書き(62.5%),移動困難(28.1%),羞明(21.8%),漠然とした不安(12.5%)などだった.対応内容には,社会資源の紹介,実際に来談者の行動を評価し補助具等の試用と技術提供が可能なもの(読み書き,移動,羞明など)があった.

    考察:来談者の多数は見えにくさを訴えた者であるが,補助具や社会資源についての知識は比較的浅い状態であった.対応は,読み書き,移動困難が多く,専門とする相談員や補助具等の充足の必要性が伺われた.来談者には日常の困難が具体化される以前の漠然とした不安を訴える者もあり,リハビリテーション全般に知識をもつスタッフも必要であった.告知媒体は法人ホームページの利用は少なく,相談希望者に情報が届くためには地域広報の利用などが必要なことがわかった.
  • ―理療教育課程在籍者の学習手段の実態調査から―
    伊藤 和之, 加藤 麦, 谷口 勝, 乙川 利夫, 伊藤 和幸
    セッションID: PIII-15
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】中途視覚障害者は文字使用に困難を抱えながら学習を行うケースが少なくない。そこで、理療教育課程に学ぶ中途視覚障害者の学習方略構築を支援する基礎資料を得て課題解決を図るために、主として学習手段(筆記具と学習補助具)の実態把握を目的とした調査を行った。
    【方法】対象者:当センター理療教育課程在籍者のうち2001_から_2004年度1年生162名 調査方法:自記式質問紙調査及び半構造化面接 調査内容:基本属性、授業時、自主学習時(自習時)、試験時における学習手段の使用状況 実施時期:各年度7月 
    【結果と考察】視力0_から_0.02未満の者が少ない半面(23.5%)、文字手段の獲得の支援が急務であること、眼疾患の第1位である網膜色素変性症が50_から_60歳群に、第2位の糖尿病性網膜症が30歳代以降に多く分布したことから、障害の程度や年齢に即した学習支援が課題とされる。次に、使用文字を書字と読字の両面から判別した場合、点字(33名)、墨字(116名)、両用(13名)の3群8類に分布していた。特に、墨字使用者も点字使用者同様、いわゆる「聞く学習」を模索していた。また、各個人の筆記具と学習補助具の組合せが最も顕在化する試験時では、点字使用群が更に3類、墨字使用群が10類にそれぞれ下位分類された。中途視覚障害者の使用文字は多様な学習手段の組合せに支えられており、学習場面の影響を受けていると考えられる。
    【課題解決に向けて】本研究では、今後理療教育課程での学習時に点字や墨字、PCでのノート・テイキングに苦慮する中・高齢層中途視覚障害者の学習支援システムの構築を目指す。個々の障害やニーズ変化への対応を勘案し、携帯電話式、オンライン手書き式など新たな文字入力手段と音声支援を組合せたノート・テイキングツールを開発するとともに学習時の評価を行い、学習方略構築と普及に関する指針を得るものとする。
  • 河野 恵美, 小田 浩一
    セッションID: PIII-18
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    1.目的
     先天的に盲ろうがある子どもAの事例報告である。Aの第一言語は手話で、小学校高学年で指文字や指点字へ移行、書き文字は点字と、触覚様相を使う言語メディアを使い分けてきた。音声言語の発話、聞き取りはできない。Aの習得している感情語の種類を相馬ら(1986)らの方法に従って調査し、相馬らが健常、及び聴覚障害のある同年代の生徒に実施した調査の結果と比較・考察する。
    2.方法
     調査した感情は、歓喜、愛慕、恐怖、驚愕、悲嘆、嫌悪、激怒、羞恥の8領域、それぞれについて初級、中級の二段階で合計16語であった。調査は単語の選択課題と単語を使った単文作成課題からなっていた。相馬らが絵を使っていた部分は文章だけで理解できるように変更し、言語メディアは、教示は日本語式指文字、刺激文は点字を用いた。調査当時Aは中学2年であった。
    3.結果
     単語選択課題の正答率は、初級は100%、中級37.5_%_であった。短文作成課題の正答率は、初級100%、中級12.5%であった。同年代の健常群の初級段階での正答率はほぼ90%、同聴覚障害群では約60%だった。Aが単語選択課題で正答した中級段階の語については、健常群で約70_%_、聴覚障害群で10_%_の正答率であった
    4.考察
     Aの感情語表現は、同年代の健常児より若干低いものの、聴覚障害のある子どもらより高かった。Aの感情語学習が学年相応に進みつつある理由は、利用する言語メディアによるかもしれない。相馬らの時代はキュード・スピーチが増えた時期(長南、2001)で、被験者の多くは、それ以前の聴覚口話法をうけていると推測される。一方Aは、手話や指文字、指点字など学習発達のニーズに応じた言語メディアを使い分けてきた。先天盲ろうによる感覚の制限が大きくても、学習期の言語メディア次第で、感情語の獲得と記述ができる可能性が示唆された。
  • 井口 健司, 河野 恵美
    セッションID: PIII-21
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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     障害のある人のスキーには、チェアスキーやブラインドスキーなどがあり、ルールや用具などを工夫して行いスポーツまたはレクリエーションとして親しまれている。
     今回、先天的に盲ろうのある子どもA(男、14歳、スキー歴約3年、主な会話方法は触手話・指文字)のスキーの事例を通し、視覚障害者のスキーと比較し、両者の類似点と相違点について言及し、盲ろうのある人のスキーについて考察する。
     Aは、3年程前から1シーズンに2〜3回スキーを行っており、平均して約4名の介助者が同行している。介助者は、スキーのレベルは習熟している者から初心者までおり、Aがスキーをする時に、Aと触手話および指文字で会話が可能な者であった。滑走時には、視覚障害者の場合、前方に音源を置いたり、後方から介助者が音声により指示を出し滑走方向を誘導するが、Aの場合、腰にハーネスを装着し、後ろの介助者がこれを左・右に引っ張ることで誘導する方法をとった。
     盲ろうのある人のスキーは、視覚障害者のスキーと同様に介助者のスキー技術に依存すること、また介助者は、盲ろうの人と会話するための触手話や指文字などの方法を習得している必要があることがわかった。しかし、介助者全員が両方の技術に習熟していなくても、スキー技能に習熟している介助者と会話技能に習熟している介助者が盲ろうのある人と組むことで、このスキーの可能性は広がるかもしれない。介助者と共に楽しめるスキーは、盲ろうのある人のレクリエーションの一つとして期待でき、さらには、盲ろうのある人、および介助者がスキーのレベルを高めることで競技スキーとしても期待できるのではないか。
  • 宮原 麻利, 横尾 文子, 小田 浩一
    セッションID: PIII-24
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    【目的】 超音波歩行補助器(以下補助器)は超音波の性質を利用し、視覚障害者が歩行する際の障害物探知や進行方向の発見、環境認知を援助する機器のことである。本研究では補助器の現状を明らかにし、その課題について検討する。
    【方法】 現在日本で入手可能な「パームソナー」「みるぶる」「モールスソニック」「K sonar」の開発者にインタビューを行い、開発の目的を調査した。ユーザへもインタビューし日常生活においてどのように使用しているか調査した。またインタビューの結果を公開されている仕様と対照させて分析した。
    【結果】 「パームソナー」「みるぶる」「モールスソニック」は障害物探知の補助器であり、白杖では探知できない上半身の障害物を発見し歩行時の安全性を向上させることを目的としている。しかしユーザは歩行時に白杖と併用するだけでなくそれ以外の場面でも使用していることが分かった。「K sonar」は環境認知を援助する機器であり、超音波で探知したも のが可聴音刺激として提示される。環境を音で楽しむことを目的とした機器であり、ユーザもそれを楽しんでいた。
    【考察】 開発者が意図しない方法で補助器が使用されていた理由には、白杖との併用では両手が塞がり、心理的ストレスが増えるということも考えられるが、歩行補助器は移動時の安全性や効率性を上げるという観点以外に価値基準を持つという視点が今後重要かもしれない。
  • 山中 幸宏, 佐々 圭祐, 佐々 博昭
    セッションID: PIII-27
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    目的:ライトが均一に設置面に照射される新しい拡大鏡「Eschenbachマクロラックス」が発売された。この拡大鏡のライトなしとライトオンの状態における判読可能な文字サイズと読書スピードを測定することで、ライトが拡大鏡を使用して読書する際における効果を考察した。

    対象と方法:2006年3月から6月までにアサクラメガネロービジョンルームに来所した10名を対象とし、近用矯正時・マクロラックスのライトオフ及びオンの状態の読書スピードを、MN Read-Jを使用して測定した。

    結果と考察:10名のうち8名に判読文字サイズの向上及び読書スピードの有意な向上が見られた。拡大鏡選定時には、ライティングを考えることが大切と思われる。
  • 津野 幸江, 三田 知直, 松原 正男
    セッションID: PIII-30
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    [目的]ロービジョン外来受診後のQuality of Life(以下QOL)の改善状態を確認する。 [対象と方法]症例は平成16年4月から平成17年7月までに当院ロービジョン外来受診し、QOL評価表で問診を行った34症例のうち、6ヶ月から1年6ヶ月後に再診し同じQOL評価表による問診を行うことができた8名(男性6例女性2例)を検討した。受診者の原因疾患は、ぶどう膜炎3例、緑内障2例、糖尿病網膜症1例、脈絡膜萎縮1例、先天白内障1例であった。受診時のQOL評価表を点数化、初回と二回目を比較し評価した。また、ロービジョン外来受診後の生活変化、その他の希望などを聴取した。 [結果]受診後の評価点数は_-_1点から+28点(平均+9.25点)の変化を認め多くは改善が見られた。 しかし、一部に拡大読書器が使いこなせていないなど、新たな問題点が浮かび上がる症例があった。病状の悪化から、状態が変化している症例があった。また、再診時に拡大読書器や遮光眼鏡を希望する場合があった。 [結論] ロービジョン外来受診後、多くの症例でQOLの改善が見られた。しかし、補装具の使用状況やその後の病状変化など、受診後も定期的な経過観察や生活状況の聴取、その後の希望の聴取が必要と思われた。
  • 岡山大学附属病院眼科での小経験
    守本 典子, 松尾 俊彦, 大月 洋
    セッションID: PIII-33
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    目的:網膜色素変性の白内障手術の有効性と危険性、および患者のQOLの変化と満足度を調べること。
    方法:岡山大学医学部・歯学部附属病院眼科にて、平成16年6月から18年3月までに白内障手術(無着色眼内レンズ挿入)を施行した12人21眼について、受診経過、手術合併症、視力変化などを診療録から検索し、術前の情報、見え方の変化、生活の変化、期待との乖離、手術して良かったか、などを患者から聞き取った。
    結果:ロービジョン外来で初めて白内障手術を勧められたものが4人あった。難しいから、改善が期待できないからと、手術を保留にされていたものが1人ずつあった。同病の仲間からネガティブな情報を得ていたものが2人あった。しかし、全員が病態をよく理解し、主治医を信頼して手術を受けていた。矯正視力は改善17眼、不変2眼、低下2眼であった。自覚的変化は、視力の改善10人、不変2人、羞明の改善4人、悪化8人であった。また、読み能力は改善8人、不変4人、移動能力は改善6人、不変6人、日常生活全般では改善10人、不変2人であった。合併症は、後発白内障(レーザー治療)が7眼に生じ、一過性高眼圧(薬物治療)が1眼、前嚢収縮(レーザー治療)が1眼あったが、治療が奏効した。期待との乖離は、期待以上7人、期待通り2人、期待以下3人であった。全員が「手術して良かった」と回答した。
    結論:1)8割以上で日常生活が改善し、悪化したものはなかった。2)後発白内障以外の合併症は少なく、重篤なものはなかった。3)羞明の増強が多かったため、今後は着色眼内レンズに変更する。4)「期待通り」より「期待以上」が多かった背景に、手術に消極的な医師と過度に不安を抱く患者の問題があると思われ、予後推定の手がかりを得るための検査法の探求と定期受診の徹底が望まれる。5)インフォームド・コンセントができていれば、結果に関係なく、満足が得られる。
  • 鶴見 朝子, 永井 和子, 不動 澄江, 別府 あかね, 良久 万里子
    セッションID: PIII-36
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
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    【アンケート調査の目的】
     盲ろう者の手引き歩行時の問題点を把握し、手引き方法確立に向けての資料とする。
    【実施方法等】
     期間:2005年11月22日_から_2006年1月31日
     対象:全国の盲ろう者友の会及び盲ろう者友の会設立準備会、盲ろう者関係団体の盲ろう者及び通訳介助者
     方法:全国の盲ろう者友の会及び盲ろう者友の会設立準備会、盲ろう者関係団体を通じ、盲ろう者及び通訳介助者に依頼した。全国盲ろう者協会への各団体の登録者数に応じ、盲ろう者には点字とすみ字、通訳介助者にはすみ字のアンケート用紙を送付した。回答方法は、各団体でまとめての郵送、個人での郵送、ファックス、メールであった。
    【結果】
     危険な場面に出くわしたことがある盲ろう者・通訳介助者が多い。安全の確保ができていない。手引き講習を受けていない通訳介助者が多い地域がある。通訳介助者からは、盲ろう者も手引きの受け方を知ってほしい、白杖を持ってほしい、白杖の利用方法を知ってほしい等の回答が見られた。
    【考察及び今後について】
     視覚障害者のリハビリテーションの関係者が、盲ろう者の通訳介助者養成講習会やリハビリテーションに積極的にかかわっていく必要がある。今後、歩行訓練士を対象に、盲ろう者のリハビリテーションに関する講習会を実施していく。
  • 早川 一樹, 宮地 泰造
    セッションID: PIII-39
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    少子高齢社会では、円滑な移動支援が重要な課題になっている。高齢者や障がい者などが、屋外や街に出て運動することは、自立生活を送り社会に貢献するため、また、健康を改善・維持するために、非常に重要である。誰もが、安全に円滑な移動ができるためには、街などの安全な移動環境が重要である。 円滑な移動に大きな影響を与える環境には、道路環境、地理環境、障害物、建物環境、動体環境、自然環境などがある。その構成要素と構成要素の特性には、静的および動的な性質があり、複雑に関係している。また、各要素は、個々に危険度レベルを有するとともに、それらの組合せや連続により新たに発生する危険がある。この危険度は、個々の要素よりも大きくなる可能性がある。 本稿では、個々の環境要素と複数の環境要素の構成について分析して、その分類や危険度レベルについて検討する。 また、注意を要する環境の表現方法を議論する。
  • 吉田 洋美, 清水 美知子, 田内 雅規
    セッションID: PIII-42
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】視覚障害者が道路横断前の方向定位に利用する触覚的手がかりの変遷をみるため,過去に行われた道路横断実験(1990年)の映像を分析すると共に,質問票による調査(2005-6年)を行い、それらの結果を比較検討したので報告する.
    【方法】道路横断実験は,単独歩行経験のある8名の視覚障害者の協力を得て,手がかりの異なる4つの交差点の横断歩道(各A,B,C,D)をそれぞれ1回ずつ渡ってもらった(全32試行).質問票調査では,単独歩行経験のある視覚障害者38名に対し,道路横断前の方向定位における,触覚的手がかり(縁石,点状ブロック,線状ブロック)の利用状況等を聞いた.
    【結果】道路横断実験では,縁石,点状ブロック,線状ブロックについて手がかりを使用したとする判定基準を定め,各手がかりの使用率を求めた.その結果,縁石の使用率が最も高く(48_%_),次いで線状ブロック(25_%_),点状ブロック(13_%_)の順であった.一方,質問票調査においては,各触覚的手がかりの利用状況を訊ねたところ,線状ブロックを利用したことがある視覚障害者が 89_%_と最も多く,点状ブロック(87_%_),縁石(74_%_)の順で続いた.
    【結論】視覚障害者が道路横断時の方向定位に利用する触覚的手がかりの利用状況について,15年前と現在を比較した結果,以前に較べて,線状ブロック,点状ブロックの利用率が上がる一方で,縁石の利用率が他の2つより下回り,縁石と点字ブロック利用が逆転していることが分かった.
  • 盲導犬の歩行拒否から見えたユーザーへのアプローチ方法
    畑野 容子, 笹山 夕美絵, 中村 透
    セッションID: PIII-45
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
     盲導犬ユーザーである方に対して、在宅で白杖歩行訓練を行った事例を紹介する。
     盲導犬使用歴10年のAさんが、白杖歩行訓練を受けるきっかけとなったのは、使用している盲導犬が歩行を拒否したことであった。
     Aさんが短期リハビリテーション(当協会リハ事業)に参加した際、盲導犬が歩行を拒否し、Aさんと盲導犬との歩行に危険性が見られたため、両者の再訓練の必要性を本人に伝えた。盲導犬が歩行を拒否した理由は、盲導犬だけの問題ではないと判断したためである。Aさんの再訓練は在宅で、盲導犬は訓練センターで行うこととなり、短期リハビリテーション終了後に開始した。60代という高齢で単身生活をしているAさんにとって、盲導犬と離れて生活することは大変不便なものである。しかし、これまでと同じように、両者が共同生活を行いながら再訓練することはよい結果をもたらさないとの判断から、別々に再訓練を行うこととした。
     Aさんは手引き歩行と白杖歩行を通して、ボディコントロールなど基礎的能力を高める訓練を行い、盲導犬には歩行に対するマイナスイメージをプラスイメージに変える訓練を行うこととなった。
     ここでは再訓練期間中のAさんへのアプローチ方法について報告し、問題点などを考察したい。
  • 大倉 元宏, 沼上 大輔, 岡部 淳, 中川 幸士, 城内 博
    セッションID: PIII-48
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】視覚障害者に対する化学品の危険有害性情報の伝達において,携帯電話とICタグを利用する方法を評価した.視覚障害者の携帯電話保持率は相当高く,これを音声端末として利用したものである. 【方法】ここで用いた携帯電話とICタグを組み合わせた装置の原形は総務省北陸総合通信局において考案されたものである1).本研究では近い将来,市場に出回るすべての商品にICタグが添付され,ICタグリーダが携帯電話に標準装備されることを想定している.ここでは,洗剤などの化学品に,メーカや商品名,危険有害性情報などを書き込んだICタグ(MB89R118,富士通)を貼付し,その情報をリーダ(MFDU-M4PH)を介して携帯電話に読み取り,音声出力するという道具立てで評価した.ICタグへの情報の書き込みはライター(RWF-ML6,スマートIDテック)によった.44名の視覚障害者(男女22名ずつ,全盲21名/弱視23名,平均年齢44.7歳)にこの装置を使って日用化学品の危険有害性情報を読み取ってもらい,情報伝達装置としての可能性についてインタビューを行った. 【結果】すべての被験者が特段のトラブルもなく,化学品の危険有害性情報の読み取りを完了した.全盲,弱視でそれぞれ95,100%の者がこの情報伝達の仕組みを支持した.また,携帯電話の通信料が発生してもこの装置を使いたいとする者が全盲で52%,弱視で35%いた.一方,携帯電話への情報転送時間の長いことが多くの被験者から不満としてあげられた. 【考察】ICタグに情報を格納し,その内容を携帯電話により音声で聞く仕組みは,その支持率の高さから視覚障害者に広く受け入れられる情報伝達手段になりえると考えられた. 【文献】1)総務省北陸総合通信局:視覚障がい者のための公共トイレ音声案内システムの実用化と普及手法に関する調査研究会報告書,2005年3月.
  • 田尻 聡, 河嶋 洋一, 樋本 勉, 門 武博, 佐渡 一成
    セッションID: PIII-51
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】点眼容器の識別性補助のために2003年12月より『点眼容器用識別シール』を提供し、評価を得ているが、その識別シールでも点眼容器(ディンプル®ボトル)間の識別が困難な重度のロービジョン患者を対象とし、点眼容器底部に装着するプラスチック製のアタッチメントを開発した。点眼容器識別のアイデアの一つとして考案されていた底部アタッチメントは、これまで画像のみであった(佐渡:眼紀54:647_-_651,2003)が、そのアイデアをベースに、試作品を作成し、ディンプル®ボトルへの装着性を検証した。
    【対象および方法】丸型、三角型、四角型の3つの形状でエッジ部分が角ばっているタイプとなだらかになっているタイプの計6タイプの底部アタッチメント試作品を製作しロービジョン専門医を含む複数の眼科医にその試作品について意見聴取した。一方品質面においては、底部アタッチメント試作品を用いて、温度や材質劣化によりディンプル®ボトルの抜けなどが生じないか、また落下により簡単に外れないかの苛酷使用試験を行った。
    【結果】意見聴取の結果、形状については丸型、三角型、四角型の3形状を支持する意見が多く、またエッジ部分については、点眼動作への影響が少ない、なだらかなタイプが支持された。一方品質面については、3年予測結果のアタッチメントの抜け圧は基準となる初期切削品の数値より高い値が得られ、苛酷使用下における抜けに問題はないことがわかった。また、落下については、抜け、外れ、割れは発生しなかったが、当たり所により徐々に抜けかかることがわかった。
    【考察】手指の感覚が著しく低下している患者であっても、底部アタッチメントを装着することで、ディンプル®ボトル間の識別性は向上すると考えられる。今後、ロービジョン患者の実際の使用感も踏まえて、底部アタッチメントのさらなる改良も検討している。
  • 舘田 美保, 河村 宏, 小林 好彦, 大内 鉄志, 乙川 利夫, 秋山 仁, 河原塚 由紀, 宍戸 新一郎, 佐取 幸枝, 濱田 麻邑, ...
    セッションID: PIII-54
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】理療、すなわちあん摩マッサージ指圧、鍼灸療法を深く理解するためには、機能と構造などの基礎医学を始め、視覚障害者にとって難解な漢字文化を背景とした東洋医学系の情報を得ることが必要である。視覚障害者がその情報を効率的に得るために、従来の点字、墨字、カセットテープだけではなく、音声・テキスト・画像・点字などの複数の情報チャンネルから個々の特性にあわせたものを組合せて選べるマルチメディアコンテンツの果たす役割は大きいと考えている。本開発では、マルチメディアコンテンツの一つとしてDAISY(Digital Accessible Information System)の活用を試みている。今回は、複数の情報チャンネルから構成されたDAISY教材と、パソコン及び点字音声情報端末である「ブレイルセンス」によるアクセス手段を併せて紹介する。 【参考】DAISY:HTMLをベースとしたDigital Talking Bookの標準規格である。世界11カ国の団体が正会員として加盟する「DAISYコンソーシアム」で規格を作り運用している。日本では音声と見出しのみの図書として普及を続け、点字図書館などで視覚障害者向けに貸出が行われている。アメリカではDAISY3規格がANSI/NISO Z39.86として公式ファイル形式規格に採用されている。http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/ ブレイルセンス:平成18年6月に(有)エクストラから発売された点字音声情報端末である。PDAとしての機能の他に、最新のDAISY規格であるDAISY3に対応したDAISYプレイヤーを備える。コンテンツで指定した区切り毎に点字ディスプレイに表示するとともに、内蔵するTTSで読み上げることも可能である。http://www.extra.co.jp/braillesense.html  本開発は厚生労働科学研究(感覚器)の一環として実施している。
  • 坂部 司, 高柳 泰世, 福田 法子
    セッションID: PIII-57
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
     本協議会は1987(昭和62)年より「ロービジョン者の理解」を目的に一般市民を対象にした講習会を開催した。これをきっかけに1991(平成3)年から拡大教科書製作(プライベートサービス)に向けて「拡大写本ボランティア養成講習会」を神奈川県赤十字奉仕団の担当者を講師として招聘し開講した。以後毎年養成講習会とロービジョン講座を開催してボランティアの養成とロービジョン者の理解と2段構えで行ってきた。拡大教科書の製作には40数名のボランティアが係わり、利用者8名前後、200分冊を製作している。近隣市の2グループも加わっている。
     2004(平成16)より義務教育教科書も無償給与となり、弱視児童生徒にとっては以前から要望していたことが実現し大変有意義なことではあるが、製作する側にとっては事務手続きの増加、製作依頼の増加等、今まで以上に負担が増えてきている。今後よりよい拡大教科書の製作にあたって、弱視児童生徒、学校関係者、製作者の役割について検討して行きたい。
  • ー想像力を高めるための方法とその検証方法についてー
    小林 章
    セッションID: PIII-60
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     シミュレーションはロービジョンの人と100_%_同じ見え方を体験するための道具でないことは言うまでもない。シミュレーションは健常者の視覚情報を制限することによって、ロービジョン者の困難課題を推測し、その解決方法を検討するための手段である。多様なロービジョン者のニーズに対応するためには、想像力を高めることが重要であるといえる。本研究ではこれまでに検討してきたロービジョン者の歩行課題を考察する上で必要なシミュレーションの活用方法について報告したい。
    【方法】
     ロービジョン者の見え方を屈折異常による視力低下(プラスレンズ使用)、コントラスト感度低下+視力低下(バンガーターフィルター使用)、コントラスト感度低下+羞明(白濁フィルター使用)、求心性視野狭窄、周辺視野(自作シミュレーション使用)に分類して、視力低下を伴うものは視力0.01、0.02、0.04の3種類、求心性視野狭窄は視野7.5°、5°、3°で視力低下を伴わない状態と0.1、0.2の視力低下を伴う状態のシミュレーションを準備した。それぞれの見え方において、オリエンテーションを維持、獲得するためのどの要素が阻害されるか、またその補償方法はどのようにすれば良いかについて検討した。
    【結果】
     各シミュレーションではそれぞれが異なる要因でオリエンテーションの維持、獲得に困難を生じた。また、日中と夜間、時間帯、天候、太陽の位置などの要因により困難度や使える手がかりが変化することが確認できた。
    【考察】
     シミュレーションによるロービジョン者の困難課題の再現性を確認するためには、訓練士自身が体験し、想像した困難課題をロービジョン者に提示し、彼らの体験との一致度やずれを確認することが重要である。また、この確認作業を有効に進めるためには、想像力とともにコミュニケーション能力が重要である。これらの情報を得ることによって、ロービジョン者にとって有益な訓練サービスが提供できる可能性が高まると考えられる。
  • 佐渡 一成
    セッションID: PIII-63
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    目的:視覚障害者だけでなく、我々自身の「見え方」について、私たちは十分に理解しているか疑問がある。特に多職種がかかわることが多いロービジョンケアを考えると、視覚障害者の見え方を理解するためにも、まず我々自身の見え方について整理し理解を深めておく必要がある。そこで、身近な話題について、知識の整理を試みた。
    設問:(1)暗点など見えないところの感じ方はいかなる状態か?(2)視力の数値「5.0」はありえるのか?(3)高速道路運転中は視野が狭くなるとはいかなる意味か?(4)視細胞より前にある網膜血管や網膜内の出血は見えないのに硝子体の混濁や出血が見えるのはなぜか?
    回答:(1)暗点は「決して黒く見えているわけではない」「自覚していない部分」「自覚できない部分」である。(2)視力算出の基準に最小機能(点視力)、最小分離能、副尺視力、最小認識能(形態覚)のいずれを用いているかで結果が大きく異なる。(3)実際に検査を行うことは困難と思われるが、一点を固視した状態で見える範囲・いわゆる「視野」が狭くなっているのではなく、反射性眼球運動の振幅が小さくなるために大脳に送られる視覚情報の範囲が狭くなると想像される。(4)我々の視覚は固視微動に支えられている。固視微動の際にも視細胞に対して位置関係が変わらないものは視覚として認知されない。
    考察:きちんと整理されないまま理解したと思い込んでいる事項は少なくないと思われる。視覚障害者に有効な支援を行うためには、クライアント個々の「見えにくさ」を想像、理解することが求められる。その際にはうやむやな知識は役にたたないどころか、時にはマイナスになる。職種が異なると単語の意味合いに差異があることもあり、共通の理解と用語の使い方の統一が望まれる。
  • 鈴木 理子, 小田 浩一
    セッションID: PIII-66
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     昨年の合同学会で報告した「視野が狭いとき文字サイズを大きくすると読みやすさは改善するか?」の続報である。一度に見える文字数が少ないと読み速度が下がることが知られており、網膜色素変性症など視野狭窄を伴うロービジョンの場合にも当てはまることだが、文字サイズが大きくなると読みの効率は変わるか検討する。

    【対象と方法】
     PC画面上に平易な文章(MNREAD-J)を右から左に流しながら被検者に音読させた。文章を流す速度(スクロール速度)は160、320、640、1280、2560文字/分で、一度に見える文字数(ウィンドウサイズ)は1、2、4、8文字の4通りであった。また、文字サイズは視角1度、4度、8度、16度の4種類にし、音読がどのくらい正確にできるか最大読書速度を用いて比較した。文字サイズに合わせてウィンドウサイズは変化するが、ウィンドウサイズに対する文字の割合は同じであった。被検者は視覚正常で日本語を母語とし、言語認知能力に問題のない大学生11名であった。

    【結果】
     最大読書速度について、ウィンドウサイズと文字サイズを要因とする二元配置の分散分析を行った結果、どちらの主効果もみとめられた(F(3, 30)=128.84, p<0.01; F(3, 30)=70.79, p<0.01)。交互作用はなかった(p>0.05)。ここから、文字の大きさに関わらず、一度に見える文字数が多くなると読み速度があがることがわかった。また、ウィンドウサイズが同じ条件では、小さい方の文字サイズでは読み速度に差はあまり見られず、視角8度、16度と文字サイズが大きくなるにつれて読み速度が低下することがわかった。

    【結論】
     視角8度や16度の文字サイズよりも視角1度~4度の方が読みの効率はよいが、文字サイズが大きくても一度に見える文字数を多くすることで読みの効率は改善することが示唆された。
  • 齋藤 奈緒子, 角田 亮子, 仲泊 聡, 吉川 マミ, 伊藤 裕之, 國見 ゆみ子
    セッションID: PIII-69
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的および背景】異常眼球運動などに伴う動揺視は、程度が大きくなると視力低下をきたす。しかし、視力低下をきたさない程度であっても、読字が困難であると訴える患者はまれではない。昨年、本学会で動揺視患者群と正常群でMNREAD-Jを用いて測定した読書視力(RA)、臨界文字サイズ(CPS)、最大読書速度(MRS)を比較し、RAとCPSの差が、動揺視患者群で有意に大きく、近方視力がよくても、読むサイズが小さい時に正常よりも読書速度が低下していることを報告した。しかし、CPSとRAの差だけでは、動揺視患者の訴える読書困難を説明しきれていないのではないかと考え、今回はMRS自体に注目し再度検討した。MRSは、一般に個人差が大きいため比較しにくい。しかし、動揺視の程度が状況によって変わる患者において、それらの状況間でMRSがどう変化するかを検討することで、動揺視が読書速度に与える影響を明らかにすることができると考えられる。 【方法】対象は、頭位で眼振と自覚的な動揺視の程度が異なる両側迷路障害患者A、左右眼で動揺視の程度が異なり、動揺視治療薬の内服開始5日後と3ヶ月後で動揺視の程度が異なった脳幹部出血患者Bの計2名であった。患者Aでは、安定頭位と不安定頭位でモニター画面の傾斜条件を変えてMNREAD-Jを用いて、RA、MRSをそれぞれ測定し比較した。患者Bでは、左右各眼遮蔽での測定と内服開始後の2時点で両眼での同様の測定を行なった。 【成績】いずれの患者においても、動揺視の程度が大きい場合にMRSは低下した。一方、RAは動揺視の程度が大きくても低下するとは限らなかった。 【結論】動揺視では、視力に影響を及ぼさない程度であってもMRSが遅くなるということが示された。
  • 阿部 麻里子, 昆 美保, 町田 繁樹, 藤原 貴光, 黒坂 大次郎
    セッションID: PIII-72
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】加齢黄斑変性症 (AMD) に対する光線力学療法 (PDT) 前後での固視の変化を検討した。 【方法】平成17年12月からPDTを施行したAMD29名30眼を対象とした。全例で中心窩下に活動性の脈絡膜新生血管を伴っていた。PDTの直前と術後1ヶ月に遠方視力(log MAR)を測定し、術前のlog MAR視力が1.0以上(少数視力が0.1以下)のものをA群 (n=8)、1.0未満をB群 (n=22) とした。固視検査では、PDTの直前と術後1ヶ月に微小視野計 (MP-1) を用いて約30秒間固視目標を注視してもらい、固視点の位置と安定性を求めた。固視点の安定性は、固視が固視点の2°以内にある確率で表した。 【結果】AおよびB群PDT前の視力は、それぞれ1.15 ± 0.08および0.52 ± 0.23であった。術後1ヶ月の視力はそれぞれ1.04 ± 0.32および0.52 ± 0.29で、いずれの群においても有意な改善は認められなかった。PDT前の固視点の位置は、A群で5.75 ± 2.43°、B群で2.07 ± 1.50°中心窩から離れていた。術後1ヵ月の固視点は中心窩に近づき、A群で2.75 ± 2.37°、B群で1.21 ± 1.10°中心窩から離れており、B群で有意な改善がみられた (P<0.05)。PDT前の固視の安定性は、A群で55.4 ± 32.62 %、B群で91.9 ± 18.19 %であった。術後1ヵ月では、固視の安定性はそれぞれの群で71.9 ± 29.57 %および90.0 ± 19.28 %となり、A群で改善傾向がみられた。 【結論】中心窩下の脈絡膜新生血管を伴ったAMDに対するPDT後に視力の有意な改善はなかったが、固視点が中心窩へ近づいた。固視の安定性は、術前視力が不良な症例でPDT後に改善する傾向がみられた。
ランチョンセッション II
  • 川嶋 英嗣
    セッションID: LSII-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    遮光眼鏡は短波長光を選択的にカットして透過させる特徴を持っており、グレアの軽減に 有効であるとされている。しかしその一方でその特徴のために装用すると色が区別が難しくなることがあり、色の区別を必要とする日常生活場面に影響する可能性がある。ここでは、 遮光眼鏡を装用したときに色の区別が困難になる実例を紹介する。さらに色相配列検査で ある100 hueテストの結果からどのような色相で混同が起こりやすいか、そして色相弁別の 程度が遮光眼鏡によってどのように異なるかについても明らかにする。
  • 山中 幸宏
    セッションID: LSII-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    70歳代の網脈略膜萎縮の女性は、娘さんの手にしがみつくようにして来店されたが、遮光眼鏡CCP-YGを掛けることで「曲がった腰もしゃんと伸び、大またで歩けるようになった」…。60歳代の糖尿病網膜症の女性は「度数が入っていないのに遮光眼鏡CCP400FLを掛けるととてもよく見えるようになる。度数が入っていないメガネでも良く見えるようにする山中さんは手品師か!」と喜んでいただいた。
    1997年に視覚学会で発表した聞き取り調査では、糖尿病網膜症の方で矯正視力0.6以下に低下した事例では70_%_の方が羞明を感じ、そのうち70_%_の方が自覚的に遮光眼鏡装用により見やすくなることを述べていた。
    しかし、その後のコントラスト検査装置を使った実験では、糖尿病網膜症の方は、コントラストのほぼ全域で低下する傾向があることもわかった。
    今回は各事例を紹介すると共に、臨床面では有効性が高いとされる遮光眼鏡の秘めたパワーの理由を検証したい。
  • 中村 桂子
    セッションID: LSII-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    最近、網膜色素変性症だけに限らず、さまざまな眼疾患で「まぶしさ」を伴うことがわかってきた。しかし、患者はその見えにくさを「まぶしい」と表現することは意外に難しい。本来、網膜色素変性症の暗順応を助け、まぶしさを軽減するために開発された遮光レンズも、最近は色のバリエーションも豊富になり、さまざまな眼疾患に対応できるようになってきた。しかし、臨床では検査や処方に関しての選定基準は明確ではなく、選定時の不安は否めない。実際、大阪医大では手さぐり状態で種々の眼疾患に遮光眼鏡を処方し、眼にやさしく、楽になったという声も多い。今回はその実際の処方例を検討し報告する。
指定講義 IV
  • 和田 浩一
    セッションID: LIV
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
     めざましい情報通信技術の進歩によって社会全体の情報化が進展し、今日ではインターネットを通じて広く情報のやりとりがなされるようになった。視覚障害者の情報環境も大きく変化してきた。現在では社会の情報化によって、パソコンで読み書き可能なデジタル化された文字による情報の共有が可能となり、視覚障害による読み書きの課題が、情報機器を利用することで、ある程度解決できるようになってきた。情報ネットワークを活用した電子メールによる情報交換やホームページによる情報検索及び情報発信、オンラインによる商取引やホームバンキングなど、インターネットの活用が、視覚障害者の生活の利便性やQOL向上において重要となっている。
     このように視覚障害者にとって情報機器を活用することは、視覚障害による情報アクセスの困難さを解消する手段として有効である。視覚障害のため、神媒体による光学的文字が読み書きできないという情報障害は、デジタル文字へのアクセスが可能かどうかで決まると言っても過言ではない。視覚障害者が情報の読み書きをするためには、パソコンの操作を習得することが重要であり、そのためのパソコン講習会が各地で開催されるようになっている。しかし、その地域や回数はまだまだ限られており十分ではない。また、音声ユーザに対する指導が適切に能率よくできているとはいえない現状もある。音声ユーザを指導するための専門性の向上と学習者の理解力や学習ペースに応じた指導を行うことが必要と感じている。
     そこで、本講演では、音声ユーザが、キーボード操作によりWindowsを画面読み上げソフトを利用して、能率よく操作するために必要な条件やテクニックについて、自作したパソコン学習ソフトウェアを用いた実践を通して考えてみたい。
一般口演 V
  • ーいつでも eラーニング  どこでも リモート・サポートー
    星野 史充
    セッションID: OV-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    いかに視覚障がい者のパソコン支援を「地域」で実践するか。いかに視覚障がい者のパソコン操作を定着させるか。ノウハウの提供と、実践を紹介。
    今年度より開始する新規事業「eらーにんぐ」「リモート・サポート」の紹介。
  • 小林 好彦, 岩谷 力, 河村 宏, 北村 弥生, 杉江 勝憲, 加藤 博志, 舘田 美保, 安田 晴幸, 伊達 徳昭, 池田 和久
    セッションID: OV-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】国立身体障害者リハビリテーションセンター理療教育部及び、国立函館、塩原、神戸、福岡視力障害センターの理療教育課程で学習する入所者を対象に、学習に用いる器具、技術等について調査し、その技術を組み合わせて学習を進めている成功事例(サクセスモデル)の分析を行う。
    【対象と方法】国立視力障害センター理療教育課程入所者を対象に質問紙により調査
    【結果】
    A.学習に用いる器具や技術について
    (1)点字使用者も墨字使用者も各種の視覚障害支援技術を複数組み合わせた学習スタイルを構築していた。
    (2)点字使用者は約14%、そのうち録音問題の併用無しで試験を受けることができるのは約8%、全体比率では約1.2%存在した。
    (3)教科書、教材等を読む時にDAISYを使用するものは約61%、カセットテープを使用する者は約44%存在した。
    (4)教科書、教材等を読む時にPCを使用して学習を行っている者が約40%存在した。
    B.サクセスモデルの1例(墨字も、点字も実用的に使用できない状態にある者)
    (1)授業をプレクストークポータブルレコーダ(PTR1)で録音する。
    (2)ノートはPCで整理する。(PTR1で録音した授業を聞きながらPCに入力する。 必要に応じてビクターリーダーにセットしてあるDAISY教科書を参照する。)
    (3)PCで整理したノートをスクリーンリーダーで読ませ、カセットテープレコーダーに録音する。これを携帯して何度も繰り返して聞く。
    なお、本調査は厚生労働科学研究(感覚器)の一環として実施している。
  • 平原 尚武, 園 順一, 松坂 治男, 新井 愛一郎
    セッションID: OV-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 視覚障害者を対象にした、パソコン指導方法について、電話による遠隔講座の可能性を探る 【対象と方法】 視覚障害者でパソコンに興味は持っているが、近くに教えてくれる場所がない、または、一人で出かけるのは困難な方達を対象に実証実験を行った。 IP phone など、通信コストの安価な手段を利用し、実運営でも実現性のある手段を利用した。 使用パソコンは原則として、主催者で準備したものを使用したが、パソコン保有者の場合は希望により、個人のものを使用した。 スクリーンリーダとしては95READERを、文字入力練習にはメモ帳または、ワードパッドを使用し、メーラーとして、MMメールを使用した。 今回の指導目標はメールの送受信が自由に行えるようになる事とした。 時間は、合計20回、30時間で学べることをを目標とした。 【結果】 1度に、5人に対して指導を行い、これを4回開催した。 講師は11人、そのうち視覚障害者が8人であり、視覚障害者の社会活動への参加という意味においても、意味のある講座形態であると言える。 受講生は19名であった。 始める前は、windowsの起動や終了方法も知らないものが、全員がメールの送受信ができるようになった。 また、この講座を受けたことにより、パソコンを6名が購入した。 購入はしていたが、操作方法が分からなくて困っている人も何名かいた。 【結論】 スクリーンリーダを使用することにより、受講生の操作が電話を通じて手に取るように分かる。 また、マウスカーソルのように位置が固定しない装置を使用する必要がなく、絶対位置のはっきりとしたキーボードのみの操作方法なので、 受講生の画面が見えなくても充分に指導できることが確認できた。 問題点としては、何らかの理由により、スクリーンリーダが音声を発声しなくなった時の対応方法である。 今回は実証実験と云うことで、家族、または、近くに晴眼者がおられて、いざと云う時には画面の状態を説明してもらえる事が可能な人を受講生とした。 今後のテーマとして、リモートメンテナンス方法について調査を始める。 以上
シンポジウム II
  • 安藤 伸朗, 平形 明人
    セッションID: SII-0
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    昨年の第6回ロービジョン学会(神戸)では、「疾患別ロービジョンケアpart1」として網膜色素変性・緑内障・糖尿病網膜症が対象でした。Part2の今回は、『黄斑疾患』『小児ロービジョン』『視神経・頭蓋内疾患』を取り上げてみました。各項目を、医師とコメディカルにそれぞれの立場で語って頂きます。
     『黄斑疾患』は黄斑疾患では我が国の代表的な医療機関である日大駿河台病院眼科でロービジョンケアを行っている藤田京子さんと、黄斑疾患を患い現在も治療中の関恒子さん(『豊かに老いる眼』翻訳者)が語ります。
     『小児ロービジョン』では、開業医として、診察室だけの医療ではなく、子どもの「視覚」について生活や環境、成長をトータルに考える医療を実践している富田香さんと、36年間視覚障害児の教育に携わってきた猪平眞理さんが語ります。
     『視神経・頭蓋内疾患』は、我が国の神経眼科のドンである若倉雅登さんと、身体疾患や障害を抱えて生きる人の心のケアについて探究を続けている看護師の粟生田友子さんが語ります。
     医学的なアプローチのみでなく、多方面からのロービジョンケアを考える機会にしたいと思います。ご期待下さい。
  • 藤田 京子
    セッションID: SII-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    加齢黄斑症は加齢にもとづく黄斑部異常の総称であり、早期加齢黄斑症、晩期加齢黄斑症に分類され、晩期加齢黄斑症は加齢黄斑変性として知られている。本邦の有病率は初期加齢黄斑症が13.6%、晩期加齢黄斑症は0.87%と報告されており、人口の高齢化にともない年々患者は増加している。加齢黄斑変性の症状は、「なんとなく暗くぼやけて見える」、「物がゆがんで見える」からはじまり、黄斑部の視機能が失われると「見ようとするところが見えない」状態になる。それらの症状が患者の日常生活に多大な影響をおよぼすことは想像に難くない。今回は患者が日常生活上、どのようなことに不自由を感じているのかを明らかにするために行った、眼疾患特異的QOL尺度であるthe25-item National EyeInstitute Visual Function Questionnaire日本語版を用いて調査した両眼加齢黄斑症患者のQOL評価の結果について述べる。また、加齢黄斑変性に対するロービジョンケアの方法を解説し、ケアの実際を症例を示しながら紹介する。
  • 関 恒子
    セッションID: SII-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    1)私の病歴
    2)黄斑症を診断された時の驚きとショック
     ある朝発見したほんの小さな歪みはたちまち大きな歪みとなり、私の視界を一変させたが、視界の変化は私自身の世界を変える出来事でもあった。
    3)正常でもなく、手帳を貰うほどでもない黄斑症患者の葛藤
     患者の不安や嘆きは病状の深刻さに正比例しない。もしかしたら日常生活が不自由になるかもしれない、職を失うかもしれない、その瀬戸際に立っている時こそ最も不安が大きく、医療への期待も大きい。
    4)医療関係及び患者の皆さんへ
     黄斑症患者の間でよく言われていることは何だろうか。
     回復しにくい病気であるほど患者は医療不信になりやすい。その中で医療者側と患者が良好な関係を保ちながら医療を受けるためにどんな努力が必要かを考えてみたい。
    5)終わりに
     「見たい物しか見えない」これが今の私の視力を最も端的に表す言葉である。今まで何の苦労もなく見えていた物が見えにくくなった時、それをよく見るためには常に何らかの工夫と努力が必要である。見ようという意志が働かない限り見えないのである。しかし、充分な視力があって、あらゆる物が見えていても、心に残る物はどれだけあるだろうか。どんな人も見ようとする心と心のあり方によって見えてくる物もその姿形も変わってくる。
  • 眼科開業医の立場から
    富田 香
    セッションID: SII-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
     子どものロービジョンケアに関しては、眼科でできることは限られており、発達面、学習面、心理面から専門知識を持った方々との連携が、絶対に必要です。眼科では、診断・治療の段階で早期に専門機関へ連携を取ることがとても大切だと日々感じています。  眼科医としては、ロービジョンとなった疾病の診断と治療がまず大切な役割です。しかし、診断に時間がかかることもあり、治療がない場合もあります。子ども自身の生活を考えると、むしろ最も大切な役割は、子ども本人やご家族への心理的なサポートを十分行いつつ、できるだけ正確に視機能の評価を継続して行うことだと感じています。この評価が元となって、種々の支援体制が整えられるからです。しかしこの最も大切な視機能の評価は、簡単なようでかなり難しい面があります。診察室で診るときの子ども、学校での子ども、家庭での子どもなど一人の子どもでも、全く違う表情や反応を見せることがよくありますが、ロービジョンの子どもではその差がとても大きいことがあるのです。子どもが緊張せざるをえない診察室では、子どもの一部分しかみえないことを知っていていただけたらと思います。  また重複障害の子どもでは、周囲の大人の注意が他の障害へ向いているために、視覚障害が見落とされている例がかなりあります。特にロービジョンでは一見「見えているよう」に感じられるため、眼科の精密検査を受けずにきてしまったりする例が多いようです。また重複障害の子どもの場合は、眼科側の受け入れが、十分でない場合もしばしばみられます。このような例へのきめ細かな対応の必要性についても、ご報告したいと思います。特別支援教育制度が始まり、盲学校の先生方が養護学校等へ出向いて心強い支援をしてくださるようになってきました。これからどうしていったらロービジョンケアを受けられない子どもを減らすことができるのかを皆様とご一緒に考えたいと思います。
  • 猪平 眞理
    セッションID: SII-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
     近年、視覚障害児の早期教育相談は全国の盲学校が地域の中心的な機関となり力を発揮している。そのため医療機関には視覚障害乳幼児の早期支援のために盲学校の活用をお願いしたい。  障害児の支援の場ではどの障害種別でも親の心理的支援が大切だが、視覚障害においては特に超早期に障害告知があり子どもが2歳になるまでがとても辛かったなどの声を聞くことが多い。ここに親を支えるための医療からのより良いつなぎが望まれる。  また、医療との連携は視覚障害幼児の視覚活用への情報交換に役立てたいと思っている。疾患名や治療の経過、日常の諸注意などの医学的な情報は教育の場にも必要とするものだが、幼児が教育機関において光る玩具には手を伸ばすとか、探索は手探りを主体にしているなどの生活の中で観察される目の使い方の情報も医療機関の方へ伝達できたらと思う。  以上のような観点についてその方策を検討したい。  
  • 視神経疾患のロービジョンケア
    若倉 雅登
    セッションID: SII-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    視神経疾患は小児から高齢者まで、いつ何時襲ってくるかわからず、視神経は中枢神経系である性質上、いったん罹患すれば、不可逆的障害を残す可能性が高い。しかも、視神経疾患の多くは、徐々にではなく、比較的急激に発現する。従って、必ずしも障害の理解と受け入れ時間が十分に準備されてはいない。  視神経疾患におけるロービジョンケアは、他疾患と同様、症例ごとに障害の程度や質、生活・社会環境などの条件が異なるので、あくまで個別的に対応すべきである。しかし、各症例が社会生活に戻る過程においては、共通といえる高い障壁もある。この障壁は、疾患の理解、医学的対応の限界の認識、障害の受け入れ、社会復帰という過程に、大きな影響を与えながら、どの過程においても出現してくると考えられる。 レーベル遺伝性視神経症の中学生男子と50歳台男性、両眼視神経症の20歳台女性と70歳台男性の4例の症例の臨床経過と、退院および社会復帰へのプロセスを呈示する。この中で、彼らがどのように疾患に向き合い、あるいは向き合えなかったのかを辿り、患者を取り巻く社会環境や生活環境の中で、受け入れの障壁となる、また障壁を乗り越えられる要因は何かを考える。そこには個別的部分と共通項とがあるが、共通部分としては、1)医師の誠実な診療姿勢、2)家族など周囲の理解と支援体制、3)勤務先(あるいは学校)の深い理解と対応が、非常に重要であることを述べる。
  •  脳卒中発作後に視覚障害を体験する患者の‘とまどい’と適応
    粟生田 友子
    セッションID: SII-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
     私がケアに携わる視覚障害のある人々は、脳血管疾患急性期から回復期、そして福祉施設において生活訓練の場にいる人々である。  予想もしない視覚障害を負って、生活訓練の場に至った人は、それぞれに思いは異なるが障害を受け入れることができている人々が多い。しかし、受け容れるって何だろうといつも考えさせられる。患者さんたちの体験から、「障害受容」ではない、なにかほかの意味ある患者としての経験があることに気づかされる。  脳卒中発作を体験したかなり早期にある人は、視力自体を失って生活パターンを変更せざるをえなくなる人もいるが、一方で視野のゆがみや見え方の不自由さのために「人には理解してもらえない」苦しみを悶々と体験する人々もいる。  視覚の障害状況はさまざまであっても、「見る」ことを通して生活情報を得ている人間にとって、その人にしか体験できない「自由に見えない」という体験は、どのように理解することができるのだろうか。病理を理解するだけでは「人の理解」にはとうていたどり着くことはできない。  ここにケアの大切な観点がある。「他者からの理解のありよう」は実に多様である。当事者は視覚の障害のある「自己の身体を通して体験する世界」を、「他者の目から見た障害の理解のありよう」とあわせて体験する。また、それは時間の経過の中で「障害の了解のしかた」を変えてくるようだ。 他者であるケアを提供する立場にあるものが、専門職としてまず当事者の体験を理解するためのアプローチとその人が「私の目」を了解して生きていくためのケアについて提示してみたいと思う。
ポスター発表 IV
  • 木村 仁美, 菊地 智明, 降旗 えり子
    セッションID: PIV-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    2006年4月より障害者自立支援法が施行され、視覚障害者の在宅支援サービスにも大きな変化がもたらされた。特に、利用量に応じた定率負担の導入による経済的負担は重く、法改正の大きな論点の一つでもある。
    支援法により当事者の生活がどのように変化してきているのか、あるいは影響は意外に大きくないのか、利用者だけでなく周囲の関係者の間でもその動向は非常に関心が高いものの、現状を広く調査した結果はまだ得られていない。
    本調査では、障害者自立支援法の施行に伴う定率負担が、視覚障害者の在宅支援サービスの利用にどのような影響を及ぼしているのか、その実態を把握し、今後の課題を考える。
    【対象と方法】
     以下の対象群に、アンケートを実施し、主に定率負担開始前後の利用量の変化とその原因を調査する。アンケートは質問紙法により、面接・電話・FAXやメール、郵送等で配表、回収する。
    対象群1:利用者(ホームヘルプ、ガイドヘルプサービスを利用している視覚障害者)
    対象群2:ヘルパー(視覚障害者を担当しているホームヘルパー、ガイドヘルパー)
    対象群3:事業所(視覚障害者にヘルパー派遣している事業所)
    【結果】
    抄録提出締切日現在、調査作業中であり、結果は研究発表大会において報告予定。
    【結論】
     結果と同様、研究発表大会において報告予定。
  • まいるか2号のお披露目と、新規事業体験会
    山口 里子, 藤川 かおり
    セッションID: PIV-13
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    昨年9月に新しく動き出した、ITバス「まいるか2号」を実際に見ていただけます。
    ※詳しい展示(駐車)場所は、ポスターをご覧下さい。

    また、今年度より名古屋盲人情報文化センターで開始した新規事業、 「eらーにんぐ」と「リモートサポート」をバス内で体験していただけます。
    (この2事業については別途、口頭発表をしておりますのでご参照ください)

    ITバスとは?
    マイクロバスの中に、デスクやいす、プロジェクターやスクリーンなどが装備されており、ノートパソコンとデータ通信を使って、バスの中でパソコン講習会を行うことができます。
    講師用パソコンが1台、受講生用パソコンが7台。
    バス後方にリフトがあり、車椅子ユーザー2名の受講が可能です。
    駐車するスペースさえあれば、どこでも講習会が行えるのです。
    例えば・・・

    ●遠くまでパソコン講習会を受けに行くことが大変だから、近くで視覚障害者向けの講習会がない。
    ●視覚障害者向けの講習会をしたいけど、音声ソフトなどを完備した講習会場がない。
    ●パソコンサポートボランティアをしていて、視覚障害者の方のサポートをしたいのだけど、視覚障害者向けのソフトや操作がよく分からない。
    ●点訳活動をしているのだけれど、パソコン点訳を勉強したい。
    などなど。

    電話1本で各種講習会をお届けします。
    日本財団の助成を受けて、昨年9月から出動をしているこのバス、1年間で延べ80ヶ所、300名以上の方に、講習会をお届けしております。
  • 北村 弥生, 伊藤 和之, 飯塚 尚人, 太田 浩之, 高橋 文孝, 上田 礼子, 河村 宏
    セッションID: PIV-16
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    目的:本研究では、理療教育課程において情報通信技術を履修した入所者による情報技術利用の現状と課題を明らかにし、地域で卒業生が情報技術を活用するために有効な支援方法を開発することを目的する。

    方法:国立身体障害者リハビリテーションセンター理療教育課程最終学年43人を対象として質問紙法による調査を行ない、そのうち男性36人の結果を解析した。

    結果:以下のことが明らかになった;1)在所中に入所者のパソコンおよびメールの利用率は上昇したが、さらに情報処理の学習機会を入所者は求めていること、2)パソコン設定等は、入所者の4割は友人や業者に、2割は家族に依頼していること、3)パソコン利用の有無は、年令、就労歴、パソコン使用経験には関係ないが、パソコン利用者は人を育てるのが好きであり、きょうだい関係がよいこと、4)年令要因を考慮しても既婚者は未婚者に比べ自己概念得点が高いこと。

    考察:以上の結果から以下のことが示唆された;1)理療教育課程における情報概論の授業には一定の効果はあるものの、さらなるカリキュラムの発展が期待されていること、2)卒業生が地域において訓練中に習得したIT技術を活用・向上させるためには、a) 在所中および卒業後に入所者へのIT技術に関する研修、b) ボランティア、専門職者、家族への研修、c) ボランティア、専門職者、家族への相談窓口の開設を行うことが有効であると推測されること、3)情報処理技術だけでなく自己概念を高めるカリキュラムの検討と自己概念特性が高い在所生の関連要因の探索が必要であること。平成18年度には対象者のうち本人の同意を得た24人に対し、地域における卒業後の情報技術利用の現状と課題を明らかにするための調査を行なう予定である。
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