昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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46 巻, 2 号
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  • 森 義明
    1986 年 46 巻 2 号 p. 169-171
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 1.ヒトとカニクイザルの比較
    松本 祐二, 佐藤 巌, 恩田 聰, 安室 健郎, 猪口 清一郎
    1986 年 46 巻 2 号 p. 173-181
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    喉頭の発声機能と喉頭筋との関係を形態学的に解析するために, ヒトおよびサルの喉頭各筋の筋線維構成を検討した.研究材料はヒト成人およびカニクイザル成獣の各4例から得られた喉頭筋で, 喉頭筋の観察はゼラチン包埋, Sudan Black B染色標本により, 筋線維を赤筋線維, 中間筋線維, 白筋線維に分類し, 断面の筋線維数, 筋線維の太さおよび密度を検討した.結果は次の通りである.1.ヒトでは筋腹横断面の筋線維総数は披裂筋と輪状甲状筋が最も多く, 喉頭蓋筋群が最も少なく, 筋線維の太さはその逆の傾向を示し, 密度は後輪状披裂筋, 輪状甲状筋および甲状披裂筋が高く, 喉頭蓋筋は著しく低かった.2.筋線維型は一般に白筋線維が40%前後で最も多く, 以下僅かの差で赤筋線維, 中間筋線維の順であり, 筋線維の太さは3筋線維型とも喉頭蓋筋群が最も大で, 白筋線維と中間筋線維では甲状披裂筋が, 赤筋線維では後輪状披裂筋がそれぞれこれに次いでいた.3.これに対してサルでは喉頭蓋筋を欠き, ヒトに比べて各筋とも筋線維は少なくて披裂筋及び輪状甲状筋で特にその差が著しかった.3筋線維型の頻度は白筋線維が一般に50%前後を占め, ヒトよりも高く, その差は披裂筋及び甲状披裂筋で著しかったが, 白筋線維の太さはヒトに比べて小で, その差は甲状披裂筋, 次いで披裂筋と外側輪状披裂筋の順に著明であった.4.以上の事からサルではヒトに比べて声門の後部を閉鎖する筋, 及び緊張した声帯の複雑な変化に携わる筋の発達が弱いことになり, その結果, サルの喉頭は高調な短い発声には適するが, 連続的な種々の音調の発声には適しないと考えることが出来た.
  • 大中 忠勝
    1986 年 46 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    血圧と体組成の関係を23-58歳の某工場従業員2086名について検討した.身長, 体重, 胸囲, 腹囲, 身体3カ所の皮脂厚, 収縮期血圧, および拡張期血圧が測定された.体脂肪量と除脂肪体重はOhnakaの体脂肪比率予測式により推定された.さらに, 腹囲と胸囲の比が腹部の脂肪の分布の指標として計算された.またQuetelet's Indexが体格指数として算出された.
    血圧と身長以外の各変数との間で有意な相関が存在したが, 血圧との相関が最も高かったのは体脂肪量であった.血圧と体組成の関係を体重を体脂肪量と除脂肪体重に分けて検討した.さらに, 体脂肪の分布の血圧への影響について検討する為に, 血圧を目的変数, 体脂肪量, 除脂肪体重および腹囲と胸囲の比 (腹胸比) を説明変数とする重回帰分析を行なった.偏相関係数の最も高かったのは体脂肪量であり, 最も低かったのは除脂肪体重であった。さらに, 体脂肪量と腹胸比は血圧との間に正の相関が認められたのに対して, 除脂肪体重は血圧と負の相関が認められた.これらの結果は, 血圧が身体の大きさそのものよりも体脂肪量によって影響されること, さらに体脂肪の分布によっても影響されることを示唆している.
  • 島内 節
    1986 年 46 巻 2 号 p. 189-201
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病患者は神経難病の中で最多であり, その多くが在宅療養者であるにもかかわらず在宅ケアの実践例からケア課題やケア効果をとらえた研究例は, きわめて少ない.そこでパーキンソン病患者の社会環境条件と在宅ケア顆題の特徴を明らかにし在宅ケアについて評価を行った.東京都立神経病院在宅診療班が1975~1983年の期間に在宅ケアを開始していたパーキンソン病患者69例について在宅ケア開始期を中心として患者の属性・社会環境条件, 症状・障害, 病状経過ADL, 精神能力, 介護実態, 介護困難を分析した.その際, 一般寝たきり老人, 寝たきりでない疾病老人をコントロール群とした.その結果次のようなことが明らかになった. (1) パーキンソン病在宅ケア患者は難病, 障害者, 高齢の条件が重なり身体障害者手帳1, 2級所持者は28例 (40.6%) を占め, 全例にADLが著しく低下し, 大多数にコミュニケーション障害, 精神症状, 痂呆, 意欲低下など精神能力も障害されていた.2) 在宅ケアの対象となり, その効果が期待できる症状・障害は, 失禁・排尿障害, 蒸下障害, 精神症状 (幻覚, 失認, 徘徊など) , 意識障害, 呼吸異常, 褥瘡などであり, また処置としては経管栄養, 膀胱留置カテーテル, 吸引, 呼吸管理などであった. (3) パーキンソン病老人は一般寝たきり老人に較べて, 平均年齢は5.5歳低いにもかかわらず前記症状・障害, 処置の必要度が有意に高く認められ, 介護困難も有意に高い. (4) パーキンソン病患者のADL, 精神能力のいずれも女よりも男において有意に低い.この傾向は他文献とも一致した. (5) 介護能力・介護条件は, 介護者によって異なる.このうち緊急問題解決能力は嫁・娘>妻>夫・その他 (老母, 老姉妹) の順で, 日常介護能力・条件は, 妻・嫁>娘>夫・その他 (老母, 老姉妹) の順である.そこで介護者が男性や高齢者の場合に介護上の問題が多い. (6) 介護上の問題は症状・障害に伴う介護知識や技術に困難度が強い. (7) 在宅ケアにおいては上記の問題への対応の他に, 医療費など諸制度の活用, 専門職・非専門職への照会など医療上, 生活上の諸問題や介護者の心身の健康管理などの対応課題があげられる. (8) 専門家による在宅ケアの効果は患者の医療確保に合わせてケアによって症状・障害の緩和, 病状進行を遅延させうることがわかった.また介護者の健康管理によい結果をもたらしていた.
  • 川村 佐和子
    1986 年 46 巻 2 号 p. 203-213
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    筋・神経系疾患に対する臨床医学的, 基礎医学的, 公衆衛生看護学的研究は未だとぼしい.一方, 最近とみに, 地域保健・医療の新たな展開が要請されている.本研究は筋・神経系疾患の代表的疾患として筋萎縮性側索硬化症を選び, 本疾患に対する公衆衛生看護の実態を分析・検討し, 筋・神経系疾患に対する公衆衛生看護の在り方とその方法を研究した.「研究方法」昭和49年12月から60年11末日まで (11年間) , 東京都立神経病院とその前身, 都立府中病院で行った在宅診療の対象患者347例から筋萎縮性側索硬化症事例43例を選び, 研究対象とした.医学的資料は診療録や主治医等からの詳細な聞き取りで, 公衆衛生看護学的資料は著者の保健婦記録や他の看護職員からの聞き取りで収集, 整理した.「結果」1) 筋萎縮性側索硬化症患者は43例 (死亡は29例, 67.4%) であった.2) 死亡例の性比は男/女: 1.69, 平均発病年齢は52.9歳, 初発部位が球症状の事例は20.9%であった.平均り病期間は4年4カ月であった.3) 在宅診療は疾患経過の後期に平均1年2カ月行われ, 人工呼吸器による呼吸管理等の診療と必要な公衆衛生看護が行われた.4) 本研究で得た平均り病期間値は国内, 国外の調査研究結果値と比較すると, 長期群に属した.また, 在宅診療・公衆衛生看護が適切に実施された群ほど, り病期間は長期であった.これらのことから, 在宅診療・公衆衛生看護が適切に実施されることは筋萎縮性側索硬化症患者の延命に効果があるとの結論を導きだした.5) 在宅診療・公衆衛生看護は病院病床の効率的有効活用や患者・家族の福祉の実現とクオリティオブライスの向上にも有効であることが分かった.6) 在宅診療・公衆衛生看護を中心とする筋・神経系疾患に対する在宅ケアシステムは東京都立神経病院を中核として, 関係者の協同努力によって, 開発されたものである.このシステムは, 他の慢性, 進行性疾患や寝たきり老人および重度身体障害者に対しても, 筋・神経系疾患と同様に, その有効性を認められることは重要である.
  • 松田 賢, 高場 利博, 井上 恒一, 野元 成郎, 横川 秀男, 渡辺 俊明
    1986 年 46 巻 2 号 p. 215-225
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    僧帽弁置換術症例50例を対象として, 心筋保護法の相異による術中・術後早期の臨床経過について検討した.対象群を心筋保護法により3群に分けた.すなわち, I群: 10例, 心臓局所冷却法のみによるもの, II群: 20例, 心臓局所冷却法にcardioplegiaとしてglucose-potassium液を併用したもの, III群: 20例, 心臓局所冷却法に酸素化晶質液であるSt.Thomas液によるcardioplegiaを併用したものである.3群の術前状態は年齢, 重症度に差はみられなかった.術中因子では体外循環時間, 大動脈遮断時間にI・III群間に差があり, III群が最も長時間を要していた.各群とも低体温法が併用されているが, III群が直腸温, 食道温ともに最も低温であった.術後経過ではtotal CK, CK-MB, GOTの変動をみたが, 各群ともにほぼ同様の変動を示した.total CKは術後は上昇し, 24時間までは1000IU/l前後で経過し, 1群がやや高値であった.CK-MBは術直後に最高値を示し, 以後漸減した.GOTも術後上昇し, 100IU/l前後で経過し, total CKと似た経過を示した.血清酵素学的には3群間の術後経過に差は見出せなかった.術後心機能についてみると, 心係数は各群ともに2.01/min/M2以上に保たれているが, この値を維持するための左房圧はI群が最も高く, III群は最も低く維持されており, また左室仕事量はI群が他の2群に比較して多い.術中術後に使用されたカテコラミンについてみてもI群では最も多く使用され, III群が少ない.対象例は全例僧帽弁疾患では術前状態に差がなく, また同一の僧帽弁置換術を施行されたものである.術中に心筋に与えた障害因子はIII群が最も多いにも拘らず, 術後血清酵素学的に3群に差のないこと, 術後早期の心機能の回復度はIII群が最もすぐれていることからみて, III群が最も有効な心筋保護が行われていたことを示すものである.臨床例の検討で, 複雑な因子が附加されるために明確な結果は得られなかったが, III群に使用された酸素化晶質液の心筋保護効果と低温維持が好結果をもたらしたものと考えられる.
  • 中山 貞男, 辻 泰喜, 宇佐美 研一
    1986 年 46 巻 2 号 p. 227-235
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    有機ゲルマニウム (bis-β-carboxyethylgermanium sesquioxide; Ge-132) の急性毒性試験をddY系マウスならびにWistar系ラットを用いて行った.Ge-132は水に難溶であるため, 0.5%CMC懸濁液 (Ge.132-CMC懸濁液) と炭酸水素ナトリウムを用いてpH7.0に調整した60%水溶液 (Ge-132-pH7水溶液) を作製し比較検討した.被検薬は経口, 皮下, 腹腔内, 静脈内投与により与えた.Ge.132-CMC懸濁液のLD50値はマウスで11, 950mg/kg, p.o., 7, 805mg/kg, s.c., 2, 170mg/kg, i.p.ラットで11, 350mg/kg, p.o., 3, 350mg/kg, i.p.であった.皮下投与では被検液が投与部位より流出し, LD50値は求められなかった.Ge-132-pH7水溶液のLD50値はマウスで11, 600mg/kg-p.o., 12, 350mg/kg, s.c., 5, 720mg/kg, i.v.ラットで10, 050mg/kg, P.o., 17, 050mg/kg, s.c., 4, 590mg/kg, i.v.であった.Ge.132-pH7水溶液静脈内投与におけるLD50値は, Ge-132-CMC懸濁液腹腔内投与のそれよりも大きかった.その他の投与経路では, Ge-132両被検液のLD50値に性差, 種差はみられなかった.Ge-132投与でみられた一般症状は, 苦悶症状, 自発運動の減少, 正向反射および逃避反射の消失, 呼吸抑制などであった.これらに加えて, Ge-132-pH7水溶液の高用量では後弓反張, 強直性痙攣を示した後に死亡した.Ge-132-CMC懸濁液の皮下投与では投与部位皮膚組織の腐食と壊死を認めた.これらの結果から, マウスおよびラットに対するGe-132の急性毒性は極めて低いことが示唆された.
  • 原 豊, 平戸 久美子, 関 正計, 矢内原 巧, 中山 徹也
    1986 年 46 巻 2 号 p. 237-242
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Dehydroepiandrosterone sulfate (以下DHASと略) の子宮に対する直接作用を知る目的で子宮体部筋cytosol中のDHAS結合タンパクの検討を行い, DHASの生理作用に関して考察を加えた.1) 内因性ステロイドを除去した子宮筋cytosolに3H-DHAS (100nM) を加えincubation後, Sephadex columnを用い結合・非結合DHASを分離した.2) このincubationに過剰量 (10~500μM) の非標識DHASを加えると, その結合量は68.9~16.7%と漸減した.しかし, 非標識DHA, Dihydrotestosterone (DHT) , Progesterone (P4) , 20-α-Dihydroprogesterone (20-α-OH-P4) , Estradiol (E2) を過剰量加えても, その結合率に影響はなかった.3) Columnにより得た結合分画を精製後, TLCにより分離して, その放射性ステロイドはDHASであることを確認した.4) 子宮筋cytosolを14C-DHASを基質としてNAD, NADPH存在下で代謝実験を行ない, cytosolではDHASは代謝をうけないことが示された.以上より, ヒト子宮筋cytosol中に特異的結合性の高いDHAS結合タンパクの存在することがはじめて示唆された.
  • 熊谷 一秀, 安井 昭, 西田 佳昭, 中嶋 眞, 鈴木 博
    1986 年 46 巻 2 号 p. 243-248
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    陥凹性胃癌の粘膜下層以下への深部浸潤癌量を推測する際癌巣陥凹面の性状を理解することが大切である.特に癌巣内潰瘍を有する陥凹性胃癌は潰瘍の消長に伴いその陥凹面の形態の変化を観察でき (悪性サイクル) , 深部浸潤癌量の指標となり得るかを検討した.対象は教室で切除された癌巣内潰瘍を有する陥凹性胃癌31例で, 陥凹性早期胃癌12例 (m癌8例, sm癌4例) , 早期胃癌類似進行癌4例, Borrmann 2, 3型15例である.これらの内視鏡所見, 肉眼所見, 病理組織学的所見と対比し, 陥凹面の性状と浸潤癌量との相関を検討した.その結果, 粘膜癌は癌巣陥凹面が顆粒状形態を示す傾向, Borrmann型進行癌は粗大結節, 無構造を示す傾向を認めた.さらにsm癌をsm層の癌量により微量浸潤, 中等浸潤, 高度浸潤と分けると微量浸潤例はm癌の陥凹面の性状に, 高度浸潤例はより進行癌の性状に近似し, 早期胃癌類似進行癌のpm層の浸潤量を同様に検討しても, 陥凹面の性状と浸潤癌量はある程度の相関を認めた.以上, 癌巣内潰瘍を有する陥凹性胃癌の深部浸潤癌量を推量するにあたっては, 癌巣内潰瘍の消長 (悪性サイクル論) を充分に考慮に入れて検討すべきであろうと思われた.
  • 大弥 廣伸
    1986 年 46 巻 2 号 p. 249-259
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    唇裂術後瘢痕の病態を明らかにするため, 口唇裂患者184名 (片側139名, 両側45名) 229例の唇裂第1次手術後に生じた上口唇癒痕について, 臨床的にケロイド発生の観察を行った.調査結果は, 両側唇裂例の方が片側唇裂例より多くケロイドを発生し, 片側唇裂例では右唇裂例の方が左唇裂例より発生が多い.片側唇裂例では不完全唇裂例に多く発生が見られ, 両側唇裂例では完全唇裂例と不完全唇裂例には差異はない.口蓋裂合併の有無による比較では, 片側唇裂例では差異はないが, 両側唇裂例では口蓋裂合併例の方が発生が多い.性差は見られなかった.術者経験年数別の調査発生によると, 形成外科入局4年次~6年次の術者による症例に多く発生が見られた.発生部位別では鼻孔底部 (横) が約50%を占め, 赤唇部は0%, 小三角弁部は1%, 人中稜に当たる部分は約23%鼻孔底部 (縦) は27%であった.ケロイド予防の目的での軟X線照射はケロイド発生率には差は見られず, 症例の選択にも問題はあろうが軟X線照射の効果は唇裂第1次手術後のケロイド発生予防に対しては否定的であった.
  • 井川 正治
    1986 年 46 巻 2 号 p. 261-268
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    スポーツマンの急速減量に関してよりよい方法を見出すために, 減量食の内容特に蛋白質摂取量と栄養素のバランスに留意して, 大学レスリング選手に7日間で体重の約10%の減量を行なったときの生体負担について検討した.高蛋白食 (2.09/kg/day) と普通蛋白食 (1.29/kg/day) の2群に分け, 減食とトレーニングを併用した急速減量を行なった.その際の栄養摂取量, 体重, 皮脂厚, 血液, 尿および運動能力等の測定をした.その結果, 7日間の減量により5.5kgの体重減少があり, 減少率では体重が8.5%, 皮脂厚は12.6%, 体脂肪量は15.4%, LBMは7.7%の減少であった.全身持久的能力, 筋力, パワーは, 減量の影響を受けなかった.またRBC, Ht, MCHCも減量による影響を受けておらず, 血液の濃縮はみられなかった.しかし, TP, AIG比, UNは減量が進むにつれ低下し, 正常範囲を逸脱したことより, 低蛋白, 低エネルギー状態であった事が伺われたが, 脂質代謝が亢進し活動に必要なエネルギーを脂肪により供給していたと考えられる.その裏ずけとしてFFAが有意な増加をしめした.減量時の体蛋白の崩壊を出来る限り防止するための最低摂取蛋白量は1.29/kg/dayであることが, 窒素出納より確認された.スポーツマンが減量するにあたり注意すべきことは, 普段より栄養状態と栄養素のバランスの取れた食事に気を付け, 減量時には良質の蛋白質を十分摂取し, 不足しがちなビタミン・ミネラル等は, 薬物等による摂取も合わせて行なう必要がある.
  • 梶山 浩, 大原 秀治, 太田 秀一, 田代 浩二, 三田 〓
    1986 年 46 巻 2 号 p. 269-278
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    羊赤血球 (SRBC) で免疫したICR系マウスから得た脾細胞 (あるいは, この細胞集団から分離したB細胞) の培養系に於いて, 我々はDNP-Ficollにadjuvant活性のあることを今回はじめて見出した.そこで次にその作用機構を調べた.免疫応答の検索には, Cunningham and SzenbergらのPFC assay法を選んだ.細胞をDNA-Ficollと共に48時間培養した後に, SRBC抗原に対する抗体産生細胞 (PFC) の数を測定した.実験結果は以下のようであった. (1) SRBCで免疫後4日目および6日目の脾細胞を用いた時にのみ, DNP-Ficoll (0.02μg/ml) の添加で抗SRBC (IgM) PFCの数が対照より増加した (351±29.0: 240±23.8/106B細胞) . (2) 免疫後4日目の脾細胞から分離したB細胞で, 用量 (0.002, 0.02および0.2μg/ml) と抗SRBC応答反応関係を検討した.0.02μg/ml添加した時に最高のPFC数を得た.しかし上記脾細胞の場合と比べるとその免疫応答賦活効果はきわめて弱かった (162.1±15.5: 119.9±3.8/106B細胞) . (3) このDNP-Ficollはマクロファージ (Mφ) あるいはT細胞由来液性因子の産生に影響を与えない. (4) B細胞にT細胞を加えた実験系において, T細胞の存在はDNP-Ficollの活性発現には無関係であった. (5) B細胞とMφを共存させた時にはB細胞だけの時よりもDNP-Ficollの添加によりPFCの数に増加がみられた.しかしその増加はきわめて僅かに過ぎなかった. (6) 脾細胞で得られた数値に最も近い数のPFCが観察されたのは, B細胞にT細胞およびMφを加えた場合であった.従って, この実験系で見出されたDNP-Ficollのadjuvant活性は主としてMφをmediateした直接的な細胞間相互作用により発現されるものと考えられた.
  • 後閑 武彦
    1986 年 46 巻 2 号 p. 279-283
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脳内活性アミン類及びMAOに及ぼす放射線の影響を知るため, ratに60Coγ線を照射し, MAOの活性変化を中心にcatecholamine濃度の変化を調べた.雄性ratに60Coγ線を500rad, 1, 000rad及び2, 000rad1回全身照射し, 照射直後, 1時間後, 2時間後, 3時間後に全脳を取り出し材料とした.Ratは, 500rad照射群, 1, 000rad照射群, 2, 000rad照射群とも12匹ずつ用い, 対照群は一群3匹とした.MAOの基質はserotonin, tyramine, β-phenylethylamine (β-PEA) をそれぞれ20μMの濃度で使用した.活性アミンは液体クロマトグラフィーを使用して, dopamine, noradrenalineの濃度を測定した.500rad及び2, 000rad照射群においてはMAO活性の有意な変化はみられなかった.1, 000rad照射群においてはMAO活性は照射直後より3時間にわたって上昇した.Dopamine及びnoradrenalineは1000rad照射群においても有意な濃度の変化は認められなかった.これは1, 000rad照射により脳内MAO活性は上昇し, catecholamineの分解は高まったが, 2次的にcatecholamineの合成も高まったため, みかけ上はcatecholamine濃度が変化しなかったものと推察される.また1, 000rad照射群におけるMAO活性の上昇は, MAO-Bに特異的な基質であるβ-PEAを使用したときでは, MAO-Aに特異的な基質であるserotonin及びMAO-AとMAO-Bの両者の基質であるtyramineを使用したときより著しい活性上昇を示した.これは酵素そのものの感受性の差以外に酵素周囲の環境の違いも考えられる.すなわち, MAO-Bはミトコンドリア外膜の表面に近い親水性の部分に存在しているために, 外膜の中央部に存在していると考えられているMAO-Aに比べて, 放射線の間接的な影響を受けやすいと考えられる.いずれにしても, 60Coγ線1, 000 rad 1回照射によりrat脳中のMAO活性が大きく変化したということは, 放射線感受性が一般的に低いと考えられている中枢神経系においても1, 000rad程度の放射線照射により中枢神経活動に何らかの影響を与える可能性を示唆するものである.
  • ―前期5年・後期5年の比較検討―
    丸谷 龍思, 斉藤 進, 奥茂 宏行, 近藤 宰司, 杉森 広海, 康野 公則, 扇谷 浩文, 黒木 良克
    1986 年 46 巻 2 号 p. 285-290
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回筆者らは, 過去10年間の昭和大学藤が丘病院小児整形外科病棟の入院患者児につき, 前期, 後期の5年間ずつに分け, 諸項目につき検討を加えた.患児数は, 10年間で1, 015人であるが, 経年的に増加傾向にある.前期は386人, 後期は629人であり, 後期は前期の1.63倍の増加率であった.年齢分布では, 前後期ともに小学生が目立って多い.月別数においては, 前後期ともに春, 夏に多い傾向にあった.地域別では, 緑区の患児数が前期198人より後期348人と急増し, そのほか港北区, 町田市, 川崎市宮前区の増加が目立っている.疾患別では, 先天性3大疾患の患児数の変動には著変はないが, 単純性股関節炎, ペルテス病, 環軸椎回旋固定症の患児数の増加が目立つ.疾患別上位12疾患における観血的治療法の比率については, 前期では216人中147人, 68.1%に観血的治療を, 後期では325人中158人, 48.6%に観血的治療を行なっている.この結果よりみても, 当院が少なからず地域社会に貢献しているものといえよう.また疾患にも多少の変動がみられるが, 今後の動向が注目される.前後期における入院患児数の推移, 地域別の患児数の推移, 疾患別の変化, 疾患別治療法などにつき検討を加えた.
  • 猪狩 中, 橋本 俊明, 石井 一彦, 西田 正彰, 安藤 利道, 豊田 益弘, 西島 久雄, 田玉 逸男
    1986 年 46 巻 2 号 p. 291-293
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    抗うつ剤Maprotilineの投与により全身けいれん発作を呈したと考えられる一症例を報告する.患者は46歳の男性.断続的に抑うつ状態を繰り返し, Maprotiline75mg/dayを投与開始後10日目に全身けいれん発作を呈した.投薬中止しMaprotiline血中濃度測定, 脳波, 頭部CT撮影, 血液, 尿検査, メジマイド賦活脳波を施行し検討したところ, Maprotilineの一過性急性中毒と考えられた.尚, うつ病患者に抗うつ剤を投与する際に潜在性の脳機能異常を把握する必要があると考えられた.
  • 西島 久雄, 田玉 逸男, 豊田 益弘, 橋本 俊明, 石井 一彦, 西田 正彰, 安藤 利道, 下島 秀一, 井上 道雄
    1986 年 46 巻 2 号 p. 295-298
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ペニシリン療法によりほとんど遭遇することのなくなった進行麻痺の一例を報告する.患者44歳の男性, 性交渉頻回であり, 35歳頃より意欲低下し, 頭痛, 発音の不明瞭, 計算力の低下を主訴に入院.言語跌蹉, 痴呆を主症状とする神経・精神学的所見, ならびに髄液の梅毒反応陽性より進行麻痺と診断された.脳波, 頭部CTとも異常所見は認められなかったが, 中核症状である痴呆, 人格水準の低下は改善しなかった.進行麻痺の軽症化が進行しているといわれながらも, 発症の機序は依然として未解決の問題である.
  • 須藤 利行, 岡崎 純二, 知野 公明, 門馬 満, Mitsuru MONMA, 森 義明, 上村 正吉, 菅谷 修一
    1986 年 46 巻 2 号 p. 299-302
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膝関節に発生するメニスカスガングリオンは, 比較的稀れなものとされている.今回我々は2症例を報告した.症例1, 29歳, 男性, 右膝関節内側メニスカスガングリオン.症例2, 40歳, 女性, 左膝関節外側半月板嚢腫.本邦における報告例は, 我々が検索した限りでは, 73例で, そのうち文献的に明らかな54例に我々の2例を加え検討した.男性34例, 女性22例.年齢: 6歳から57歳.発生部位: 外側37例, 内側19例.外傷の既往の有無: あるもの16例, ないもの27例, 不明のもの13例.手術法: 半月板全摘+嚢腫摘出, 38例.半月板部分切除+嚢腫摘出, 1例.嚢腫摘出, 5例.不明, 12例.根治的には, 半月板全摘+嚢腫摘出が適当と考えている.
  • 稲垣 昌博, 田端 貴子, 栗島 秀行, 中山 貞男, 坂本 浩二, 阿部 浩一郎, 眞 有美, 笠原 多嘉子, 坂本 浩二, 片山 雅子, ...
    1986 年 46 巻 2 号 p. 303-313
    発行日: 1986/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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