昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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44 巻, 6 号
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  • 森 義明
    1984 年 44 巻 6 号 p. 725-730
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 森 義明
    1984 年 44 巻 6 号 p. 731-733
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 川辺 修二, 樋口 道生, 滝内 石夫
    1984 年 44 巻 6 号 p. 735-739
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    蛋白分解酵素は, 触媒残基の種類により, serine-, cysteine-, metallo-, carboxyl-proteinaseの4種類に分類される.人起源の蛋白分解酵素阻害物質の中で, これら4種に分類される, proteinase群の複数を阻害する物質は, α2-macroglobulin, anti-thrombin III以外に知られていない.今回, 人血漿中より, 極めて低分子量であり, かつpapain (cysteine proteinase) , trypsin (serine proteinase) 両者の活性を阻害する物質を見出し, papainをmarker enzymeとして抽出した.
    papain, trypsinの阻害活性測定法は, Inhibitor溶液と両酵素をそれぞれpreincubateしたのち, 最大速度の合成基質 (papain-BANA, trypsin-BAPNA) を加え, 反応後分光光度計にて測定した.
    Inhibitorの精製は正常人血漿をAmicon YM 5膜により限外瀉過し, 濾液をAmincon YM 2膜により濃縮した.濃縮試料をSephadex G-25によりgel濾過し, 阻害活性の認められた分画を集め, pH 7.2で平衡化したCM cellulofineを通過させた.このelutionをpH 7.2で平衡化したDEAE cellulo丘neに吸着させその後, 0~0.2MNaC1を含む28 mMリン酸緩衝液 (pH 7.2) にてlinear gradientに溶出させた.この試料を再びAmicon YM 2膜により濃縮し, Sephadex G-25によるge1濾過を施し精製した.Cymotrypsinogen A, myoglobin, DNP-L-alaninをマーカーとして, gel濾過法で求めた本inhibitorの分子量は, 約3, 200と測定された.精製過程のyieldは約14%であり, おおよそ14倍に精製された.
    精製された5figのinhibitorは5μgのpapain, trypsin活性をそれぞれ50%阻害した.ディスク電気泳動上 (15%gel, pH 9.4) 単一バンドに染色された.同時に電気泳動を施した未染色のgelを2mm間隔で細切し, 0.1M TrisHCl緩衝液, pH 7.2を加え, 一晩抽出したところpapain, triypsinに対する阻害活性がほぼバンド部に一致して証明された.
  • 中山 貞男, 栗本 忠, 狩野 元成, 西村 忠典, 坂本 浩二
    1984 年 44 巻 6 号 p. 741-747
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    生後5週齢の雄性自然発症高血圧ラット (SHR) を用い, atenololの脂質代謝に及ぼす影響を, 血清, 肝, 大動脈の脂質レベルを測定することにより検索した.atenololは20, 100mg/kgを1日1回10週間経口投与した.血圧ならびに脈拍数はatenolol投与で投与量に応じた抑制を認めた.血清脂質のうちtriglyceride (TG) はatenolol 100mg/kg投与において有意な減少を認めたが, 他の脂質は明らかな変化を示さなかった.血清GOTはatenolo1 100mg/kg投与で2, 4, 8, 10週目に低下を認めた.肝total cholesterol, TGは投与期間の前半にはatenolol 20mg/kg投与で, 後半には100mg/kg投与で増加の傾向を示した.大動脈脂質の変化はみられなかった.atenololはpropranololなどの他のβ-遮断薬に比べて脂質代謝に及ぼす影響は弱く, 長期使用においても脂質レベルの異常を引き起こす可能性は低いことが示唆された.
  • Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色による検索
    杉山 喜彦, 太田 秀一, 梶山 浩, 滝本 雅文, 渡辺 秀義
    1984 年 44 巻 6 号 p. 749-754
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    以前に報告した悪性リンパ腫と非特異性リンパ節炎を除く疾患群で, ANAE染色の活性がT-cellの量的増加を示した症例を, リンパ節スタンプ標本で検索した.非特異性リンパ節炎の平均値にくらべてT-cellが増加を示したのは悪性疾患6例, 良性疾患16例に認められた.一般的にはリンパ節内の転移性腫瘍周囲においてはLymphocyte depletionの傾向があるとの報告が多い.今回の検索例は悪性腫瘍周囲においてT-cellが増加を示した例外的な疾患群と思われる.良性疾患では6例の結核性リンパ節炎, 3例のPiringerリンパ節炎, 2例の梅毒性リンパ節炎及び好酸球性肉芽腫, Sea blue Histiocytosis, 伝染性単核症, サルコイドーシス各1例にT-cellの増加がみられた.特殊な悪性疾患ではNeuroblastomaとEwing'ssarcomaの腫瘍細胞周囲にT-cellが増加していた.
  • 杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 九島 巳樹, 渡辺 秀義
    1984 年 44 巻 6 号 p. 755-759
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ANAE染色を用いて比較的珍しいリンパ節及び脾疾患の腫瘍細胸内の酵素活性を検索した.2例のHairy cell LeukemiaにおいてB-cell起源を示唆する顆粒状のびまん性陽性像が認められた.3例のHistiocytic Sarcomaにおいては貪食細胞の染色パターンと類似の胞体全体にわたる強陽性の陽性像を示した.5例のProlymphocytic LymphomaではHairy cell Leukemiaと同様にB-cell originを示唆する顆粒状びまん性陽性像がみられた.5例のT-zone Lymphomaにおいては明らかなT-cell様の陽性像は認められず, リンパ球特に腫瘍過程においてはT-cellにおいて, エステラーゼの活性が減少しがちであることを示した.
  • Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色による検索
    杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 九島 巳樹, 渡辺 秀義
    1984 年 44 巻 6 号 p. 761-765
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ANAE染色を用いて特殊なリンパ節炎におけるT-cellとPlasma cell Seriesとの変動を検索した.症例は11例の結核性リンパ節炎, 9例のPiringerリンパ節炎 (Toxoplasmosis) , 2例のサルコイドーシス, 2例の梅毒性リンパ節炎及び3例の伝染性単核症である.結核, Toxoplasmosis及び伝染性単核症にT-cellの増加が目立ったが, 特に伝染性単核症において著明であった.サルコイドーシスと梅毒においてはT-cellもPlasma cell Seriesも増加を示した.特殊な肉芽腫を形成する疾患群でも活動性の病巣とそうでない病巣ではT-cellとB-cellの分布の差があることが示唆された.したがってスタンプ標本による検索のみならず, 組織学的なANAE染色が必要である.
  • ―Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色による検索―
    杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 鶴田 幸男, 九島 巳樹, 渡辺 秀義, 近藤 和男, 夏川 周介
    1984 年 44 巻 6 号 p. 767-770
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    リンパ節内侵襲を示した非リンパ球性白血病12例のリンパ節スタンプ標本におけるT.cellとPlasma cell Seriesの量的変化をしらべた.一般にANAE染色の活性は2例のCMLを除き減少がみられた.2例のAMLではPlasma cell Seriesが若干増加していた.顆粒球系幼若細胞の存在の下にBcellからPlasma cellへの分化が起りうることを示唆していた.1例のAMoLでは著明なANAE活性の減弱とともに周囲リンパ球のBlastic changeを伴っていた.最近の多くの報告は薬物療法の有無にかかわらずBlastic Crisisとともに混合細胞型の白血病やリンパ腫の発生を指摘している.今回の検索では最近の報告における二, 三の所見を反映していた.
  • ―Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色による検索―
    杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 梶山 浩, 滝本 雅文, 九島 巳樹, 渡辺 秀義, 鶴田 幸男, 近藤 和男, 夏川 周介
    1984 年 44 巻 6 号 p. 771-774
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ANAE染色を用いてB-cell起源のDiffuse LymphomaにおけるT-cellのRest Populationを検索した.症例は15例のCLL, 30例のImmunocytoma, 5例のProlymphocytic Lymphoma17例のCentrocytoma及び16例のImmunoblastic Lymphomaである.ANAE染色によるDroplet cellのパーセントは症例によりかなり変動がみられたが, 平均値ではImmunoblastic Lymphomaが最も高値を示し, CLLが最も低かった.Bcell起源でしかもdiffuseな増殖パターンを示すリンパ腫の中にもかなりのT-cell Rest Populationが存在することが示唆された.これはB-cell Lymphomaの中にTγの絶対数の増加を示したという報告やANAE negativeのT-ce11の存在を考えれば, 今回の検索で示された値より, さらに多いT-cell Restが存在することが考えられる.
  • ―Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色による検索―
    杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 九島 巳樹, 梶山 浩, 滝本 雅文, 渡辺 秀義, 飯田 善樹, 鶴田 幸男, 近藤 和男, 夏川 ...
    1984 年 44 巻 6 号 p. 775-778
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    28例の転移性リンパ節腫瘍周囲のT-cellとPlasma cell Seriesの変動をリンパ節スタンプ標本によるANAE染色を用いて検索した.16例の転移性癌の4例のみT-cellがやや増加を示したが一方Plasma cell Seriesは比較的保たれており, 数例ではかなり増加していた.NeuroblastomaとEwing-SarcomaではT-cellがかなり増加を示していたがその機序は不明であった.甲状腺の髄様癌ではPlasma cell Seriesの比較的増加がみられた.6例中5例の未分化腫瘍ではANAE活性, 特にT-cellにおける活性の減弱を示していた.悪性腫瘍の予後に関する一因子としてT-cellの機能やリンパ節のT-zoneの状態が, 特に原発巣の所属リンパ節に関して述べられている.悪性腫瘍の増殖や転移に対する防禦機序の解明が待たれる.
  • ―計量的・免疫組織化学的研究―
    塩川 章, 風間 和男, 田代 浩二
    1984 年 44 巻 6 号 p. 779-790
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    剖検例より採取した大腿骨骨髄をもちいて, 組織切片上で単位面積あたりの有核細胞数 (NBMCC) および形質細胞数 (PLC) の算定と, 酵素抗体法による形質細胞内免疫グロブリン型の半定量的計測をおこない, 生前に測定された血清免疫グロブリン濃度との対比をおこなった.血清免疫グロブリン値が正常範囲であり, かつ, 免疫グロブリン異常をきたしやすい疾患でない症例を対照群とすると, 対照群では厚さ3μの切片上でNBMCCは3937±1699/mm2, PLCは39±34/mm2, 形質細胞比率 (PLR) は0.99±0.66%であり, 従来報告されている胸骨・腸骨のPLC, PLRとほぼ一致する.NBMCCは加齢に伴う減少傾向がみられるが, PLR, PLCでははっきりした相関はみられない.女性は男性よりもPLCが低値をとる傾向がある.血清γグロブリン値 (γ-G) とPLC, PLRは対照群ではPLCの方により高い相関関係がみられ, γ一Gの異常な増減のある場合はPLC, PLRともに相関がより高くなる.肝硬変ではr-Gの増加に伴いPLC, PLRが増加するが, γ-G正常な肝硬変でもPLC, PLRの増加がみられる.PLC/γ一G, PLR/γ一Gは対照群では39.7±32.2, 0.96±0.63であり, 他の群でも大きな差はない.しかし, γ-G正常な肝硬変と多発性骨髄腫では著しく高値であり, 前者では正常形質細胞で産生された免疫グロブリンの異化の亢進が考えられ, 後者では腫瘍化した形質細胞の免疫グロブリン産生能低下による形質細胞1個当たりの免疫グロブリン産生率の低下が推定される.PLCとPLRとを比較すると, 反応性のγ一G変動に対する相関はPLCの方がやや高く, 各群におけるデータのバラツキもPLCの方がより少ない傾向にあり, 骨髄形質細胞の量的異常の指標としてはPLCがより優れていると考えられる.また, 形質細胞の分布の不均一に対する修正は骨髄塗抹標本では難しいが骨髄組織標本においては容易であるので, 従来の骨髄塗抹標本による相対的な算定ではなく骨髄組織標本による絶対数の算定の方がより適当である.形質細胞内免疫グロブリンはIgGが優位でIgA, IgMがっぎ, IgD, IgEは痕跡的であり, κ鎖はλ鎖とほぼ等しいかやや多い.このうち, α, ε, μ, κ, λ鎖のいずれかの異常値を示す症例がみられたが多発性骨髄腫を除いてはpolyclonalであり, 血清免疫グロブリンとの間の関連はみられなかった.
  • 大沢 尚美
    1984 年 44 巻 6 号 p. 791-800
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    PHA芽球ならびにEBV-LCLを標的細胞としてヒトCML標的抗原について検討した. (1) PHA芽球を標的細胞として家族間で行ったCMLでは, エフェクター細胞は, 刺激細胞には存在するが反応細胞には存在しないhaplotypeを認識して細胞傷害を示す. (2) 非血縁者間で行ったPHA芽球を標的細胞としたCMLにおいて, HLA-B抗原で感作されたエフェクター細胞はHLA-B抗原を共通に持つ第3者の標的細胞でも明らかに細胞障害性に働くが, HLA-A抗原で感作されたエフェクター細胞は, HLA-A抗原を共有する標的細胞に対して弱い細胞傷害を示すか, または傷害性を示さない. (3) EBV-LCLを標的細胞にすると, HLA-DR抗原の異なる刺激細胞で感作されたエフェクター細胞は, HLA-DR抗原を共有する第3者のEBV-LCLに対して傷害性を示したが, extra reactionが存在するためDR抗原の標的抗原としての意義を確認しえなかった. (4) このextra reactionは, MLRにより作成されたエフェクター細胞の中にK562cell line (赤芽球由来) に対し傷害性を示すsubsetがあり, 標的細胞に用いたEBV-LCLにはNK感受性の高い株細胞が認められることから, natural killingで説明しうるものと思われた. (5) HLA-DR4を共通に持ちHLA-Dが異なるHTCから樹立したEBV-LCLを標的細胞に用いると, 標的細胞が共通に持つHLA-DR4抗原に対しては細胞傷害が認められず, 相異なるHLA-DYTならびにDKT2抗原に対して明らかな細胞傷害が認められたことから, EBV-LCLを標的としたCMLの標的抗原はHLA-D抗原であることが示された.
  • 大場 文夫, 細田 周二, 和田 裕子, 瀬戸 明, 浜本 鉄也, 神田 実喜男
    1984 年 44 巻 6 号 p. 801-809
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    70%エチルアルコールその他により弱毒化されたハブ毒 (Trimeresurus flavoviridis flavoviridis) をマウス・家兎に静脈投与し, 主としてラ氏島をほぼ特異的に出血させる方法を実験病理学的に応用して, ラ氏島さらには膵腺房細胞に与える弱毒化ハブ毒の影響を検討した, 1) 本実験におけるハブ粗毒静脈投与では出血の主なる標的臓器は肺であり, 被験動物の多くは肺出血で死亡し, また膵には内分泌外分泌とも大きな影響を与えなかった.2) 特に70%エチルアルコールによる弱毒化ハブ毒投与では出血を起こす標的臓器は, 肺から膵のラ氏島へと選択的に移行した.3) アルコールトキソイドハブ毒のラ氏島に出血を引き起こす毒量は, 22g±2gのマウスに対して1.00mg~2・00mgで, これより多ければ死亡, 少なければ出血には至らずに終わった.4) さらに0.50mg/1マウスという低濃度投与群においては, ラ氏島には全く出血は認められなかったが, 膵腺房細胞には比較的広範な空胞変性及び空胞化が認められ, この空胞をPAP法にてAmylase染色をしてみると陽性に染まることが多く, 免疫組織化学的にはハブ毒は膵過分泌を誘導することが示唆された.5) 家兎において血中Amylaseは最高2.6倍程上昇し, Amylase分画はP型が優位であり, 弱毒化ハブ毒は血液生化学的にも膵外分泌部に相当な障害を与えていることが示唆された.6) 文献的にハブ毒はHR・1, HR-2という二種の出血因子を有することが知られているが, これらには細胞毒性がないといわれており, 膵腺房細胞の退行性病変は, 細胞毒性を有するハブ毒のもつプロティナーゼの影響が考えられた.7) 以上の点から, 弱毒化ハブ毒を用いた膵障害モデルは, 今後ハブ毒の出血因子に着眼すればラ氏島出血, 細胞毒性のあるプロティナーゼに着眼すれば細胞障害性の各々の膵障害モデルに利用出来るのではないかと考えられ, 実験的膵障害モデルの開発の上で価値があると思われる.
  • 張 良摂
    1984 年 44 巻 6 号 p. 811-819
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒストンはDNAと共にクロマチンの主成分をなし, 有核細胞内にはほぼ等量含有されている.ヒストンは塩基性蛋白質で分子内のリジンとアルギニンの比により分子量約10, 000-20, 000の5種類の分画 (H1, H2A, H2B, H3およびH4) に分類されている.ピストンはDNA二重鎖の深い溝に沿い規則的に配列し, DNAの燐酸基と静電気的に結合しDNA分子の生理的機能を調整していると考えられている.上記ピストンの5分画中H4の一次構造は如何なる蛋白質分子でもほぼ同様であるのに反し, H1は生物の種により著しく相違するため, その生理的意義が注目されている.
    本研究ではこれまで余り知られていない豚蛔虫 (Ascaris lumbricoides var.suum) のピストンが高等生物のそれとどの程度類似しているかを検討した.豚蛔虫の筋肉を0.32Msucrose-3mMMgCl2溶液で1: 10のhomogenateを作成し, 遠心分離により得た核分画を出発物質としてピストンの抽出を行った.これを0.25NHCIで抽出し総ヒストンを得, 次いで過塩素酸, エタノールおよび塩酸等の添加により前述のヒストン5分画を逐次抽出した.これらの分画がH1-H4に相当することをアクリルアミドゲル電気泳動のパターンより確認した.従って豚蛔虫は高等生物と同様にH1-H4の5分画を含有することが明らかになった.これら5分画を合せた総ヒストンのアミノ酸組成を検討した結果, その組成は仔牛およびマウス胸腺および肝臓の場合と殆んど同様であった.またリジン/アルギニン比でもほぼ同様の結果が得られた.一方, 蛔虫のDNA含量は高等生物の約半分に過ぎず, 従ってピストン/DNAの比は高等生物の約2倍となりこの値は今迄報告された多くの結果と著しく相違した.また5分画の総ヒストンに対する割合はそれぞれ27, 8.8, 44.8, 5.4, 4.0%で, これは高等生物でみられる各々一定の割合に比し著しく特異的である.即ちH1およびH2Bの含量は高等生物の約2-3倍で, 反対にH2A, H3およびH4では著しく低い.この分画のもう一つの特徴は他の生物ではごく稀にしか見られないメチオニンを比較的多く含有していることである.
    今回の研究により豚蛔虫は高等生物と同様にヒストンの5つの分画を皆含有しているがその含量の割合は著しく異なることが明らかになった.また蛔虫では他の生物の場合と同様にH4分画の強い類似性とH1分画の生物種による相異も観察されたが, 総ヒストンのアミノ酸組成およびリジン/アルギニン比は高等生物の場合と驚く程一致していた.この結果はヒストンが多くの生物種においてきわめて高い類似性を示す蛋白であるとの結論を強く支持している.
  • 河 昌宇
    1984 年 44 巻 6 号 p. 821-829
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    各種アミノ酸のうち, ロイシン, イソローイシン, バリン等の分枝鎖 (branched-chain) アミノ酸の分解過程の第一段階, すなわちアミノ基転移反応に関与するBranched-chain amino acid aminotransferase (EC2.6.1.42) は多くの臓器に含まれている.本酵素は主に非肝臓器に分布し細胞内局在性は主として可溶性分画とされている.またこの酵素にはアイソザイム (isozyme I~III) が存在し, 例えば癌化に伴いそのうち皿型が著明に出現することが知られている.本研究ではこれまであまり知られていない豚蛔虫 (Ascaris lumbricoides var. suum) 中の本酵素の細胞内局在性, 酵素化学的性質, アイソザイムの存在等の検討を行ない他の生物での成績と比較検討した.実験ではまず雌の豚蛔虫のホモジネートを作成し, 続いて常法に従い遠心分離によりミトコンドリアと上清分画とに分離した.上清分画はさらに酸沈殿, 硫安分画, 塩析等の操作を行ない得られた標品のDEAE-celluloseカラムクロマトグラフィーによる溶出パターンよりアイソザイムの検出を行なった.蛔虫の腸管, 卵巣, 筋肉では比較的高い本酵素活性が認められ, 前2者の場合ロイシンで最大の活性が得られたが, 筋肉ではむしろバリンで活性が高く, 臓器による基質特異性の差違が認められた.細胞内局在性はいずれも主として上清分画に認められたが筋肉ではこの場合も前2臓器ほどの著明な局在性は認められなかった.本酵素は比較的熱に不安定で, 例えば50℃, 5分間の熱処理により約90%の酵素活性の失活がみられた.至適pHはいずれも8.5附近でこれらの成績はラット心臓での結果とよく一致する.メルカプトエタノールとピリドキサール燐酸の添加による本酵素活性への影響を検討したところ, 両者の添加により著明な活性の増加がみられた.卵巣および筋肉ではアイソザイムのうち1型のみの存在が確認されたが, 腸管ではこれに加えてこれ迄齧歯類 (例えばラット) の肝臓にのみその存在が知られているII型の存在が確認された.しかし, いずれの臓器でも癌化に伴い著明に出現するIII型アイソザイムの存在は確認出来なかった.
    以上の成績は分枝鎖アミノ酸の主要代謝臓器が肝臓以外の筋肉組織であるとの高等動物の成績とよく一致する.蛔虫腸管に分枝鎖アミノ酸のうち特にロイシンのみを主に代謝するアイソザイムIIが存在する意義は目下不明である.しかし, ロイシンの酸化は他のアミノ酸の場合に比し効率よくATPを産生し, またロイシンはコレステロールの前駆物質β-ハイドロオキシン-β-メチルグルタールCoAへと代謝されるので, このアイソザイムの存在は蛔虫腸管での消化液や卵の作成と密接に関連している可能性が示唆される.
  • 安原 一, 小口 勝司, 小林 真一, 植田 俊彦, 寺本 輝代, 木内 祐二, 山田 二三夫
    1984 年 44 巻 6 号 p. 831-834
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健康成人に対するcatecholamineの薬理作用とその心電図特にT波面積に及ぼす作用を検討した.用いた薬物はnoradrenaline (Nad) 0.5mg, adrenaline (Ad) 0.4mg, isoprotereno1 (Isop) 0.05mgと生食で, これらを無作為に皮下投与した.血.圧, 脈拍, 症状および心電図をそれぞれ投与前, 後で比較した.さらに心筋酸素消費量の目安としてKatz index (平均血圧×心拍数) とPressure Rate Product index (PRP index, 収縮期血圧×心拍数) を用いた.AdとIsopを投与した場合には収縮期血圧の上昇と拡張期血圧の低下, 心拍数の増加が認められ, Katz index, PRP indexの増加, T波面積の減少が認められた.これに対してNadでは収縮期および拡張期血圧の上昇と心拍数の減少が認められたが, Katzindex, PRPindexはほとんど変らず, T波面積はやや増加傾向を示した.これら薬物によるPRP indexとT波面積の変化には有意な負の相関が認められた.以上AdとIsopの投与によるT波面積の減少作用は心筋酸素消費の増加による相対的な心内膜下心筋の虚血が一部に関与する可能性が示唆された.
  • 鈴木 薫, 佐々木 聰, 川端 善司, 横田 朝男
    1984 年 44 巻 6 号 p. 835-840
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    皮膚, 筋肉症状が先行し, 経過中に内臓悪性腫瘍が発見された成人の皮膚筋炎2例と, やはり典型的皮膚, 筋肉症状で発症した小児皮膚筋炎1例を報告した.症例1: 65歳, 女性.経過中に肺癌が発見され, 手術適応なく, 発症後, 約1年1カ月で死亡.症例2: 49歳女性.皮膚, 筋症状出現後, 約1年10カ月後に結腸癌が発見され, 直ちに摘出術施行.術後, 皮膚症状, 筋症状とも軽快し, 現在, 経過観察中である.症例3: 8歳, 女児.急激に発症.副腎皮質ホルモン剤によく反応し, 漸減療法中.過去10年間の皮膚科領域における悪性腫瘍を合併した皮膚筋炎84例を検討すると, 皮膚症状が先行したものが86%で, 悪性腫瘍の症状が先行した13%と比較すると, かなり高率であった.悪性腫瘍の中では, 胃癌が44%と最多であった.さらに小児皮膚筋炎本邦例110例について検討すると, 初発症状としては, 皮膚症状が多く, 約50%であったが, 特異的な酵素の上昇は, 約50%以下で, それほど頻度は高くなく, また, 予後も比較的良好であった.
  • 永島 和男, 扇内 幹夫, 服部 憲明, 塚原 哲夫, 山上 繁雄, 知野 公明, 岡崎 純二, 藤巻 悦夫, 塚原 哲夫, 扇内 幹夫, ...
    1984 年 44 巻 6 号 p. 841-848
    発行日: 1984/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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