アドリアマイシン(ADM)の蛍光スペクトルをDNAの溶液にて観測した。その蛍光強度はDNAの分子によって消光された。この結果はADMがDNA分子と結合して相互作用を受けている事を示唆している。
ヒト膀胱癌由来の培養細胞(KK-47)によるADMの取込みを種々の培養時間において蛍光分光学的測定より検討した。この増殖停滞期の細胞に取込まれたADM濃度は, 指数関数的増殖期の細胞による取込み濃度に比べて大であった。増殖停滞期細胞の高濃度の取込みにもかかわらず, ADMによる化学療法的殺細胞効果は, 指数関数的増殖期の細胞に比べて小であった。これは細胞周期, とくにS期の割合や, 細胞周期によるADMの取組まれた局在部位の相違が考えられた。
更に, 指数関数的増殖期における細胞にADMを取込ませ, この細胞にアルゴンイオンーレーザー光(488nm,0.78mw/cm2)照射を行った。ADMを取込んだ細胞は化学療法的殺細胞効果とともに, ADMとアルゴンレーザー光による光増感効果による殺細胞作用を検討した。
以上の結果から, ADMには化学療法だけではなく, 至適波長の光照射による光力学的療法の併絹が可能で, 抗腫瘍効果の拡大が期待された。
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