胃癌切除後の予後は3年生存率, 5年生存率を検討すればおおよその傾向は把握することが可能である.しかしながら, その詳細に関しては, 5年経過後にも再発がしばしばみられることから10年生存率での検討が妥当と考えられる.今回, 進行髄症例において髄切除後の予後を左右すると考えられる因子, すなわち年齢, 性, 胃癌の肉眼所見としては占居部位, 肉眼型, 大きさ (長径) , また組織所見としては深達度, 組織型, リンパ管侵襲, 静脈侵襲, リンパ節転移, INF, 間質量, 組織学的stageの13因子について, 各因子別に累積10年生存率を算出するとともに, 10年生存例と術後5年未満の再発死亡例とを比較し, 10年生存例の臨床病理学的特徴について検討した.教室における過約26年間 (1956.3~1981.12) の初発胃癌症例1, 098例中, 単発癌治癒切除症例は740例であり, うち進行胃癌症例527例を今回の検討の対象とした.年齢は17~82歳 (平均年齢: 55.7歳) , 男女比は1.5: 1であった.これらの症例のうち10年生存例は99例 (以下10生群) , 5年未満の再発死亡例は193例 (以下再発群) であった.検討の結果, 10生群と再発群との比較ならびに10生率においてともに有意差のみられた因子は, 占居部位, 肉眼型, 深達度, 静脈侵襲, リンパ節転移, INF, 問質量の7因子であった.すなわち, 10生群の臨床病理学的特徴としては, 占居部位M, 肉眼型1.5型, 深達度pm, v (-) , n (-) , INFα, 間質量medullary typeの症例が多いと結論された.また, stageでは10生群にstage I・II, 再発群にIII・IVが多く, 10生率においてもstage I 79.7%, II 48.2%, III24.3%, IV 15.3%であり, stageが進むに従って予後が低下し, 現行のstage分類は遠隔成績をよく反映させていた.さらに, stageを構成する因子以外で脈管侵襲にかぎって10生群と再発群を比較して, 脈管侵襲の各stageへの影響を検討した.その結果, lyでは期待したほど各stageともその影響は少なく, 差異はみられなかったが, vはstage Iでこそ差はないが, II, IVでは再発群にv (+) の症例が多く (p<0.05) , IIIでも再発群にv (+) の症例が多い傾向が認められた.したがって, stage II以上では静脈侵襲の有無は予後に大きな影響を与えることになり, stageを構成する因子以外では10年生存を得るための重要な因子であると考えられる.なお, stage IVの治癒切除例が66例あり, 10年生存例を7例経験した.これら7例中, 肉眼型1, 2型の限局犁が6例であり, 限局型の場合にはS
3であっても合併切除により予後の向上が期待できるものと考えられる.また, 4例はn
3のみでstage IVとされたが, すべてにR
3手術が施行されており, 諸家の報告15もみられるように, 症例の状況を十分に把握, 理解したうえで積極的, 徹底したリンパ節郭清を行っことが長期生存を得るためには必要であると考えられた.
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