昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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42 巻, 4 号
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  • 諸星 利男, G. Köppel, 神田 実喜男
    1982 年 42 巻 4 号 p. 409-415
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 水野 光通
    1982 年 42 巻 4 号 p. 417-425
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    中脳中心灰白質背側部 (d-PAG) の局所破壊で針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) の発現が阻止され, d-PAGからは針鎮痛を誘起する刺激 (針刺激) で誘発電位が出現するので, d-PAGに現われる誘発電位を指標として, 針鎮痛を誘起させる経穴の性質について検討した.家兎のd-PAGに慢性的に電極を植えこみ, 誘発電位を出現させる経穴の存在部位を検索すると, 耳根部の限局した部位 (径約6mm) から直下の筋に到達する施針を介する刺激によってのみ, d-PAGに誘発電位が出現し, この部位をはずれるか, 非経穴部とされている他筋の刺激では誘発電位は出現しなかった。また, 誘発電位は刺激の強さが軽い筋収縮をきたす程度になると出現した.従って, 経穴は約6mmの拡がりをもって筋に存在していることが明らかになった.経穴部と同定された筋中に見出される神経を電気刺激すると, 刺激の強さに関係なく, 経穴部刺激の時と同じ振幅, 同じ波型の誘発電位が出現し, 経穴部に由来する求心性神経は特異的にd-PAGに連絡していることが推定された.d-PAGには経穴部に施針した針に強い刺激を与えると, 潜時の長い誘発電位が新たに出現する.この誘発電位が針鎮痛の発現に関係のない皮膚に由来する誘発電位であることは, 1) 皮膚をプロカインで麻酔した時, 潜時の長い誘発電位のみ消失し, 経穴部に由来する誘発電位には影響が現われなかったこと, 2) 経穴部の筋中の神経の刺激では潜時の長い誘発電位が出現しなかったこと, 3) 施針の方向を垂直に, あるいは斜めにしても筋の経穴が刺激されていれば, 誘発電位に影響が見られなかったことなどから確かめられた.PAGの中央外側部 (1-PAG) からは, 経穴部の刺激によってd-PAGに現われる誘発電位よりも潜時の短かい誘発電位が出現した.教室の従来の研究によって, 針鎮痛の求心路には抑制系からの抑制を受けている系 (R1) と, 受けていない系 (R2) とがあり, d-PAGはR2系に, 1-PAGはR1系に属するといわれているが, R1, R2系を誘発電位の潜時から同定することができた, 更に, PAGよりも上位のR1系とR2系に属するといわれている部位を誘発電位の潜時から同定した.その結果, 視床下部前部には誘発電位の潜時の短かいR1系に属する部位と, 潜時の長いR2系に属する部位があり, 海馬背側部, 手綱核, 視床正中中心核内側部の誘発電位は潜時が長いのでR2系に属することが判明し, 先に局所破壊で同定された針鎮痛の求心路と一致する結果が得られた.
  • 水野 光通, 高橋 厳太郎
    1982 年 42 巻 4 号 p. 427-431
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラットの尾逃避反応を痛みの閾値として, 針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) を検した時, 脳下垂体の除去で針鎮痛が消失することが本教室の研究で明らかになったが, マウスにphenylquinoneを投与して現われる身をもだえる反応 (Writhing test) を痛みの閾値とした時は, 脳下垂体の除去で, 針鎮痛の効果が消失しないという報告があるので、これらとは別の痛覚測定法である発声法を痛みの閾値とした時の脳下垂体の除去の針鎮痛に対する影響をラットで検した.発声法による痛みの閾値の測定は, ラットの尾に2本の電極を挿入し, これに電流を流し, ラットが発声を起こす電流の値とした.針鎮痛はラットの足三里に相当する前脛骨筋に低頻度刺激 (1Hz) を与えて誘起した.脳下垂体を除去すると尾逃避反応では痛覚閾は不変であるのに反し, 発声法で検した痛みの閾値は著しく低下し, 正常値の半分になった.脳下垂体除去後は, 針鎮痛も, 針鎮痛と同程度の鎮痛を発現する腹腔内投与の0.5mg/kgモルヒネによる鎮痛もともにその出現が阻止された.尾逃避反応で検した針, モルヒネ鎮痛の発現の時間経過と, 発声法で検したそれとを比較すると両者はよく相関し, 針鎮痛では相関係数γ=0.93 (p<0.001) でモルヒネ鎮痛ではγ=0.98 (p<0.01) であった.視床下部弓状核にはβ-エンドルフィンとACTHが共存し, 弓状核からはβ-エンドルフィン作動性ニューロンが中脳中心灰白質や橋へ分布しているといわれている.従って弓状核と鎮痛発現の下行性抑制ニューロンとの連絡が考えられるが, 弓状核が鎮痛発現の遠心路にあたっているか, 求心路にあたっているかは, 刺激による鎮痛が, 刺激終了後も長く持続するか否かを検すればよい.針鎮痛発現の求心路と同定されている中脳中心灰白質背側部の刺激によって現われる鎮痛と, 弓状核刺激による鎮痛とを比較した.両者に600msecの間に80Hzの漸増する2柑性波が出現する刺激電流を150μAで毎秒1回の割合で10分間与えると, 前者の刺激による鎮痛は刺激終了後も75分間持続したが, 後者の刺激による鎮痛は刺激の期間中にのみ出現したので, 鎮痛発現の求心路の活動によって脳下垂体から遊離された物質が弓状核を活動させ鎮痛が発現する可能性が示された.
  • 田中 正明
    1982 年 42 巻 4 号 p. 433-440
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) はオピオイドの拮抗剤ナロキソンで完全に拮抗されるので, この鎮痛の発現には内因性モルヒネ様物質 (MLF) が関与するが, 更にこの鎮痛の有効性には個体差があり, これは脳内のMLFの含有量の個体差と相関し, D-phenylalanine (DPA) によって有効性の個体差が消失することなどが従来の本教室の研究で明らかにされている.DPAが針鎮痛無効動物の鎮痛を増強する作用の本態を検索するため, 針鎮痛の発現に関与するMLFはメチオニンエンケフアリン (Met-E) かβ-エンドルフィン (β-E) であると仮定し, 脳室内に投与したMet-Eとβ-Eによって誘起される鎮痛に対するDPAの作用を検した.更にDPAはcarboxypeptidase Aの阻害剤と言われているので, 他のペプチド分解酵素阻害剤のMet-Eなどの鎮痛に対する作用を検し, DPAのそれと比較した.痛覚閾はラットの尾逃避反応の潜伏期とした.Met-Eは分解され易いので脳室内に留置したカテーテルを介して与え, またMet-Eとしてはaminopeptidaseの作用をうけにくい〔D-ala2〕-Met-Eを用いた.10μg〔D-ala2〕Met-Eの脳室内投与によって現われる鎮痛は腹腟内投与の250mg/kg DPA, あるいは脳室内投与の80μg DPAによつて著しく増強された.脳室内投与の3μgβ-Eの鎮痛作用も脳室内投与のDPAによって同じ様に増強された.また脳室内投与の1.5μgモルヒネによる鎮痛も脳室内投与のDPAによって増強された.carboxypeptidaseの阻害作用がDPAよりも強い3-phenylpropionic acid (3PPA) は腹腔内投与 (100mg/kg) でも, 脳室内投与 (300μg) でもMet-Eの鎮痛作用に全く無作用であった.carboxydipeptidaseの阻害剤bacitracin (50mg/kg腹腔内投与) は針鎮痛有効群, 無効群の0.5mg/kgモルヒネ鎮痛に全く影響を与えなかった.carboxydipeptidaseとaminopeptidaseに対する各種阻害作用をMet-Eの代謝産物tyrosyl-glycyl-glycineとtyrosineの定量で検した結果, carboxydipeptidaseに対する阻害作用は.o-phenanthroline>TG>bacitracin>3PPA>DPAの順に強く, aminopeptidaseに対しては, bacitracin>puromycin>o-phenanthroline>3PPA>DPAの順に強く, DPAは両酵素に対し最も弱い酵素阻害作用を示した.以上の結果からDPAの針鎮痛の増強作用はDPAがMet-Eやβ-Eの分解酵素を阻害したためではなく, それ以外の作用である事が判明した.
  • IV強縮によって減少した収縮高の回復に対する傍脊椎施針の促進作用
    佐藤 三千雄, 武重 千冬
    1982 年 42 巻 4 号 p. 441-447
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ネンブタール麻酔下で, 生体に付したままの状態でモルモットの腓腹筋の単一収縮をトランスジュサーを介して記録し, 強縮刺激 (10Hzの極大刺激を60分間) を与えると収縮高は極端に減少する.この単一収縮高が減少した状態を, 筋に“こり, , が発生し疼痛が出現した状態と見做し, a) 強縮筋に直接施針するか, b) 脊椎の傍筋に施針を行い, 対照の施針を行なわなかった側と強縮刺激後の減少した収縮高の回復過程を比較すると, 施針を行わなかった側の収縮高は実験期間中 (約10時間) 減少したままであったのに比し, 施針を行った側の短縮高の回復は著しく促進され, 前者のa) による施針では約6時間後に, 後者のb) による施針では約2時間後にほぼ正常の収縮高に復帰した.前者のa) の施針の効果は支配神経である坐骨神経を切断して約1週間後, すなわち除神経後は出現しなくなったが, 後者のb) の施針の効果は坐骨神経の切断で出現しなくなった.傍脊椎施針による強縮後減少した収縮高の回復促進作用は, 腰椎のL4, L5, L6, 及び仙椎S1の脊椎傍施針でほぼ同じ様に出現したが, L3及びS2の傍施針では出現しなかった.この様な効果を現わすのは脊椎の側方5~10mmの筋への施針であり, 皮膚の施針では効果は出現しなかった.傍脊椎施針の効果はアトロピンの静脈内投与によって出現が阻止された.以上の結果から施針の効果は, 強縮刺激によって減少した筋の血流が施針によって改善され, 筋の収縮に必要な物質の供給が改善されたのがその原因と考えられ, 強縮状態で血流が減少したために蓄積された発痛物質が, 施針による血流の増大によって排除され鎮痛が誘起されると考えられる.強縮筋への施針による血流の改善は軸索反射によって, また傍脊椎の施針による血流の改善は, 坐骨神経中に含まれている筋の血流を調節するコリン作動性神経の活動による体性―自律反射によって誘起されると推定された.
  • 清水 比登実
    1982 年 42 巻 4 号 p. 449-457
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    下垂体後葉神経分泌細胞の細胞体は, 間脳視床下部視索上核 (SON) 中に存在することが逆行性刺激によって同定されており, この神経分泌ニューロンの自発発火活動は血中ADHレベルを反映することが知られている.著者は, ウレタン麻酔下のウィスター系雄ネズミを用い, 逆行性刺激で同定されたSON神経分泌ニューロンの自発発火活動を連続記録した.Trimethaphan (TM) 及びSodium nitroprusside (SNP) の投与で, 人為的に血圧を低下させた時や脱血時のSON神経分泌細胞の自発発火活動の変化, 更にこれらの状況下で, 求心性神経を附したままで分離した一側の頸動脈洞の100, 150及び200mmHgの加圧刺激によるSON神経分泌細胞の自発発火に及ぼす影響を追求した.脱血によりADH分泌が促進されることはよく知られており, この時のADH分泌調節は, 循環血液量の減少により左房容量受容器が, また血圧の低下により頸動脈洞圧受容器が, それぞれSON神経分泌ニューロンに入力して, 神経分泌細胞の自発発火活動を増大すると考えられている.TM及びSNP投与によって, 収縮期圧が前値の1/2~2/3に低下した時は, 脱血時と同様に, ほとんどのSON神経分泌細胞のユニット活動は増大し, 人為的低血圧時に, 血中ADHが増加することが示唆された.脱血あるいは人為的低血圧時, 一側の分離した頸動脈洞加圧刺激を行うと, 神経分泌細胞の自発発火活動は明らかに抑制された.頸動脈洞刺激圧の上昇に応じて, SONユニット活動の抑制程度も増強された.低血圧時は平常圧時に比し, 同程度の頸動脈洞加圧刺激で, ユニット活動はより強く抑制され, 平常圧時よりも低い刺激圧でSON神経分泌ニューロンの自発発火活動の抑制が出現した.また一部のユニットで, 頸動脈洞加圧刺激による自発発火活動の抑制に続いて, 一過性の発火頻度の増大が観察された.以上より, 頸動脈洞に加えた圧刺激の程度に応じて圧受容器からの神経分泌細胞への入力が増大し, SON自発発火活動がそれに応じて抑制されることが示唆された.さらに, 低血圧時に, 頸動脈洞加圧刺激によるSON神経分泌細胞の自発発火活動の抑制の閾値が低下するのは, 刺激圧を加えた頸動脈洞以外からの神経分泌細胞への入力が低下しているためと考えられる.
  • 坪水 敏夫, 古屋 章, 小田切 統二, 足立 満
    1982 年 42 巻 4 号 p. 459-463
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    アレルギー性疾患の診断, 治療に抗原の検索は重要であり, I型アレルギー性疾患の代表とされている気管支喘息においても抗原検索のため皮膚反応が広く用いられている.多くの気管支喘息患者はキサンチン誘導体, β刺激剤, chemical mediator遊離阻止剤, 抗ヒスタミン剤などを日常繁用しているが, これらの薬剤の即時型皮膚反応におよぼす影響は, 原因抗原を正確に判定する上で重要と思われる.著者は室内塵を主抗原とする気管支喘息患者を対象とし, アミノフィリン200mg Formoterol (long actingβ刺激剤) 40μg, Traxanox (chemical mediator遊離阻止剤) 90mgフマル酸クレマスチン1mgの常用量を単独経口投与し, house dust (以下HD) 1万倍液0.02mlにて, 経口投与前, 投与後1時間, 2時間, 4時間, 8時間で各々皮内反応を行ない, 各々15分後に判定したが有意な抑制は認められなかった.アミノフィリン200mg, サルブタモール4mg, フマル酸クレマスチン1mgの三者を同時に経口投与し, 上記と同じ時間でHD1万倍液0.02mlにて皮内反応を行なったが, 有意な抑制は認められなかった.又, 5%ブドウ糖250ml中にアミノフィリン500mgを加え, 30分間で点滴静注を行い, 点滴開始前, 点滴開始後15分, 30分, 90分で各々の症例における閾値濃度のHDエキスで皮内反応を行った.テオフィリン血中濃度の上昇とともに皮内反応は抑制され, 血中濃度が多少低下してきても抑制率は大となる傾向が認められた.これはテオフィリンの組織内濃度が時間の経過とともに高くなり, 必らずしも血中濃度とは相関しないためと考えられる.以上の結果より, 従来より使用されているアミノフィリン, サルブタモール, クレマスチンはもとより, 最近開発されてきたlong acting β刺激剤であるFormoterolや, 経口chemical mediator阻止剤であるTraxanoxも単独量服用では皮膚反応にはほとんど影響がなく, 又, アミノフィリン, サルブタモール, クレマスチンの三剤併用でも皮膚反応には影響のないことが明らかとなった.しかしアミノフィリンでは, 点滴静注によりテオフィリン濃度が十分な組織内濃度に至れば, 明らかな皮膚反応の抑制をきたすことが明らかとなった.したがって, アミノフィリン静注後の皮膚反応の実施には十分な配慮が必要であると考えられる.
  • ―動脈血―肺胞気窒素分圧較差による検討―
    内田 伸昭
    1982 年 42 巻 4 号 p. 465-475
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    体外循環による開心術後の低酸素血症の病態生理を知る目的で, 成犬を用いた体外循環実験を行ない, 主として肺におけるガス換気障害の総合的な指標である肺胞気一動脈血酸素分圧較差 (A-aDO2) および換気血流比不均等分布の程度を純粋に反映する動脈血―肺胞気窒素分圧較差 (a-ADN2) を経時的に測定し, 体外循環直後の肺機能障害, とくに肺胞レベルでのガス交換障害について検索し, 更に体外循環中の肺管理が術後の肺機能障害をどの程度予防できるかについて検討した.成犬を4群に分け, I群: 開胸群 (対照群) , II群: 体外循環時間30分, 且つ体外循環中は肺を虚脱させたままの状態にした群, III群: 同60分, 且つ体外循環中の肺管理はII群と同様の群, IV群: 同60分, 且つ体外循環中は気道内に10cm H2Oの陽圧を加えた群, とした.その結果, 以下の結論を得た.1.開胸群および体外循環群共に, PaO2の低下がみられ, とくに体外循環群ではその程度が開胸群に比して大きかった.又, 体外循環が長時間に及ぶ程, PaO2の低下は著明であった.しかしながら体外循環中の肺管理法による差異は認めなかった.2.体外循環群ではPaCO2の上昇, pHの低下が認められ, その程度は体外循環時間が長時間に及ぶ程大きかった.これには死腔換気率の増大と共に末梢循環不全が多大に影響していると推測された.又, PaCO2, pHの変化は体外循環中肺を一定に膨らましておくことにより改善の傾向がみられた.3.開胸群ではA-aDO2, a-ADN2が平行して増大していることより, 術後の低酸素血症には換気血流比不均等分布が多大に関与していることが推測された.4.体外循環群ではA-aDO2とa-ADN2の変動が平行せず, 且つ肺シャント率の著明な増加がみられることより, 術後の低酸素血症にはtrue shuntが多大に関与していることが推測された.5.体外循環中, 肺を虚脱させたままの状態にした群では肺シャント率, 死腔換気率に有意な増加が認められたのに対し, 肺を一定の陽圧で膨らました群ではその増加の程度は軽度であった.以上より, 開胸術後では換気血流比不均等分布が, 体外循環後ではtrue shuntが低酸素血症の主因であることが窺われ, 更に体外循環中は持続的に気道内を陽圧の状態に保つことより術直後の肺機能障害を軽減することが推測された.
  • 東 弘志, 片岡 徹, 鈴木 親良, 石井 淳一
    1982 年 42 巻 4 号 p. 477-490
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    小腸広範切除患者においては適切な術後管理が行われない限り, 消化吸収障害による栄養不全は避けがたい.最近では経中心静脈栄養法 (intravenous hyperalimentation: IVH) および経腸栄養法の開発により, 小腸広範切除後の管理も比較的安全となり, かなり良好な経過をとる症例が増加している.しかしながら, なお不幸な転帰をとる症例も少なくない.小腸広範切除後のいわゆるshort-bowel syndromeとよばれる消化吸収障害を中心とする病態生理は複雑多岐にわたっており, なお未解決の問題点も多く, 今後の臨床的あるいは実験的研究において解決して行かねばならない.今回, 著者らが経験した小腸広範切除症例において, その術後経過を中心に術後管理上の問題点について臨床的検討を行った.著者らは残存小腸2m以下を小腸広範切除として取り扱っており, 過去10年間 (1972.1~1981.12) に12症例を経験し, これを残存小腸1~2mのA群 (5例) と1m以下のB群 (7例) に分けて検討し, 以下の結果を得た.ちなみに, 著者らが開腹術時に測定した小腸の全長は5.5~6.5mであった.それゆえ, 残存小腸1mとは全小腸の15~18%, 残存小腸2mとは全小腸の31~36%がそれぞれ残存した状態となる.予後あるいは社会復帰状況をみると, A群は全例が比較的経過良好であり, 社会復帰した.これに反して, B群では完全とはいえないが, 一応の社会復帰は2例のみで, 他は栄養障害, 術後合併症, 劇症肝炎などで死亡した.術後早期 (Pullan第I期) には下痢と栄養管理が重要で, 全例に下痢を認めた.A群では比較的軽度であり, 止痢剤投与が効果的であった.一方, B群では著明な下痢をみる症例があり, 止痢剤投与のほかIVHが有効であった.栄養管理に関しては, A群ではIVHを必ずしも必要とはせず, 末梢静脈栄養輸液と中鎖脂肪 (MCT剤) を併用した経口栄養でほぼ満足のいく管理が可能であった.しかしながら, B群では術直後からIVHが不可欠であり, MCT剤, 成分栄養法 (elemental diet: ED) を併用した経口栄養で管理した.第II, 第III期の最も重要な問題は栄養管理である.栄養評価として血清総蛋白, 血清総コレステロールでみると, 全体的にみて前者はA群では正常範囲にとどまる症例が, B群では低値を示す症例が多く, また後者ではA, B群とも低値を示す症例が多かった.糖吸収試験としてxylose, 脂肪吸収試験としてtrioleinを用いた検討では, A群では糖, 脂肪吸収とも比較的良好であったが, B群では両吸収とも低下していた.比較的残存腸管の長いA群でも消化吸収は完全とはいいがたいとの印象をうけた.著者らは三大栄養素の中では最も吸収されやすい糖質を中心とした経口摂取とし, 脂肪摂取は極力控えめにし (脱脂肪食) , MCT剤を摂取するよう指導している.A群ではこのような管理でほぼ満足のいく結果を得ているが, B群では状況に応じて常にIVHを考慮する必要がある.そのほか電解質, ビタミン類に関しても, 特にB群では長期経過時には欠乏する傾向があり, 欠乏物質は早急に補給する必要がある.小腸広範切除例では手術時あるいは既往に併施手術が行われていることがあり, これを十分念頭において管理されるべきである.小腸広範切除後は栄養管理を中心に退院後長期にわたる厳重な患者管理を行うとともに, 食生活を中心として患者自身が自己管理できるよう生活指導をすることが大切である.
  • 川口 厳護, 杵鞭 宏育, 上條 一也
    1982 年 42 巻 4 号 p. 491-502
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラット脳および肝mitochondria MAOの基質濃度による基質特異性の変化について検討した.基質β-phenylethylamime, benzylamine, tyramine, dopamine, tryptamineおよびserotoninの濃度を変化させ, それらのMAO活性に対するclorgylineの阻害作用を検討した.Tyramine, dopamine, tryptamineではいずれの濃度の場合も阻害曲線は両typeのMAOによる酸化を示すdouble-sigmoid型であった.一方, benzylamineはいずれもclorgylineに抵抗性を示すsingle-sigmoid型 (MAO-B) であり, 従来の基質特異性の成績と一致した.しかし, ラット肝の場合, serotoninおよびβ-phenylethylamineではその濃度変化に伴い基質特異性は著明に変化した.すなわちserotoninの場合, 低濃度 (0.01-0.05mM) ではclorgylineに感受性の高いsingle-sigmoid型 (MAO-A) を示したが, 基質濃度の増加と共にdouble-sigmoid型へと移行した (MAO-A, MAO-B) .一方, β-phenylethylamineの場合, 低濃度ではclorgylineに感受性の低いsingle-sigmoid型 (MAO-B) を示したが, これに対し高濃度ではdouble-sigmoid型 (MAO-A, MAO-B) を示した.β-phenylethylamineとラット肝mitochondria MAOを用い酸素濃度の変化によるMAO活性への影響をLineweaver-Burkプロット法により検討した.その結果, 肝mitochondria MAO (MAO-A, MAO-B) と, clorgylineでMAOを選択的に阻害した肝mitochondria (MAO-B) で1よ, いずれも酸素濃度の増加につれてMAO活性も上昇し, その際のプロットはいずれもping-pong mechamismでの反応進行を示唆する平行直線群を示した.以上の結果, MAO活性の測定に使用する基質のうち, 特にserotoninとβ-phenylethylamineはその濃度により基質特異性が変化することが判明した.
  • 木村 忠直, 落合 秀正, 陣内 卓雄, 金内 洋一
    1982 年 42 巻 4 号 p. 503-510
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラットの右側大腿部で坐骨神経を切断し, 術後10日, 20日, 30日に摘出した前脛骨筋について, その筋線維における経時的な変化を対照例と比較した.神経切断による筋重量の減少は10日で27.9%, 20日で50.9%, 30日で68.3%に達し, 筋腹横断面積の減少も10日で15.8%, 20日で52.6%.30日で64.0%であった.Sudan Black B染色によって分類した三筋線維型の太さは, 正常側, 手術側ともにすべての例で白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大であったが, 各筋線維間の太さの差は経過に伴って少なくなり, 30日例では中間筋線維は赤筋線維と同大までに, 白筋線維は1.6倍までに縮小した.従って筋線維の萎縮率は白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大であるが, 白筋線維の萎縮率は経過と共に高くなるのに対し中間筋線維と赤筋線維では30日めで, やや高くなる傾向を示した.10日めの筋では核の肥大が見られると共に核小体が明確になり, Central nucleiが所々に認められ, 筋の問質結合組織は10日め, 20日めで増加, 30日めでは減少する傾向があり, また20日例までは, 著しいリンパ球の浸潤が認められた.30日例では筋線維の空胞形成や蛇行および横紋構造の消失が見られた.
  • 鈴木 和郎, 布上 直和, 北村 公博, 浅野 洋治, 中牧 剛, 鶴岡 延熹, 清水 盈行, 杉山 喜彦, 風間 和男
    1982 年 42 巻 4 号 p. 511-517
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    濾胞性リンパ腫について臨床的・細胞学的検索がなされた症例の報告は少ない.著者らは濾胞性リンパ腫6例 (全例, LSG分類で濾胞性中細胞型) を経験し, 臨床病理学的, 特に白血化について検討した.性差はなく, 高齢者に多く, 原発巣はリンパ節であった.白血化している症例は6例中4例にみられ, 骨髄に浸潤している症例を含めると全例であった.白血化した症例の臨床所見, 血液所見に特異的なものはなく, 肝脾腫を伴った例で白血化が多かった.また, 腫瘍細胞がAlP染色陽性を呈した症例, 核型異常46, XY, t (1p-; 7p+) を示した症例, 胸腔内でlargenon-cleaved cellあるいは芽球化したsmallc leaved cellが増殖したと考えられる症例を経験した.
  • 池田 稔, 萩原 信義, 平沼 晃, 阪本 桂造, 岡野 宏二, 清水 泰雄, 青山 亮介
    1982 年 42 巻 4 号 p. 519-522
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    非常に稀れな.X線上明らかな骨傷が認められなかった.胸髄損傷の1例を報告する.症例は, 33歳男性で第10胸椎部を後方で固定され, 前方から第3肋骨部を強く圧迫されて, 背屈を強制されて受傷した.初診時には両下肢麻痺の型であったが, 経過は, 所謂過伸展損傷に見られる急性中心性頸髄損傷に準じた型と考えられた.
  • 鈴木 親良, 片岡 徹, 河村 正敏, 伊藤 洋二, 立川 土郎, 竹元 慎吾, 滝井 努, 李 中仁, 川内 章裕, 河村 一敏, 幡谷 ...
    1982 年 42 巻 4 号 p. 523-529
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Three patients suffering from chronic intermittent arteriomesentric occlusion of the duodenum were successfully treated by duodenojejunostomy with Roux-en-Y anastomosis. In the follow-up study, all patients increased in weight, were free from complaints, showed satisfactory progress and attained social readjustment. It may be emphasized that duodenojejunostomy with Roux-en-Y anastomosis is an effective operative procedure used in treating these patients.
  • 古賀 美保, 清 佳浩, 滝内 石夫, 中村 良子
    1982 年 42 巻 4 号 p. 531-534
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    通常の帯状疱疹の経過中に原発病巣より離れた部位に, 小水萢等の発症をみる汎発性帯状疱疹の2例を経験した.1例はほぼ全身に水痘のごとく播種状に小水疱等が生じた典型的なものであった.2例目は通常の帯状疱疹発症後4~6目にて, 顔面, 四肢, 腰部等に1ケから10数ケ程の皮疹が生じたものであった.これら2例に生じた撒布疹の水疱蓋のSmear標本について, 一次抗体に抗水痘Virus人血清を用い, 二次抗体にFITC標識抗人IgG血清を用いる螢光抗体法により観察した.全ての撒布疹において陽性所見を得た.この結果から, この2症例は臨床的に極めて異なるとはいえ, 病因的にはいつれもVirus血清の結果生じたものと思われた.
  • 岡部 英子, 馬淵 春樹, 岡 嗣郎, 岡本 途也
    1982 年 42 巻 4 号 p. 535-538
    発行日: 1982/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    レントゲン写真上, 片側性上顎洞陰影と骨欠損を認め, 上顎洞試験開洞術を施行したところ, 洞内に乾酪様物質が充満していた上顎洞扁平上皮癌と上顎洞真菌症の2症例を報告した専症例1は59歳の男性で, 右頬部腫脹と右眼球突出を主訴として, 昭和56年7刀に来院.病理組織学約検査から上顎洞扁平上皮癌と診断した.症例2は, 67歳の女性で, 右鼻閉と右血性鼻漏を主訴として, 昭和56年8月に来院.細菌学的検査から上顎洞真菌症と診断した.
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