内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection: ESD)は早期消化管癌に対する低侵襲な治療法として広く受け入れられている.しかしながら,高度な技術を要し,手技の成功は術者の腕に委ねられているのが現状である.我々はこの問題を解決するために,炭酸ガスレーザーを用いた新しい内視鏡治療器の開発を行った.炭酸ガスレーザーは水に吸収されやすいため,従来の電気メスに比べて炭酸ガスレーザーによるESDは,穿孔の危険性が少なく,熱凝固による組織損傷が少ないという利点をブタを用いた実験により示した.さらに非接触下で良好な視野のもと,より精確で安全な治療が全ての内視鏡医に提供できるものと期待される.
前立腺肥大症に対する外科的治療として,波長2,100 nmのHo:YAGレーザーを用いたホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)は,標準術式である経尿道的前立腺切除術(TURP)の代替治療として普及しつつある.本術式は低侵襲的で,TUR症候群の発症率や周術期の出血が少なく,また術後のカテーテル留置期間が短いため,入院期間の短縮が期待できる.今回78 W(パルス幅250 μs)と100 W(パルス幅600 μs)の平均パワーの違いによる治療成績を検討した.
近年,LLLT(Low reactive level laser therapy)およびLEDT(Light emitting diode therapy)によって筋疲労の遅延,パフォーマンスの向上,高いトレーニング効果がもたらされることが報告されている.本稿では筋疲労誘発の条件別にその概要をまとめるとともに,LLLT・LEDTが疲労抑制に作用するメカニズムについても考察する.
関節リウマチの治療(RA)は20年以上にわたり,劇的な変革期にある.薬物治療,特にメトトレキサートや生物学的製剤の進化によって生み出されたと言えよう.RA治療の達成目標は世界標準として定められるようになった.RAは疼痛と関節腫脹を特徴とする慢性炎症性疾患である.疼痛は患者にとって最も重視する関心事であるが,医師にとっての関心事は関節腫脹である.治療方針は患者と共有すべきであり,メデイカルスタッフは患者と医師の認識に乖離があることを認識すべきである.
発展し続けるRAの薬物治療の時代にあって,変化し続けるLLLTの歴史を紹介する.さらには,抗TNF療法によりLLLTの疼痛寛解効果が高まることを示す.RA症例の高齢化に対するLLLTと薬物治療の結合治療がそれぞれ単独治療より有用である.
スポーツ傷害を有する41例に対し半導体レーザーによるLow reactive Level Laser Therapy(LLLT)を行いPain relief score(PRS)を用いて効果判定を行った.結果は,LLLTの有効率は65.9%であり有効率が高かった疾患は,ジャンパー膝75%,上腕骨外側上顆炎66.6%,アキレス腱炎66.6%であった.LLLTは侵襲が無く安全でありレーザーの照射方法を工夫すればスポーツ障害での疼痛管理には有用である.
光線力学治療(PDT)による殺菌効果は,細菌の細胞膜や細胞質に集積した光増感剤が光によって励起され,発生した活性酸素種が直接細菌を傷害することに起因すると推測されている.しかしPDTは免疫反応の活性化や,組織増殖促進につながる成長因子の発現増加といった,生体反応を活性化させる働きもあることが報告されている.そこで本稿では,感染症治療に関係が深いと考えられる,PDTによる創傷治癒促進効果について,著者らが5-アミノレブリン酸を用いた検討より得てきた知見を交えて概説する.
従来,歯科治療における感染歯質や歯根表面のプラーク除去は,主に機械的な手段により行なわれてきたが,近年,半導体レーザーやLED光に色素を組み合わせた抗菌的光線力学治療(a-PDT)の応用について研究が進められている.本稿では口腔の二大疾患であるう蝕と歯周病におけるa-PDTの応用について,基礎的・臨床的研究に基づき概説するとともに,特に歯周治療への応用を目指した我々の研究を紹介する.
近年,多くの抗生物質に対する細菌の耐性化が深刻な問題となっている.耐性菌が蔓延する原因として抗生物質の乱用があり,抗生物質とは異なる機序の細菌感染治療法の開発が求められている.我々は新たな治療法として光線力学療法(photodynamic therapy: PDT)に着目し研究している.本総説では,これまでに行ってきた細菌感染皮膚潰瘍に対するPDTについて若干の文献的考察を含め報告する.
獣医領域において,犬の外耳炎は最もよく遭遇する感染性疾患の一つである.しかし,抗生剤の不適切な使用のため,近年耐性菌の出現が問題視されている.今回,感染性外耳炎の新しい治療法として,既存の色素剤および新規クロリン誘導体光増感剤を用いた抗菌PDTの基礎的検討および臨床症例への応用を試みた.