diisopropy1 1, 3-dithiol-2-ylidene malonate (malotilate) の四塩化炭素 (CCl
4) 誘導性肝障害に対する作用機序解明の試みとして, CCl
4とmalotilate併用時の肝ならびに血清脂質, 血清酵素の変化と, 肝の微細構造変化について検索した.実験には体重170~200gのSprague-Dawley系雄性ラットを用いた.CCl
4肝障害はCCl
4 1ml/kg, s.c.により作成し, malotilateはCCl
4投与と同時に250mg/kgを経口投与し, その後15, 30分ならびに1, 2, 6, 24, 48, 72時間毎に肝と血液を採取し各検索を行った.肝蛋白はCCl
4投与により低下したが, malotilate併用により抑制を認めた.肝脂質はCCl
4投与によりtotal lipid (TL) , total cholesterol (TC) , triglyceride (TG) の増加を認めた.malotilateをCCl
4に併用するとTLならびにTC増加は抑制されたが, TG増加に対しては抑制を認めなかった.血清脂質はCCl
4投与によりTLの減少を認め, malotilate併用によりこの減少は抑制されたが, TC, TGに対する影響は明らかではなかった.血清のtransammase (GOT, GPT) , lactate dehydrogenase (LDH) はCCl
4により上昇を示した.CCl
4にmalotilateを併用するとGOT, GPTの上昇は明らかに抑制されたが, LDHに対する影響はみられなかった.光学顕微鏡による肝の組織学的検索では, CCl
4投与によりみられる脂肪変性は投与15分から2時間においては肝小葉全体にみられる変性が主であるが, 6~48時間には中心静脈周囲に強度の細胞壊死と核の消失がみられる小葉中心性の障害が著明となった.これにmalotilateを併用するといずれの時期においても小脂肪滴による小葉全体の脂肪変性は認めたが, 細胞壊死や核の消失, 大滴性の小葉中心性の脂胞変性はみられず, malotilateのCCl
4脂肪肝抑制作用が著明に認められた.電子顕微鏡による微細構造変化は, CCl4によるmitochondriaやrough endoplasmicreticulum (rER) の膨化と脂肪滴の出現が著明であった.CCl
4にmalotilateを併用すると, mitochondriaの膨化変形は明らかに抑制され, rERの変性や脂肪滴の出現も抑制される結果を得た.今回の実験から, 生化学的にも形態学的にもmalotilateはCCl
4肝障害を抑制することが明らかとなった.
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