昭和医学会雑誌
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41 巻, 4 号
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  • ―臨床症状と経静脈性ブドウ糖負荷試験による検討―
    小島 喜久子, 藤巻 忠夫, 塩原 保彦, 小林 正樹, 五十嵐 寛, 長谷川 武志
    1981 年 41 巻 4 号 p. 353-365
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    過去11年間にCCUに入院した急性心筋硬塞患者を糖尿病群と非糖尿病群に分け, その臨床症状を比較検討した.また, 経静脈性ブドウ糖負荷試験を行い耐糖能を検討した.糖尿病の合併は32.4%.糖尿病群では無痛性梗塞が12.0%と多く, 糖尿病群女性では無痛性梗塞を含む非定型的発作症状で発症するものが43.5%と多い.また, 60歳未満の若年者においては糖尿病群で無痛性梗塞を含む非定型的発作症状で発症するものが多い.ポンプ失調の合併は糖尿病群女性でKillip III, IV群が43.4%と多く, 年齢的には糖尿病群では若年者から合併する傾向にあった.糖尿病群での急性期死亡はポンプ失調死によるものが多かった.経静脈性ブドウ糖負荷試験では, 糖尿病群は非糖尿病群に比しK値が有意に低い.フィッシャーの判別関数を用いた検討では糖尿病群と非糖尿病群を分ける値は0.85であった.従って急性期においても80%以上の確率で糖尿病を診断することが可能と思われた.
  • 篠塚 明
    1981 年 41 巻 4 号 p. 367-381
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    C3H/Heマウスにsarcoma180細胞を移植し, 経時的に脾細胞のmitogen (PHA, Con A, LPS) に対する幼若化反応を測定し, 随伴免疫との関係を検討した。幼若化反応は腫瘍による免疫抑制のため担癌早期に著明に低下するが, PHA反応とCon A反応はその後回復を示した。しかしLPS反応はほとんど回復しなかった。PHA反応のcpm値と脾細胞数との積 (PHAに反応する脾細胞数) は随伴免疫 (再移植抵抗性) と相関を示し, それが正常レベルの1.5倍になった時に随伴免疫が成立した。全身照射後の移植実験により両者の相関性はより確かになった。Con A反応の回復は良好で腫瘍移植後Con A/PHA比は経時的に高まり, これはsuppressor T cellの活性の上昇を示唆しているものと思われる。腫瘍を照射により消失させるとPHAに反応する脾細胞数は長期間高いレベルを保ち, 再移植抵抗性の持続時間も長い。逆に腫瘍を切除するとPHAに反応する脾細胞数の減少は早く, 再移植低抗性性の消失も早い。随伴免疫の維持には不活化された腫瘍細胞が長く体内に留まることが必要であり, 照射はそれに好都合であると思われる。幼若化反応と脾細胞数もこれと一致した動きを示す。
  • 石川 自然, 奥山 和男, 高尾 篤良, 龍野 勝彦, 安藤 正彦, 今野 草二
    1981 年 41 巻 4 号 p. 383-392
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    円錐部心室中隔欠損は他のTypeの心室中隔欠損と異なり, 大動脈弁が心室中隔欠損孔へprolapseしやすく, さらに形態学的変化が進むと大動脈弁閉鎖不全を生じる.外科的には, 大動脈弁閉鎖不全が本疾患の臨床像, 予後を修飾するので, 大動脈弁prolapseの段階でその早期治療が望まれる.われわれは円錐部心室中隔欠損における大動脈弁prolapseの非観血的診断として心音図を用いた.
    心音図では, 後期収縮期雑音の増強が認められ, 診断上有意義であると判断した.さらに, 心音図所見が心カテーテル, 心血管造影の所見などと明らかな相関関係を示すのを確めた.
    円錐部心室中隔欠損における後期収縮期雑音の増強は右室の円錐部にprolapseした大動脈弁による狭窄あるいは右室流出部に対する負荷によるものと考えられる.今後, 超音波による診断を加え, 後期収縮期雑音増強の機序を明らかにしたい.
    本稿の大要は昭和50年7月25日, 26日, 第11回小児循環器研究会において発表した.
  • II: 強縮後の短縮高回復過程に及ぼす置針の作用
    木下 晴都
    1981 年 41 巻 4 号 p. 393-403
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    生体に付着させたまま, 露出したカエル, モルモットの腓腹筋の収縮をアキレス腱端から記録し, 腓腹筋に15分間強縮刺激を与えると, 短縮高は極度に減少した.減弱した腓腹筋の短縮高の回復過程は, 施針をした揚合には, しない場合に比べて著明に促進され, 両者間には有意差が認められた.施針による強縮後の短縮高回復の促進現象は施針直後から始り, 2時間で最高に達し, 5時間後にもこの効果は持続していた.施針による強縮後の短縮高回復促進作用は大脳皮質・脊髄・坐骨神経などの切断でも影響をうけなかった.大腿動・静脈を結紮した後にも施針の効果は3時間後まで現れた.アトロピン, capsaicinの投与後に施針をしたのでは, 上記の回復促進効果は消失した.以上の結果から施針による強縮後の短縮高の回復促進作用は, 筋内における軸索反射によって血流が増し, 誘起された結果と推定された.
  • III: 強縮後の短縮高回復過程に及ぼす針の作用機序と刺激条件
    木下 晴都
    1981 年 41 巻 4 号 p. 405-409
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    モルモットの坐骨神経を切断して, 1~2週間経過した後の腓腹筋では, 強縮後減弱した短縮高の回復過程に対する施針の促進作用は出現しなくなった.このように除神経によって針効果が消失したことは, 強縮後の減弱した短縮高回復を促進する針の作用は, 軸索反射によることの一つの確証となる.強縮後の短縮高の回復過程を指標として, 施針刺激の条件を検索した結果, 3mmの浅刺では施針の効果は出現せず, 10mmの深刺で効果が現れた.施針の数を1本としても, 3本としても, また針の太さを0.65mm, 0.25mm, 0.13mmとしても, あるいは針を20分間刺しておく置針としても, 直ちに針を抜く単刺としても, 針の強縮後の減弱した短縮高の回復促進作用には変化はみられなかった.なお強縮前に施針した場合には針作用は出現しなかった.
  • 天野 真, 小松 安彦, 岡崎 満, 岡崎 智子, 三浦 春夫, 大久保 幸枝
    1981 年 41 巻 4 号 p. 411-419
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    塩化ピクリル塗布によるマウスの遅延型皮膚反応を用いて, 免疫強化剤Schizophyllanと諸種制癌剤の細胞媒介免疫に及ぼす影響を調べた.試験制癌剤22種類のうち, Cyclophosphamide, Carboquone, Methotrexate, 6-MP, 5-FU, Futraful及びMitomycin Cに遅延型皮膚反応の抑制ないし抑制傾向が認められたが, その他のものには抑制作用が見られなかった.抑制例において, Schizophyllanの併用により, 細胞媒介免疫の低下がある程度回復する例のあることが認められた.
  • 恩田 聰, 井原 敬二
    1981 年 41 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    カニクイザル咬筋の筋線維をSudan Black B染色によって分別し, その構成を検討した.3筋線維型の中では中間筋線維が最も多く, 太さは白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大であったが, その差は少なかった.同一個体の四脇に比べて白筋雛は少なく, 筋線維の太さは小で, 特に白筋線維では差が著しかった.
  • 渋沢 三喜, 立川 士郎, 伊藤 洋二, 神谷 憲太郎, 藤井 源七郎, 佐丸 義夫, 浅沼 和生
    1981 年 41 巻 4 号 p. 427-433
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    マウス脾リンパ系細胞を用いPHA・Con Aによるリンパ球幼若化反応について, マイクロプレート法での基礎的実験条件を検討した.PHA濃度20μg/ml, Con A濃度10μg/ml, 培養3日, FCS濃度10%が至適でその際のS.I.は各々9.96, 20.98であった.この実験条件をもとに加齢による変化, 腫瘍細胞接種後の担癌マウスの反応性の変化について検討した.結果, 生後25週までPHA・Con A反応とも上昇した.腫瘍細胞接種後6日目にPHA反応は最大となりS.I.11.39を示し, Con A反応は8日目にS.I.29.14を示したが, 以後腫瘍の増大に伴い漸次低下した.マイクロリンパ球培養法の応用として, マイクロMLTRを試みた.リンパ球腫瘍細胞比が1: 1, 5日培養で最大反応を示し, その際のS.I.は5.01であった.マイクロ法は反応系を多く作製可能で, 感度・再現性も高いことが証明された.
  • 本田 実
    1981 年 41 巻 4 号 p. 435-438
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    放射線照射後, 尿中β-aminoisobutyric acid (BAIBA) の排泄が増加することが知られている.このBAIBAは, DNA由来のthymineの代謝産物であるので, BAIBAの尿中排泄量を測定することにより, thymine catabolismを間接的に知ることができる.しかし, genetic low excretorではBAIBAがさらに代謝されてしまい, BAIBA排泄量がthymine catabolismを反映ているとは言えない.ところで, 抗結核剤であるサイクロセリンを投与すると, BAIBAを代謝するアミノトランスフェラーゼを阻害するので, low excretorもhigh excretorと同様に扱うことができると考えられる.今回, 担癌動物に放射線照射を行い, その核酸代謝とくにthymine catabolismをとらえるのに, サイクロセリン投与を併用した.その方が, BAIBA排泄量も多く, ピークもつかみやすいことが観察された.
  • 第1報 マウス気管内感染法による百日咳リンパ球増多症の実験的研究
    田林 貞俊
    1981 年 41 巻 4 号 p. 439-444
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    百日咳菌の自然感染に類似したマウスの気管内感染法を用いて, 肺内生菌数の推移とリンパ球増多症発現の模様について追跡した.肺内生菌数は感染後約10日で最高に達し, それ以後は漸減した.血中白血球数は21日後に最高となり, 正常白血球数の6倍を示した.この場合多形核白血球よりも小リンパ球のピークが遅れて発現するが, その絶対数は小リンパ球のほうが大である.百日咳ワクチンの静注でも白血球増多症が誘発されるが, 気管内感染の場合よりも回復が早い.
  • 第2報 百日咳菌気管内感染マウスに発現する免疫応答
    田林 貞俊
    1981 年 41 巻 4 号 p. 445-449
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    百日咳菌気管内感染マウスの局所性及び全身性免疫応答について研究を行った.感染後2~3週に採取した気管支洗浄液は受身免疫能を示すので, 局所性抗体の一過性産生が示唆された.血清中に見られる受身防御潜性は気管支洗浄液の場合よりも長期にわたって産生された.能動免疫は感染後2~3週から認められ, 4~5週で極めて強い防御能が獲得された.受身皮膚アナフィラキシー反応により, 感染後5~10週にかけてIgE様抗体が出現することが証明された.
  • 松本 文夫
    1981 年 41 巻 4 号 p. 451-458
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年種々のモルヒネ様ペプチド (opioid peptide) が脳から同定され注目を集めているが, その生理機能については不明である.一般にopioid peptideの一種であるEnkephalinは, 中枢神経でNeuromodulatorあるいはNeurotransmitterとして作用していると考えられているが, 確実な証拠はない.今回, 著者はEnkephalinの中枢神経における生理機能を検索する目的でEnkephalin richの新鮮牛脳尾状核より分離したシナプス小胞画分へのEnkephalinの取り込み機構を, 〔3H〕Leu-enkephalinを用いて検討した.シナプス小胞画分への取り込みにはCa2+, Mg2+の2価の陽イオンおよびATPが必須であり, 温度依存性であった.Ca2+, Mg2+およびATP依存性の〔3H〕Leu-enkephalinの取り込みの見かけ上のKm値は1.8×10-7Mであった.この取り込み反応において, ATPはADP, あるいはピリミジンヌクレオチドでは置き換えられなかったが, GTPではATPと同様の効果が認められた.またOuabain (0.1mM) で約35%, Cholchicine (0.1mM) で約25%, Reserpine (1mM) で約20%の取り込みに対する阻害が認められた.
  • 高場 利博, 稲生 紀夫, 舟波 誠, 前田 洋, 山城 元敏, 石井 淳一
    1981 年 41 巻 4 号 p. 459-463
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和50年から昭和55年の6年間に56例の原発性肺癌の外科治療を行った.腺癌が最も多く31例を占め, 扁平上皮癌23例, 未分化小細胞癌1例, 大細胞癌1例であった.臨床進行度からみると, I期症例は4例, II期10例, III期30例, IV期12例で進行癌が75%を占めた.治癒手術は12例に, 準治癒手術19例と半数以上に積極的手術が施行できた.3年生存率を標価できる32例についてみると, 治癒手術例では75%の生存がえられ, 全体では41%の3年生存率であった.一方術後1年以内の死亡は17例あり, 試験開胸に終った7例と術後合併症による6例, さらに4例の癌死例であった.まだ教室における手術例は少なく, またその成績は不満足であるが, 今後, 手術成績向上に努めたい.
  • 高橋 正一郎, 荒井 誠, 米山 啓一郎, 吉田 一明, 坂本 芳大, 田口 進, 斉藤 博文, 八田 善夫, 清水 盈行
    1981 年 41 巻 4 号 p. 465-468
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年リニア電子スキャナーの発達普及に伴い, 肝胆膵疾患における腹部超音波検査法には大きな関心がよせられている.今回慢性膵炎, 膵癌, 肝腫瘍について超音波検査法と他検査法とを比較検討し, その有用性が認められた.慢性膵炎の超音波検査所見にはまだ不十分な点もあり, 偽陰性及び偽陽性例がみられた.膵癌3例は超音波検査にて診断可能であったが, すべて切除不能例であった.しかし諸家により切除可能膵癌をスクリーニングしえたとの報告もあり, 今後膵癌のスクリーニング検査法として期待される.肝腫瘍についてエコーパターンの分類を試み, 原発性肝癌と転移性肝癌との間にそれぞれの特徴が示唆されたが, 鑑別は困難なことが多い.腹部超音波検査法はその簡便さ, 非侵襲性より, 今後さらに発展進歩が期待される.
  • CTとシンチグラフィーの比較検討
    滝沢 謙治, 広野 良定, 後閑 武彦, 伊藤 真一, 小松 隆, 篠塚 明, 前田 陽一, 高橋 久男, 平林 晋一, 菱田 豊彦
    1981 年 41 巻 4 号 p. 469-474
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    各種諸検査により診断のついた肝疾患77例について, CT像とシンチグラフィー像を比較し検討した.原発性肝癌12例, 転移性肝癌21例, 肝のう腫15例の肝腫瘤性病変において, シンチグラムでは, 三疾患共通して70数%, CTでは90%以上にその存在を認め, CTの方がシンチグラムよりすぐれていた.シンチグラムでは, 腫瘤の大きさが小さいものでは, RI分布不均一と誤認したり, 病変が肝辺縁部に存在するものでは, 肝形態変化として誤りやすかった.CTでは, 原発性肝癌転移性肝癌との鑑別が困轍症例カミあり, 肝にビ漫浸潤したものは, densityの差としてとらえがたく, 見逃がされるものもあった.肝のう腫では, 鮮明な円形の低吸収域として認められ, CTが非常に有効であった.肝硬変20例, 肝炎9例のビ漫性肝疾患においては, CTでは病的所見に乏しく, シンチグラムの方がすぐれていた.また, 両検査併用すると, 診断率は向上し, 有効であった.
  • 田崎 博之, 渡辺 糺, 木根淵 光夫, 島田 徹治, 成原 健太郎, 青木 秀泰, 坂本 道男, 川上 泰正, 池田 忠明, 高原 和享, ...
    1981 年 41 巻 4 号 p. 475-480
    発行日: 1981/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    30歳未満の所謂若年者胃癌の頻度は全胃癌の2%前後といわれているが, その多くは進行末期癌症例である.今回, 私どもは22歳および23歳未婚女性の若年者早期胃癌を経験したので, 文献的考察を加え報告した.いずれもIIc型早期胃癌, mとsm癌で, リンパ節転移はなく, 絶対的治癒切除術が可能であった.主訴は心窩部痛で, 3~5年の病悩期間があり, 胃潰瘍の診断で加療されていた.若年者であるが故に充分な検索もされず, 投薬のみの治療がなされている場合も多く, 少しでも胃に異常を発見した場合はただちに精密検査を施行し, また早期発見, 早期外科的治療の必要性を特に強調した.
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