日本レーザー医学会誌
Online ISSN : 1881-1639
Print ISSN : 0288-6200
ISSN-L : 0288-6200
34 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
一般
  • 王丸 陽光, 王丸 光一, 大山 美奈, 清川 兼輔, 詠田 由美
    2014 年 34 巻 4 号 p. 367-371
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    加齢による卵巣の予備能低下が主な原因とされている難治性不妊症では,高度な生殖補助医療技術(Assisted Reproductive Technology:ART)に加えて補助的治療が必要となる.そこで我々は,血流改善効果を有する低反応レベルレーザー治療(Low reactive Level Laser Therapy:LLLT)に注目した.難治性不妊症患者337 例に対してLLLT を行い,妊娠した症例は110 例(妊娠率:32.6%)であった.漢方療法やメラトニン内服療法などの従来の補助的治療とほぼ同等の治療成績が得られ,LLLT も補助的治療の有効な手段に成り得ると考えられる.今後は従来の補助的治療と組み合わせることで,更なるART の治療成績の向上が期待される.
  • 野添 紗希, 本多 典広, 石井 克典, 粟津 邦男
    2014 年 34 巻 4 号 p. 372-381
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術が2011年に保険適用された.その治療件数が急増したが,術後の疼痛や皮下出血が問題であり,より安全かつ有効な照射方式を定量的に求める必要がある.本研究の目的は非臨床実験により至適照射条件を検討することである.独自に構築した非臨床実験照射系を用い,波長,照射パワー,照射時間やファイバーの形状の違いによる照射効果を網羅的に検討し,算出した静脈組織の光学特性値,組織学的評価から,安全性・有効性を評価した.結果,波長1470 nm における静脈組織の吸収係数は波長980 nm より7倍大きく,波長1470 nm の方が効率よく組織に吸収されると考えられた.照射実験の結果,波長1470 nm 半導体レーザーと2リングファイバーを用いた際,組織の穿孔なく,高い収縮率が得られ,血管の内膜から外膜まで,組織の凝固を誘起することができ,至適照射条件の指標を得た.
特集「低反応レベルレーザー治療の現状」
  • 木暮 信一
    2014 年 34 巻 4 号 p. 382-383
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
  • 櫛引 俊宏, 平沢 壮, 大川 晋平, 石原 美弥
    2014 年 34 巻 4 号 p. 384-393
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    低出力のレーザーを用いた治療であるLow reactive Level Laser Therapy(LLLT)とは,細胞内外に存在する光受容体にレーザーのエネルギーを受容させ,引き続いて起こる生理変化を利用したものである.LLLT が提唱されて40 年間で創傷治癒促進,疼痛や炎症の緩和といった有効な生物学的作用が報告されており,近年では幅広い治療分野において応用が試みられている.本論文では,これまでの著者らの報告を含めて,細胞レベルでのLLLT のメカニズムについて論じる.
  • 櫛引 俊宏, 大川 晋平, 平沢 壮, 石原 美弥
    2014 年 34 巻 4 号 p. 394-401
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    光技術と遺伝子操作技術を組み合わせたオプトジェネティクス(光遺伝学)により,光技術を用いた遺伝子発現制御,細胞形態や細胞内シグナルカスケードの制御が報告されている.本稿ではオプトジェネティクスで用いられるチャネルロドプシンやLOV(light oxygen voltage)ドメインなどの光活性化タンパク質について記述し,最近の研究報告を紹介する.オプトジェネティクスにより,様々な生理学的現象の解明だけでなく,疾患や薬剤作用機序の解明が期待されている.
  • 大和 正典, 金田 明, 片岡 洋祐
    2014 年 34 巻 4 号 p. 402-405
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    われわれはWKY ラットに抗糸球体基底膜抗体を静脈内投与することで糸球体腎炎ラットモデルを作成し,体外からの低反応レベルレーザー照射が抗炎症効果を発揮するかどうかを検討した.レーザーの照射(波長830 nm, 出力2 W, 皮膚表面のスポットサイズ2.27 cm2, 照射パワー密度880 mW/cm2)は抗糸球体基底膜抗体投与日より14 日間,1 日1 回250 秒ずつ背部皮膚表面から両腎臓へ向けて行った.その後,腎臓を摘出し,生化学および組織学両面から炎症の状態を検討したところ,レーザー照射が腎炎病態を有意に軽減することを確認した.
  • 上野 博司, 深澤 圭太, 原田 秋穂, 細川 豊史
    2014 年 34 巻 4 号 p. 406-412
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病性神経障害は糖尿病の合併症の中で最も頻度が高く,四肢末梢の疼痛・しびれが主症状である.神経障害は,高血糖による神経細胞の損傷と神経周囲の血管障害による神経損傷,神経再生障害が主なメカニズムと考えられている.神経症状の治療はアルドース還元酵素阻害薬と鎮痛補助薬による薬物療法が中心であるが,血管拡張作用と神経再生作用を持つ低反応レベルレーザー照射による治療の有効性が確認されている.
  • 吉田 憲司
    2014 年 34 巻 4 号 p. 413-421
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    低反応レベルレーザー治療(LLLT)は非侵襲的な治療法として,創傷治癒促進,疼痛のコントロール,生体刺激などの目的に用いられてきた.LLLT の効果とエビデンスに関しては,システマティック・レビューおよびメタ・アナリシスによる文献が報告されている.近年,“ Low reactive Level Light Therapy “すなわち”低反応レベル光治療”という概念が提唱され認知されつつある.“ Light”は,レーザーばかりでなくLED(発光ダイオード)や他の光源も含まれる.このようなコンセプトに従い,光治療の新しい医療機器が開発されている.歯科・口腔外科領域においては,口腔粘膜炎,歯科矯正治療,顎関節症による疼痛のコントロールなどに応用されている.本稿においては,近年の歯科・口腔外科領域におけるLLLT の現状について解説する.
  • 有田 英子, 加藤 実, 小川 節郎, 花岡 一雄
    2014 年 34 巻 4 号 p. 422-428
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    高齢化社会を迎え,慢性痛を有する患者は増加の一途をたどっている.ペインクリニックにおける主たる治療法として,神経ブロック療法,薬物療法などがあるが,光線療法も欠かせない.しかし,その効果は,神経ブロックほど明確ではない.慢性痛患者において,光線療法前後の痛みの強さを,visual analogue scale と痛み度を用いて測定し,光線療法の有効性を確認した.また,2 疾患において,患者が訴える痛みの強さの解釈について考察を加えた.
  • 菅原 はるな, 岩本 恵子, 小谷 有里佳, 小野 圭子, 黒崎 香穂, 福崎 由美, 山之端 万里, 木暮 信一
    2014 年 34 巻 4 号 p. 429-435
    発行日: 2014/03/15
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    低出力レーザー照射(Low power laser irradiation: LLI)に関して,細胞増殖を含め,さまざまな生物学的過程に影響を及ぼすことが報告されてきたが,その作用機序については不明な点が多い.われわれはヒト由来脳腫瘍細胞(glioblastoma A-172)を対象に研究し,405 nm LLI は細胞死を誘発する,532 nm LLI は細胞増殖を促進する,808 nm LLI は細胞周期を遅延させる効果をもつと報告してきた.こうした波長特異的な効果の作用機序を明らかにする一歩として,今回,ミトコンドリアの動態に着目して実験を行った.従来と同一の実験系において,各波長(405: 27 mW,532/808 nm:60 mW)のLLI を用いて,96 ウェルプレートに播種し一晩培養したA-172 (0.3×104 cells/mL)への照射を試みた.非照射群をコントロールとし,実験群では20, 40, 60 分間照射を行い,照射直後,24 時間後にミトコンドリアを染色して画像撮影を行った.532 nm LLI の場合,小型の顆粒状形態を示すものが多く,面積が1 μm2 以下のものが非照射群と比べて有意に多く,1 μm2 以上のものが有意に少なかった.逆に808 nm LLI の場合では融合型のものが多く,面積が1 μm2 以下のものが有意に少なく,1 μm2 以上のものが有意に多かった.405 nm LLI ではアポトーシスを示す細胞と紡錘型の生細胞が観察された.後者の細胞のミトコンドリア形態は532 nm LLI の結果と同様な傾向を示し,かつそれらの効果の照射時間依存的な傾向性も示した.以上の結果から,A-172 細胞に対する405/532/808 nm LLIs の波長特異的な効果はミトコンドリアの異なる形態変化に基づいている可能性があると結論された.
feedback
Top