日本レーザー医学会誌
Online ISSN : 1881-1639
Print ISSN : 0288-6200
ISSN-L : 0288-6200
31 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
一般
  • 竹村 香央里, 村山 秀之, 福崎 由美, 洪 鳳玉, 貞包 慧, 三木 恵美子, 山之端 万里, 木暮 信一
    2010 年 31 巻 4 号 p. 382-389
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    低出力レーザー照射(Low-power laser irradiation: LLI)は細胞増殖を含め,様々な生物学的過程に影響を及ぼすことが報告されている.われわれは808 nm・60 mWのLLIがヒト由来脳腫瘍細胞(glioblastoma A-172)の細胞増殖を抑制することを報告した.そこで,その効果に用いるレーザーの波長による違いがあるのかどうかを明らかにする目的で,同一の実験系において異なる波長の405 nm LLIを用いて,A-172への照射効果を検討した.細胞の継代培養には一般的な培養法を用いて,35 mm ペトリ皿に1.2×104 cells/mlの細胞濃度で, また96 ウェル・プレートに0.3×104 cells/mlで均一に播き,一晩培養した.405 nmの半導体レーザー発生装置(27 mW)を用いて,その出力をペトリ皿の中央部または各ウェルへ誘導した(照射面積:7.07 mm2).非照射群と照射群(20, 40, 60分連続照射)に分け, 培養開始時,照射直後,24時間後,48時間後の細胞増殖を位相差顕微鏡で観察しながらデジタルカメラで撮影し,細胞計数を行った.またMTT法を用いて,照射後48時間後の生細胞数を吸光光度法により測定した.定点撮影法によるすべての計数結果から,非照射群と比較して,照射群は3群とも細胞増殖率の有意な低下を示し(p<0.01),増殖率が1.0倍以下の群が多かった.その効果は照射時間が長いほど強い傾向を示した.MTT法による検討でも,非照射群と比較してすべての照射群が細胞増殖の有意な低下を示した(p<0.05).さらに細胞形態の観察および細胞死の染色結果から,形態変化とともに細胞死が促進していることが認められた.したがって, A-172の細胞増殖に対して808 nm LLI同様405 nm LLIも抑制効果をもたらすが,405 nm LLIの方がより低下させるという特徴があると結論された.808 nm LLIでは顕著な形態変化や細胞死は認められなかったことから,808 nm LLIは細胞周期を遅延させる効果,405 nm LLIは細胞死を促進させる効果があるのではないかと示唆された.
  • 中野 人志, 玉井 紀光, 塚本 雅裕, 阿部 信行
    2010 年 31 巻 4 号 p. 390-393
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    フェムト秒レーザーの高いピーク強度は,多光子吸収と呼ばれる非線形現象を引き起こし,光化学的な損傷の考慮等,生体への適用においては一定の注意が必要である.本研究では,タンパク質の構成要素であるアミノ酸に着目し,フェムト秒レーザー照射の際に生じる紫外吸収スペクトルの変化について調べた.試料としては,必須アミノ酸であるヒスチジンを用いた.フェムト秒レーザー照射によって,波長270 nm付近を中心とする吸収帯の増加が生じた.吸収増加の割合は,単発のレーザーピーク強度によって変化した.吸収の増加は2光子吸収が支配的なプロセスによって生じたものと示唆される.
  • 久布白 兼行, 田岡 英樹, 山本 泰弘, 櫻井 信行
    2010 年 31 巻 4 号 p. 394-399
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    子宮頸がんの多くは扁平上皮癌であるが,近年わが国では腺癌の占める割合が増加している.子宮頸部扁平上皮病変に関して,異形成や0期からIa期の初期癌の子宮温存治療についてほぼコンセンサスが得られている.すなわち異形成に対してはレーザーによる蒸散術などが,また0期やIa1期に対しては,子宮頸部円錐切除術による子宮温存治療が可能である.子宮頸部円錐切除術ではcold knife,レーザー,高周波電流,超音波メス,LEEP(loop electrosurgical excision procedure)などが用いられる.これらのうち,高周波レーザーを用いた円錐切除術では0期に対してはほぼ100%の治癒率の成績が報告されている.また微小浸潤扁平上皮癌Ia1期については,円錐切除術における切除断端が陰性で脈管侵襲がなければ子宮温存が可能である.
    一方,腺がんの場合,0期やIa期であっても扁平上皮病変と同じ取り扱いはし難い.まず初期腺がんについては,扁平上皮病変に比べコルポスコピー下の狙い組織診による正確な病理組織診断,つまりがんの間質浸潤の有無などの評価が困難である場合が多い.したがって0期,微小浸潤腺がんの診断は円錐切除術の摘出検体でなされることが多い.『子宮頸癌治療ガイドライン(2007年版)日本婦人科腫瘍学会/編』においては,腺癌0期の治療について円錐切除術の切除断端が陰性の場合,円錐切除術を最終治療として選択する場合もあるが,単純子宮全摘術が推奨されている.その根拠は腺上皮病変ではskip lesionがあり,0期腺癌で円錐切除術の断端陰性であっても約20%に残存子宮側に病変遺残があり得るからである.また微小浸潤腺癌Ia期に関しては浸潤の深さによって治療の個別化が考慮される.浸潤が深い場合は,骨盤リンパ節郭清を含めた準広汎子宮全摘術あるいは広汎子宮全摘術,また浸潤が浅い場合,骨盤リンパ節郭清を省略した子宮全摘術が選択される場合がある.さらに妊孕性温存を希望する症例では円錐切除術を考慮する場合もある.
  • 松山 豪泰
    2010 年 31 巻 4 号 p. 400-405
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    Photodynamic diagnosis (PDD)は泌尿器科領域では膀胱上皮内癌などの平坦病変を中心とした新しい診断法として発展してきた.筋層非浸潤性膀胱癌においてはメタアナリシス解析により,診断率の向上とそれに伴う残存腫瘍の減少による非再発率の向上が明らかとなった.これは,従来指摘されていた(腫瘍見落としによる)再発率の施設間格差を減少させ,膀胱がん治療の均てん化に寄与することが期待される.また他の泌尿器科腫瘍においても5-ALA経口投与による腎細胞がんや前立腺癌における術中外科的断端陽性の判定などに利用されるようになってきた.本総説では最近の筋層非浸潤性膀胱癌に対するPDDを用いた診断とPDD補助下経尿道的膀胱腫瘍切除術の治療成績について論文を紹介するとともに膀胱癌以外の泌尿器科腫瘍へのPDD応用の実例を紹介する.
特集「医療用光ファイバー,周辺装置およびその応用技術」
  • 松浦 祐司
    2010 年 31 巻 4 号 p. 406
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
  • 松浦 祐司
    2010 年 31 巻 4 号 p. 407-412
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    レーザー手術や光診断,光イメージングなどの医療応用に用いられる各種の光ファイバーについて,その伝送原理,構成材料やファイバーの構造などについて概説している.最も一般的な石英ガラス光ファイバーをはじめ,赤外光を伝送するための特殊材料を用いた光ファイバーや,通常の光ファイバーとは伝送原理が異なる中空光ファイバーについても,その特徴や伝送特性を紹介している.
  • 佐藤 学
    2010 年 31 巻 4 号 p. 413-419
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    OCTの高速化・高感度化と光プローブ(OP)の小型・高速化により,三次元(3D)断層画像測定を始め内視鏡型光コヒーレンストモグラフィー(E-OCT)が大きく進展した.前方イメージングが可能な低電圧駆動型MEMS OPは直径2.8 mm,長さ12 mmで,偏光感受型SD-OCTをベースに空間分解能25μmが実現され,さらにヒト声帯のin vivo 3D断層画像(1.2 × 10 × 1.4 mm)を15-20sで測定し,ガン組織が識別されている.
  • 佐藤 英俊, 小杉 浩司, Retno Hariyani, 山本 裕子, Bibin. B. Andriana, 小町 裕一, 金井 源一
    2010 年 31 巻 4 号 p. 420-427
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    臨床で実用的に利用できる分光診断技術,すなわち光バイオプシー技術を実現する為には,光ファイバーを利用したin situ計測が実現できる必要がある.現在の分光計測技術の中で,光ファイバー計測への応用が可能で,かつ高い分析能力を持つものがラマン分光分析技術である.しかし,ラマン分光分析技術はイメージ計測への応用が困難であり,病理検査などの形態観測がゴールドスタンダードである臨床医学において有効な技術とするためには,自家蛍光ハイパースペクトルイメージなどの新しい技術との併用が必要である.本稿ではラマン分光分析を基礎とした光バイオプシー技術の展望を議論する.
  • 芳賀 洋一, 松永 忠雄, 江刺 正喜
    2010 年 31 巻 4 号 p. 428-434
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    微細加工技術と光ファイバーなどの光学技術を組み合わせた新しい低侵襲医療機器開発について,役立つと思われる要素技術と装置開発について我々の開発例を中心に述べる.光ファイバー端面への微細加工とポリマー成膜によるセンサ化,およびダイヤフラムなど微小機械要素搭載のほか,光ファイバー先端周囲への圧電駆動の可動ミラー及び電磁コイル形成によるレーザー治療ツールや細径内視鏡の開発について述べる.微細加工技術と光ファイバー技術の組み合わせにより低侵襲医療の可能性を広げることができると期待される.
  • 寺川 進, 櫻井 孝司, 井上 卓
    2010 年 31 巻 4 号 p. 435-439
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/04/27
    ジャーナル フリー
    脳や肝臓などの臓器の奥深くで活動する細胞の生理学的な反応や,がん細胞の転移や炎症のような病理的な反応を,生きた動物個体において,分子のレベルで捉えることが,これまでわからなかった生命や難病の理解を飛躍させる.このことを実現するために,細いイメージング・ファイバー・バンドルを組織内に注射針のように刺入して,蛍光画像を得る方法(ファイバー結合式共焦点顕微鏡)を開発した.深さは10 cm程度,観察視野の広さは500μm幅が得られる.このような装置の性能は,標準的な共焦点顕微鏡に比べて,未解決の課題を多く含んでいるが,いずれの課題もまだ限界に達しているわけではなく,常に解決の糸口があり,性能の向上が進展している.時間的・空間的分解能,光学的切断能など,光学顕微鏡としての基本的な能力について解説し,それらの次なる改善について検討を加えた.
feedback
Top