急性心筋虚血における虚血心筋保護と虚血部の縮小を検討するため, 虚血心筋に対する各種薬剤の影響について検討した.雑種成犬を用い, 静脈麻酔後人工呼吸下に開胸し, 左冠動脈前下行枝第1対角枝直下で第1回結紮を15分間行い, この後60分間再灌流した.この間に薬剤を投与し, 第2回結紮を行い15分間経時的に測定記録し, 第1回結紮と第2同結紮後の経過について比較した.パラメーターとして, 心拍数, 平均血圧, 心拍出量, 左室内圧とmaxLVdp/dtを測定し, 全末梢血管抵抗は平均血圧/心拍出量から算出した.虚血部ΣSTと非虚血部ΣSTは, 左前下行枝灌流域で心筋内心電図より得た.また, 虚血部, 非虚血部の心筋血流を水素ガスクリアランス法を用いて測定した.実験は, (1) propranolol (0.15mg/kg) , (2) CoQ
10 (5mg/kg) , (3) propranolol・CoQ
10併用, (4) CoQ
10のsolvent, (5) saline, (6) 薬剤未処置群にわけ行った.薬剤未処置群とSaline群では血行動態, 心筋血流に有意な変化を認めなかった.虚血部ΣSTは第2回結紮後15分値が第1回結紮後15分値にくらべ増加した.Solvent群では, 薬剤投与後平均血圧, 心拍出量, 左室内圧とmaxL Vdp/dt, 非虚血部内層の心筋血流が有意に減少した.虚血部ΣSTは第2回結紮後15分値は第1回結紮後15分値にくらべ増加した.propranolol群は, 心拍数, 心拍出量, maxL Vdp/dtが薬剤投与後から有意に減少し, 左室内圧, 平均血圧は薬剤投与後漸減し, 末梢血管抵抗は増加した.虚血部ΣSTは有意ではないが, 第2回結紮後15分値は第1回結紮後15分値にくらべ減少した.CoQ
10群では, 薬剤投与後から, 心拍出量はやや減少し, 左室内圧とmaxL Vdp/dtは増加を示したが, 平均血圧, 心拍数は大きな変動を認めなかった.虚血部ΣSTは第1回, 第2回結紮後15分値はほぼ同程度に増加した.propranolol・CoQ
10併用群では, 薬剤投与後から心拍数, 平均血圧, 心拍出量, maxL Vdp/dtは有意に減少し, 全末梢血管抵抗は著明に増加したが, 左室内圧に大きな変動を認めなかった.虚血部ΣSTは, 第2回結紮後15分値は第1回結紮後15分値にくらべ有意に減少した.またpropranolol群とpropranolol・C
oQ
10併用群の血行動態パラメーターについて群間比較を行ったが, すべて2群間に有意差を認めなかった.以上から, propranolol・C
oQ
10併用が虚血心筋保護の観点から単独投与にくらべ有益であると考えられた.
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