胆汁酸の血中より肝への取り込み, 肝内の動態及び胆汁への移行の機構を解明する目的で, 今回, ラット肝灌流法を用いて, 放射性taurocholic acid (以下TCA) の肝への取り込み, 及び胆汁中への排泄をkineticallyに検討し, 又, それに対するtaurochenodeoxy cholic acid (以下TCDCA) , 及びsulfobromophthalein (以下BSP) の効果について検討した.灌流は種々の濃度のTCAを含むHb, albumin-freeのKrebs-Henseleitを灌流液とし, O
295%, CO
25%のbubling下で, 定流量pumpを用いて流速24m
l/minで行なった.門脈より灌流液を“flow-through法”にて流し, 下大静脈の肝静脈付近より回収した.又, 胆管にcannulationし, 胆汁を各5分毎を1 fractionとして採取した.肝への取り込み量は, 灌流液中の濃度より, 肝静脈中へ排泄された分を差し引いた値として計算した.Cholic acid (以下CA) の血中消失は, BSPによって遅延し, 又, 逆に, BSPの消失に対しては, CAが消失遅延を来たす結果を得た.この消失遅延はCAとBSPの肝への取り込みstep, あるいは胆汁への排泄stepで互いに作用し合っていることを予測させた.種々の濃度のTCAを含む灌流液で灌流した場合の, 肝へのTCAの取り込みのtime courseを取ると, 50~300mg/LのTCAのいずれの場合も取り込みは30分でPlateauとなるが, そのVmaxは濃度依存性に増大した.そこで灌流5分間に於ける取り込みをMichaelis-Mentenのplotから得たLineweaver-Burkの逆数Plot法で解析すると, Kmは8.8×10
-6mol/g liver/minで, Vmaxは3.96μmol/g liverであった.このTCAの初速度に於ける取り込みに対するBSPの効果をみると, TCA100mg/Lの灌流液中にBSP50mg/Lで存在させると, TCAの取り込みは約25%阻害され, 更にBSP100mg/L存在下では約30%阻害された.一方, TCAの取り込みに対するTCDCAの効果を検討すると, TCDCAはTCAの取り込みを阻害し, 取り込みのVmaxには作用せずKmを上げ, 競争的な阻害であることが解明された.TCAとTCDCAは肝細胞表面の共通のsiteを介して肝へ取り込まれることを示唆するものである.一方, 灌流30分後の肝可溶性画分へ取り込まれたTCAのKineticsを求めると, そのKmは1.75×10
-4mol/g liver/5minで, これは肝内のY, Z蛋白を中心とした胆汁酸結合蛋白への親和性を示したものと考えられる.更にTCAの胆汁への排泄に対してBSPは, 排泄量には影響を与えず, 排泄の遅延を来たす効果を示した.
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