誘電体と金属の薄膜を内装した中空ファイバーは,石英ファイバーでは伝送できない赤外領域のレーザー光を低損失で伝送できる.この中空ファイバーをキーデバイスとして,CO2レーザーを用いた新しい内視鏡治療器の開発が進められている.中空ファイバーはこれまで数多く検討されてきた充実型の赤外ファイバーに比べ,光学的特性だけでなく,物理的,化学的特性など様々な点でも優位性を有している.中空ファイバーにより伝送されたCO2レーザー光は,ガイド光とともに照射位置を的確に把握しながら非接触で生体組織に照射される.CO2レーザーはかつて内視鏡下で広く検討されたNd:YAGレーザーと異なり,正常組織内に深く進達することがなく一括切除を目的とした切開効果に優れる.レーザーメスとして内視鏡治療,特に早期消化管癌を対象としたより安全な治療法として適用が期待される.
直径125 μm,長さ7.4 mmの光通信用ファイバーをOCM(optical coherence microscopy)のイメージプローブに用いて,in vivoラット脳の断層画像を測定した.深さ分解能,横方向分解能は,それぞれ2.14 μm,2.3 μmである.SMMFを最大4 mmまで挿入して視野直径47 μm,SMMF端面から深さ147 μmまで測定を行った.深さ20~90 μmで,粒状や5 μm~10 μmの繊維状の形態情報が得られた.三次元の繊維形態が51.5 μm × 51.5 μm × 深さ104 μmの領域で確認され,さらに,内部の14.9 μm × 12.4 μm × 深さ8.1 μmの領域でも,繊維の接続や屈曲状態が確認された.また,OCM画像信号の積算値が灰白質の底部で最大値を取っており,神経線維の断層画像が測定された.今後,再生医療やがん診断,また腹腔鏡ロボットなどの分野で応用が考えられる.
量子科学技術研究開発機構では,原子力及び核融合炉の保守・保全研究の中で,高エネルギーレーザー光と照射対象の映像を同軸上に伝送し,観察と溶接が並行してできる複合型光ファイバーを開発した.現在,本技術を基にした低侵襲レーザー治療機器を開発し,医療分野への展開を図っている.本稿では,これら医療応用について紹介する.
我々は細径柔軟なプラスチック光ファイバーを用いた拡散光照射プローブを開発し,狭隘な患部での均一光照射を可能にすることで,光線力学的治療の新しい展開を目指している.狭隘な領域において直射型の光照射プローブでは照射領域を操作できないため,拡散光照射プローブが必要となる.現状の拡散光照射プローブは石英製で先端が硬く,屈曲した経路には挿入することができない.我々は細径プラスチック光ファイバーに拡散加工を施した光拡散体を開発し,柔軟な細径拡散光照射プローブを完成した.
産学官において意見交換を繰り返した成果として,薬生機審発0629第4号通知「レーザ医療機器の承認申請の取扱いについて」が発出された.この通知は,治験不要となる仕様の範囲を通知したものではなく,レーザメス以外の製品も含めた開発の指針となる点に新規性があり,主に,非臨床評価項目,使用目的及び臨床試験の要否の考え方がまとめられている.本通知を解釈するにあたり,特に,既承認品との差分を非臨床試験によって評価可能か否かを判断する際には,独立行政法人医薬品医療機器総合機構と相談することを勧める.また,上記通知の対象外である市販後の安全対策は医療機器にとって重要であり,承認審査における論点の一つとなる.特に,レーザ医療機器に関しては,安全管理者の選定や安全管理区域の設定といった特有の安全対策が必要であることに留意しなければならない.引き続き,レーザ医療機器に係る医療現場における課題解決に向けて,産学官での継続的な議論と密な連携が重要である.
本稿では,2016年に通知「レーザ医療機器の承認申請の取扱いについて」(薬生機審発0629第4号)が発出されたことを受けて,工学側からみたレーザー治療機器の評価アプローチについて論述する.本通知を安全かつ有効に活用するための方策としての計算機援用レギュラトリーサイエンスによるレーザー治療機器評価を提案し,シミュレーションによるレーザー治療評価に関する取り組みを示す.
現在の皮膚科形成外科領域のレーザー治療における未承認機器の占める割合は少なくない.デバイスラグが問題の一つであるが,中にはFDAでの許認可のみならず,CEマークさえ取得していない機器が臨床研究を経ることなく使用されている現状がある.医学的に正しい機器が早期に承認されることは望ましいことであるが,本邦のように,科学的根拠の乏しい機器でも医師の裁量権で使用可能となっている現状に問題がないとは言い切れない.医師の倫理観のみでなく,美容領域のガイドラインの作成,合併症や事故情報の集積等学会ができることを粛々と進める必要がある.
先般発出された通知(平成28年6月29日,薬生機審発0629号第4号「レーザ医療機器の承認申請の取扱いについて」)に拠り,医療機器承認申請者側企業にとってどのような変化が起きたのかについて,所見を得るために日本医用レーザ協会所属会員企業にアンケート調査した件を報告する.また,アンケート調査を通じて得た各企業意見をもとに,現況下における医用レーザ業界の活性化を目指すための考察として,臨床家,学術者,行政,機器製造開発企業が新たな結びつきを目指し,いわゆる「臨・学・官・産」の全体システム構築が必要との知見を得たので,紹介とする.
令和2年診療報酬改定に対する日本レーザー医学会社会保険委員会の取り組みとその結果について述べる.また,現在薬機法で承認されているレーザー機器及び保険収載されているレーザー治療を表としてまとめ,その詳細について述べる.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら