生体組織へのレーザ照射時の組織内光強度分布を求めることは, 光化学治療や光生体計測を実施する上で必須である。これに対し, 近年モンテカルロ法をはじめとする数値計算法によりこれを求ある方法が確立されてきたが. 対象をモデル化する必要があることより. より簡便で適切な実験的手法の提案が重要となっている。本稿では, この基礎的検討として, 光化学反応性の色素を用い, これを生体組織モデルヘレーザを用いてフォトラベリングし, その量子効率を蛍光アッセイを用いて求め, 蛍光強度と照射された光強度との関係を求める方法を提案した。また, ジメラルサルフォキサイド (DMSO) が量子効率を上昇させることを示した。実験的には, アルゴンイオンレーザ (488nm, 1.7W/cm
2) を臭化ローダミン (TBR) を含んだ厚み0.2mmのコラーゲン薄膜へ照射したのち, 未反応のTBRを洗浄し, 光照射量と量子効率の関係を求めた。結果, 長時間照射によりTBRの27%はフォトラベリングされたが, 187J/cm
2照射時にフォトブリーチングされていない固定化量の最大値が認められ, これは初期濃度の11%であった。この条件での量子効率は2.3×10
-6±12×10
-6であった。コラーゲン薄膜にDMSO (25%) を加えると43%量子効率が上昇し, 3.3×10
-6となった。さらに, DMSOの濃度依存性について検討したところ, 10%DMSOで量子効率が2倍に, 25%DMSOで最大2.4倍量子効率が上昇した。以上より、TBRおよびDMSOを用いたフォトラベリングにより組織内光強度分布を求めることの可能性が示唆された。
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