レーザー光化学治療効果の向上を目的とし, ヘマトポルフィリン (HP) の励起三重項(T
1) の寿命および酸素分子付加によるHpの吸収スペクトルの変化を測定し, 励起一醒項酸素 (
1O
2) 生成確率およびそのレーザー波長依存性について検討した。
T
1の励起寿命は溶媒によって異なり, CCl
4溶媒で480ns, C
2H
5OH溶液で280ns, 水溶液では検出系の限界内で測定不能であり,
1O
2へのエネルギー移乗の時間特性 (875μs~1ms) に較べて短く, したがって,
1O
2生成確率は低下していた。
Hp溶液に酸素分子を付加すると, 502nmを中心に新たに吸収スペクトルが生じ, 酸素濃度, 溶質濃度に相関して線形に吸収増大がみられた。この特異的吸収増大はHp-酸素分子複合体による“協同光吸収”機構によって生じ, 通常の1光子吸収に較べると,
1O
2生成確率を向上させることが可能と考えられた。“協同光吸収”を生じさせる波長を使用することにより, 治療効率の向上が期待され, レーザー光化学治療における
1O
2生成過程の動的挙動と波長付く存性の解明に意義があると考える。
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