日本レーザー医学会誌
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30 巻, 4 号
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原著
  • 福原 秀雄, 井上 啓史, 濱口 卓也, 久野 貴平, 大河内 寿夫, 深田 聡, 辛島 尚, 鎌田 雅行, 執印 太郎, 阪倉 直樹, 笠 ...
    2009 年 30 巻 4 号 p. 387-393
    発行日: 2010/01/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    <目的>膀胱癌に対する5-アミノレブリン酸(5-ALA)膀胱内注入による光線力学的診断(PDD)の検討.
    <対象と方法>対象は膀胱癌115症例.まず5-ALA溶液で膀胱内暴露し,続いて白色光源及び蛍光光源を用いて膀胱内を観察した.本診断の精度は,青色光にて赤色励起を認めた部位及び従来の白色光にて異常所見を認めた部位を採取し,蛍光励起の視覚的強度とその部位の病理組織診断との対比でROC曲線下面積(AUC)で評価し従来の白色光源下診断とを比較検討した.
    <結果>全807検体において,本診断の的中精度66.6%,感度94.5%,特異度60.6%であった.全症例(p=0.002),隆起性病変(p=0.001),非隆起性病変(p<0.001),非乳頭状病変(p<0.001),初発症例(p=0.003)において本診断のAUCが従来の白色光源下診断のAUCを有意に上回った.副作用は軽度の膀胱刺激症状を認めたのみで,重篤な全身性副作用は認めなかった.
    <結論>膀胱癌において5-ALA膀胱内注入によるPDDは有用かつ安全であり,標準的検出法の1つとなりうると考えた.
  • 中村 教泰, 石村 和敬
    2009 年 30 巻 4 号 p. 394-398
    発行日: 2010/01/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    光線力学的治療に用いる光感受性物質をナノサイズのキャリアーに取り込ませナノ粒子化することにより様々な有用性が得られると考えられている.新規なナノ粒子である有機シリカナノ粒子を作製し,従来型シリカ粒子と比較すると共に光線力学的治療への応用を検討した.有機シリカナノ粒子は一段階の反応にて作製でき,サイズ制御,分散性も良好であった.粒子は作製した時点で表面ならび内部にチオール基などの官能基を有しており,内部機能化としてローダミンなどの蛍光色素が効率良く粒子内に取り込まれ蛍光有機シリカナノ粒子の作製も可能であった.表面機能化として粒子表面に抗体,アビジンなどのバイオ分子の吸着や化学修飾剤を用いた結合が容易であり,粒子の多機能化において高い発展性が認められた.また蛍光有機ナノシリカ粒子をマウスへ経静脈投与または腹腔内投与を行なったが明らかな毒性は認められなかった.さらに光感受性物質を含有した有機シリカナノ粒子を取り込んだ培養細胞に励起光を照射することにより細胞の形態変化が確認でき,ナノ粒子による細胞障害活性を示唆する所見が得られた.
  • 藤本 清秀, 松村 善昭, 三宅 牧人, 千原 良友, 近藤 秀明, 穴井 智, 井上 剛志, 平尾 佳彦
    2009 年 30 巻 4 号 p. 399-404
    発行日: 2010/01/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    筋層非浸潤性膀胱癌(non-muscle invasive bladder cancer: NMIBC)のtransurethral resection of bladder tumor(TURBT)術後に高率に見られる膀胱内再発は,切除断端の残存腫瘍や従来の膀胱鏡では確認が困難な微小病変やcarcinoma in situ(CIS)などの平坦病変が一因となっている.また,low-grade NMIBCでは細胞診陽性率の低さが,膀胱癌の検出や経過観察において問題となっている.当施設における,NMIBCに対する5-aminolevulinic acid (5-ALA)を用いた蛍光膀胱鏡および蛍光細胞診による光力学的診断の臨床成績を報告する.臨床的に膀胱腫瘍と診断した患者34例に対して5-aminolevulinic acid(5-ALA)による蛍光膀胱鏡下TURBTの病理診断成績について検討した.29例が尿路上皮癌で,5 例は非尿路上皮癌組織(乳頭腫,扁平上皮仮生,過形成,炎症性肉芽)であった.尿路上皮癌29例から採取した223検体の解析では,蛍光膀胱鏡による尿路上皮癌の検出感度は96%,特異度は73%であった.白色光の膀胱鏡では確認できなかった随伴CIS(4検体)や異形成(8検体)が蛍光膀胱鏡で検出され,5-ALAに関連する膀胱刺激症状(grade1)を1例に認めた.また,尿路上皮癌患者20例において,尿中剥離した悪性細胞の蛍光細胞診およびフローサイトメトリーによる診断を行ったが,low-gradeあるいはlow-stageNMIBCにおける陽性率は従来型の尿細胞診より高かった.蛍光膀胱鏡下TURBTは安全性および信頼性の高いNMIBCの手術治療である.また,尿中に剥離した悪性細胞検出のための蛍光細胞診やフローサイトメトリーは,光力学的反応を利用したNMIBCの新たな診断システムとして有望であることが示唆された.
  • 酒井 真理, 櫛引 俊宏, 粟津 邦男
    2009 年 30 巻 4 号 p. 405-414
    発行日: 2010/01/30
    公開日: 2010/11/09
    ジャーナル フリー
    光線力学療法(Photodynamic Therapy, PDT)とは,腫瘍に特異な集積性を持つ光感受性物質を投与し,その薬剤を励起させる特定波長のレーザーを局部照射することで行う治療法である.表在性の癌に対して特に高い治療効果があり,副作用としては一時的な光過敏症の起こることがあるが,適切な治療を行えば大きな副作用は少ない.しかしながらPDTを行うと組織局所的に低酸素状態になり,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor,VEGF)の産生・分泌が起こり,血管形成や細胞増殖の原因となることがある.そのためPDT後の長期生存率を高めるために,PDTに対する腫瘍細胞の反応を理解することが重要である.腫瘍は一つの新生細胞から増殖しているにもかかわらず,その腫瘍組織を構成する細胞は形態的に不均一であることが知られている.本研究では1つの細胞株において形態が異なる腫瘍細胞を分類し光感受性物質(タラポルフィンナトリウム)の取込み量やPDT感受性に違いが生じることを確認した.本実験にはヒト食道癌由来細胞株KYSE70を形態的に5種類に分類した.そのうちの3グループは広がりやすく単相状のコロニーを形成し,残りの2グループは層状のコロニーを形成した.いくつかのグループは他のグループに比べタラポルフィンナトリウムの取込み量が少ないにもかかわらず,PDT感受性が高くなった.この結果から一つの細胞株内に存在する腫瘍細胞が形態的に異なり,タラポルフィンナトリウムの取込み量と無関係にPDT感受性が異なる細胞が存在することが分かった.PDTが腫瘍に対して有効な治療法となるために,形態的に不均一な腫瘍組織に対するPDTの確立が必要である.
特集「新しい顕微鏡技術を用いたレーザー医療」
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