昭和医学会雑誌
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44 巻, 4 号
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  • 安井 昭, 西田 佳昭, 城所 仂, 信田 重光
    1984 年 44 巻 4 号 p. 447-452
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    長径5mm以内のminute cancer (微小胃癌) よりもっと小さい顕微鏡単位での癌巣あるいは異型巣は, 臨床的に発見診断することはまず不可能に近い.また胃癌の組織発生を究明する上においてもよりprimitiveな状態の癌組織を検索する必要がある.そこでわれわれはこのような超微小癌を特にprimitive cancer (原始の癌または原始胃癌) と呼び, minute cancerとは別個に取り扱っている.外科的に切除された早期胃癌のうち, minute cancer16病巣中顕微鏡単位での癌病巣 (数個の癌腺管または異型腺管) 7病巣を選び, primitive cancerと判定し研究に供した.primitive cancerの占居部位がA~Mにかけてであったためか組織型はすべて分化型腺癌であった.また癌病巣周辺の粘膜の状態, すなわち慢性胃炎の状態は, 化生 (腸型の胃癌) を除いた固有胃腺 (非腸型の胃癌) は, 慢性胃炎性変化の影響をほとんど受けていなかった.このことは胃癌発生母地を占う上に重要な意味を持つ.primitive cancerを材料とすることによってヒト胃癌の組織発生やその増殖のごく初期の状態を占う上に貴重な指標となりうる.しかし癌病巣を取り囲む上皮をもって, それを即その癌の発生母細胞と断定することには疑義を感ずる.
  • 九島 巳樹
    1984 年 44 巻 4 号 p. 453-460
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨髄組織の形態学的構築を精細に検討するため, 西独, Carl Zeiss社製の“cut-all microtome”を用いて人骨髄の未脱灰標本を作製し, 観察するとともに, 画像解析装置 (Manual Optical Picture Analysing System, 以下MOPと略す) を用いて, 骨髄中における骨梁面積比率と脂肪面積比率を測定した.対象は人の血液疾患 (悪性リンパ腫を含む) の剖検例50例で, そのうちわけは急性骨髄性白血病 (急性骨髄単球性白血病を含む) 15例, 慢性骨髄性白血病6例, 再生不良性貧血3例, 骨髄線維症2例, 多発性骨髄腫6例, ポジキン病を含む悪性リンパ腫10例など合計50例である.骨髄の検索部位は胸骨, 第1および第4腰椎, 大腿骨の4ヵ所である.検索の結果, 骨髄の部位別比較について, (1) 骨梁面積比率については正常骨髄と同様に, 今回検索疾患すべてにおいて胸骨, 第1および第4腰椎の3カ所の部位別の平均値には有意差はなく, いずれも約9%~13%前後の値を示した.大腿骨では各疾患症例とも2%以下を示し, 前3者と比較して著しく低値であった. (2) 脂肪面積比率では一部の例外 (ALLの第4腰椎) を除いて今回検索疾患症例の大部分において胸骨, 第1および第4腰椎には, 疾患別の差はあるが, それぞれの疾患の中で部位別の平均値には有意差はなかった.AML, ALL多発性骨髄腫において, 前3者のaA幹骨に比べ, 大腿骨で高値を示した.次に疾患別比較について, (1) 各疾患ごとの平均値でみると多発性骨髄腫で骨梁面積比率がやや低値を示すが, いずれの疾患症例にも骨梁面積比率に有意差はみられなかった. (2) 脂肪面積比率についてはCML, 骨髄線維症で低値, 再生不良性貧血で高値を示した, (3) AMLの治療に対する反応の違いにより, 治療に反応せず骨髄中に白血病細胞の多数みられた症例は, 治療に反応していた症例より骨梁面積比率が低値を示し, 白血病細胞の増殖により骨梁が減少し, 治療によって回復することが考えられた. (4) ポジキン病を含む悪性リンパ腫の症例を骨髄への浸潤の有無で分類すると, 浸潤のある群では, ない群より脂肪面積比率が低値を示し, リンパ腫細胞の浸潤により脂肪細胞の面積が減少していた.以上の結果を今後は骨髄生検診断にも応用し, 骨髄の造血状態をあらわす一層客観的な指標の一つとすることが期待される.
  • 横山 幹彦, 獄山 陽一, 湊口 博之, 片桐 敬
    1984 年 44 巻 4 号 p. 461-468
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ホルモンのsecond messengerであるadenylate cyclase (ACL ase) 活性の正常および虚血心筋細胞における超微局在とその変化を細胞化学的に検索した.雑種成犬を静脈麻酔下に開胸し, 左冠動脈前下行枝を剥離, 結紮して心筋梗塞を作成した.冠結紮後15, 30分, 1, 3, 6および12時間まで経時的に拍動心を摘出した.心筋組織片を2% paraformaldehyde, 0.25% glutaraldehydeにて0℃20分間固定し, 40μmの凍結切片を作成し, 0.5mM adenylylimidodiphosphate (AMP-PNP) を含む反応液で37℃45分間反応させた.正常心筋細胞ではACLase活性を示す反応産物は筋小胞体 (SR) の終槽 (TC) , subsarcolemmal cisternae, 介在板のgap junctions, sarcolemmeに認められた.冠結紮後15分から30分の心筋細胞では, mitochondriaの膨化, glycogen顆粒の減少等が観察され, SRのTC内のACLase活性は正常と比べて明らかに増強していた.冠結紮後60分の心内膜心筋細胞では, glycogen顆粒の消失, I-bandの伸展, 細胞内浮腫に加えて, 不可逆性虚血性障害を示すintramitochondrial dense depositsも観察された.ACLaseの反応産物はSRのTCで正常と同程度ないし軽度の低下を示した.冠結紮後3時間ではmitochondriaのcristaeの配列の乱れや基質の電子密度の低下が著明となり, より高度の虚血性変化を示し, TCのACLase活性は著しく減少していた.冠結紮後6~12時間では虚血性変化はさらに進行し, ACLase活性はSRと思われる部位にわずかに認められるのみであった.ACLaseの電顕細胞化学的検出は以前はATPが基質として用いられてきたため, ACLaseの活性と考えられている反応産物の中に非特異的なATPaseの活性が混在する可能性があった.1972年, HowellとWhitefieldおよびWagnerらは基質としてAMP-PNPが最適であると報告し, われわれも同様の方法を用いた.われわれが正常心筋細胞に認めた, 反応産物の局在は, Sarcolemmeを除いてSlezakとGeller (1979) およびFujimotoとOgawa (1982) とほぼ同様の所見であった.冠結紮後, 15~30分にかけてACLase活性の上昇がみられたのは, 虚血によるカテコールアミンの増加や酵素蛋白の変性が一因をなすと考えられ, また冠結紮60分以後ACLase活性が漸次減少したのは, 虚血による微細構造変化に加えて, ACLaseの崩壊が起こったためと推察された.
  • 中谷 研一, 大野 雅文, 加地 紀夫, 谷野 正一郎, 佐藤 韶矩, 吉田 文英
    1984 年 44 巻 4 号 p. 469-480
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    急性心筋虚血における虚血心筋保護と虚血部の縮小を検討するため, 虚血心筋に対する各種薬剤の影響について検討した.雑種成犬を用い, 静脈麻酔後人工呼吸下に開胸し, 左冠動脈前下行枝第1対角枝直下で第1回結紮を15分間行い, この後60分間再灌流した.この間に薬剤を投与し, 第2回結紮を行い15分間経時的に測定記録し, 第1回結紮と第2同結紮後の経過について比較した.パラメーターとして, 心拍数, 平均血圧, 心拍出量, 左室内圧とmaxLVdp/dtを測定し, 全末梢血管抵抗は平均血圧/心拍出量から算出した.虚血部ΣSTと非虚血部ΣSTは, 左前下行枝灌流域で心筋内心電図より得た.また, 虚血部, 非虚血部の心筋血流を水素ガスクリアランス法を用いて測定した.実験は, (1) propranolol (0.15mg/kg) , (2) CoQ10 (5mg/kg) , (3) propranolol・CoQ10併用, (4) CoQ10のsolvent, (5) saline, (6) 薬剤未処置群にわけ行った.薬剤未処置群とSaline群では血行動態, 心筋血流に有意な変化を認めなかった.虚血部ΣSTは第2回結紮後15分値が第1回結紮後15分値にくらべ増加した.Solvent群では, 薬剤投与後平均血圧, 心拍出量, 左室内圧とmaxL Vdp/dt, 非虚血部内層の心筋血流が有意に減少した.虚血部ΣSTは第2回結紮後15分値は第1回結紮後15分値にくらべ増加した.propranolol群は, 心拍数, 心拍出量, maxL Vdp/dtが薬剤投与後から有意に減少し, 左室内圧, 平均血圧は薬剤投与後漸減し, 末梢血管抵抗は増加した.虚血部ΣSTは有意ではないが, 第2回結紮後15分値は第1回結紮後15分値にくらべ減少した.CoQ10群では, 薬剤投与後から, 心拍出量はやや減少し, 左室内圧とmaxL Vdp/dtは増加を示したが, 平均血圧, 心拍数は大きな変動を認めなかった.虚血部ΣSTは第1回, 第2回結紮後15分値はほぼ同程度に増加した.propranolol・CoQ10併用群では, 薬剤投与後から心拍数, 平均血圧, 心拍出量, maxL Vdp/dtは有意に減少し, 全末梢血管抵抗は著明に増加したが, 左室内圧に大きな変動を認めなかった.虚血部ΣSTは, 第2回結紮後15分値は第1回結紮後15分値にくらべ有意に減少した.またpropranolol群とpropranolol・CoQ10併用群の血行動態パラメーターについて群間比較を行ったが, すべて2群間に有意差を認めなかった.以上から, propranolol・CoQ10併用が虚血心筋保護の観点から単独投与にくらべ有益であると考えられた.
  • 小畑 俊男
    1984 年 44 巻 4 号 p. 481-487
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    種々動物の臓器中には酵素化学的性質の相違する複数のMAOが存在していると言われている.これらは生体内で特有の生理機能を持ち種々薬物の作用も異なってくるものと考えられる.今回, 牛, ウサギ, ラット肝臓および胎盤を用い, そこに含まれるMAOについてミトコンドリアおよび可溶化MAOの基質特異性と酸素に対する親和性について検討した.各ミトコンドリア標品をEmulgen 810で処理した上澄を可溶化MAOとした.MAO活性はWarburg検圧計を用い, 38℃, 60分間の酸素消費量を測定した.酸素100%の場合, 動物間あるいは臓器間でMAOの基質特異性に相違がみられた.すなわち牛肝臓ミトコンドリアMAOの場合tyramineを基質としたとき最も強い活性を示し, 以下isoamylamine, butylamine, β-PEA, tryptamine, benzylamine, serotoninの順であった.ウサギ肝臓ミトコンドリアMAOの場合, β-PEAを最も強く酸化し, serotoninが最も弱かった.ラット肝臓ミトコンドリアMAOの場合はtyramineが最も強い活性を示しbenzylamineの酸化が最も弱かった.可溶化すると相対的に活性は下がるがその基質特異性には変化はみられなかったが人胎盤では可溶化するとtryptamineで活性が増大した.次に酸素に対する親和性について検討した.肝臓ミトコドンリアMAOで基質特異性が動物によってそれぞれ異なるが酸素に対する親和性は可溶化しても変化は認められなかった.しかし人胎盤ミトコンドリアMAOについて可溶化するとtyramineを除く基質で酸素に対する親和性がわずかに強くなった.特にβ-PEAではそれが顕著であった.以上の実験結果よリtype Aとtype B MAOの複数性について基質特異性から動物種差によるMAOの複数性の相違が考えられても酸素の親和性から動物種差によるMAOの複数性の相違は認められなかった.しかし酸素の親和性は基質によりかなり異なりこの点からはMAOをさらに分類することは可能かも知れない.すなわち基質特異性によるMAOの分類と酸素に対する親和性によるMAOの分類とは別個のものであることが示唆された.
  • 眞 重雄, 角南 有美, 平井 隆文, 小口 勝司, 小林 真一, 安原 一
    1984 年 44 巻 4 号 p. 489-492
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    犬を用いてアセチルコリンによるニコチン様作用を, haemodynamic effectと血中カテコールアミン濃度を指標として検討した.体重10~15kgの雄犬を用いペントバルビタール麻酔下に動脈カテーテルより動脈圧をトランスデューサーを介し記録し, ECGを装着せしめ脈拍を測定した.アドレナリンは1μg/kg, アセチルコリンはアトロピン2mg/kg前投与した後, 1, 125, 250, 500μg/kg投与し, 投与30秒後に血圧, 脈拍を測定した.大腿静脈より薬物負荷30秒後に採血し, HPLCを用いて血中アドレナリン, ノルアドレナリン濃度を測定した.
    血圧, 脈拍および血中アドレナリン濃度はアセチルコリン負荷量の増加に伴い上昇した.両副腎摘出後, アセチルコリン500μg/kgを負荷しても, haemodynamic effectや血中カテコールアミン濃度には変化が認められなかった.以上よリアセチルコリンのニコチン様作用による血圧上昇は, 主に副腎髄質からのアドレナリン放出による事が確認された.
  • 小畑 俊男, 桜井 靖宏, 片山 雅子, 庄 貞行, 安原 一
    1984 年 44 巻 4 号 p. 493-499
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    雄性モルモットの脳, 肝臓, 腎臓および腸ミトコンドリア中に含まれるMAOの複数性について検討した.基質はtyramine, serotonin (5-HT) およびβ-phenylethylamine (β-PEA) を用いてclorgyline, deprenylおよびpargylineを阻害剤として検討した.tyramineを基質とした場合MAOのKm値は各臓器とも同じで約100μMであった.そこで基質濃度をすべてこの2倍の200μMとし, 各臓器中のMAOの複数性についてそれぞれの阻害曲線から検討した.脳についてはtyramineを基質とした場合clorgylineとdepreny1でdouble-sigmoid型を示したことより両type MAOを含むことが認められた.肝臓, 腎臓および腸ではdeprenylによるtyramineおよびβ-PEAに対する阻害曲線がdouble-sigmoid型を示したことより両type MAOを含むことが認められた.次に各臓器中に含まれるそれぞれのtypeのMAOの割合について比較検討した.基質濃度が一定であることよりdeprenylによるtyramineに対する阻害曲線のプラトー部分の活性から各臓器中におけるtype A MAOを含む割合を比べたところ腸がいちばん多く次に腎臓, 脳, 肝臓の順であった.また脳と肝臓では50%前後type B MAOが含まれるものと思われる.脳を除きclorgylineおよびpargylineのtyramineに対する阻害曲線はすべてsingle-sigmoid型を示した.三種阻害剤で各臓器MAOに対し異なった阻害曲線を示したことは, 両type MAOに対するselectivityの相違によると思われる.すなわちclorgyline, depreny1, pargylineの順にselectivityが悪くなるためと思われる.以上の実験結果より雄性モルモットの各臓器ミトコンドリア中には両type MAOが存在し, その割合は臓器によりかなり異なることが示唆された.
  • 小畑 俊男, 寺本 輝代, 和田 栄, 庄 貞行, 安原 一
    1984 年 44 巻 4 号 p. 501-507
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    アクリルアミドゲル電気泳動により豚腎臓ミトコンドリア中に含まれるMAOの複数性について検討した.豚腎臓ミトコンドリアMAOを0.1% Triton X-100で可溶化したところKm値は変らないがTriton X-100はtype A MAOを阻害することが分った.泳動後ぬき取ったゲルをtetrazoliumと基質tryptamineの混液でインキュベーションしたころMAO活性を示す2つの発色バンドが得られた.deprenylおよびpargylineで処理したところ, この2つの発色バンドが共に消失した.すなわちこれら発色バンドはtype B MAOによるものと思われる.一方controlとして泳動後ゲルを等間隔にスライスし, 各フラクションに含まれるMAOの活性をtryptamineを基質として測定したところ2つのヒ.一クが得られた.ところが10-7M pargylineで前処理してまったく同様に各フラクションに含まれるMAO活性を測定したところ単ーピークとして得られた.cont-rolで得られた2つのピークは一方がtype B MAOでpargyline前処理でも残ったピークはtype A MAOと考えられた.一方10-7M [3H] -pargylineを指標としてtype B MAOの易動性を検討したところtype A MAOの易動度はこのtype A MAOの易動度とは異なることが分った.type B MAOの分子量は約6万と16万であった.以上の結果より豚腎臓ミトコンドリア中には易動度のそれぞれ異なる複数のMAOが存在し, その大部分はtype B MAOで分子量は小単位が6万で2個のサブユニットから構成されていることが示唆された.
  • 安井 昭, 宮川 兜, 金城 浩, 加部 吉男, 岡村 治明, 杉谷 通治, 大島 昌
    1984 年 44 巻 4 号 p. 509-515
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    stage III, IV胃癌に対する術後の長期化学療法の有用性について検討した.埼玉がん治療臨床研究会4施設より登録されたstage III, IV進行胃癌77例についてstage別に分け, さらにstage IVについては絶対的治癒切除例, 相対的治癒切除例, 非治癒切除例に分けてTegafur-suppo総投与量299g以下の群 (A群) と300g以上の群 (B群) についてその予後を実測5年生存率で比較した.背景因子についてはstage IIIの絶対的治癒切除例のn因子においてA群とB群に有意差 (p<0.001) があった以外は各群に有意の差がなかった.またstage IIIの絶対的治癒切除例においてA, B群間に有意差 (p<0.005) があったが, 相対的治癒切除例においては有意差はみられなかった.しかし, stage IVのA, B群間の5生率においては有意の差 (p<0.001) が認められた.このようにstage III, IVの進行胃癌に対するTegafur-suppoの術後長期投与の有用性が示唆された.
  • 中島 英親
    1984 年 44 巻 4 号 p. 517-522
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    手の機能において, 指尖部の知覚は, 重要な役割をしめている.1955年Mobergは, 指尖部壊死, 指尖部皮膚欠損, 指切断に対して, Neurovascular island flap (N.V.I.Fと略す) 法を用いて修復し, その後内外の諸家により数多く施行されてきた.しかし, 本法はSwitchingが不完全で, 本来の指々の知覚を獲得できずそのため日常生活で使用していないことが多い.また, N.V.I.F法のNeurovascular bundleの中の指神経が著しく緊張するためか, Paresthesiaや2PDの低下をきたすことが指摘されてきた.著者は, N.V.I.F法の問題点である不完全なswitchingやParesthesiaの解決のために, N.V.I.F法を切断された指に移行した後, Neurovascular bundleの中の指神経を剥離, 切離し, 切断された指の中枢切断端の指神経と, 顕微鏡下に縫合し, 拇指, 示指の知覚再建をはかる方法を考え, 5年前よりこの方法に着手した.知覚再建の指標として, 2PD, light touch, pin prick, cold, hot, paresthesia test, 指尖部皮膚温, flapの縦径, 横径を測定し, 従来のN.V.I.F法と比較検討を行った.その結果, N.V.I.Fの神経切離縫合法では, 術式が容易な上, 指本来の知覚を獲得し, 2PDやlight touchも正常に回復し, paresthesiaの訴えもなく, 良好な結果を得た.
  • 恩田 聰
    1984 年 44 巻 4 号 p. 523-531
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラット成獣11頭 (♀: 5, ♂: 6) の咬筋につき, 筋重量, 断面における筋線維数, 筋線維の太さ, 筋線維型の比率等を計測し, ラットの他筋及びカニクイザルの咬筋と比較した.組織標本はSudan Black B染色によった.結果は次の通りである.1.ラットでは体重は雄の方が雌よりも優っていたのに対し, 咬筋々重量では性差は認められないで, 1mm2中の筋線維数では, 雌の方が雄よりも優り, 体幹筋と同様な傾向を示した.2.筋線維の太さは白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大で, 雄の方が雌より大であったが, 四肢筋及び体幹筋と比べて, 三筋線維型とも小で, その差は白筋線維中間筋線維, 赤筋線維の順に小さくなった.3.筋線維の太さの分布型は雌では三筋線維型が接近した急峻な正規分布型を示したが, 雄では右方に推移し, 三筋線維型とも幅広く, 相互に隔った分布型を示した.4.三筋線維型の比率は浅層では白筋線維が, 中間層では中間筋線維が, 深層では赤筋線維がそれぞれ最も高く, 前脛骨筋に近い比率分布型を示した.5.カニクイザル咬筋と比べて, 白筋線維は大, 赤筋線維は僅かに小で, カニクイザル咬筋断面の三筋線維型の比率は中間筋線維が最も多く, ラットの中間層のそれに匹敵した.
  • 寺本 輝代, 桜井 靖宏
    1984 年 44 巻 4 号 p. 533-539
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラット子宮内にmonoamine oxidase (MAO) とbenzylamine oxidase (BZO) の存在を確認すると共にMAOの酵素化学的性質および性周期がMAOとBZO活性に及ぼず影響を検討した.Allen-Doisy testにより性周期のphaseを決定したラット子宮を実験に用いた.基質benzylamine (BZ) (0.1mM) を用いMAO阻害剤clorgyline, deprenylによる阻害作用を検討した結果, ラット子宮にはこれら阻害剤に対して抵抗性を示すamine oxidaseの存在が確認された.一方高濃度clorgylineで前処理後の酵素活性は, BZO阻害剤semicarbazideにより完全に阻害された.このことは, 子宮内にはMAOとBZOの両amine oxidaseの存在が示唆され, その割合は約40%がMAO活性で残りの約60%がBZO活性であった.基質5-HTの代謝はMAO-A, 基質BZはMAO-B, 基質tyramineはMAO-AとMAO-Bによることが確認され, その活性比は70: 30であった.次に基質tyramine (0.1mM) を用いMAO活性に対する性周期の影響を検討したところ, specific activityはdi-estrusで有意に増加した以外他のphaseでは著明な変化は認められなかった.Km値はいずれのphaseにおいても有意な差を認めなかった.同様に基質benzylamine (0.01mM) を用いBZO活性に対する性周期の影響を検討したところ, specific cactivityおよびKm値ともいずれのphaseにおいても有意な差を認めなかった.以上のことよりラット子宮内には, 二種類のMAOとBZOが存在し, そのうちMAOは, 性周期により影響されることが示唆された.
  • ―ブタオザルを中心として―
    金内 洋一, 伊藤 良作, 猪口 清一郎, 松山 容子
    1984 年 44 巻 4 号 p. 541-548
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    霊長類上肢機能の発達を形態学的に解析する為に, 上肢筋の相対重量及び筋線維構成をブタオザルを中心に比較検討した.材料はブタオザル成獣1頭, チンパンジー幼獣1頭, ヒト成人17体 (男性: 10, 女性: 7) で, 筋重量は湿重量により, 筋線維の観察はツエロイジン包埋, H・E染色の組織標本によった.結果は次の通りである.1.ブタオザル上肢筋の筋重量については, 上腕三頭筋 (32.69) が最も大, 上腕二頭筋と深指屈筋がその1/2足らずの重量でこれに次ぎ, さらに上腕筋, 浅指屈筋及び腕橈骨筋がそれらの半分位の重量であった.2.相対重量によってヒト及びチンパンジーと比較すると, ブタオザルの上肢筋では, 上腕三頭筋 (27%) はヒトよりも低く, チンパンジーよりも高く, 上腕二頭筋 (13.0%) はヒト及びチンパンジーよりも高く, 逆に, 上腕筋 (6%) はヒト及びチンパンジーよりも僅かに低くかった.又, 深指屈筋 (11.5%) 及び浅指屈筋 (6%) はヒトよりも高く, チンパンジーよりも低く, 腕橈骨筋 (6%) はヒトよりも高く, チンパンジーとほぼ等しかった.3.ヒト上肢筋の相対重量を個体別に観察すると, 右側の方が左側よりも上腕筋の発達が強いものが多く, 女性では男性に比べて上腕三頭筋の発達が悪い例や上腕筋の発達が上腕二頭筋に比べて相対的に悪い例などが見られた.4.ブタオザル上肢筋における筋腹横断面の筋線維総数は, 上腕三頭筋が最も多く, 上腕二頭筋がこれにつぎ, 上腕筋は深指屈筋とほぼ等しく, 浅指屈筋及び腕橈骨筋よりも優っていた.すなわた, 上腕筋では筋重量の割に筋線維数が多かったが, これは上腕筋で1mm2中の筋線維数が他よりも多かった事によるものであった.5.ブタオザル上肢筋の筋線維の太さの平均値は上腕三頭筋や前腕屈筋群では1, 200μ2前後で比較的大, 上腕屈筋群では900μ2前後で中等度, 前腕伸筋群では600μ2前後で比較的小であった.すなわち, サルでは指の屈曲に強い力が働くことが考えられるとともに, 他の四肢筋と比較して中等大のものが少く, 大・小の差が著るしいことが認められた.6.以上の事から, サル上肢筋の発達は筋の形態上ヒトとチンパンジーの中間で, 機能的にはむしろ抗重力或は体移動に働く筋とは違った特微を示すことが考えられた.
  • 水間 正澄, 栗山 節郎, 平泉 裕, 丸山 俊章, 藤巻 悦夫
    1984 年 44 巻 4 号 p. 549-550
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    在宅障害者に対して, 巡回相談を行ない, その日常生活改善への活動を行なっているので報告する.品川区心身障害者福祉会館では昭和54年度から, 在宅障害者の寝たきりの防止, ADLの改善, 確立をめざし, 男性26名, 女性18名, 計44名に対し巡回相談を行ない, 21名に対しPT訓練を行ないえた.これらのうち13名は片麻痺患者であったがそのうち1名は社会復帰した.
  • 矢嶋 輝久, 奥村 邦彦, 永山 隆一, 秋間 道夫, 児玉 秀文, 小貫 誠, 八田 善夫
    1984 年 44 巻 4 号 p. 551-555
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は24歳男性, 発熱・肛門周囲膿瘍を主訴として入院.注腸レ線像では上行結腸からS状結腸にかけ, 狭窄や潰瘍形成を伴なったSkip lesionを認めた.大腸内視鏡像では, 上行結腸にcobblestone appearanceや内癖形成がみられた.病理組織学的所見は非乾酪性サルコイド様肉芽腫を認めた.以上より, , 本症例は典型的大腸Crohn病と診断された.ステロイド剤及びサラゾピリン治療による治療開始後401で, 大腸内視鏡像は改善傾向を認め, 現在外来にて経過観察中である.
  • 青柳 今日子, 杉野 雅啓, 稲葉 昌久, 成松 博, 平野 勉, 永野 聖司, 高橋 昭三, 宇佐美 信乃, 土居 浩, 劉 弘文, 松井 ...
    1984 年 44 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    75歳女性の成人型糖尿病患者に再発性眼筋麻痺を合併した症例を経験したので報告する.患者は糖尿病罹患年数約30年で, 約1年前に右動眼神経麻痺の既往があり, 今回再び右眼の動眼神経麻痺を発症し, 3カ月後に回復をみた.又, 頭蓋X線, 頭部CTで著明な石灰化病変が右円蓋部に認められ, 種々の検査によって円蓋部髄膜腫の診断を得た.臨床経過及び諸検査から髄膜腫は偶発的な合併と考えられ, 糖尿病性動眼神経麻痺と診断した.
  • 永嶋 和男, 藤巻 悦夫, 北條 博, 塚原 哲夫, 高野 吉則, 恩田 聰, 篠原 文雄, 井上 紳, 新谷 博一, 矢端 幸夫, 塩川 ...
    1984 年 44 巻 4 号 p. 563-572
    発行日: 1984/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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