健康な成人26名 (男性10, 女性16) について, 胸骨上縁高, 胸骨中点高, 剣状突起高のCT写真を撮影し, それについて皮下脂肪層, 骨筋層, 胸腔の断面積を計測するとともに, 胸郭と胸腔の矢状径及び横径を計測し, それらの性, 年齢, 体型による変化の要因を明らかにした.結果は次の通りである.1.胸郭の総断面積は男女各断面ともD, C, A体型の順に大であったが, 体型別に比較すると, 男性ではD体型とC体型では剣状突起高, 胸骨中点高, 胸骨上縁高の順に, 男性のA体型と女性の全体型では胸骨中点高, 剣状突起高, 胸骨上縁高の順にそれぞれ大であった.2.構成比を見ると, 男女とも全体型において胸骨上縁高では骨筋層, 皮下脂肪層, 胸腔の順に, 胸骨中点高と剣状突起高では胸腔, 骨筋層, 皮下脂肪層の順にそれぞれ大で, 骨筋層と皮下脂肪層の差は男女ともA, C, D体型の順に少なくなる傾向が見られた.3.年齢的には, 男性では各断面とも骨筋層は明らかに減少して, 皮下脂肪層との差は加齢とともに少なくなり, 60歳代の剣状突起高では両者ほぼ相等しくなったが, 胸腔と皮下脂肪層の比率の間には逆相関様の関係が見られた.女性では各断面とも検査対象年代間の差は認められなかった.4.胸郭内外の計測値の体型別比較では, 三断面において, 男女の矢状径, 横径ともD体型では他体型よりも大であった.このD体型について見ると, 胸骨上縁高では男性は後矢状径が, 女性は前矢状径が, 胸骨中点高では男性は前, 後矢状径とも, 女性は前矢状径が, 剣状突起高では男女とも前, 後両矢状径がそれぞれ増大する傾向が見られ, 男性の剣状突起高では横径も他の体型より大であった.5.胸郭径の年齢的変化については, 男性では各断面とも, 前, 後両矢状径において加齢的増大の傾向が見られ, 横径では年齢的変化は認められなかった.また, 女性では矢状径, 横径とも研究対象の年代間では差は認められなかった.6.以上の事から胸郭断面積の増減の要因としては, 胸腔径の増減よりも, 壁厚の増減の影響の方が大きく, 骨筋層の加齢的減少に伴って皮下脂肪層が最大の要因となることが考えられた.
抄録全体を表示