日本レーザー医学会誌
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31 巻, 2 号
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受賞論文
  • 田中 誠児, 余川 陽子, 藤本 雅史, 岸 慶太, 岸 陽子
    2010 年 31 巻 2 号 p. 110-114
    発行日: 2010/07/30
    公開日: 2010/11/14
    ジャーナル フリー
    われわれは,苺状血管腫に対してダイレーザー照射を第1選択として早期治療を行ってきた.今回,治療開始時の年齢が1 歳未満,1 歳以上2 歳未満,2 歳以上の3 群を局面型,腫瘤型に分け、治療効果を比較検討した結果,全ての群で縮緬じわが消失し,1 歳未満の群では腫瘤型でも平坦化する傾向がみられた.瘢痕形成等の合併症はなく,未治療群と比較して明らかに良好な成績を得た。また、低出生体重児では苺状血管腫が多く見られるが、今回7 症例で早期治療を行い,腫瘤型では隆起の改善を認め,治療に対する良好な結果を得た.
  • 本多 典広, 寺田 隆哉, 南條 卓也, 石井 克典, 粟津 邦男
    2010 年 31 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2010/07/30
    公開日: 2010/11/14
    ジャーナル フリー
    光線力学療法(PDT)の治療計画において,生体組織内の光の侵達度や照射線量分布を定量的に把握することは,治療成績を向上させるために重要である.生体組織内の光の侵達度は,生体組織の光学特性である吸収係数 [mm-1],換算散乱係数 [mm-1]等により理解できる.一般的に,レーザー照射により生体組織の光学特性は変化する.そこで,我々は,PDT前後の腫瘍組織の光学特性を算出することを目的として基礎的検討を行った.Talaporfin Sodiumを用いたPDTをマウス皮下腫瘍モデルに対して行い,双積分球光学系とInverse Monte Carlo法を用いて波長350~1000nmにおける腫瘍組織の光学特性を算出した.
    PDT実施7日後,Talaporfin Sodiumの吸収極大波長664nmにおいて,換算散乱係数はPDT前に比べて0.64mm-1から1.24mm-1に増加し,結果,腫瘍組織への光の侵達度はPDT前に比べおよそ44%減少することが見積もられた.以上より,追加のレーザー照射によるPDTの際,PDT後の光の侵達度の減少を考慮し,レーザー照射条件を調整することが必要であることが示唆された.
  • 宮崎 幸造, 守本 祐司, 熊谷 康顕, 福島 重人, 堀江 壮太, 村岡 未帆, 胡 尉之, 中楯 健一, 金田 恵司, 前川 康弘, 四 ...
    2010 年 31 巻 2 号 p. 122-130
    発行日: 2010/07/30
    公開日: 2010/11/14
    ジャーナル フリー
    光線力学的療法(Photodynamic Therapy : PDT)は,早期がんに対する有効な治療法として認められているが,膀胱がんには未だ臨床適用されていない.膀胱がんは,多発的・広基的に発生・増殖する性質を持っているため,PDTに際しては膀胱内壁全体に光を均質に照射することで,とりこぼしなく一期的な治療をおこなえる可能性が高い.そこで本研究では,膀胱内壁全体に均質照射可能な光照射用プローブ(Homogenous Irradiation Fiber Probe : HIFiP)を開発し,その効果検証を行った.ラット膀胱がんモデルを用いた実験では,HIFiP使用によって膀胱内を広範囲にわたって光照射することが可能となり,抗腫瘍効果は,コントロールファイバー(Flat cleaved end)を用いたPDTに比し約2倍増強した.本システムと,腫瘍選択集積性を示す光増感剤を用いることで,膀胱がんに対する効果的なPDTが期待できる.
原著
  • 白崎 英明, 金泉 悦子, 氷見 徹夫
    2010 年 31 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 2010/07/30
    公開日: 2010/11/14
    ジャーナル フリー
    目的:下鼻甲介レーザー手術はアレルギー性鼻炎の鼻閉に有効であることが多数報告されている.上皮の再生のために治療効果は永続的でない場合が多い.レーザー手術例における免疫療法の併用効果を検討するために後ろ向き研究を行った.
    対象:1999年4月から2009年3月の間に当科で下鼻甲介炭酸ガスレーザー手術を行った通年性鼻アレルギー症例96例のうち,1年以上経過観察できた症例を対象とした.レーザー手術単独は43症例,減感作療法の併用を行ったのは25症例であった.治療効果について経時的に評価した.
    結果:レーザー手術3ヶ月後の鼻閉に対する有効性は減感作療法例では84.0%,非施行例では79.1%であった.3回以上のレーザー手術を行った割合は減感作法施行例で1例(4%)であったのに対し,減感作を併用していない群では21例(48.8%)であった.
    考察:通年性鼻アレルギー症例におけるレーザー照射に対する免疫療法の併用は,短期的な治療成績にはほとんど影響を与えない.しなしながら,鼻閉症状の再燃を予防するには免疫療法の併用が勧められる.
特集「椎間板ヘルニアに対するレーザー治療」
  • 岩月 幸一
    2010 年 31 巻 2 号 p. 135
    発行日: 2010/07/30
    公開日: 2010/11/14
    ジャーナル フリー
  • 岩月 幸一, 吉峰 俊樹, 梅垣 昌士, 芳村 憲泰, 石原 正浩, 大西 諭一郎, 森 康輔
    2010 年 31 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 2010/07/30
    公開日: 2010/11/14
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニアのレーザー治療は,海外ではレーザー照射による神経根への減圧が直接観察できないこと等から,現在内視鏡下手術における椎間板蒸散や止血に用いられている.一方我が国では,低侵襲治療法の一つとして1980年代から現在まで民間病院を中心に多くの症例に行われている.無効例に対する本法への関連学会からの強い批判が見られる一方,その診療実態そのものが明らかではない.今回アンケート形式による全国調査を実施した.およそ80%は民間2施設で施行されており,典型的腰椎椎間板ヘルニアの症状である神経根症状を有する症例のみならず,腰痛にも適応されている.根症状と椎間板性腰痛はその病態が異なり,本法の適応症とレーザー照射法等にはいまだ充分議論されているとは言い難い.
  • 大西 諭一郎, 岩月 幸一, 吉峰 俊樹, 梅垣 昌士, 芳村 憲泰, 石原 正浩, 森 康輔
    2010 年 31 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2010/07/30
    公開日: 2010/11/14
    ジャーナル フリー
    椎間板性腰痛は,椎間板の変性や外側線維輪の破綻が椎間板の難治性の炎症,マトリックスのダメージを招き,線維輪の侵害受容器の感受性を増加させることによって生じると考えられている.補助的診断法も確立されておらず,その診断と治療はいまだ難しいとされている.椎間板に対するレーザー照射は,もっぱら椎間板ヘルニアに対して行われているが,椎間板ヘルニアという疾患概念に椎間板性腰痛も含まれて解釈されることもあり,混乱の一因となっている.本来病態の異なる椎間板ヘルニアと椎間板性腰痛を分けて評価することは治療法を検討する際重要であり,我が国の椎間板レーザー治療ではこの混乱がレーザー治療に対する信頼を向上させない一因ともなっているのではないかと推察される.本研究では,椎間板性腰痛に対するレーザー照射の効果につき検討した.対象は,31~71才(平均51.4才)の11名.症状と椎間板ブロックに基づいて診断し,また罹患椎間板を決定した.波長805nmの半導体レーザーを用いて,罹患椎間板に経皮的にレーザー照射を施行した(610-960J,平均740±2.51J).術後2年にわたりOswestry Disability Index(ODI)とVisual Analog Pain Index(VAPI)で評価した.ODIは術前50.3±9.4.術後1日,3,6,12,18,24カ月でそれぞれ18.6±11.2,13.6±4.5,12.5±5.5,11.8±5.3,10.5±2.3,10.5±2.3 であった.VAPIは平均7.6±1.2であった. 術後1日,3,6,12,18,24ヶ月のVAPIスコアはそれぞれ,3.1±2.4,2.4±0.9,2.7±1.2,2.1±0.7,2.1±0.8,2.1±0.9であった.術後2年にわたり,統計学的有意差を持って改善を認めた.椎間板ヘルニアに対するレーザー照射の効果は椎間板内圧の減少に依拠すると考えられているが,椎間板性腰痛の発症原因は椎間板の炎症や侵害受容器の発達であることから,その効果発現機序はレーザーによる起炎物質の減少や侵害受容器への遮断効果が考えられる.
  • 佐藤 正人, 石原 美弥, 荒井 恒憲, 菊地 眞, 持田 讓治
    2010 年 31 巻 2 号 p. 146-151
    発行日: 2010/07/30
    公開日: 2010/11/14
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はレーザー照射後の椎間板細胞の影響を3次元培養法を用いて明らかにし,同時にHo: YAGレーザーのPLDDにおいて光音響効果,光熱効果の関与を確認することである.椎間板細胞の反応を細胞代謝の点から,これらの影響を同定するため,日本白色家兎30羽を用いて,椎間板細胞の3次元培養を行った.Ho: YAGは石英ガラスファイバーへ導光し,PVdFトランスデユ-サ-と音響アブソーバーから応力波を検出した.同時にサーモグラフィーによりレーザー照射による光熱効果を同定した.この計測システムを使って,光音響効果を同定したところLDH放出率,プロテオグリカン合成との関係に何れも線形相関が得られ,光音響効果が細胞に与える影響を捉えることが可能であった.一方,光熱効果は,サーモグラフィー上は温度上昇を認め細胞への影響が示唆されるが,線形の相関関係は認めなかった.本計測システムは,レーザーと椎間板細胞との相互作用を細胞代謝と物理的因子-照射による光熱,光音響両者の効果-の観点から計測評価でき,レーザー照射条件の最適化に有用である.
  • 石井 克典, 伊東 信久, 井上 惇, 本多 典広, 寺田 隆哉, 粟津 邦男
    2010 年 31 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2010/07/30
    公開日: 2010/11/14
    ジャーナル フリー
    経皮的レーザー椎間板減圧術(percutaneous laser disk decompression; PLDD)の最適波長を考察することを目的として,双積分球光学系と逆モンテカルロ法を組み合わせた光学特性算出システムを用い,ヒト椎間板ヘルニア病変組織の可視・近赤外域の吸収係数スペクトルおよび換算散乱係数スペクトルの決定を行った.正常髄核組織と比較して,椎間板ヘルニア髄核組織の換算散乱係数は,短波長に向かうにつれて大きいことが分かった.得られた光学特性値から光侵達深さを見積もりPLDDの最適波長を考察した結果,現在のNd: YAGレーザーに代表される近赤外波長に比べて,可視短波長のほうが安全にPLDDを行うことができると考えられた.
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