昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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ISSN-L : 0037-4342
44 巻, 3 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • ―その抗うつ薬としての臨床応用―
    小口 勝司, 小林 真一, 内田 英二, 安原 一
    1984 年44 巻3 号 p. 299-307
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 杉山 喜彦, Edward SCHWARZE, Hans Konrad MÜLLER-HERMELINK, Karl LENNER ...
    1984 年44 巻3 号 p. 309-315
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    慢性リンパ性白血病 (CLL) とリンパ形質細胞性リンパ腫 (Immnocytoma) の患者の末梢血およびリンパ節のスタンプ標本により, 両疾患における非特異性エステラーゼ活性の相違をしらべた.CLLでは増生を示すリンパ球において反応はごく微弱か全く陰性であった.これに反してImmunocytomaの大多数の症例で, 腫瘍細胞はびまん性あるいは粗大な陽性顆粒が, 胞体内に散在性に認められた.
    ルチーンの光顕的観察ではCLLとImmunocytomaとはしばしば鑑別がきわめて困難である.したがって今回の観察から, 非特異性酸性エステラーゼ染色は両疾患の鑑別にとって一つの重要な補助診断法といえる.
  • 渡辺 浩次, 和田 栄, 小林 真一, 小口 勝司
    1984 年44 巻3 号 p. 317-321
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    人血小板MAO活性に対する種々β-blockersの影響を検討した.酵素材料はplatelet rich plasma (PRP) を使用した.MAO活性の測定はRI法によつた. Indenolol, propranolol, pindolol, Oxprenolol. atenolol, carteololは1mMの濃度で血小板MAOを阻害した.これらのβ-blockersは11~47%血小板MAO括性を阻害した.β-blockersの阻害の強さはindenolol>propranolol>pindolol>oxprenolol>atenolol>carteololの順であった. propranelol, indenolol, carteolol, atenololによる阻害は可逆的で, oxprenolol, pindololによる阻害は非可逆的であった.またpropranolol, indenolol, pindololは血小板MAOを競合的に阻害し, oxprenolol, atenololは非競合的に阻害した.更にpropranolol, Oxprenolol, indenolol, pindolol, carteolol, atenololのKi値はそれぞれ1, 1.9, 1, 1.6, 4.4, 2.7mMであった.これらの結果より, β-blockersによる人血小板MAO活性への阻害は弱く, propranolol, indenolol, pindololはactive siteあるいは少くともその近くで人小血板活性を阻害することが示唆された.
  • ―一男女差について―
    栃原 裕
    1984 年44 巻3 号 p. 323-329
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    最大酸素摂取量と高温下長時間運動に伴う生理反応との関係を調べ, その関係の男女差を検討するため, 最大酸素摂取量 (Vo2max) の大きく異なる男子学生13名と女子学生12名を被検者とした.気温34.5℃, 相対湿度65%, 気流20cm/secの人工気候室内で, 20分間の倚坐安静の後, 70Wの自転車エルゴメータ運動を80分間行なわせた.運動後, 再び20分間の倚坐安静を取らせ回復をみた.実験中, 心拍数, 直腸温, 平均皮膚温, 酸素需要量及び発汗率を測定した.高温下における運動継続に伴い, 男女とも心拍数, 直腸温, 平均皮膚温, 酸素需要量の増大が認められたが, Vo2maxの男女差を考慮に入れると, 高温下長時間運動に伴う酸素需要量の増大は, 男子の方が著しい.このことは, 機械的効率の変動によっても裏付けられた.相対的運動強度 (% Vo2max) と心拍数との間には, 高温下運動各時点において男女とも高い正相関関係があり, しかもその回帰式の傾き, 高さとも男女差がない.高温下長時間運動時の循環器負担は, 各人の% Vo2maxで見る限り, 男女差は小さいことが明らかとなった.% Vo2maxと直腸温との間の相関係数は, 男子のみが運動終期に有意となり, しかも% Vo2maxと心拍数との相関係数よりも低値を示した.% Vo2maxと平均皮膚温及び発汗率との間の相関係数は, 男女とも低値を示し, 全て有意ではなかった.同じ% Vo2maxの運動を行なった後の心拍数は, 男子の方が高水準にあり, また女子の方が回復時の直腸温, 平均皮膚温低下度が大きい.高温高湿下においては, 女子のより小さな産熱量増加や, より大きな (体表面積/体重) 比は, 女子の長時間運動時及び回復時の生理反応に有利に働くと思われた.
  • ―血中CK-MMサブバンドの正常値と急性心筋梗塞症におけるその変動―
    中村 直樹, 鵜澤 龍一, 石井 暢
    1984 年44 巻3 号 p. 331-336
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Agarose film電気泳動法による血中クレアチンキナーゼ (CK) アイソエンザイム分析で, 通電時間を通常の5倍, 120分に延長したところ, 通常fastγ-グロブリン位に単一のバンドとして認められるCK-MMは3本のサブバンドに分かれた (陽極側よりCK-MM1, CK-MM2, CK-MM3とする) .そしてこのCK-MMサブバンド分析を健常人30名を対象として行なったところ, CK-MMサブバンド分画比の個体間差は極めて小さくほぼ一定しており, CK-MM1=56.3±5.2%, CK-MM2=29.5±4.8%, CK-MM3=14.1±2.6% (X±SD) の正常値が得られた.さらにこのCK-MMサブバンドを急性心筋梗塞症で発症後経時的に観察したところ極めて興味ある結果を得た.すなわち, 発症後4~12時間の極めて早期には健常人では最も含量の少ないCK-MM3が著明に高値を示すが, 時間の経過とともにCK-MM3は減少し, これにかわってCK.MM2が, さらに時間が経過するとCK-MM1が主たる分画となり, 発症後36~48時間で正常値に復する.この3本のCK-MMサブバンドのうちCK-MM3とCK-MM1との比CK-MM3/CK-MM1は健常人では0.25±0.02であり, 正常値上限を0.30とすると, 急性心筋梗塞発症後の時間的陽性率は4時間ですでに100%異常高値となり, この異常は8時間後まで持続する.つづいて発症後12~24時間では90%となり, それ以後は経時的に漸減した.これらの結果から, CK-MMのサブバンドの測定, CK-MM3/CK-MM1は発症後極めて早期の急性心筋梗塞症の診断に有用であると考えられる.
  • 那須嘉 資雄, 高木 康, 五味 邦英, 石井 暢
    1984 年44 巻3 号 p. 337-342
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    クレアチンキナーゼ (CK) にはCK-MM, CK-MB, CK-BBの3つのisoenzymesが存在することはよく知られている.最近, さらにCK-MMが電気泳動上3つのサブバンド (陽極側よりCK-MM1, CK-MM2, CK-MM3) に分かれることが確認された.これらCK-MMのサブバンドは急性心筋梗塞症において極めて特異的な変動を示す.すなわち, 急性心筋梗塞発症4時間後には最陰極側の正常時最も量的に少ないCK-MM3分画が正常の3~4倍に増加する.そしてこのCK-MM3は発症後の時間の経過とともに減少し, CK-MM2, CK-MM1がこれに代わって増加してくる.発症後36時間以上経過すると健常と同様のパターン, すなわちCK-MM1>CK-MM2>CK-MM3となる.一方, 心筋ホモジネート中のCKはCK-MM3だけであり, 急性心筋梗塞直後から経過にしたがってかような血中CK-MMサブバンド間の変化を生ずるのは, 血中に逸脱した心筋中のCK-MMが血中で何らかの修飾を受け, CK-MM2, CK-MM1に変化するためと推測できる.このため, CK-MMサブバンド問の変換に関与する変換因子の血中での存否を確認し, その変換因子の物理化学的性状を検索した.方法: CK-MMサブバンド分析はagarose gelを支持体とし, 通常のCK isoenzyme分析の通電時間25分を120分に延長して泳動した後, 螢光染色を施し, デンシトメトリーしてCK-MMサブバンド分画比を算出した.また, CK-MMは, 心筋ホモジネートより, 細胞分画法, イオン変換カラムクロマトグラフィー法にて精製したものを用いた.成績: 1) 変換因子は熱に対して不安定であり, しかも低温でその作用が減弱し, 温度依存性が高い.2) 変換因子の発現は2価の陽イオン, 特にCaイオンに強い依存性がある.3) 変換因子の活性発現にはpH依存性が高く, pH7.0~7.5付近が至適である.4) 変換因子の分子量は約21万であり, 限外濾過法による濃縮が可能な非透析性物質である.5) 変換因子はCM Aft-Gel Blueカラムクロマトグラフィーにより分離分取したprotease分画中に存在し, それに1) ~4) の事実を考え合わせると, この変換因子はproteaseの一種である可能性が極めて強い.
  • 本田 実
    1984 年44 巻3 号 p. 343-348
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    SI (安定同位体) は, RIに比較して利用が限られているのが現状である.SIには, 放射線被曝や環境汚染の心配がないのでもっと利用されるべきであると考えられる.今回, 15Nアスパラギン酸および15N尿素をラットに投与し, 15N排泄を全身照射群と非照射群および担癌個体照射群と非照射群で比較した.照射および担癌状態における窒素代謝に及ぼす影響を15Nをトレーサーとして観察するのが目的である.また, 15Nの腫瘍への経時的なとりこみを, 肝臓, 筋肉などと比較した.なお, 測定は, 質量分析法と発光分光法によった.まず, ほとんど蛋白合成に利用されないと考えられる15N尿素を投与した場合, 照射群の方が非照射群より15N尿中排泄が少い事が観察されたが, 腎に対する照射の影響が考えられた.15Nアスパラギン酸を投与した場合は, 照射群の方が15N尿中累積排泄率が高く, 照射による異化亢進を反映したものと考えられた.次に, 担癌個体の場合を検討するため, A群 (ラットの右大腿に固形腫瘍をつくり, その部に局所照射を行う群) , B群 (固形腫瘍をつくるが, 照射を行わない群) , C群 (正常な右大腿部に照射を行う群) , D群 (コントロール群) の4群について, 15N尿中累積排泄率を比べたが, 照射を行ったA群とC群が高かった.最後に, 15Nアスパラギン酸投与後の15Nの腫瘍へのとりこみをみると, ピークは肝臓と同じく投与後12時間目であるが, 腫瘍へのとりこみの方が, 肝臓の約2倍多かった.これは, いわゆるNitrogen trapと関係があると思われる.従来, 窒素代謝は, 14Cや3Hをトレーサーとして研究されているが, 窒素そのものの動きをみれる15Nは有用であると考えられる.しかし, 測定法が煩雑で時間がかかり, 15N標識化合物が比較的高価で, 希釈されるため比較的大量投与しないと測定できない等, 問題も残っている.
  • 柳沢 宏実
    1984 年44 巻3 号 p. 349-361
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    各種皮膚疾患における浸潤リンパ球のT, B cell分類及びT cellのsubsetを組織レベルで解析・同定する手段として近年A.N.A.E.染色 (acid α-naphtyl acetate esterase) やanti T cell monoclonal antibodyを用いた方法が行なわれる様になり, 浸潤細胞をfree cellの状態ではなく精細に, その機能面に至るまで解析することができる様になったが, これらに関する報告はまだ数少ない. (1) 正常扁桃組織, 各種皮膚疾患60例 (湿疹・皮膚炎・痒疹群17例, 扁平苔癬6例, 尋常性乾癬・類乾癬8例, 皮膚アレルギー性血管炎2例, 多形滲出性紅斑1例, D.L.E.2例, 深在性エリテマトーデス3例, 環状肉芽腫2例, 顔面播種状粟粒性狼瘡3例, 皮膚良性リンパ腺症2例, 尋常性天疱瘡1例, 悪性リンパ腫群7例, 皮膚悪性腫瘍6例) の皮膚組織浸潤細胞について, A.N.A.E.染色を施行し, 検索した. (2) さらに, 正常扁桃組織扁平苔癬については, anti T cell monoclonal antibody (OKT3, 4, 8) による染色を行ない, その成績を検索し, A.N.A.E.染色成績と比較検索した. (3) 扁桃組織のA.N.A.E.染色, anti T cell monoclonal antibody染色の検索成績から, A.N.A.E.陽性細胞は, helper T cel1であることが示唆された. (4) 各種皮膚疾患の浸潤細胞のA.N.A.E.染色所見は次の通りであった.a) A.N.A.E.陰性, Bcell優位の所見を呈した疾患群とそのT/B比は以下の通りであった.湿疹・皮膚炎・痒疹群 (0.5) , 皮膚アレルギー性血管炎 (0.9) , 多形滲出性紅斑 (0.4) , 環状肉芽腫 (0.2) であった.b) 湿疹・皮膚炎・痒疹群では, 平均値でB cell優位の所見であったが, 各症例間にかなりの差異がみられた.これは, 病態の時間的な問題と関連があることが示唆された.c) 環状肉芽腫では, とくにB cell優位であったが, 血管壁への免疫複合体沈着という既報告成績と合せ, 液性免疫機序の関与が示唆された.d) A.N.A.E.陽性, Tcell優位の所見を呈した疾患群とそのT/B比は以下の通りであった.扁平苔癬 (5.5) , 尋常性乾癬・類乾癬 (1.3) , D.L.E. (5.5) , 深在性エリテマトーデス (2.7) , 顔面播種状粟粒性狼瘡 (1.7) , 皮膚良性リンパ腺症 (2.5) , 尋常性天疱瘡 (1.2) , 悪性リンパ腫群 (2.6) , 皮膚悪性腫瘍群 (2.1) であった.e) 皮膚悪性腫瘍周囲の浸潤細胞は, T cell優位であったが, macrophageの存在と総合して, 腫瘍排除の機序に関与するものと考えられた. (5) 扁平苔癬6例のanti T cell monoclonal antibody染色所見で, 表皮直下の帯状浸潤細胞は, A.N.A.E.染色所見と同様にT cellが主体(平均86%)である所見であった.さらに, OKT 4所見で, それらのT cellの70%がhelper T cellであるという成績であった.また, 表皮に隣接する部位程, このhelper T cellの密度が高いという新知見が認められ, これは, 表皮基底細胞が, 本症の発症に重要な因子となっていることを示唆すると考えられた.
  • 藤本 治道, 梶山 浩, 太田 秀一, 三田 〓
    1984 年44 巻3 号 p. 363-368
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Dinitrophenyl-Ficoll (DNP-Ficoll) はThymus Independent type 2 (TI-2) 抗原として知られているが, Mosierらにより, この抗原はnormalおよびT cell-depleted spleen cellsにmitogenesisを誘導しないと報告されている.しかし, NordinらはT cellsあるいはT cell-derived soluble factorが, このTI抗原のハプテン部分に対する抗DNP反応の誘導に強く関与していることを見出し, また最近では細胞間相互作用における, 種々の細胞由来液性因子の重要性が明らかにされつつある.そこで著者らは, DNP-Ficollのmitogenic activityを上記の観点から検討を加えた.すなわち, ヒツジ赤血球 (SRBC) で免疫されたC57BL/6とICR系マウス (8~12週令) の脾細胞を用い, DNP-Ficollと共に48時間培養した時のDNA合成を3H-thymidineの細胞内への取込量 (cpm) で調べた.SRBCの免疫量は4×108cells/マウスであり, 静脈内に投与された.培養された脾細胞の細胞濃度は2×106~5×106cells/mlの割合であり, 添加されたアイソトープ量は10μCi/mlの割合であった.尚, 培養液にはFetal Bovine Serum (FBS) を添加しなかった.得られた結果は以下のようであった. (1) SRBCで免疫後6日目のC57BL/6系マウスの脾細胞を用いた時, DNP-Ficoll (0.0002, 0.002および0.02μg/ml) の添加群では, 対照群と較べ, DNA合成の増加していることが見出された.すなわち, 対照群の8269±360.8cpmに対し, それぞれ9229±418.2, 9477±427.2および9519±462.5cpmであった. (2) 2, 4および8日目の脾細胞では対照群のcpmと変らなかった. (3) 上記6日目のDNA合成の増加は, ICR系マウスの脾細胞でも同様に認められた.すなわち対照群の24500±1986.7cpmに対し, 32062±1009.9, 32618±1215.4および30876±1077.6cpmで, その差は顕著であった. (4) 更に, このICR系マウスでは4日目の脾細胞でもC57BL/6系マウスの6日目と同程度のcpmの増加が見出された. (5) しかし, 脾細胞の代りにnylonwoolcolumnで分離したTあるいはB細胞を用いた実験では, DNP-Ficollの添加によりDNA合成は全く影響されないことが判った.更に著者らは, FBSのmitogenic activityを調べた結果, (6) 1×106cells/mlの細胞濃度ですら5%FBSで2636±55.3, 10%FBSで4084±80.0, 20%FBSで5280±63.5cpmを得た.FBSの代りにsalineを用いた対照群では1073±73.1cpmであった.従って, もし培養液にFBSを加えていたならばDNP-Ficollのmitogenic activityは見出し得なかったであろう.cpmの増加が認められた4~6日目の時期がIgMからIgG抗体産生へのclassswitchの時期に該当していることは興味深く思われた.
  • 野口 久, 横川 敏男, 池田 千鶴, 成松 博, 中島 宏昭, 井出 宏嗣, 高橋 昭三
    1984 年44 巻3 号 p. 369-374
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ウシ血清アルブミン (以下BSAと略す) およびウサギ抗BSA血清によって作製されたImmune complex (以下ICと略す) をラット気管内に注入し, IC結合補体と肺の炎症および組織障害との関係について検討した.ウサギにBSAを免疫し, 抗BSA抗血清を作製し抗原抗体等量域でBSAと抗BSA抗血清を反応させICを作製した.IC気管内注入にあたってウイスター系ラットを以下の5群の実験群にわけた.Group1: BSAのみの群, Group2: ウサギ抗BSA抗血清のみの群, Group3: ウサギ抗BSA抗血清を56℃ 30分加熱非働化してBSAとICを作製した群, Group4: ウサギ抗BSA抗血清を非働化せずBSAとICを作製した群, Group5: ウサギ抗BSA抗血清を非働化してBSAとICを作製し, さらに補体として新鮮ラット血清を3CH50単位37℃30分間反応させた群.IC気管内注入後15分, 8時間, 24時間後に各群ラットを殺し, 肺組織切片を採取し, ヘマトキシリン・エオジン染色を行い, 光学顕微鏡下で肺組織変化を観察した.IC (BSA・ウサギ抗BSA抗体複合体) の経気道的肺注入により急性の肺組織障害を起こすことが認められ, その組織学的変化の強弱や時間的経過には注入したICの性状により差異が認められた.すなわち非働化しなかったウサギ抗体結合IC注入群 (Group4) に比べ, in vivoで活性化された自己補体ないしin vitroで反応させた同種ラット補体の結合しているIC注入群 (Group3ないしGroup5) の方がより早期に強い変化が認められ, またGroup3におけるよりもGreup5において強い変化が認められた.著者の用いたICの抗補体活性で示される補体結合能はGroup4ではほとんど認められず, 一方Group3およびGroup5では強いことから両者の補体結合能の差異が肺組織障害の差になって表われたと考えられた.また補体結合能がGroup3よりもむしろ劣るGroup5において炎症性変化が強かったのは, 注入前にICと反応し活性化した同種ラット補体が関与したものと考えられた.
    Here, we undertook to do an animal model study of acute inflammatory lung injury induced by intratracheal injection of preformed immune complexes. Immune complexes consisting of BSA, rabbit anti-BSA serum were prepared at antigen equivalence. Wistar rats were divided into five groups, according to the complement-fixing property of preformed immune complexes. Group 1: BSA alone (controls) , Group 2: rabbit anti-BSA serum alone (controls) , Group 3 : immune complexes consisting of heat-inactive rabbit anti-serum to BSA, Group 4: immune complexes consisting of non-inactive rabbit anti-serum to BSA, Group 5: in vitroisologous rat complement-fixed immune complexes consisting of heat-inative rabbit anti-serum to BSA. Rats were intratracheally injected with a series of immune complexes by using a teflon catheter, and then sacrificed 15 min. 6 hr and 24 hr later. Diffuse interstitial and intra-alveolar infiltration of polymorphnuclear cells were seen at 6 and 24 hr in Groups 3, 4 and 5, respectively. The intensity of these inflammatory changes was most marked at 6 hr after injection of preformed immune complexes in Group 6. It was suggested that the inflammatory lung pathology may be dependent on the complement-fixing properties of preformed immune complexes.
  • 横川 敏男, 野口 久, 成松 博, 池田 千鶴, 中島 宏昭, 井出 宏嗣, 高橋 昭三
    1984 年44 巻3 号 p. 375-380
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    酵母細胞壁より抽出したzymosan粒子は, 農夫肺の吸入性抗原であるmouldy hay dust (Micropolyspora faeni) と同様にマクロファージを漕性化し加水分解酵素の遊離を促進したり, alternative pathwayを介して補体系を活性化する働きがある.そのzymosanを経気道的にラットの肺内に注入し肺組織障害を惹起させ, 6時間, 24時間, 5日, 14日にて光顕的に観察した.さらにその病変がgold sodium thiomalate (以下GST) , prednisolone, ketoprofenおよびCuchlorophyllinの各薬剤処置によってどの様に変化するかを注入後5日の時点で観察した.zymosan注入後6時間で多核白血球の浸潤が肺胞壁, 血管周囲および細気管支周囲に認められる様になり, 24時間で多核白血球の浸潤は全例に認められた.5日では, 肺胞壁には多核白血球の浸潤はほとんど認められなかったが, むしろリンパ球の浸潤が著明となり, マクロファージの浸潤も認められた.また肉芽腫様変化が全例で認められた.14日における変化は根本的には5日と同様であったが, 5日では認めなかった肉芽腫が認められる例があった.以上の様な肺病変は, zymosanのalternative pathwayを介する補体漕性化とともに, zymosanが異物粒子としてマクロファージなどに食食されて生ずる一連の非特異的貧食反応を介して生ずるものと考えられる.Zymosan注入後5日目の組織変化に対する薬剤の効果は, GSTの処置群では, リンパ球, マクロファージの浸潤・集積および肉芽腫様変化は, いずれも全例で抑制された.prednisolone処置群では, リンパ球の浸潤はやや抑制されており, 肉芽腫様の変化部位にもマクロファージの集積は認められず, リンパ球の集積の程度も弱かった.prednisoloneによるマクロファージの浸潤・集積に対する抑制がみられた.ketoprofen処置群では, 抑制は認められなかった.Cuchlorophyllin処置群では, 多核白血球の浸潤およびリンパ球の浸潤はほとんど認められなかった.これに反しマクロファージの浸潤がめだち, 少数ながらほとんどマクロファージからなる肉芽腫像も認められた.4種の薬剤のうちzymosanにより惹起される肺病変に対し最も抑制が強く認められたものは, GSTであった.
  • 長沼 秀
    1984 年44 巻3 号 p. 381-389
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は, 胞部X線間接撮影では発見されにくい末梢気道の病変, いわゆるsmall-airway-diseaseについて, 某重工業会社の定期, 及び特殊健康診断において, 男子作業員1, 199人を対象に呼吸機能検査spirogramとflow-volume-curveの測定を行いMMF, PEFR, V75, V50, V25値等についてはその診断について有効性を認めた.
  • 松井 和夫
    1984 年44 巻3 号 p. 391-405
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    多くの先駆者が難聴者に対する補聴器のフィッティング法を考案し, 発表している.これらの基礎は難聴者の聴力とその補聴の理論にもとずいたものであろうが, 経験的補正という項目があり補聴器の周波数特性は大幅に調整される.しかし, その補正項目の詳細は不明な点が多く, その資料も乏しい.そこで, 著者は難聴者が長期間にわたって日常使用している補聴器は多くの種類と特性の内で難聴者が適合していると判定しているものと推定し, その難聴者の聴力と使用状態の補聴器の音響特性を測定し, その相関関係をみた.特に後天性難聴 (I群とす) と先天性難聴 (II群とす) の差異について検討した.研究対象と方法: I群は50名, 50耳, II群は85名, 110耳である.難聴者の聴覚測定の資料としては, 純音気導聴力検査と不快レベル検査の結果を用いた.補聴器の音響特性の資料としては, 入力音圧レベル70, 90dBの周波数特性を用いた.結果 (1) 250HzではI群で聴力レベル40 dBまでの難聴者が使用している補聴器の70 dB出力音圧レベルは70dBSPL以下である.すなわち250 Hz帯域の補聴器の利得は0かそれに近い. (2) 聴力レベルが増加するに従って70 dB出力音圧レベルは上昇している.しかしその上限は115 dB SPLである. (3) 250 HzではII群の方がI群より70 dB出力音圧レベルが高い.すなわち補聴器の利得は5~10 dB大きい傾向がある. (4) 500 HzではI群とII群で70dB出力音圧レベルはほぼ等しい. (6) 1000, 2000HzではI群の方がII群より70dB出力音圧レベルがわずかに大である.すなわち補聴器の利得がわずかに大きい. (6) 研究対象者の補聴器の利得はhalf gain ruleより算出した補聴器の利得より全体的に5~20 dB小さい. (7) 補聴器の90 dB出力音圧レベルは聴力レベルの上昇とともに上昇するが, その上限はすべての周波数で平均125 dB SPLである.聴力レベルが大であっても補聴器の最大出力音圧は130 dBSPLより大となるものは少なかった.上記の結果より難聴者が使用している状態の補聴器の利得は従来いわれているものより5~20 dB小さく, また先天性難聴者の方が後天性難聴者より約5 dB小さいが, 低音域では先天性難聴者の方が5~10 dB大きいことが分った.その理由は, 1.オージオメータの規準の変更.2.従来の利得算出方法は選択する補聴器の利得であり, 本研究の利得は使用している補聴器の利得であること.3.研究対象が十分に聴力を活用していないこと.4.先天性難聴者は語音明瞭度より音量感を重視するため.5.補聴器の性能が悪く十分な利得に上げると不快な現象を生ずる.などが推定される.
  • 小松 信彦, 木村 賀津子, 阿部 志津子, 小松 安彦, 松永 浩一, 三浦 春夫, 有泉 雅博, 大野 豊
    1984 年44 巻3 号 p. 407-411
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    外用剤として患部の湿布に用いられるパップ剤に混入した汚染菌のなかからBacillus属の1菌株 (No.24株) を分離し, 菌種の同定を試みた.本菌は普通寒天平板上で活発な運動性集落を形成し, グラム染色が陰性で, 端在性の膨隆した内生胞子を生ずる周毛性桿菌であり, 生化学的性状からもBacillus circuansであることが推定された.B.circulansに近い菌種としてはB.maceransが知られている.両菌種の主要鑑別点は, B.maceransがグルコースその他の糖から酸とガスの両方を産生するのに対し, B.circulansは酸を産生するがガスは産生しないことにある.しかしながら糖からのガス産生能はすべてのB.maceransの菌株に例外なくみられるとは限らず, また必ずしも安定不変の性質とはいえない.現に発酵研究所 (菌株保存機関) から分与されたB.maceransIFO 3490株はガス産生が陰性であり, B.circularsIFO 3329株との区別がっかなかった.そこで我々は諸種の抗生物質に対する感受性を調べたところ, B.maceransはマクロライド系抗生物質 (特にErythromycin) に対して耐性であり, B.circulansとNo.24株は感受性であることが明らかになった.したがって両菌種の簡易鑑別法として, 抗生物質に対する感受性テストが有用であると思われる.
  • 竹内 正雄
    1984 年44 巻3 号 p. 413-423
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラット視床下部の室周視索前核領域におけるsomatostatin (SRIF) ニューロンに対する上位中枢の制御機構を形態学的に検索するために, 抗SRIF血清を用いたPAP法による電顕的免疫細胞化学によって, SRIF様免疫陽性ニューロンにシナプスを形成する軸索終末を観察した.さらに, 5-hydroxydopamine (5-OHDA) 脳室内投与法による5-OHDAの取り込み, または3H-noradrenaline (3H-NA) 脳室内投与後のオートラジオグラフィーとSRIFの免疫細胞化学の組み合わせ法によって, カテコールアミンニューロンとSRIFニューロン間の相関を調べた.室周視索前核領域には, SRIF様免疫陽性の顆粒小胞 (直径80~120nm) を含むSRIFニューロンの細胞体や神経線維が多数観察された.また, これらSRIF様免疫陽性ニューロンの細胞体や神経線維に性質不明の軸索終末が, axo-somaticおよびaxo-dendriticまたはaxo-axonic synapsesを形成している像も多数観察された.これら免疫陰性の前シナプス終末は, その中に含まれているシナプス小胞の種類によって, 明るい球形の小胞 (直径40~50nm) のみを含むものと, そのほかに大きい顆粒小胞 (直径70~100nm) が少数混在するものが区別された.5-OHDA投与法または, 3H-NAのオートラジオグラフィーとSRIF免疫染色の組み合わせ法による観察の結果, 5-OHDA反応陽性終末および3H-NA反応陽性終末が, SRIF様免疫陽性ニューロンの細胞体や突起にシナプスを形成しているものが比較的多数観察された.稀に, 3H-NAの銀粒子が, SRIF様免疫陽性終末の中に少数存在しているのが観察された.そのほか, 室周視索前核領域において, SRIF様免疫陽性終末が, 免疫陰性のニューロンの細胞体や突起にシナプスを形成している像も稀に観察された.これらの所見から, ラット視床下部の室周視索前核領域において, カテコールアミン作働性ニューロンが, シナプスを介してSRIFニューロンの分泌を調節している可能性, およびSRIFとモノアミンが同一神経終末内に共存している可能性が示唆された.
  • ―手術台帳の作製とその使用法―
    金 隆志, 藤巻 悦夫, 田代 善久
    1984 年44 巻3 号 p. 425-431
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    情報検索の道具として整形外科学教室ではタナックカードを利用していたが, 時間と手間の節約を考えて, パソコン使用を決意した.その手始めとして手術台帳を作製するプログラムを作り, データの入力を行った.さらにこれらのデータからどのような情報検索ができるのかそのプログラムを付していくつかの実行例を記す.これらの例によって, データ収納とその使用法を理解され, より多くのデータを入力することで, 従来人手と時間をかけて行っていた症例の統計的検討が, 種々の統計的手法で短時間に出来るようになることを願うものである.
  • 片岡 徹, 廣本 雅之, 趙 成坤, 石井 博, 加藤 貞明, 桜井 俊宏, 鈴木 博, 新井田 修, 松井 渉, 河村 正敏, 竹元 慎吾 ...
    1984 年44 巻3 号 p. 433-439
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胆嚢穿孔は消化管穿孔の中でも発生頻度は低いが, 高齢者に多く, 臨床的に重篤な経過をとることが知られている.今回, 著者らが経験した7例の胆嚢穿孔症例の提示と, 特に穿孔発生の背景として重要と考えられる胆嚢の解剖学的特性, 全身性疾患との関連などについて検討した.教室の過去9年間 (1970~1978) の成人全消化管穿孔症例186例中, 胆嚢穿孔症例は7例 (3.8%) であり, 男女比は0.8: 1, 年齢分布は38~79歳 (平均64.4歳) と, 他の消化管穿孔症例に比べて高齢者に多かった.臨床的状況としては, Niemeierの穿孔型分類ではI型 (開放穿孔) 2例, II型 (被覆穿孔) 2例, III型 (消化管への穿孔) 3例であり, 発症から手術までの病脳期間はI, II型が短く, III型は1, II型に比べて長かった.術前の病態としては, I, II型が腹膜炎, III型はイレウスが多く, 穿孔部位はI, II型では頸部2例, 体部と底部が各1例, III型はすべて底部であった.手術死亡は7例中2例 (28.6%) と, 消化管穿孔症例で部位別にみて死亡率が最も高かった.文献的にみても, Fletcherらの集計, Roslynら, 三宅ら, 教室症例を含めての検討でも, 233例中57例 (24.5%) の手術死亡率であり, I, II型に高い.また, 胆嚢穿孔部位は本邦報告例の集計でみても, 底部に最も多く, 次いで頸部となっている.胆嚢底部は解剖学的に血管の最も少ない領域で, 他の部位と比べて虚血性変化をきたしやすい, また頸部は最も狭く, 胆石が嵌頓しやすいと報告されている.さらに, 切除胆嚢の病理組織学的検索において, sinus of Rokitansky-Aschoffの胆嚢壁における出現頻度はかなり高く, しかも漿膜下層に達していることが多く, したがって炎症が胆嚢深層に波及しやすい状況にある.これらの解剖学的特性は胆嚢穿孔と深い関連があることが推測される.一方, 胆嚢穿孔症例には動脈硬化性の心血管病変, 悪性腫瘍, steroid投与を受けているなど, 全身性疾患という基礎疾患を併存することが多かった.これらの患者では軽度な胆嚢炎でも重篤な穿孔に容易に移行しやすかったのではないかと考えられる.したがって, 胆石患者では胆嚢炎あるいは胆嚢穿孔を併発しない早い時期に手術を行い, また高齢者胆嚢炎患者では早期に手術に踏み切ることが望まれる.
  • 武井 牧子, 柳澤 尚義, 山田 耕一郎, 石川 昭
    1984 年44 巻3 号 p. 441-445
    発行日: 1984/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は慢性肉芽腫症を基礎疾患とする6歳男児.咳嗽と夜間の高熱を主訴とし当科外来にて加療していたが, 発症1週後に呼吸困難も認められるようになり精査加療のため入院した.入院後, 胸部レ線写真, 血液ガス分析はじめ各種検査より肺炎と診断した.反復施行した微生物学的検索による成績より, 有意な病原菌を特定することは出来なかった.基礎疾患の存在を考慮に入れ, CEX, MINO, Amphotericin-B, Pentamizinの多剤併用により治療を開始した.治療開始5日後頃より臨床症状は改善の徴がみられ, 7日後には下熱し以後改善の一途をたどった.経過中にマイコプラズマHA抗体の有意な上昇を認め, 本症は肺炎マイコプラズマ感染症によるものと判断した.
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