昭和医学会雑誌
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45 巻, 5 号
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  • 熊谷 一秀, 安井 昭, 城所 仂
    1985 年 45 巻 5 号 p. 603-607
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃癌の背景因子としての癌巣の占居腺領域の重要性を診断, 治療上問題点の多い多発早期胃癌, 表層拡大型早期胃癌および深達度診断, 胃癌の発育進展に関わる深部浸潤形式と腺領域の関連性より論じてみた.著者の経験した多発早期胃癌44例を各々の癌巣の占居する腺領域より眺めると, 全癌巣がF-lineの幽門側に存在し, 多発癌巣全てが幽門腺領域にあるものが20例, 同様中間帯領域に占居するものが15例, 計35例 (80%) が多発癌巣が同一の腺領域に存在した.癌巣面積5×5cm2以上の表層拡大型早期胃癌の占居分布を腺領域よりみると陥凹性表層拡大型早期胃癌の大部分は中間帯領域に存在し, この中間帯領域の陥凹性表層拡大型胃癌とF-line, f-lineの関係をみると53%が癌巣全体がF-line, f-lineと交叉せず, つまり癌巣全体が中間帯領域に含まれ, 44%がf-lineのみと癌巣の一部が交叉し, F-1ineと交叉するものは3%とごく少なかった.このような事実より中間帯領域よりの発癌の可能性をも推論できよう.胃癌の垂直方向への発育を認識することは胃癌の深達度診断に際しても重要な知識の1つである.著者は陥凹性早期胃癌の粘膜下層癌のsm癌浸潤量を加味したsm浸潤形式を微量, 散在, びまん, 圧壊と分けているが, 微量浸潤例38%, 散在29%と比較的軽度浸潤例が多くを占めていた.腺領域との関係をみると, 微量浸潤例が中間帯領域の未分化型腺癌例に多く, びまん浸潤例は胃底腺領域癌と幽門腺領域の未分化型腺癌例に多くみられた.またsm浸潤形式を癌のsm侵入部位によりみると, 癌巣内潰瘍部でsm侵入するものが69%と多数を占め, 特に胃底腺領域癌は大部分が癌巣内潰瘍底でsm侵入していた.以上, 多発早期胃癌の副病変の存在, 陥凹性早期胃癌の口側浸潤部の診断, 深達度診断など腺領域を認識することの重要性を検討した.
  • 森 義明
    1985 年 45 巻 5 号 p. 609-611
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 岡崎 智子, 大久保 幸枝, 有泉 雅博, 大野 豊, 小松 信彦
    1985 年 45 巻 5 号 p. 613-621
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    一般に制癌剤には免疫抑制作用のあることが知られている.今回我々は塩化ピクリル塗布によるマウスの遅延型皮膚反応を用いて, 諸種制癌剤 (28種類) の細胞性免疫に対する投与タイミングの影響について検討した.薬剤を抗原感作の前または後で注射することによって遅延型過敏症に及ぼす作用を調べたところ, アルキル化剤であるCarboquoneとCyclophosphamideは前処置で遅延型皮膚反応を促進し, 後処置で抑制することが分かった.前処置による促進作用はサプレッサーT細胞に対する阻害作用に起因するものと考えられた.代謝拮抗剤であるCyclocytidineとCytarabineは無影響であったが, Azathioprine, 5-Fluorouracil, 6-Mercaptopurine, Methotrexate及びTegafurは後処置のほうが強い抑制を示した.これらのなかで, 5-Fluorouracilの場合には, 免疫増強剤であるSchizophyllanとの併用によって, 細胞性免疫の低下が回復する傾向が認められた.嗣癌抗隻物質 (10種類) は一般に抑制作用を示さなかったが, Bleomycinは前処置で, Anthramycinは前処置及び後処置で抑制した.植物アルカロイド (Vinblastine, Vimcristine) , 酵素剤 (L-Asparaginase) 及び重金属剤 (Cisplatin) は有意の抑制を示さなかった.環状ペプチド (Cyclosporin A) は後処置で抑制した.副腎皮質ステロイド (Dexamethasone, Prednisolone) も後処置で抑制ないし抑制傾向を示した.一方, 免疫増強剤であるKrestinとSchizophyllanは前処置でも後処置でも遅延型皮膚反応を促進した.
  • 浅田 一仁
    1985 年 45 巻 5 号 p. 623-630
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    皮膚の緊張が母床の骨にたいし, 少なからず影響を及ぼすということは, 経験的にしられている.そこで, その緊張がいつ・どこに・どの程度加えられれば, 骨に発育障害をもたらすかを知ることは, 臨床的にも重要な課題である.そこで, 顔面頬部の皮膚緊張と骨の発育障害について調べるため, ラット片側頬部皮膚の単純縫縮の実験を行い, その結果, 手術時期が早い程, 又, 縫縮量が大きい程, 骨の発育障害が著明にみられることを報告した.今回著者は, 連続縫縮術を用いて皮膚緊張をより強くかけた場合の骨への影響と, 長期間置いた場合の骨の変化を知る為に, ラットを使って次の実験を行った.すなわち, 50g・100g・200g・400gの各体重別ラットを使い, その右側頬部皮膚を前後軸方向に最大緊張にて縫縮後, 3週目・6週目にも同様に計3回の連続縫縮術を行い, 初回手術後3カ月にて断頭したA群 (36匹) と, 6カ月にて断頭したB群 (25匹) , 及び, 同様の手術操作を両側に行い, 3カ月にて断頭したC群 (27匹) と, 6カ月にて断頭したD群 (29匹) , また対照群として右側頬部の前後軸に沿って皮切のみを加えて皮膚切除をおこなわず縫合し, 3カ月後に断頭したE群 (40匹) , 非手術群F群 (20匹) の6群に分けた.これらを断頭後乾燥頭蓋骨とし, 頭蓋底面を規格ポラロイドを用いて計測を行った.その結果, 頭蓋・顔面骨の左右への偏位は, 片側頬部のみを連続縫縮した群に於て, 手術側への偏位が幼若期程大きく, また, 50g・100g・200g群では3カ月時の方が6カ月時より大きかった.しかし, 400g群においては両者間に有意差を認めなかった.一方, 両側手術群ではその影響はみられなかった.前後方向への発育に関しては, 全群ともその変化に有意差はみられなかった.これらの結果より, 顔面頬部における連続縫縮術は, 頭蓋・顔面骨の成長に影響を与え, また, 成長早期に手術を行ったものにおいては, 術後の皮膚緊張の緩和により, 偏位した骨の自然矯正がみられるが, 成長期を過ぎたものでは, この現象は見られなくなるということが示唆された.
  • ―特にその表面構造の変化について―
    大久保 文雄
    1985 年 45 巻 5 号 p. 631-642
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    単純性血管腫は比較的良く見られる先天性血管病変であり, 顔面に多く発生するため, 形成外科的に最も治療の難かしい対象の一つとされている.治療法に関しては切除法, 紫外線照射法, 凍結療法, 削皮術, 放射線療法, 刺青療法等が検討されてきたがいずれも欠点の多いものであった.1968年Goldmannはレーザー光線をはじめてその治療に応用し, Apfelbergはアルゴンレーザーが波長特異性をもつ治療法として臨床応用し, 効果において最も期待される治療法とされてきた.しかし, その効果判定は, 多くの論文で肉眼的色調を基準としているものであり, 顕微鏡的に一体どのあたりまで毛細血管の破壊をきたしているかということには具体的指摘が少なく, また術後の皮膚表面構造の変化については報告がない.そこで著者は, たまたま術後の生検が得られた症例に対して, 臨床的有効例と無効例の組織所見を比較し, また, レーザーの出力, 照射時間を1.0ワット×0.2秒から3.0ワット×0.5秒までの8段階について皮膚への深達度を測定した.さらにレプリカ法により採取した皮膚表面の標本を走査電顕で観察することにより皮野, 皮溝の変化にっき検討した.その結果, レーザー光の照射により真皮浅層に存在する毛細血管が破壊され, そこに表皮下瘢痕が生ずるが, それ以下の毛細血管は, 臨床的有効例においても無効例においても拡張を残していた.又, 常用の出力においては, それを増大していっても効果は真皮浅層より深くには到達しないことが判明した.又, レプリカ法においては, まず経時的変化の観察を行い, 照射直後には, 皮溝, 疼野の状態は大きな変化がなく, 2週間後, 痂皮保存の状態では若干の皮野の粗造化が見られ痂皮が脱落した時点で, 変化が最大になることを観察した.すなわち, ほぼ同一方向を向いた粗な皮溝が存在し, 菱形の皮野は消失する.又, 4週間後には, 皮溝がはっきりしてくるとともに, その方向に直交する方向にも皮溝が現われ, 皮野を形成していく.そして, ほぼ3カ月後には術前の状態に戻るということがわかった.また, もしも術後に表皮下瘢痕が著明な場合, あるいは肥厚性瘢痕を呈する場合では, その程度にほぼ準じて皮野の粗造化をきたし, それは, 肉眼的に見た皮膚の“Texture” (きめ) に比較的良く相関していた.また, このレプリカ法は患者に何等の苦痛を与えることなく, 術後の評価をある程度客観的に見られる方法であった.
  • 松井 洋一郎
    1985 年 45 巻 5 号 p. 643-652
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    マウス神経芽細胞腫 (neuroblastoma) に由来するNS-20クローン細胞を用いて, 軸索形成を形態分化, 興奮性獲得の過程を機能分化とみなして, 両者の関係を検討した。
    10%仔牛血清を含むDulbecco変法Eagle培養液中では, 円形と紡錘形の未分化増殖細胞が見られる.この細胞に微小電極を挿入し, ブリッジ回路を介して脱分極及び過分極性通電を行うと, 大部分の細胞で興奮性を示さないpassive response (PR) が, その他の細胞でdelayed rectificationを示す反応 (DR) が, ごく小数の短い軸索を有する細胞でactive response (AR) が観察された。
    無血清, 1mM dibutyryl cyclic AMP及び10-5M aminopterinを含む条件培養液中では, 7日以内で軸索は急速に伸長し, 以後平均190μmの長さとなった.ARを示す細胞の静止電位は, 軸索が伸長するのに伴い平均-28mVから平均-40mVに次第に増加した.実効膜抵抗も増大する傾向を示したが, 軸索形成に伴う細胞全表面積の増加を考慮すれば, 実質的には比抵抗は著しく増大したことになる.一方, 条件培養液中でも円形の, かつPRを示す細胞の静止電位及び膜抵抗は著明な変化を示さなかった.DRを示す細胞の静止電位の平均値はPRとARの中間値を, 膜抵抗はPRのそれとほぼ等しく, ARのそれより低い値を示した。
    条件培養液中で軸索形成に伴う電気的反応の3型 (PR, DR及びAR) の発現頻度の経日的変化は, PRまたはDRを示す細胞では3~5日以内に一時増加し, 7日以後共に減少した。一方, ARを示す細胞は5日以内に一時減少し, 7日以後急速に増加して20日後では全細胞の89%を占めるようになった.条件培養下で未分化のままの円形細胞でも, PRに代りDRを示す細胞が多くなり, 7日以後では75%を占めるようになった.
    以上の結果から次のことが示唆された. (1) 軸索形成に伴い膜の電気生理学性質の成熟 (膜電位・膜抵抗の増加) が見られる. (2) 軸索形成は分化の初期過程に, 膜の興奮性は後期過程で発現してくるようになり, 形態分化と機能分化とは必ずしも一致して出現しない. (3) ニューロブラストーマの示す電気的反応の3型は, 機能分化の各段階を示し, passive response, delayed rectification, active responseの順に膜は興奮性を獲得するようになる.
  • 栗山 節郎
    1985 年 45 巻 5 号 p. 653-664
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者の四肢血液循環動態を調べるため, (1) 99mTC―人血清Albminを用いて下肢血流を調べた.その結果は片麻痺発症後15カ月未満では患肢血流量の多いものが多く, 15カ月以後では逆に患肢血流量が少ないものが多く, 統計学的に右片麻痺と左片麻痺で比べると上記傾向は左片麻痺の方がはっきりしており, Brunnstrom stage・歩行能力・年齢と血流量の相関はない. (2) plethysmographyを用いて四肢血流量を調べた.その結果は, 片麻痺発症後1年未満では患側上肢血流量の多いものが多く, 1年以上では患側上肢血流量の少ないものが多い.統計学的には発症後経過月数と上肢血流量の間に相関はあるが下肢血流量にはなく, Brunnstrom stage・歩行能力・年齢と四肢血流量の間に相関がない.
  • 松井 厚雄, 浅田 一仁
    1985 年 45 巻 5 号 p. 665-671
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    単純および連続縫縮術は, 色調やいわゆる“キメ”の点で, 周囲皮膚との適合性が良好なため, 形成外科領域では多用される基本的かつ重要な手術手技の一つである.一方, この手技は, 過度の皮膚緊張により, その母床である骨変形をきたす危険性も合わせ持っている.特に, 頭蓋・顔面領域では, 骨成長障害による新たな機能障害や醜形を引き起こす事が臨床的には観察される.今回, この皮膚緊張により, 一旦引き起こされた頭蓋顔面骨変形が, その後の緊張の解除により改善されるのか否かを動物実験を行い, その傾向をさぐった.実験動物としてはウィスター系雄ラットを用いた.体重50gにおいて右側頬部皮膚をpanniculus carnosusを含めた全層で切除縫縮したラットを4群に分け比較検討した.まず, 最初の2群は, 平均体重100g 200gの時点でそれぞれdry boneとして測定し, 縫縮方向への偏位が有意に起きている事を確認した.続いて, つぎの2群は平均体重100g 200gの時点で, 50gにて縫縮したときに生じた瘢痕を可能なかぎり切除しpanniculus carnosus下で剥離を加えた後, 緊張を解除するように前回の縫縮軸に垂直の方向へ縫合し, 初回手術より3カ月経過した時点で断頭し計測した.結果は, 100g 200g解除群ともに有意の改善を見た.実際の臨床に当たっては, 成長期において頭蓋・顔面骨変形をきたした後でも, 植皮術や皮弁の使用など適切な緊張の解除により変形の矯正が可能である事を示唆した.
  • 吉本 博易, 猪口 清一郎, 熊倉 博雄, 伊藤 純治, 鈴木 雅隆, 門脇 哲郎
    1985 年 45 巻 5 号 p. 673-683
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健康な成人26名 (男性10, 女性16) について, 胸骨上縁高, 胸骨中点高, 剣状突起高のCT写真を撮影し, それについて皮下脂肪層, 骨筋層, 胸腔の断面積を計測するとともに, 胸郭と胸腔の矢状径及び横径を計測し, それらの性, 年齢, 体型による変化の要因を明らかにした.結果は次の通りである.1.胸郭の総断面積は男女各断面ともD, C, A体型の順に大であったが, 体型別に比較すると, 男性ではD体型とC体型では剣状突起高, 胸骨中点高, 胸骨上縁高の順に, 男性のA体型と女性の全体型では胸骨中点高, 剣状突起高, 胸骨上縁高の順にそれぞれ大であった.2.構成比を見ると, 男女とも全体型において胸骨上縁高では骨筋層, 皮下脂肪層, 胸腔の順に, 胸骨中点高と剣状突起高では胸腔, 骨筋層, 皮下脂肪層の順にそれぞれ大で, 骨筋層と皮下脂肪層の差は男女ともA, C, D体型の順に少なくなる傾向が見られた.3.年齢的には, 男性では各断面とも骨筋層は明らかに減少して, 皮下脂肪層との差は加齢とともに少なくなり, 60歳代の剣状突起高では両者ほぼ相等しくなったが, 胸腔と皮下脂肪層の比率の間には逆相関様の関係が見られた.女性では各断面とも検査対象年代間の差は認められなかった.4.胸郭内外の計測値の体型別比較では, 三断面において, 男女の矢状径, 横径ともD体型では他体型よりも大であった.このD体型について見ると, 胸骨上縁高では男性は後矢状径が, 女性は前矢状径が, 胸骨中点高では男性は前, 後矢状径とも, 女性は前矢状径が, 剣状突起高では男女とも前, 後両矢状径がそれぞれ増大する傾向が見られ, 男性の剣状突起高では横径も他の体型より大であった.5.胸郭径の年齢的変化については, 男性では各断面とも, 前, 後両矢状径において加齢的増大の傾向が見られ, 横径では年齢的変化は認められなかった.また, 女性では矢状径, 横径とも研究対象の年代間では差は認められなかった.6.以上の事から胸郭断面積の増減の要因としては, 胸腔径の増減よりも, 壁厚の増減の影響の方が大きく, 骨筋層の加齢的減少に伴って皮下脂肪層が最大の要因となることが考えられた.
  • ―マラソン運動の影響―
    緒方 昇, 猪口 清一郎, 有江 醇子, 沢田 芳男
    1985 年 45 巻 5 号 p. 685-691
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    運動によって組織や血中のLDH活性およびLDHアイソザイムの変化を尿における変化として観ることを試みた.
    尿試料は22歳から57歳までの5名のスポーツ愛好家からマラソン前と直後, 1/2時間, 1時間, 2時間後に得た.尿LDH活性を測定し, LDHアイソザイムは寒天電気泳動法で分画し, 心筋型LDHの割合とLDH-H/LDHの比を算出した.マラソン直後にLDH活性は2.23±1.45から9.89±5.80μmoles・min-1・g of crea-1 (X±SD) に上昇し, P<0.001の水準で有意であった.また, LDH.H/LDHの比も95.5±8.9から74.9±11.3% (X±SD) に減少し (P<0.001) た.2時間後もとの値にもどった.
  • ―12分間走の影響―
    緒方 昇, 猪口 清一郎, 有江 醇子, 沢田 芳男
    1985 年 45 巻 5 号 p. 693-698
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健常男子に12分間走を負荷し, その血清および尿についてセファデックスG-200によるゲル濾過分画を行い, LDHアイソザイムの運動による影響を検索した。
    尿は約50倍に透析濃縮し, ゲル濾過を行った。運動負荷後尿のゲル濾過でLDH活性はmainfractionとsubfractionに2分画されたが運動負荷前尿はmainfractionしか認められなかった.運動負荷前後の血清および尿について2回ゲル泝過を行い, LDH活性のmainfractionについて乳酸に対するMichaelis定数 (Km値) を測定したところ, 運動負荷前血清では2.1mM, 尿では5.3mM, 運動負荷後血清では4.5mM, 尿では8.0mMであった.運動負荷後尿のゲル濾過のLDH活性のmainfractionとsubfractionについて, 標準タンパクのstandardization curveから分子量を測定したところ約12.3×104と約6.6×105であった.ゲル瀕過分画をagar gelのelectrophoresisによりLDHアイソザイムを測定したところ, 運動負荷後のmain fractionにLDH3の増加とLDH4, LDH5の出現がみられ, subfractionにはこれらの変化はみられなかった.Subfractionについてグロブリンの免疫反応を行ったところIgGの部分に沈降線を認めた.
  • 緒方 昇, 猪口 清一郎, 有江 醇子, 沢田 芳男
    1985 年 45 巻 5 号 p. 699-703
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    運動負荷によって生成される尿蛋白の消長を尿蛋白の選択性の面から検索した.5名の男子athleteに長距離走を負荷し, 負荷前後の尿と血液とを試料に供した.免疫沈降法により尿ならびに血液のtransferrinとγ-globulinを測定し, transferrinクリアランスに対するγ-globulinクリアランスの比; Selectivity indexを求め, 尿蛋白の選択性を検討した.
    運動負荷によってtransferrinクリアランスは5%の危険率で増加に有意性が認められたが, γ-globulinクリアランスの増加に有意性があるとは認められなかった.Selectivity indexは運動負荷によって0.38±0.15から0.78±0.28 (mean±standard deviation) へと増加を示し, この増加には0.1%の危険率で有意性が認められた.なお, 同時に尿中の乳酸albumin, β2-microglobulin, creatinineも測定し, あわせて検討を行った.
  • 片倉 重弘, 藤田 力也, 平田 信人, 佐竹 儀治, 菅田 文夫, 岡本 平次
    1985 年 45 巻 5 号 p. 705-709
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1984年7, 月28日, 21歳の男性が5日間に及ぶ下腹部痛, 水様下痢にて当院を受診した.当院にて止痢剤を投与したにもかかわらず, 翌日血性下痢を示したため入院となった.大腸内視鏡では, 直腸よりSD junctionまで, 顆粒状に見える浮腫状粘膜, びらんの多発, 易出血性を連続的に認めた.同様に注腸透視でも顆粒状変化とspicula formationを直腸より横行結腸まで認めた.これらの所見は潰瘍性大腸炎に類似し, 糞便での細菌学的検索なしには診断を確定することは出来なかった.Campylobacter jjが入院4日目に便より分離され, Campylobacter大腸炎と診断された.ナリジクス酸投与により, 症状は順調に改善し, 1984年8月18日に退院となった.最近の感染性大腸炎に関する報告では, 本邦において, 人間の感染性腸炎のうち, campylolacter jjが検出される頻度は最も高いとされている.形態学的に, 潰瘍性大腸炎やクローン病などに似たり, 多様な所見を示す.つまり, 我々は, 潰瘍性大腸炎又クローン病に類似した炎症性所見を得た時にCampylobacter大腸炎の存在も考えねばならない.大腸疾患を診断する際の細菌学的検索の重要性を強調したい.
  • 香川 豊明, 外丸 輝明, 武田 昭平, 中井 久美子, 小沢 啓子
    1985 年 45 巻 5 号 p. 711-716
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    悪性高熱症は, 麻酔中急激な体温上昇をきたし, 死亡率も高い恐ろしい偶発症である.最近, われわれはこの悪性高熱症の既往のある患者で麻酔・手術を無事終了することができた症例を経験したので報告する.症例は, 体重37.5kgの12歳, 男子である.現病歴は, 学校検診にて難聴を指摘され鼓室形成術が予定されたが, 術中悪性高熱症が発症したため, 手術は中止となり, 今回再手術のため, 再入院となった.前回の悪性高熱症の発症を考慮に入れ, 前処置として, 手術3日前よりダントロレンの内服を続け, 麻酔法は, 前回使用のエンフルレン, S.C.Cの使用をさけ, ドロペリドール, ジアゼパム, フェンタニール, パンクロニウムを使用し, NLAにて麻酔を行ったところ, 術中は体温の異常上昇もなく, 悪性高熱症の発症を予防できた.したがって, 悪性高熱症の既往のある患者の麻酔に際しては, まず, ダントロレンを術前に予防的に投与し, 脱分極性筋弛緩薬, 揮発性吸入麻酔薬, アミド型局麻薬の使用をさけ, ドロペリドール, フェンタニール, パンクロニウム, 笑気によるNLAで麻酔を行い, かつ, 術中での悪性高熱症の発症にそなえて, 静注用ダントロレンを準備しておくことが肝要と考えられた.
  • 森 啓, 滝沢 芳夫, 岡田 定, 金 國鐘, 萩原 昭二, 新倉 春男, 寺田 秀夫, 光谷 俊幸, 佐川 文明
    1985 年 45 巻 5 号 p. 717-721
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    71歳男性, 主訴高熱.現病歴: 昭和58年3月にTIAにて倒れ, この時貧血を指摘されている.今回, 高熱が続くため11月21日入院となった.入院時現症: 肝臓3横指, 脾臓1横指触知.検査所見Hb11.7g/dl, plts 11.7×104/μl, WBC 6200/μl, 骨髄穿刺でHistiocyte系のtumor cellが20.2%みられた.その後末梢血にもtumor cellが出現しpancytopeniaを示した.prediniolone 40mg/日の投与で様子をみていたが, 12月1日急に腹痛が出現し, ショック状態となり死亡した.剖検で直接死因は, 腹腔内出血による脾破裂であった.また, 赤芽球, 赤血球を貪食している細胞が, 肝, 脾, 骨髄, リンパ節にみられMalignant Histiocytosisと診断した.血液疾患の脾破裂の合併はまれであり, 報告する.
  • 中島 明彦, 荏原 包臣, 畑 仁, 花田 英輔, 小田切 統二, 吉田 文英, 成沢 達郎, 長倉 穂積, 梅津 一彦, 鈴木 幹二郎, ...
    1985 年 45 巻 5 号 p. 723-728
    発行日: 1985/10/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 女性.脳梗塞, 慢性関節リウマチのため, 昭和54年6月から某病院に入院中, 胸部X線で左房の石灰化と心雑音を指摘された.59年6月精査目的で当院転院.入院時脈拍66/分, 不整, 血圧124/66, 心尖部に拡張期雑音を聴取, 肺ラ音なし.浮腫なし.HYHA III度であった.心電図は心房細動, 完全右脚ブロックを示し, 胸部CTでは左房壁全周の著明な石灰化を認めた.心音図では拡張期ランブル, 心エコー図では僧帽弁DDRの低下, 典型的矩形波を呈したが, 左房の拡大は認めなかった.心カテ所見では, 左室の収縮良好で, EFは0.85であったが, 左房の収縮と僧帽弁の可動性はほとんどみられず, C.I.は1.81/min/m2であった.心内圧はPCWPが18mmHgと高値以外特に異常を認めず, 冠動脈造影では三枝狭窄を認めた.広範な左房壁石灰化が血行動態に及ぼす影響については, 今後さらに検討が必要であると思われた.
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