昭和医学会雑誌
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41 巻, 1 号
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  • 安本 和正, 稲田 豊
    1981 年 41 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    全身麻酔下に手術を行うと, 術後低酸素血症が発生する.又, その程度は年齢別には老人, 手術部位では胸部や上腹部手術後に著しいと云われている.したがって上腹部手術を予定された症例を対象とし, はじめに術前後にわたって, 肺における換気血流比不均等分布を表わす指標であるa-ADN2を測定する事よりその成因を検討し, 次いで術後少量のモルフィンを硬膜外腔へ注入し, 除痛化をはかり術後低酸素血症の予防を試みた.
    術後a-ADN2は, A-aDO2と平行して増減する結果より, 上腹部手術後に発生する低酸素血症の成因は, 換気血流比不均等分布による事が窺われた.又, 硬膜外腔ヘモルフィンを注入した群は, 術後のPaO2低下が有意に少なく, 特にその作用は老人群に有効であった.硬膜外腔モルフィン注入による術後低酸素血症予防の機序は, 術後発生する機能的残気量の減少を除痛により抑制した為と思われる.
  • 今村 一男
    1981 年 41 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 松村 堅二, 井出 宏嗣, 橋本 定寛, 伊藤 正吾
    1981 年 41 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    伝染性肝炎 (A型肝炎) 患者およびその劇症肝炎患者の胆汗または肝乳剤を, 副腎皮質ホルモンおよびインスリンで連日3週間前投与した家兎に接種した.前処置された家兎は4群に分類された.I群: A型肝炎胆汁接種, II群: 劇症肝炎胆汁接種, III群: 劇症肝炎肝乳剤接種, IV群: 上記接種にて肝病変が惹起された家兎肝乳剤接種.家兎は接種後4, 10, 14および22日目に屠殺された.肝組織学的所見は, 小葉周辺部に多発性の肝細胞壊死と壊死巣周囲に多形核白血球と軽度の単核細胞の浸潤が認められた.細胞浸潤は門脈域にも散在して認められた.これらの組織変化を生じた家兎数は, I群: 5/11, II群: 4/5, III群: 1/4, IV群: 5/13であった.オルセイン染色法では, 肝細胞質内に封入体は検出されなかった.電子顕微鏡的検索では, 肝細胞質および核内にウイルス様微小構造物は検出されなかった.
  • 松木 孝行, 木村 忠直, 猪口 清一郎
    1981 年 41 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラット成獣20頭について絶食実験による前脛骨筋の筋線維構成の変化を検討した.筋線維の太さは絶食ラットでも白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大であったが, 対照例に比べてその差は少なく, S.D.も小であり, 白筋線維の格外大型線維は認められなかった.筋線維の縮小率は白筋線維と赤筋線維が中間筋線維よりも大で, 雌の方が雄よりも大, また, 体重の減少率に比べて絶食の初期には筋線維の縮小率の方が著明であり, この傾向は白筋線維と赤筋線維で著しかった.雌雄を比較すると絶食ラットでは赤筋線維, 中間筋線維, 白筋線維の順に雌雄差がないものが多くなる傾向が認められた.Sudan Black B染色所見は絶食の進行に伴って赤筋線維は過染, 白筋線維は混濁の傾向が見られたが三筋線維の分別は明らかで, 断面における三筋線維の分布状態は対照例と等しかった.
  • 宮崎 雄一郎
    1981 年 41 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    pentazocineの循環器系に対する増強効果は血管平滑筋の交感神経系を介しての作用と考えられている.著者は筋層内に交感神経終末の分布の濃厚なマウスの摘出輸精管を用いてpentazocineの交感神経・平滑筋伝達について検討した. (1) 経壁電気刺激 (10Hz) でpentazocine (10-7M~3×10-5M) は交感神経の興奮によるといわれるtetanus様収縮を濃度依存的に増強した. (2) pentazocineの投与ではシナプス後膜における感受性の上昇は観察されなかった. (3) 交感神経終末に取り込ませた3H-norepinephrineの流出量の測定で, 非刺激時の流出はpentazocineの濃度 (10-7M~10-5M) に依存して著しく増加したが, 刺激時の流出は増加しなかった.以上の結果から, 輸精管の交感神経の緊張はpentazocineによって増強されたが, その作用機序として非刺激時のnorepinephrineの遊離を増し, これと刺激時に遊離するnorepinephrineとが累加されて収縮の増大をきたしたものと推察できる
  • 東京都に於ける在宅重度精神薄弱者 (成人) の成因に関する研究
    望月 保則
    1981 年 41 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    成人の在宅重度精神薄弱者86名を対象としてその成因を調査した.両親の近親婚率は19.3%と高率であった.同胞中の精神薄弱発現率は4.5%と低率であった.同胞中に占める対象者の割合は第1子が最も高く (38.1%) , 出生順位が下がるにつれて低くなり, 第5子が最低で18.8%であった.第6子以降では逆に上昇して平均30.0%となった.胎生期に障害を有する者は30.2%で, 最も多い障害は栄養障害の著明な悪阻で10.5%であった.周生期に障害を有する者は41.9%で, 最も多い障害は新生児仮死の18.6%であった.先天性の重度精神薄弱は53名 (61.6%) , 後天性は32名 (37.2%) , 不詳1名 (1.2%) であった.先天性のうちでは, Down症候群6名, 先天性水頭症6名, 先天性小頭症2名, West症候群1名, 特別な診断名のつけられないもの38名 (うち生理的精神薄弱の疑2名) であった.後天性の直接原因は感染症が最も多く24名で, 頭部外傷とてんかんが各3名, 栄養失調1名, 不詳1名であった.
  • ―重油燃焼生成物長期吸入によるラットの汚染肺について―
    野崎 亘右, 河合 清之
    1981 年 41 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    SPFラットを用い, 重油燃焼生成物による低濃度生涯連続吸入実験を行った.長期暴露後の呼吸器には, 肺および胸部淋巴節炭粉症, 喉頭炎, 気管支炎, 汎細気管支炎および初期の肺気腫を成立していた.これらは都市居住者の汚染肺に類似したものとしてみることができる.気管支炎や汎細気管支炎は上皮の増殖を伴っており, 腺様増殖の像を呈した.顕鏡的には10頭中2頭に肺胞末梢部の扁平上皮化生巣をみたが, 肺がんを見出すことは出来なかった.燃焼生成物から粒子状物質を除去することによって上記の呼吸器系各部の障害は, 動物の生涯にわたってほぼ完全に抑制された.
  • 辻 正周
    1981 年 41 巻 1 号 p. 65-75
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    入院中の猩紅熱患者80例について, ASO, ASK, SZ, BlueASO, 一部 (23例) ADHについて実験を行い, 以下の如き結果を得た.猩紅熱患者から, 約一週間間隔で3回, 血清を採取し, 上記の血清反応を行った.有意の抗体価の上昇がみられたのは, 40例の第一のグループでは, ASO55.0%, ASK42.5%, AHD17.4%, SZ45.0%とASOがややすぐれ, ASKとSZはほぼ類似の成績であったが, 症例数の少かったAHDは低値に終った.40例の第二のグループでは, ASO47.5%, ASK42.5%, Blue ASO75.0%であり, それぞれの血清反応を組合せて実施することにより, 第一のグループでは, 78.3%に, 第二のグループは, 80.0%に抗体価の上昇をみた.特にBlue ASOは, 猩紅熱の診断には有効な検査方法であるという成績を得た.また上記の如き血清反応を組合せて検査することにより, 猩紅熱の診断がより確実になることを立証した
  • 鈴木 悟, 藤森 師雄, 岡本 途也, 木村 通彦
    1981 年 41 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    突発性難聴の診断は比較的容易であるが, 我々は突発性難聴と診断し治療を行った後に, 心因性難聴に気付いた2症例を経験したので報告する.症例 (1) は23歳女性, 症例 (2) は17歳女性である.症例 (1) は左耳難聴, 症例 (2) は両耳難聴を訴えて当科を受診した.共に突然発症しており, 難聴耳は両例共ろうの状態であった.突発性難聴と診断し, 直ちに治療を開始したが, 両例とも特異な経過をたどって治癒した.
  • 杉内 孝謙, 神田 実喜男, 並木 秀男
    1981 年 41 巻 1 号 p. 81-89
    発行日: 1981/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脂肪肉腫は非常にまれな悪性腫瘍であり, その組織像は時として他の間葉系腫瘍との鑑別が困難な事がある.我々は最近, 典型例と思われる脂肪肉腫の一例を経験したのでここに報告し, 同時に文献的考察を加えてみた.
    症例は68歳の白人男性で, 来院時右大腿内側にバレーボール大の腫瘍があった.腫瘍摘出後の病理学的検索により, Myxoid typeの脂肪肉腫であることが判明し, さらに広範囲の切除を行なった.
    脂肪肉腫は30歳以下では稀で, 50歳をピークとして高齢者に多く見られ, 大腿と後腹膜に好発する.これは (1) well differentiated, (2) Myxoid, (3) Pleomorphicの3型に分けられ, Myxoid typeが半数以上を占めるが, 同一症例で2種, あるいは3種のSubtypeが混在することもある.脂肪肉腫の診断にあたっては (1) 脂肪染色によるlipoblastの存在, (2) acid mucopolysaccharideの存在, (3) 細胞異型性, (4) 血管網の増生等を証明し, 他の間葉系腫瘍を注意深く除外することが重要と思われる.
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