日本レーザー医学会誌
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17 巻, 1 号
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  • 粟津 邦男
    1996 年 17 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    癌の光化学療法 (PDT) は主にレーザと目的の癌細胞や組織に特異的に吸収される蛍光物質を用いて行われる。適切なレーザ照射のためには, 療法の対象における蛍光物質の局所濃度を知ることが必須である。本論文では, アミノレブリン酸より細胞内でプロトポルフィリンIX (PPIX) を生台成させ蛍光物質として用い, 培養細胞に対して488nmの光源を用いたPDTを実施し、各細胞内のPPIXの初期濃度Co, 光照射量Hb、単位重壁当たりの光子吸収個数DPDTを. 124個の細胞につき蛍光顕微鏡法を用いて測定した。結果, Hbは135±56J/cm2(平均値±標準偏差) であり, Co。とDPDTは各々6 (1-15の範囲)[μg/ml]と5.2×1019(3×1018-2×1020の範囲)[photons/g cells]であった。さらに個々の細胞をPDT実施後3日間培養し. コロニー生成によりPDTの効果を確認したところ, 細胞を壊死に至らしめるDPDTは1×1018-20×1018[photons/g cells]の範囲であった。以上より本稿で提案した蛍光顕微鏡法はPPIXの濃度定量に有効であると考えられた。
  • 中之坊 学, 田部 哲也, 松永 毅, 小倉 雅実, 井上 鐵三
    1996 年 17 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    Holmuim: YAGレーザーは,YAG母材にHolmiumをドープした個体より発振されるレーザーで, その波長は2.08μmと近赤外線領域にあり, 石英ファイバーで伝送できる最長の波長を持つ。この新しいレーザーは, 組織での光吸収が大きく, 照射部周辺の熱損傷が小さいという特性を持ち, 血管形成術や尿管狭窄の治療に用いられる一方. 結石破砕や骨組織の蒸散にも用いられている。
    今回われれわれは, このHolmium: YAGレーザー照射による生体組織の影響を肉眼的ならびに病理組織学的に検討した。また, 既に広く臨床応用されているCO2およびNd: YAGレーザーと文献的に比較し, その安全性についても書及した。今後, Holmium: YAGレーザーのさらなる臨床応用が大いに期待される。
  • 粟津 邦男
    1996 年 17 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    生体組織へのレーザ照射時の組織内光強度分布を求めることは, 光化学治療や光生体計測を実施する上で必須である。これに対し, 近年モンテカルロ法をはじめとする数値計算法によりこれを求ある方法が確立されてきたが. 対象をモデル化する必要があることより. より簡便で適切な実験的手法の提案が重要となっている。本稿では, この基礎的検討として, 光化学反応性の色素を用い, これを生体組織モデルヘレーザを用いてフォトラベリングし, その量子効率を蛍光アッセイを用いて求め, 蛍光強度と照射された光強度との関係を求める方法を提案した。また, ジメラルサルフォキサイド (DMSO) が量子効率を上昇させることを示した。実験的には, アルゴンイオンレーザ (488nm, 1.7W/cm2) を臭化ローダミン (TBR) を含んだ厚み0.2mmのコラーゲン薄膜へ照射したのち, 未反応のTBRを洗浄し, 光照射量と量子効率の関係を求めた。結果, 長時間照射によりTBRの27%はフォトラベリングされたが, 187J/cm2照射時にフォトブリーチングされていない固定化量の最大値が認められ, これは初期濃度の11%であった。この条件での量子効率は2.3×10-6±12×10-6であった。コラーゲン薄膜にDMSO (25%) を加えると43%量子効率が上昇し, 3.3×10-6となった。さらに, DMSOの濃度依存性について検討したところ, 10%DMSOで量子効率が2倍に, 25%DMSOで最大2.4倍量子効率が上昇した。以上より、TBRおよびDMSOを用いたフォトラベリングにより組織内光強度分布を求めることの可能性が示唆された。
  • 尾花 明, 郷渡 有子, 松本 宗明, 三木 徳彦
    1996 年 17 巻 1 号 p. 31-43
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    ポルフィマーナトリウムによる光化学治療が角膜新生血管の閉塞に有効かどうかを実験的に検討した。白色家兎眼にペレット包埋法で角膜新生血管を作成後, ポルフィマーナトリウム2mg/kg体重を静注し, 24, 48, 72時間後にアルゴン緑レーザー (514nm) を3種類の強度で照射した。新生血管閉塞の有無を細隙灯顕微鏡と螢光造影検査, 光学顕微鏡標本で観察した。照射強度38.2J/cm2以上では新生血管は閉塞するものの, 照射野内の虹彩等の新生血管周囲の組織も強く障害された。今回検討した条件では19.1J/cm2の照射を静注後24~72時間の間に行うのが,周囲の正常組織障害を軽度に抑えて新生血管を閉塞できる治療条件であることが判明した。光感受性物質非投与下でレーザーを照射した対照実験では, 新生血管閉塞や虹彩の障害を認めなかったので, 治療眼の血管閉塞が熱作用によるとは考えられない。本光感受性物質を使用した光化学治療は眼科領域の新生血管閉塞の新しい方法として期待できる。
  • 阪田 功, 中島 進, 竹村 健
    1996 年 17 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    光毒性のない腫瘍蛍光診断剤の戦略的合成法について述べる。種々の腫瘍蛍光診断剤を合成し, 光毒性, 生体内分布, 蛍光収率を検討した結果, 異分子二量体のMn錯体一無錯体ポルフィリン誘導体であるHAT-DOIが有望であると思われた。
  • 中島 進, 阪田 功, 竹村 健
    1996 年 17 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    腫瘍組織果積性Mn金属ポルフィリンの側鎖基に金属キレート剤であるDTPAを結合させたポルフィリン腫瘍シンチグラム剤111In-,99mTc-ATN-10およびその改良型である99mTc-STA-R12が合成された。Lewis肺癌, colon26大腸癌, SHR乳癌などの動物移植癌モデルを用いて, 新たに開発されたこれらポルフィリンシンチ剤の腫瘍診断能が検討された。ポルフィリンシンチグラム剤は各種の動物移植癌において多種類の腫瘍を明瞭に描出し, 広範囲な腫瘍診断剤として使用出来る事が明らかになった。
  • 古川 欣也, 奥仲 哲弥, 渋谷 洋, 松沢 栄治, 池田 徳彦, 小中 千守, 加藤 治文
    1996 年 17 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    中心型Occult肺癌の内視鏡的画像診断を目的とし、新規光感受性物質であるNpe6 (ME2906) を用いたRed/Green ratio蛍光癌診断装置を開発した。405nmのエキシマ・ダイ・レーザーを励起光源とし, 癌病巣から発生するNe6特有の670nmの赤色蛍光 (Red) と530-570nmの緑色自家蛍光 (Green) を検出した。コンピューター処理により, Red/Green ratioを計算し内視鏡画像上に表示した。Colon26移植マウス, および臨床症例でも腫瘍に一致した蛍光画像が得られた。
  • 林 潤一, 会沢 勝夫
    1996 年 17 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    癌関連領域で発展してきた光力学的診断・治療は近年, 第2世代の光感受性物質の開発, 小型・軽量で操作性・移動性に優れた波長可変の半導体レーザー機器の実用化, 高感度ビデオ録画装置の導入, などの科学技術の急速な進展を背景に, その適応範囲を循環器領域に広げ, 数々の新知見が報告されてきている。本稿では粥状動脈硬化巣のPhotodynamic Diagyosis (PDD) について. これまで我々の得た成績を中心に解説する。
  • 奥仲 哲弥, 古川 欣也, 酒井 治正, 山本 豊, 渋谷 洋, 岡田 真也, 臼田 実男, 熊坂 英雄, Katsuo AIZAWA, 小 ...
    1996 年 17 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    近年, 蛍光画像診断が肺癌診断に用いられている。特にハイリスクグループにおいては, オカルトキャンサーの局在診断の有力な方法の一つとして注目されている。我々の施設では肺癌の早期診断にPhotofrin®とエキシマダイレーザー蛍光画像解析装置を臨床応用している。このシステムでは, Photofrin®特有の蛍光スペクトルと内視鏡イメージ画像が同時にモニター上に表示される。本装置を用いて, 8例の上皮内癌, 2例の声帯癌を含む23例の肺癌の蛍光画像診断を行った。1例を除いたすべての症例において蛍光を観察できたが, 一方23例中10例に疑陽性を認めた。レーザービームの拡張. 蛍光の平均化などの諸問題を解決する必要はあるが1本装置による癌の早期診断の可能性が示唆された。
  • 古谷 鉄夫, 池田 徳彦, 岡田 真也, 芝沼 弘行, 古川 欣也, 奥中 哲弥, 會沢 勝夫, 小中 千守, 加藤 治文
    1996 年 17 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    蛍光気管支鏡の原理に関する基礎実験として. 正常気管支と腫瘍を励起光で励起した際の自家蛍光波長を測定した。結果は以下の通りであった。(1) 蛍光顕微鏡で観察すると, 正常気管支では粘膜下層の自家蛍光が叢も強かった。腫瘍部では自家蛍光は減弱していた。(2) 正常気管支と腫瘍部との比較では腫瘍部に自家蛍光が金く認められなかったのに対し, 正常気管支では500~51Gnm, 530~540nm, 610~630nmの3つのピークが認められた。(3) 自家蛍光の本質としては細胞外基質と内因性蛍光物質 (FAD) の関与が示唆された。
  • 金 慶一, 池田 徳彦, 奥仲 哲弥, 古川 欣也, 小中 千守, 加藤 治文
    1996 年 17 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 1996年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
    気蕾支の正常部位と異常部位では自家蛍光に差があるという現象を基本原理とした蛍光内視鏡を用いて病変部位の早期発見を試みた。今回の臨床成績では扁平上皮化生に対するsensitibityの向上を認めた。また, 病巣の浸濶範囲の冏定には白色光より蛍光の方が優っていた。
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