昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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44 巻, 5 号
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  • 高場 利博
    1984 年 44 巻 5 号 p. 573-576
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎 (以下本症) はかっては細菌性心内膜炎といわれ, 敗血症症状とともに心症状, その他多彩な症状を示す疾患である.本症は抗生物質治療の臨床への導入により, その臨床経過に大きな変化をもたらした.すなわち, 起因菌が細菌ばかりでなく, 真菌, リケッチャなど多種化したため名称が感染性心内膜炎となったこと, 起因菌同定法, 有効な薬剤の選択など治療法の進歩により, 感染に対する治療効果は得られるようになったこと, しかし一方, 心症状, すなわちうっ血性心不全の進行, 不整脈, 塞栓症, 動脈瘤などが死因として注目されてきたことなどである.これらの心症状は内科治療が奏効しにくく, したがって内科治療だけでは極めて予後は不良である.かかる症例に対して現在では外科治療が唯一の救命治療とされるに至っているが, 教室でも本症の外科治療を経験することが多くなってきたので, 外科治療の進歩について述べる.
  • 森 義明
    1984 年 44 巻 5 号 p. 577-579
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 中島 仁
    1984 年 44 巻 5 号 p. 581-586
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脳卒中後遺症例に対して自記オージオメトリー, 音源方向感検査を行なった.その結果, 麻痺側耳に振幅異常増大を認めたが, この傾向は左片麻痺群に多かった.また, 方向感は不良であったが, 音源が右方向に偏するものが多く, この傾向は左片麻痺群に多かった.自記オージオメトリーにて, (1) I型において失語症を含む右片麻痺群に比して左片麻痺群に振幅異常増大を示すものが多かった. (2) II型においても同様, 左片麻痺群に振幅異常増大を示すものが多かった. (3) 振幅異常増大は各群とも麻痺側耳に多い傾向を示した.音源方向感検査にて, (1) 右片麻痺群の正答組数の総平均は10.8, 左片麻痺群の正答組数の総平均は11.3で, 正常聴力者の正答組数16よりはるかに低かった. (2) 正答組数が検査組数の1/3以下の群における音源指示応答をみると, 正中にあると答えた耳数が非常に多かった. (3) 正答した左右方向の組数に差を有するものの中では右方向の正答組数の方が多かった.この傾向は左片麻痺群に著明であった.以上より, (1) 右大脳半球の側頭藩には, 音の強さの弁別に関与している機能があると考えられる. (2) 音源方向感には脳幹部の作用も関与しているが, 高位の聴中枢も関与していると考えられる. (3) 右大脳半球には音の認識, 空間性, 同時性を認識する中枢があるものと推定される.
  • ―矯正骨切り術による臨床的効果とX線学的変化について―
    中根 惟武
    1984 年 44 巻 5 号 p. 587-596
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膝関節に変化をきたし, それを進行させる大きな要因の一つに, 下肢アライメントの異常がある.このアライメントの異常を伴う, 変形性膝関節症において, 高位脛骨骨切り術 (以下H.T.Oと略す) によって, アライメントを矯正しようとする試みが, 多くの諸家によって行われている.著者も, 1975年以降, 内側型変形性膝関節症に対し, 積極的にH.T.Oを行っている.これらの自験例について, 術後の新らたなアライメントが, 膝関節に与える臨床的効果と, X線学的変化を研究すると共に, 脛骨面傾斜の変化との関連を検索, 研究した.下腿軸に対する脛骨面の傾き角度Tibial Plateau Angleto Tibial Axis (T.P.A-Aと略す) と片脚起立時の床と脛骨面との傾き角度Tibial Plateau Angleto Floor (T.P.A-Fと略す) をH.T.O症例における, 術前 (117膝) 術後 (83膝) X線写真より計測した.そして, F.T.A並びに, 臨床成績との関連を検索した.T.P.A-Aは, 術前, 術後共に, F.T.Aと負の相関関係にあった.又, 大腿骨軸傾斜角度は, F.T.Aにかかわらず, ほぼ81度に一定していた.この事より内側型変形性膝関節症における, 下肢アライメントの異常は, 脛骨面の傾斜異常に由来していることが多いことを意味している.T.P.A-Fは, 術前, 術後共に, F.T.Aと関係なく, ほぼ+3~+5度に一定していた.H.T.O手術症例中86%に, 臨床的有効性が認められたが, 臨床評価優群におけるT.P.A-Aは, +3.5±0.95であり, 可, 不可群とは, 明らかに有意の差 (P<0.01) が認められた.そして, 臨床評価優群における, T.P.A-AとT.P.A-Fの関係は, 0~+10の範囲において, 正の相関関係があった.この事は, T.P.A-AとT.P.A-Fの値の差が小さい程, 歩行に際し重心側方移動も少なく膝関節において, 安定性を獲得しうる事を意味すると考えた.F.T.Aによる矯正角度 (y) とT.P.A-Aによる矯正角度 (X) は, よく相関関係にあり, y=0.69+1.00x±2.089であった.この事は, 内側型変形性膝関節症においては, T.P.A-Aのみの計測にても, 矯正角度の決定は, 可能と考えられた.しかしながら膝関節脛骨亜脱臼症例, 膝関節屈曲拘縮などのための不正確なF.T.A計測症例, 脛骨面の前額面以外での変形症例においては, 矯正不足となり注意を要すると考えられた.以上の研究の結果, 内側型変形性膝関節症においては, 脛骨面の傾斜異常が下肢アライメント異常の最も大きな要因となっており、, 脛骨面の前額面での矯正により, 臨床的効果並びにX線学的効果を十分に期待できることがわかった.
  • 白井 徹郎
    1984 年 44 巻 5 号 p. 597-604
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋興奮性に関するデータは殆ど犬および一部猫と亀の実験より得られたものであることから, 今回我々は家兎心室筋のinsituでの興奮回復過程を調べ, 従来報告されている犬の心室筋興奮回復過程と比較した.実験方法は家兎36羽を用い, 左室前壁心尖部に直径2mmのdisc型銀一塩化銀電極を装着し, 基本刺激間隔250-300msecで心室ペーシングを行なった.テスト刺激は3msec幅の定常電流で, 最大刺激電流は心筋傷害を避ける目的で1mAとした.テスト刺激2回に1回の頻度で期外収縮を生じうる最低刺激電流を閾値とし, anodalおよびcathodal strength interval曲線を記録した.20羽の家兎では, 20分毎に40分まで繰り返しstrength interval曲線を記録し, 心筋興奮性の安定性につき検討した.10羽の家兎では, 血清カリウム上昇の心筋興奮性に及ぼす影響につき検討した.各記録終了時に動脈血pH, 血清カリウムおよびカルシウム濃度を測定した.1) anodal刺激時, dipは36羽中26羽 (72%) , supernormal periodは36羽中18羽 (50%) で認められた.2) cathodal刺激時, dipは認められなかったが, supernormalperiodは36羽中7羽 (19%) で認められた.3) anodal EDTの平均は278.4±142.2, uAで, cathodalEDT (84.1±31.7μA) より有意に高かった (P<0.001) .4) コントロール時と比較し, 20分後, 40分後でanodalEDTは僅かに上昇, cathodal EDTは僅かに減少する傾向を示したが, 有意差は認められなかった.ERPは時間経過で殆ど変化を示さなかった.dipおよびsupernormal periodは, 20分後では全例コントロール時と同様に存在した.5) dip (+) 群では, dip (-) 群と比較し血清カリウム濃度が有意に低い傾向が得られた (P<0.01) .6) 血清カリウムの上昇により, EDTは低下し, dipおよびsupernormal periodは消失するか減少した.以上の結果より家兎心室筋の興奮回復過程の基本的パターンは犬と同様であると考えられた.supernormal periodがcathoda1刺激時に認められた理由として, 今回の実験では2μAずつ調節可能な刺激発生装置を用いた為, 僅かな刺激閾値の変化も検出可能であったと考えられた.実験条件が一定であるならば, 家兎心室筋の興奮性は, 少なくとも20分間は有意な変化を示さなかった.dipおよびsupernormal periodの出現あるいは消失と血清カリウム濃度との間には有意な関連がある事が示唆された.
  • 今田 義夫
    1984 年 44 巻 5 号 p. 605-625
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年わが国の乳幼児に多発し, 原因不明である川崎病 (急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群, MCLS) の原因を明らかにする目的で, 著者は本症の同胞例に注目し, 第6回, 第7回全国調査の結果から抽出した同胞例を対象として, 関係の医療機関に調査の協力を求めた.その結果, 同胞例216組435例 (3人同胞例3組を含む) を研究対象として種々の疫学的検討を行ない次のような結果を得た. (1) 年齢分布, および発症間隔別年齢分布は共に, 先発群は1峰性, 後発群が2峰性であった.また, 発症間隔は同日を含む7日以内が約半数を占め, 30日以内では約2/3に及び, 短いものが多かった.しかも, 全数および既出生群共に年長児から発症しているものが多かった.これらのことは同胞間の感染の可能性を示唆しているものと考えられる. (2) 臨床症状および臨床検査成績をみると, 先発群が後発群, 同日群に比してその成績が悪く, より重症化の傾向を認めた. (3) 同胞例に再発が多いこと, および双生児の例数が多いことから, 本症の病因は感染だけで説明することは困難であり, 個体側の因子も関与していることが考えられる.
  • 増野 純, 浅沼 勝美, 高島 功
    1984 年 44 巻 5 号 p. 627-635
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膵臓と唾液腺は特にその機能において類似性があるが, 糖尿病における唾液腺の研究は少ない.ある疾患についての臓器相関という立場から, 糖尿病剖検例を用いてその唾液腺, この度は顎下腺の病理組織学的検索を行なった.
    当教室において1972年から1981年の10年間に病理解剖された症例を用い, その内臨床診断に糖尿病と記されてあるもの, さらに剖検による膵臓および腎臓などの病変から糖尿病と診断された計69例について, まず病理解剖からみた糖尿病の死因を含めた一般状況, 膵臓, 腎臓, 心臓の病理学的所見, 次いで顎下腺の病理組織学的変化, さらに顎下腺と他臓器との病変の関係などについて検討を行なった.
    糖尿病の一般的状況および他臓器と顎下腺病変との相関は認められない.次に非糖尿病解剖例を対照として, 臨床的または剖検後病理形態学的に糖尿病と診断された症例の顎下腺の組織学的所見を要約すると, 腺房の萎縮と腺房上皮細胞の変性は恒常的にみられ, 導管も拡張しているものが多くエオジンに染る物質, さらに石灰物質を大多数に認める.また間質には円形細胞浸潤と導管および血管周囲の線維増殖がみられ, この線維増殖は巣状, 限局性に腺房をまきこみ実質構造の破壊が認められている.さらに太い動脈の硬化性変化の他に小または細動脈は硬化性変化のために目立って数が多くみられ, 一部は糖尿病性血管障害様病変も認められる.顎下腺における病理組織学的所見の非糖尿病例と糖尿病例との比較検討では, 糖尿病症例は顎下腺実質の障害による結果として, 線維化と唾液流通異常がみられ, 他方これに加えて細小動脈の硝子様硬化性病変が認められる.
    すなわち, 剖検糖尿病症例における顎下腺の形態学的検討から, 糖尿病という病態であるインシュリン欠乏ならびに高血糖状態によって顎下腺に病変, すなわちそれらの進展如何では慢性炎症性病変または線維化による慢性硬化性病変が認められるものと推論する.
  • ―癌と動脈硬化の関係―
    牧角 裕
    1984 年 44 巻 5 号 p. 637-648
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    大動脈領域における動脈硬化の程度を調べるために, 大動脈を起始部から総腸骨動脈分岐部迄を取り出し, ムシピンを用い伸展固定した.次にそれをモノクローム写真および, 超軟レントゲンを用いて粥腫領域, 石灰化領域, 潰瘍領域を明確にし, それをトレースした.トレースしたものを, 画像解析システム (MOP) にかけ, 各々の面積を測定した.大動脈内腔の面積は年齢, 性別また体格によりかなりの面積の差があるために, 大動脈内腔面積における粥腫領域, 石灰化領域, 潰瘍領域の大動脈の総面積に対する占有率をパーセントで表わした.全症例174例について癌症例群と非癌症例群にわけ, 両群の動脈硬化の程度の比較を行った.更に動脈硬化促進因子といわれている高血圧症, 糖尿病, 高脂血症の既往の有無を調査し, それが動脈硬化の程度に影響を示しているか否かも検索した. (1) 男女の大動脈内腔総面積は平均値170.73cm2であった.男性の平均は187.56cm2, 女性の平均は166.56cm2であった.最大値は73歳男性の268.16cm2で, 最小値は68歳女性の106.07cm2であった. (2) 相対的に癌群と非癌群の動脈硬化の程度を比較すると, 全体としてみれば非癌群の方が明らかに動脈硬化の程度が強かった. (3) 加齢による動脈硬化の進展の程度を男女で比較した場合, 非癌両群とも, 60歳以上の高齢者では男性の方が重症例が多かった.また非癌症例群では男女共に非常に個人差が強く特に粥腫に関しては明確な傾向がっかめなかった. (4) 促進因子 (高血圧, 糖尿病, 高脂血症) の有無で比較した場合, 癌, 非癌群の男女共に促進因子の既往を有した群が, 持たなかった群より明らかに動脈硬化の程度が強かった. (5) 癌群, 非癌群を原発巣あるいは主病巣で分類し, 疾患別で比較してみると, 癌群の中では, 肺癌例の動脈硬化が特に強くみられた.著者の研究では胃癌例でも動脈硬化が強かった.Elkeles (1959) , 塩沢 (1959) らと同じ結果は得られなかったが, この胃癌例21名の平均年齢が70.95歳と他の疾患群の平均年齢よりかなり高かったため, 加齢の要素が加わったことが考えられる.肺癌例, 胃癌例に比較すると乳癌, 大腸癌, 骨髄及びリンパ節の悪性腫瘍, 肝癌では, 平均すれば動脈硬化の程度は軽度であった.非癌群の中で疾患別比較をすると, 心疾患, 腎疾患に特に強い動脈硬化がみられた.心疾患, 腎疾患共に脈管系の障害 (動脈硬化も含む) が全身的な影響として大動脈にも反映しているものと思われる.
  • 小松 信彦, 木村 賀津子, 阿部 志津子, 鍵谷 昌男
    1984 年 44 巻 5 号 p. 649-655
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    放線菌抗生物質anthramycinの1誘導体であるspadicomycin (SPAM) を用いて, マウスのsarcoma 180による皮下移植腫瘍に対する他剤との併用効果について調べた.使用薬剤はアルキル化剤2種, 代謝拮抗剤7種, 抗生物質8種, ステロイドホルモン2種, アルカロイド2種, 酵素剤1種, 免疫強化剤3種の合計25種である.その結果cyclophosphamide, methotrexate, bleomycin, krestin及びschizophyllanが併用効果を示した.またcarboquone, azathioprine, 6-mercaptopurine, peplomycin. L-asparaginase及びpicibani1はある程度の増強傾向を示したが, その他のものには併用効果も増強傾向も認められなかった.
  • ―特に問質の変化を中心として―
    斉藤 吉人
    1984 年 44 巻 5 号 p. 657-667
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    最近9年間の当教室における心奇形児剖検症例 (43例) を対象とし, 肺の病理組織学的検索を行なった.肺性心という語が示す様に, 心と肺には密接な相関があるが, いわゆる奇形死とは別に, 心奇形群の肺では間質の変化が強く見られた.そこで症例をチアノーゼや肺高血圧の有無, 心奇形形態別, 胎齢週数及び生存日数別に分類し, 比較検討した.肺炎・肺硝子膜症など明らかな肺病変を有するものや, 開胸手術を受けたもの, 未熟児等は除外した.各症例の肺はホルマリン固定され, H-E染色・弾性線維染色及び必要に応じてその他の特殊染色標本を作製した.標本を羊水の量, 無気肺・肺気腫・うっ血・出血等の程度, 弾性線維・線維芽細胞・組織球・リンパ球等の浸潤度, 毛細血管の発達, 肺胞中隔の厚さ, 肺動脈中膜の厚さなど12項目につき観察し, それぞれ5段階に分けて記載した.その結果, チアノーゼ分類では肺胞中隔の肥厚がチアノーゼの程度にしたがって強くなる傾向があり, その中隔成分もうっ血主体のものから, 細胞成分・弾性線維混在型へと変化している事がわかった.肺動脈中膜の厚さは, 心奇形群が対照群に比して厚くなっていたが, 更にチアノーゼの程度が強くなるにつれて肥厚する傾向にあった.肺高血圧症分類では, 高血圧のある群で肺胞中隔の絶対的肥厚があり, かつ弾性線維主体でいわゆるA-Cブロックの状態になっていた.肺動脈中膜はやはり肥厚傾向が強い.一般的にチアノーゼ性心疾患における肺動脈中膜の肥厚は良く言われる所であるが, 今回の結果から, より早期に心奇形に伴なう血行動態の異常が肺胞問質に影響し, その肥厚をもたらす事がわかった.心奇形児の剖検でその死因を考える時, 従来奇形および肺動脈の変化を重視しがちであったが, 肺そのものの形態的変化による機能不全も大事な因子として考慮すべきであろう.
  • 杉山 喜彦, 塩川 章, 九島 巳樹, 藤本 治道, 牧角 裕
    1984 年 44 巻 5 号 p. 669-677
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    リンパ節スタンプ標本による, Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色の活性を37例のHodgkin病と70例の非特異性リンパ節炎について検索した.Hodgkin病におけるDroplet positive cellはリンパ節炎にくらべ減少がみられた.これはT cellの腫瘍性変化によるものと思われた.Hodgkin病においてもリンパ節炎の症例でも若年者は比較的ANAE活性が保たれており, 一方40歳以上の症例ではANAE活性の減弱がみられた.両疾患ともB cellやPlasma cellにおいては量的変化は認められなかった.Hodgkin細胞やReed-Sternberg型の巨細胞におけるANAE活性は, 数例の上咽頭癌の腫瘍細胞と類似しており, ある種のウイルス感染を示唆する所見であった.
  • (Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色による検索)
    杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 梶山 浩, 滝本 雅文
    1984 年 44 巻 5 号 p. 679-683
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Alpha-Naphthy-Acetate-Esterase (ANAE) 染色を用いて濾胞中心細胞由来の悪性リンパ腫46例のT-cell Rest populationを検索した.3症例において45%, 60%, 70%とかなり高率のT-cell Restが認められた.さらに13症例で20%を越えるT-cellRestがみられた.これらの所見はリンパ球やリンパ節における病的状態, 特に腫瘍性疾患においては, 免疫学的検索のみならず組織学的, 組織化学的ならびに細胞化学的観察を併用すべきことを指摘している.さらに我々にとって重要なのは反応性変化と腫瘍性過程においてT-cellとB-cellの相互の反応がいかに異るかを解明することである.今後の課題として一つの重要なテーマとなるであろう.
  • (Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色による検索)
    杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 九島 巳樹, 渡辺 秀義
    1984 年 44 巻 5 号 p. 685-689
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    濾胞中心細胞由来の悪性リンパ腫46例のリンパ節スタンプ標本におけるAlpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色によりPlasma cellへの分化傾向を検索した.Plasma cellあるいはImmunoblastへの分化を示す細胞は胞体内に顆粒状に染色され, 症例によりいろいろな値を示したが平均値は約27.4%であった, この値はCLLやHodgkin病に比較して明らかに高値であったが, Immunocytomaにくらべ低値であった.今回の検索によりB-cellからPlasma cellへの分化の過程は, 炎症性反応と同様腫瘍性過程においても二つの異る過程が示唆された.一つはB.cellからImmunoblastを介する間接的な分化, もう一つは濾胞中心細胞から直接Plasma cellへ分化する過程である.このような分化の機序に対する有効な治療効果を解明するのが我々に課せられたテーマと言えよう.
  • 杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 九島 巳樹, 渡辺 秀義
    1984 年 44 巻 5 号 p. 691-695
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    16例のImmunoblastic Lymphoma (IL) と11例のImmunoblastic Lymphadenopathy (IBL) のリンパ節スタンプ標本におけるAlpha-Naphthyl-Acetate-Esterase活性を検索した.Plasma cell Seriesを示すGranular positive cellは以前に報告したImmunocytomaとIBLで類似の値を示した.類似の傾向がILと濾胞中心細胞由来の悪性リンパ腫にみられた.ILの7症例において20%以上のT-cell Rest Populationがみられ, IBLでは3例に認められた.今回の検索から, リンパ節疾患の研究にあたっては細胞起源を間違わないように免疫学的のみならず組織学的, 組織化学的及び細胞化学的ないろいろな見地から所見を判定すべきであることが示唆された.
  • 門倉 光隆, 高場 利博
    1984 年 44 巻 5 号 p. 697-706
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈の急性血流遮断および遮断解除に伴う血行動態の変化についての報告は多いが, 本研究では雑種成犬を用い, 腎動脈下における腹部大動脈の遮断前, 中, 遮断解除後の血行動態および昇圧ホルモンの変動について比較検討した.実験は維持輸液群および容量負荷群において60分間の大動脈遮断をおこない, 遮断前, 遮断後15, 30, 60分, 遮断解除後15, 60分における血行動態および血中レニン活性, アンギオテンシンII, アルドステロン, アドレナリン, ノルアドレナリンを測定した.1.平均動脈圧, 心係数, 左室1回拍出仕事量は大動脈遮断によって有意な上昇を示すが, 遮断解除とともに速やかに前値へ復する傾向を示した.2.中心静脈圧, 肺動脈楔入圧, 肺動脈圧は大動脈遮断による著変はみられず, 容量負荷によって有意な上昇がみられた.また維持輸液群では遮断解除後, 後肢の反応性充血に伴い前値以下への低下がみられた.3.血中Na/K比, ヘマトクリット, 心拍数は大動脈遮断あるいは容量負荷に伴う著変はみられず, 各群間にも有意差はみられなかった.4.容量負荷群では全末梢血管抵抗は有意な減少を示し, 左室1回拍出仕事量も有意な増加を示した.5.腎血流量は容量負荷群では60分値において増加傾向を示し, 120分値までの減少率についても維持輸液との間に有意差 (p<0.05) がみとめられた.また, 大動脈遮断および遮断解除直後において一過性の減少がみられたが.auto-regulationによって約30秒後にはsteadystateとなっている.6.レニン, アンギオテンシン, アルドステロン, カテコールアミンは容量負荷群において前値に比較して有意な低下を示し, 維持輪液群との間に有意差 (P<0.05) がみとめられた.7.尿量は容量負荷群において有意な増加を示し, 腎灌流圧の上昇, GFRの増大を示唆した.以上から, 大動脈遮断中の容量負荷は昇圧ホルモンの分泌抑制, さらに遮断解除後の循環動態の安定化に効果を示し, 術後高血圧症の予防, 軽減にも役立つことが示唆された.
  • 杉山 喜彦, 塩川 章, 藤本 治道, 牧角 裕, 九島 已樹, 横山 新一郎, 鶴岡 延熹, 佐々木 俊輔, 荒 徹昭
    1984 年 44 巻 5 号 p. 707-714
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Here we reported the cases of two patients suffering from Lennert's lympncma. The first was that of a 73-year-old male. Histological examinations were twice doneand electronmicroscopic findings were obtained. The second case was that of a 73-year-old female. The first case showed histologically focal epithelioid cell clusters, partly diffuse proliferation of those cells were despersed throughout the lymph nodes. On the contrary, in the second case, proliferating lymphoid cells and epithelioid cells were limited, especially in the so-called Tzone. In both cases, proliferating lymphoid cells co-exist with epithelioid cells consisted of large immunoblast-like cells, medium-sized lymphoid cells with marked irregular nuclear margins and small lymphoid cells. Electronmicroscopically, the immunoblast-like cells and the other tumor cells had no differentiating tendencies toward plasmablasts or plasma cells. Moreover, by the PAP staining method, only a few positive cells in the lymph nodes were found in both cases. As above-mentioned, Lennert's lymphoma may suggest a malignant lymphoma of T cell origin, but, histomorphologically and clinically, it has not been clearly determined that this lymphoma has a distinct disease-causing entity.
  • 辻 泰喜, 大庭 忠弘, 中山 貞男, 坂本 浩二, 中西 孝子, 小口 勝司, 橋本 みゆき, 安原 一, 小林 直人, 藤巻 悦夫, 阪 ...
    1984 年 44 巻 5 号 p. 715-724
    発行日: 1984/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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